FLY 航空学園グラフィティ (NHK総合火曜23:00~23:44)

ドラマDモード
制作・著作/NHK
共同制作/AVEC、NHKエンタープライズ21
制作統括/三井智一、一井久司
プロデューサー/和田豊彦
作/尾西兼一
演出/赤羽博、中島悟
主題歌/『大きな翼』矢野真紀
出演/大友康平、片瀬那奈、鳥羽潤、石川伸一郎、清水千賀、鮫島巧、山口あゆみ、忍成修吾、城山未帆、高岡蒼佑、佐藤B作、飯島愛、いしのようこ、セイン・カミュ、西岡徳馬、西田健、榊原るみ、酒井和歌子ほか

総括
☆☆
 最終回、セスナが飛ぶシーンを見て、このドラマに「航空学園グラフティ」という副題がついていることを、久しぶりに思い出しました。そういえば、最初の数回は訓練のシーンも結構ありましたよね。ただ回を追うごとに単なる「学園グラフティ」になってしまって。『FLY』はなりを潜め、悪い油を使った『FRY』化してしまったとでも言いましょうか。
 取ってつけたようなエピソードをつぎはぎにグイグイと展開させ、ヘンテコなダイアローグで苦笑させる脚本は、ちょっと肯定できません。でも、こんな出来の悪いドラマを、何となくいとおしく思って見続けてしまいました。理由はなんでしょう?極端なことを言ってしまえば、そのダメさ加減が逆に何とも微笑ましく、ある意味、楽しかった。素人すれすれの出演陣の暴走ぶりもなかなか見られないような、珍妙なおかしさがあったし。もちろん、このドラマが日テレのShinD枠だったら、こんなに肯定していたかどうか。DはDでもDモードというNHK枠の場違いさもうれしくさせた原因かも。ただ、次もこれじゃ怒りますけど。

愛をください (フジテレビ系水曜21:00~21:54)

制作/共同テレビ、フジテレビ
プロデューサー/中山和記、梨本みゆき
協力プロデュース/河合徹
脚本/辻仁成
演出/藤田明二、松田秀知
主題歌/『ZOO』ECHOES
出演/菅野美穂、江口洋介、伊藤英明、原沙知絵、真矢みき、黒谷友香、深浦加奈子、石井苗子、銀粉蝶、筧利夫、仁科亜季子、杉本哲太、風吹ジュン、陣内孝則ほか

第1回
☆★
こんな暗くてしみったれた話、誰が見たいんでしょうか。不愉快になれること間違いなしのドラマ。江口、杉本、陣内揃って不調で拷問に近し。

第2回
☆☆
 また、見てしまいました。第3話まできて、何かどこかで味わったことのあるテイストだなぁ、と感じていたんですが。これは、野島伸司の世界に近似していますねぇ。孤児院とか復讐なんかが頻発する、勘違いヒューマニズムとでもいいますか。歯の浮くような台詞の連打も辛い。菅野美穂の歌はめったに聴けない珍品ですけど。裏焦点は、初めてちょっといやなやつを演じている原沙知絵。彼女は悪役の方が向いていると思う。

第4回
☆☆
 また付き合っちゃいました。登場人物、誰にも共感できないという泥沼化に歯止めはかからず。そりゃ、視聴率悪いわけだ。

第5回
☆☆
 初回から、ほとんど話が進んでいない。菅野美穂も歌っているエコーズの『愛をください』って、CCRの『雨を見たかい』に非常によく似てると思うんですが。

第6回
☆☆
 うんざりするような暗さの中にとうとう、ちょっといい話を目指す兆候が。マジギレする原沙知絵がよかった。

第7回
☆☆★
 これまででは一番よかったかな。やっと話が核心に触れ始めたというか。もちろん、普通の人は、ここまで来るまでに見なくなるんでしょうけど。★は原沙知絵、怒りの鉄拳制裁分。

第8回
☆☆
 物語の展開が、定石すぎる。陳腐と言ってもいい。あまりに陳腐なのでそこには、主人公のすさんだ状況はこれぐらい陳腐なもの、というような二重構造の意味がこめられているんじゃないか、と深読みしたくなるほど。粘演(?)する菅野美穂は、大竹しのぶみたいになるんでしょうか。

