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非公式コラム
text by 麻生結一

vol.7 2004.07.22

「宿命のライバル、鳥羽潤と国分佐智子の熾烈な23時台ドラマバトル!」

 新しいよるドラ『火消し屋小町』によって、鳥羽潤が夜23時台ドラマ最多出演記録をさらに更新した!ドラマDモード時代の『FLY 航空学園グラフィティ』と『グッド★コンビネーション』、連続ドラマの『ロッカーのハナコさん』と『ニコニコ日記』に、よるドラに名称変更してからでは初となる今回の『火消し屋小町』に加えて、テレ朝のナイトドラマ『e's 危険な扉』で主演、『スカイハイ』にはゲスト出演ということで、合計7本。これで、猛追する国分佐智子(ドラマDモードの『もう一度キス』、連続ドラマの『ロッカーのハナコさん』と『女神の恋』、よるドラの『帰ってきたロッカーのハナコさん』の4本にテレ朝の『独身3!!』で計5本)に再び2本差をつけて突き放した格好だ。

 予想に反してここまで本数が順調に伸びてくると、この2人のバトルを隠れ平成の名勝負と呼びたくもなってくる。テレ朝の土曜のナイトドラマ枠がなくなってしまわなければ、このバトルはもっと熱いものになったかもしれない。残念!まぁ、1本につき2日間150万円で撮れてしまう深夜バラエティの方が、1話につき8日以上、準備期間も加えれば4、5ヶ月、2000万円も予算を食うドラマよりも割がいいのは一目瞭然なれど。



vol.6 2001.10.26
「この秋一番熱い根岸季衣」

 今クールの根岸季衣は物凄いですよ。『ハート』『本家のヨメ』『ラブ&ファイト』『ひとりじゃないの』と、連ドラのレギュラーは何と4本です。しかも『ラブ&ファイト』『ひとりじゃないの』の両ドラマは、月〜金連チャン(13:00〜と13:30〜)の昼帯ですからねぇ。とりわけ『ひとりじゃないの』はMBS制作!一体、彼女に休日はあるのか?!

 加えて、それぞれのドラマでそれぞれのキャラクターをまったく異なった性格演技で披露。外堀から埋められていく演技プランが、絶妙に堂に入ってます。『ラブ&ファイト』の厳しさとお茶目さが同居した婦長(特に仮装大会ばりの合コンシーンは怖かった)、『本家のヨメ』のヨメいびりする意地悪オカッパおばさんも強烈だけど、とりわけスゴイのが『ひとりじゃないの』の白塗りぶり。こんな白い顔には、ここ数年お目にかかったことがありません。彼女こそ、このドラマの裏主役だ。もちろん、鉄拳が炸裂する護身ビクス(護身術+エアロビクス)の先生役を演じる『ハート』も負けてません。

 更には、10/10に放送された『BSスペシャル 北欧トレッキング紀行“風わたる大地 最北端の夕陽を目指して−デンマーク−”』では、体を張ってトレッキングを敢行。歩くだけでは事足りず、風車にまで乗ってぐるぐる回るははしゃぐはの大活躍。ここまでやってくれれば、もう言うことなし。前クールの川越美和に続いて、この秋一番熱いのは間違いなく根岸季衣です。


vol.5 2001.9.5
「この夏一番熱い川越美和」

 『世界で一番熱い夏』第4回の感想に、「ヤブさんの娘、みか役で登場したのは、お久しぶりの川越美和」などと書いてしまいましたが、とんでもなかったですねぇ。この夏一番熱い女優こそが、実は川越美和だったのです。

 8月13日にBSで放送された『凍える牙』(ハイビジョンでは6/23)では、覚醒剤中毒による精神障害者を熱演。出番は少なかったですけど、そのはかないくも悲しすぎる存在は強烈なインパクトを与えました。

 8月17日に放送された金曜エンターテイメント『おふくろシリーズ(17)おふくろのお節介』では、主演の浜木綿子扮する人形作家、樋口千紗子の住み込みの弟子、麻生乃里子を演じていました。これがまた、やさしさと心配りの塊のような素敵なキャラクターで、屋良朝幸演じる車椅子の青年、俊也の甘えを叱りつける場面は、このドラマの中でも非常に重要なシーンでした。あそこから俊也が変わるわけですから。

