桜桃の実る谷 (NHK総合)

土曜ドラマ:日中共同制作
制作・著作/NHK
国際共同制作/NHK、中国四川電視臺
制作統括/張玉偉、二瓶亙
作/下川博
演出/馬功偉、佐藤峰世
音楽/小六禮次郎
出演/仲村トオル、游琳妹、張春祥、金久美子、田山涼成、原田芳雄ほか

第1回(8/19放送)
☆☆☆
 見るほうも、満を持しての下川博作。『カンパニー』が少しだぶる企業物に、中国を舞台にする価値のあるシンプルかつピュアなストーリーが絡んでいて、なかなか巧みな戦略を感じました。ことごとく下手になっていく中年俳優たちの中にあって(?!)、逆に上手くなっている原田良雄の存在感も効いていたと思います。次回の予告編にも期待感がありましたし、これはやってくれそうな予感がします。

第2回(8/26放送)
☆☆☆
 濃密なドラマというわけじゃない。ただ、作品としての隙間を埋めて余りある中国という舞台が、作品に別の力を与えていたと思う。緩くて温いだけのラブストーリーの部分でも、何となく許させしまうのは、やはり舞台のせいでしょう。ピアノを売りに行くエピソードなんか、日本でやってもリアリティが出ないだろうし。
 サブストーリーとして、原田芳雄の病気の話と観光誘致の話が絡んでくるのも、下川さんらしい、丁寧さを感じました。いつまでも会社休んだりして、主人公も中国的になってしまうあたりも面白かった。

一絃の琴 (NHK総合月曜21:15~21:58)

時代劇ロマン
制作・著作/NHK 共同制作/NHKエンタープライズ21
制作協力/NHKテクニカルサービス、NHKアート
制作統括/菅康弘、小松隆一、高橋幸作
原作/宮尾登美子
脚本/田中晶子
演出/大森青児、越智篤志、西谷真一、磯智明
音楽/渡辺俊幸
出演/田中美里、竹下景子、篠田三郎、香川京子、山本陽子、三田村邦彦、伊原剛志、榎木孝明、平田満、土田早苗、有森也実、生瀬勝久、岡本綾、大和田伸也、川上麻衣子、吉幾三、車だん吉、西尾まり、井上チャル、吹石一恵、真柄佳奈子、田中邦衛ほか

※レビューは本放送時のものです。

総合評価:☆☆☆★

第一部「大友流月」篇(第1~5回):☆☆★
第二部「望月家」篇(第6~8回):☆☆☆
第三部「市橋家」篇(第9~13回):☆☆☆☆
第四部「市橋塾」篇(第14~18回):☆☆☆★

第1~15回
 一つ驚いたのは、前半からキャスト総入れ替えで、話が大変動していくことです。簡単に分けると、第1話から第5話までの5話が、第一部大友流月篇。第6話から第8話までの3話が第二部で、望月家篇。第9話から第13話までの5話が第三部で、市橋家篇。第14話から最終回までが第四部で、市橋塾篇と、四部構成の巨編。
 ミソをつけたのは第一部で、この躓きがその後の視聴率にも影響しましたね。さて戦犯は誰でしょう(?!)。
 第二部は通俗小説的な面白さがあって、少しボルテージが上がってきたかな、という感じでした。お久しぶりの土田早苗は迫力満点、曲者風の有森也実もよかった。ただ、本格的な人生行路劇としての面白さが出てきたのは、第9話以降、つまり第三部からではないでしょうか。つまり、日テレでいけば、ワンクールの最終回から面白くなってきたということです。テレビドラマとしてはあまりに遅すぎましたが、その後の怒涛の展開には、すっかり引きつけられました。
  愛子(岡本綾)が死んでしまう第9話も感動的でしたが、袖(香川京子)がキーを握る静かなトーンの第11話などは傑作でしょう。弟の借金話が軸になる第12話はつけたし程度という気がしましたが。第12話以降、これまでこのドラマにはなかった幸福な空気感に、一瞬、『あぐり』を思い出しました。一転、第四部以降は、再び芸道の世界(また、女の子、いっぱい出てきたなぁ)。
  確かこのドラマ、18話まであるんですよね(随分、中途半端な時期に終わるもんだ)。NHKが効果的な番宣を打たなかった謎はありますが(打っても『葵』は惨敗だけど)、ドラマのクオリティの高さは、最近のNHKでは一番でしょう(他が酷すぎるだけ?!)。田中美里も、彼女の限界ラインでがんばっていると思いました。松たか子だったら、という思いはありますが。脇はおおむね好調。柄に合ったキャスティングがうまく決まっていて、『葵』と同じ局の制作とは思えません。逆に、次の『柳橋慕情』はキャスティングが『葵』化してて、ちょっと怖い。