第10回
☆☆
 それなりにまとまってきたか。長くてつらい道のりだった。

ビューティフル・ライフ (TBS系)

製作/TBS
制作/貴島誠一郎
プロデュース/生野慈朗、植田博樹
脚本/北川悦吏子
演出/生野慈朗、土井裕泰
主題歌/『今夜 月の見える丘に』B’z
出演/沖島柊二…木村拓哉、町田杏子…常盤貴子、岡部巧…池内博之、小沢真弓…原千晶、川村悟…西川貴教、田村佐千絵…水野美紀、美山耕三…的場浩司、町田正夫…渡部篤郎、町田久仁子…大森暁美、小雪、モロ師岡、京晋佑、河原崎健三ほか

総合評価:☆☆☆

第1回
☆☆☆
 あざとさギリギリで勝負して、清々しさギリギリで切り抜ける展開。そこがある意味、スリリングだったりするんだけど。木村拓哉、常盤貴子ともに役のイメージにピッタリで、このキャスティングは大成功でしょう。

第2回
☆☆☆
 ダイアローグの叙情性が光ります。ドラマ的には詰め込みすぎのような気もするけど、見終わった後に窮屈な感じを与えないのはさすが。表参道を車椅子で滑走するシーンは秀逸でした。鉢合わせのシーンのうまさは、北川節の真骨頂か。見てて、無性に恥ずかしいんだけど。

第3回
☆☆☆
 見てて気恥ずかしくなるようなシーンの連続技で、飽きさせることを知りません。川村悟役の西川貴教が意外に強力。まぁ、PVでも相当なことをやってるわけですからねぇ。

第4回
☆☆☆★
 ジリジリするんだけど、それこそがやっぱり、またたまらなくスリリングだったりする。アメリカ土産にビーフジャーキーって変化球は○。ここで言ってしまうのか、結末が悲劇になるということを。

第5回
☆☆★
 サイド・ストーリーの方が面白かったりするドラマが多い中、この水野美紀と渡部篤郎のやり取りは、あまりにもおバカさんでいけません。こういうのが楽しい、って人もいるかもしれませんけど。BGMはコステロずくめ。『GO!GO!LA』は小難しい映画か?! ライブハウスでイベントという挿話は、ちょっとやりすぎの印象。

第6回
☆☆☆
 それにしてもこの二人、よく音信不通になるよなぁ。その辺の煽り方がうまいところでもあるんだけど。スキスキの豊島園がいい感じでした。引き抜きのスカウト役で、椋木美羽登場。

第7回
☆☆☆
 小雪の回。ドラマの構造自体は古めかしいところもあるんだけど、そこがまたわかりやすくていいのかもしれない。

第8回
☆☆☆
 ドラマとしての違った展開によって、これまでのように勢いのままには見ていられなくなる。柊二が杏子に執着する理由がよくわからないんだよなぁ。そんな肝心なところにモヤモヤを残したままに、感動的すぎる場面を矢継ぎ早に繰り出されても、いろいろ考えてしまうばかりで。ポリーニの紅い靴を最初で最後に履いた、という結びの余韻は素晴らしかった。

第9回
☆☆☆
 海辺の美容院という夢見ごこちと、再検査という現実。この辺の脚本のバランス感覚はさすがです。森の中でお互いを呼び合うシーンは、心に残ります。闇夜に木霊する声が実に効果的に使われていました。ここでのダイアローグのうまさもまた格別。最後のナレーションが、今回は杏子のものに。

第10回
☆☆☆
 やっぱり、水野美紀と渡部篤郎のカップルがあまりに愚か者に見えちゃうのはいかがなものかなぁ。メイン・ストーリーのせつなさを引き立てる役割を果たしているのは確かだけど。

第11回
☆☆☆
 「スキンシップに弱いのかなぁ」の艶笑小噺風のオープニングから、死化粧、火葬場と続く悲劇的な結びまで、最終回に相応しい分厚い構成。あざといと言ってしまえばそれまでだけど、何度となく目頭を熱くさせられたのも事実。
 ただ、杏子との約束を守ったエピローグに、柊二の将来に不安を感じてしまったのは、私だけではないでしょう。あれじゃ、新たな人生なんて送れないもんね。感動の駄目押しが、感動をさめさせてしまうこともある。