非公式コラム

Vol.08:ファイト、風のハルカ、そして純情きらり〜その1(2006.03.25)

 『ファイト』のレビューを途中でやめてしまったことが今でも引っかかっている。ただ、意図したことではないも、レビューが止まってしまった第16週あたりがあの朝ドラのピークだったようにも思える。やはり暗すぎるという世評に素直に応えてしまったからか、その最終盤は真摯極まりなかった中盤までのテイストとはまるで違うドラマのようになってしまった。ほころびが見え始めたのは第17週、大山教授(原田大二郎)の横暴に対しての優(本仮屋ユイカ)の正論がすべてを打開してしまう展開。そういう簡単さがないとろがこの朝ドラの良さだったと思っていたのに。
 木戸バネ製作所の再開は待ちに待った展開だったはずも、それにしても啓太(緒形直人)他従業員たちのあまりな英雄的な扱いに首をかしげる。すると首をかしげたままに、啓太はとことんコメディロールになっていってしまった。中盤までで全話分の苦悩を使い果たしてしまったとも言いたくなるほどに、後半のこのキャラクターは別人のように明るかった。
 その後はおかしなところを羅列するのに事欠かない。競馬学校に通うべく、東京に行くはずだった太郎(瀬川亮)が、優の懇願で村上厩舎に残る選択も奇妙に思えたし、ジョンコのために全国から同じ日ににんじんが大量に届くくだりもいかにもという感じでがっかりさせられた。ただ、一番こけたのは、絹子(由紀さおり)が群響をバックに歌うエピソード。隆行(児玉清)が話をつけてきたということだったが、大体プロのオーケストラに対してどうやって話をつけたというのか。ただ、隆行役の児玉清の朴訥とした魅力が随所に光っていたことは書き添えないわけにはいかない。役にハマるとはこういうことを言うのだろう。(麻生結一)