第16回
☆☆☆★
 女の性が青白くぶつかりあう様にぞくぞくしました。ピリッと引き締まった空気の中心に田中美里の品格の高さがある。実年齢時は違和感があったのに、老けてようやく落ち着くとは、やはり田中美里はすでに大物ですね。

第17回
☆☆☆★
 NHKの宮尾登美子物の格調もここに極まったという感じ。座敷に一人たたずむ苗の寂寥感に震えました。四つ星でもいいんだけど、弟や愛人の話でちょっと話がもたついたのが残念。

第18回
☆☆☆
 愛子(岡本綾)が死んでしまう第9話や袖(香川京子)が静かに息を引き取る第11話あたりがピークで☆☆☆☆級だったと思いますが、あのあたりから最終回までは大変充実していたと思います。結局は、田中美里の代表作の一つになりましたね。視聴率がよければ、もっとよかったんだけど。吹石一恵をはじめとした弟子たちにもみどころがありました。

フレンズ (TBS系金曜22:00~22:54)

製作著作/TBS 制作/TBS ENTERTAINMENT
プロデューサー/清弘誠、壁谷悌之
脚本/関根俊夫
演出/清弘誠、片山修
タイトルスチール、フォトディレクター/田代眞人
パステル画/今井みろり
音楽/城之内ミサ
主題歌/『tears』Fayray
出演/幸田順平…濱田雅功、日浦梨沙…和久井映見、三浦修…山口達也、松野美雪…竹内結子、本城直哉…宮本浩次、咲坂文緒…鈴木砂羽、八雲隆一…村田雄浩、半海一晃、白川みなみ、吉岡茂…内藤剛志、小林省一…大杉漣ほか

第1回
☆☆☆
 とても面白かった。TBSのドラマらしい、無駄のない苦味の効いた群像劇を期待させました。フジがこれやると、うそに塗り固められたようなドラマになっちゃうんですけどね。『フレンズ』を見て正気を取り戻し、今更ながら『QUIZ』はつまらなかったと実感。和久井映見も柄にあっていたと思いますし、竹内結子もミステリアスで今後に期待できそう。ただなぜ濱田、という気はしましたけど。

第3回
☆☆☆
【実態】なるほど。みんなが“フレンズ”であるための糸が一本になってきました。
【本音】強引な糸の手繰り寄せは、ドラマ的な不自然さの許容範囲内。今のところ新ドラマでは、これが頭一つ抜けているという印象。

第4回
☆☆☆
 直哉(宮本浩次)の挿話が落ちきれなかった(飛び降りただけに、まさに!!)せいか、前3回よりは落ちる印象。でも、梨沙(和久井映見)が公園でアングルを追うあたりのシーンはなんとも瑞々しく、ちょっとエリック・ロメールの映画みたいでテレビを越えてましたね。エンディング・ロールでのキャストが極端に少ないことからもわかるように、話が絞れていて無駄な話が絡まないので、今後も愉しみです。

第5回
☆☆☆
 とっても淡い!! 今回の和久井映見は久々に彼女らしく、鈍く底光りしてますね(誉めてます)。FAYRAYが歌っている主題歌、『恋におちて』に雰囲気似てると思いませんか。『恋におちて』がどんな歌だったかは忘れましたが。