 もちろん、『世界で一番熱い夏』のヤブさんの娘、みか役は前述の二つに勝るとも劣らぬ素晴らしさ。医者である前に娘であるという苦渋。今、そういった苦渋を表現させたら、川越美和を上回る女優はいないのではないでしょうか。テレビを越えた、その苦々しい表情は、もはや専売特許ものでしょう。

 でもあの苦々しい表情も、一朝一夕に培われたものではないはず。伊達に芸名を、川越美和→初瀬かおる→川越美和と激しく変えてきたわけじゃないんでしょうねぇ。今後も苦悩する芸風に一層の磨きをかけて、そのお姿をガンガン見せていただきたいものです。

今日は「涙くんさよなら’95」が聴きたい気分。


vol.4 2001.8.31
「揺らぐマラソン中継」

 マラソンの中継スタイルが現在、揺らいでいる(実際、ハンディカムの手ぶれで、じっと画面見てると気分悪くなっちゃって)。昔は良かったですよ。第1中継車中心主義(?)による、2時間を越える天国的なまでの固定ワンカメ長回し。テオ・アンゲロプロスや相米慎二も真っ青の、最強ワン・ショットには、技巧を越えた抑制という名の技巧があった。

 そんな美しきマラソン中継に異変をもたらしたのは、サイドカーの出現。当初は、後方からランナーを抜き去っていく映像が斬新で、順位が把握できる点でも画期的だったけど、それが多用されはじめ、カットが複雑に変わるようなってから、元来の落ち着いたマラソン中継のよさは完全に失われてしまいました。

 世界陸上2001カナダの女子マラソン中継は、とりわけひどかったですねぇ。選手たちを横から抜いた映像の乱用に、全体の動きがまったく把握できず。第1中継車はどこへ行った?これがまた、引ききれてない中途半端な感じのアングルなので、見てて妙に居心地が悪い。この国際映像、レヴェル低すぎます。

 実況の状況把握の弱さにも驚かされました。たぶんレースの様相よりも、自分のメモを読むことに一生懸命になっていらっしゃったであろうことは、容易に想像できますけど。せっかくのダブル名調子(増田明美、小出義雄)も宝の持ち腐れぎみ。反対のことをいう二人の予想を、もっと煽って欲しかったのに。

 CMの多さにも辟易した。まったく興ざめです。渋井が遅れてしまったところでCMを挟むなんて、言語道断。毎度のことながら、この局のスポーツ中継には見識を疑います。

 でもレースにはしびれたなぁ。素晴らしい攻防に手に汗握る。やっぱりマラソンは素晴らしい。


vol.3 2001.4.07
「ノミネートの矛盾」

 毎回見るにつけ憤りを感じるんですが、売上トップを誇る某テレビ雑誌恒例のドラマアカデミー賞はどう考えてもおかしい。『HERO』が最優秀作品賞とキムタクの主演男優賞他、大量受賞って、そんなことは視聴率考えりゃ、おかしくもなんともないですよ。かつてなきほどの大味さを披露した水野美紀の主演女優賞ってのには個人的には異議を唱えたいけど、まぁそれだって、投票で選ばれてるわけですからOKです。

 じゃぁ、何がおかしいかって。それは、俳優部門の主演と助演の境界線の引き方です。助演女優賞を受賞した『カバチタレ!』の深津絵里って、どう考えても主演でしょう。『HERO』はキムタクの独壇場的ドラマだから松たか子の助演はいいとしても、同部門3位の『白い影』の竹内結子は、主演男優部門で第2位になっている中居正広より出番多かったぞ。

 結局はクレジットがトップになってれば主演、それ以外は助演っていう分け方してるんだろうけど、そんな分け方してたらデタラメになっちゃうんですよね。どう考えても、『カバチタレ!』は常盤貴子と深津絵里のダブル主役のドラマだもん。なのにこの雑誌は機械的に常盤主演、深津助演にしちゃってる。『2001年のおとこ運』は群像劇だけど、少なくとも押尾学はどう考えても主演だし。

 今年のアカデミー賞で最優秀助演男優賞を受賞した『トラフィック』のベニチオ・デル・トロはベルリン国際映画祭では同じ『トラフィック』で主演男優賞取っちゃったりしてるわけで、こういうねじれってありがちっちゃ、ありがちなんだけど。