第6回
☆☆☆★
 これまでのなかでももっとも出来がよかったと思います。今回の秀逸は、隆一(村田雄浩)の誕生会。あれは、思いつかない。
 ドラマの構造自体は『恋のためらい』と似ている。アンティークショップとカメラ、若い子を援助するおやじ、仕事の紹介(どっちも写真関係)、腐れ縁、片思いキャラ(塚本晋也演ずる先生)などなど。

第7回
☆☆☆
 通常、なかなか展開しない連ドラには苛立ちを覚えますが、このドラマに関しては逆で、展開しないことを望んでしまう。今回は、少し展開しすぎだったでしょうか。それでも、壁画のシーンの叙情、梨沙(和久井映見)がカメラを握るシーンの微笑、なんともいえない幸福感が漂っています。なぜ、視聴率は下がり続けていくのでしょうか。いや、こんな調子だから、下がっていくのでしょう。

第8回
☆☆☆
 切ない(もはや、形容詞シリーズと化している)。でもその悲劇性が押し付けがましくならないのは、濱田、和久井の功績でしょう。軽みがあるとでもいうか。ただ、梨沙(和久井映見)が美雪(竹内結子)に病気のことを告げてしまい、美雪が順平(濱田雅功)の家に押しかける流れには、不自然さが残り、納得できない(こういう居心地の悪い引っかかりは、『君が人生の時』でも感じた)。美雪には更なる疎外感があったほうが、ドラマとしての起伏(対立関係の維持)が出たのでは。まぁ、“フレンズ”としては、美雪も含めた新しい形で、あそこで集まりたかったわけだけど。でも、彼女はあの輪に必要ないでしょ。30代の、煮えきれない、あの集まりが私は好きでした。次回は、修(山口達也)も輪に入るのか?!

第9回
☆☆☆
 あ~っ、リリック!! 順平(濱田雅功)、梨沙(和久井映見)が写真を取り合うシーンに、日本の裏路地の美が。これは、珍しいことです。近年の日本映画で、ここまでの美しい日本を見たことがない。実際の浅草は、あぁじゃないけど、あの虚の美しさに罪はない。
 直哉(宮本浩次)、文緒(鈴木砂羽)の話もいっそう切なくていい。隆一(村田雄浩)もガス抜きで○。気になるのがやはり、美雪(竹内結子)の存在。順平の家での人間の出し入れが、やはり不自然。美雪が料理作っている時を外して、みんな遊びに来るのって、変でしょ。いや、これこそ、ドラマ的に許される範囲の、不自然な偶然性ではないか。本当は☆☆☆★をつけてもいいぐらい、今クールのほかのドラマを引き離す出来ですが、それでもやはりそこが引っかかるので、最上の☆☆☆を。

第10回
☆☆☆☆
 悲しい、おかしい、辛い、素晴らしい!! これまでの10回の中でも、ベストの一本でしょう。順平(濱田雅功)、梨沙(和久井映見)がすーっと写真撮影に行ってしまうところなんか、ちょっと書けないなぁ。普通、何かしらのクッションを描いてしまうところなんだけど、それをしない清さが大胆。大杉漣も含めて、全キャストともに素晴らしく、いよいよアンサンブルも極まってきたという感じ。今回は美雪(竹内結子)も有効だった。

第11回
☆☆☆★
 同じ病気物でも、『Summer Snow』のような泣かせに走らない節度が何より好ましいし、とにかくキャラクターへの視線のやさしさが心地よかった。心に染みる結びにも満足。濱田雅功のあの演技はどうしちゃったのか、名演です。このクールの主演男優賞は、彼以外に思いつきません。それに和久井映見!!村田雄浩!!鈴木砂羽!!演技賞独占か。
 後日談、梨沙(和久井映見)は一人で写真撮ってるような人生を送るんでしょうか?他のフレンズとは対照的な孤独感。今流行りの女流写真家に転進して、日曜美術館の司会の席を狙う?