 大丈夫です。我々のサイトでは厳正なる審査の結果、主演と助演の境界線を引いておりますから。『女優・杏子』の渋谷琴乃は荻野目慶子とダブル主演じゃないのかって。そこを突かれると痛いんだけど。


vol.2 2001.3.31
「名古屋はドラマ・アヴァンギャルド地帯」

 『女優・杏子』の裏でやってた『幼稚園ゲーム』も、最近のドラマ30の中では出色の出来栄えでした。どうしても暗い役のイメージが色濃いためか、最初、顔色が優れないように見えた奥貫薫もドラマの進行とともに生気を取り戻していって、後半では別人のように元気印に大変身して新境地を開拓。いじめられ役の細川ふみえも出来るところを存分に見せてくれました。お久しぶり、三国“走らんか”一夫なんかも見られたりして、これも終始、ミクロ的な話題性には事欠かないドラマでした。それにしても、お受験って大変なんですねぇ。

 メロドラマとしての完成度の高さを十二分に示した東海テレビの『女優・杏子』、ちゃちなマンガ調もデフォルメに変えながら、お受験の実態をエピソード豊富に描いた中部日本放送のプチ社会派ドラマ『幼稚園ゲーム』、話の矛盾なんてへっちゃら、ひたすらマニアを喜ばせることに終始したCKの『マボペン』(『幻のペンフレンド2001』のことをちまたではそう呼ぶらしい)。やっぱり、各キー局の名古屋ローカル制作のテレビドラマって、マニアックだと改めて確信しました。とにかく、どのドラマも並じゃないんだよね。

 他レビュアーの賛同を得られず、『女優・杏子』や『幼稚園ゲーム』を作品賞にノミネートできなかったことが残念。まぁ、これ毎日リアルタイムで見てた私のほうこそどうかしてるのかもしれませんが(しかも同じ時間じゃないか)。


vol.1 2001.3.30
「虚実綯い交ぜのスゴみ」

 通して見た人ならきっと賛同してくれることでしょう。『女優・杏子』がいかに凄かったかということに。芸能界内幕物との触込みに、最初は暴露ネタの羅列ドラマかぐらいに高を括ってたんですけど(事実、最初はそうだった)、中盤以降は加速度的にヒートアップしていくその展開に完全にはまってしまいました。ドラマにはまるってこういうことなんだと、久々に実感した次第です。

 この作品には、ゴールデンのドラマのような弱腰さは一切なし。とにかく攻めて攻めてというメロドラマの鉄則がビシバシと決まりまくっていました。そんなドラマツルギー的な部分もさることながら、私を毎回驚かせてくれたのは、そのテクニカルな部分でのレヴェルの高さです。一つ一つのアングルを取ってみても、おざなりさは皆無。その練り上げぶりは尋常じゃなかった。

 言いえて妙なキャステイングも最高。荻野目慶子と渋谷琴乃の激突って、普通思いつきませんよ。烈火の如き荻野目慶子に対して、常にその火消し役となるのが渋谷琴乃。そんな二人の立場が最後の最後で微妙に入れ替わっちゃうところなんか、しびれたなぁ。放送半ばあたりだったでしょうか。以前のスキャンダル騒動から五社英雄監督が救ってくれたという逸話を語った荻野目さんのインタビュー記事を読むにつけ、杏子に荻野目慶子自身がうっすらと重なり合って映りました。女優が女優を演じるって、虚と実の狭間を行き来することなんですよね。渋谷さん、遅ればせながら、ご出産おめでとうございます。

 このドラマの原作者は、言わずもがなのうつみみどりさん。そんな彼女が司会をつとめる『いい朝8時』(毎日放送)に荻野目慶子がゲスト出演したときは、これまた凄かったなぁ。系列違いなんておかまいなしにガンガン番宣してしまう様は、ドラマを地で行く大物MCのなせる技(『幼稚園ゲーム』を制作するCBSに対するMBSのいやがらせ?)。そういえば、最近めっきり見かけなくなったキンキンも杏子の父親役でいい味出してたなぁ。

 めったに言わない台詞を吐きたくなりました。続編が見たい。『女優・杏子2』が無理なら、『料理人・友子』でもいいですから、東海テレビさん、よろしくお願いいたします。




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