非公式コラム

Vol.01:虚実綯い交ぜのスゴみ(2001.03.30)

 通して見た人ならきっと賛同してくれることでしょう。『女優・杏子』がいかに凄かったかということに。芸能界内幕物との触込みに、最初は暴露ネタの羅列ドラマかぐらいに高を括ってたんですけど(事実、最初はそうだった)、中盤以降は加速度的にヒートアップしていくその展開に完全にはまってしまいました。ドラマにはまるってこういうことなんだと、久々に実感した次第です。
 この作品には、ゴールデンのドラマのような弱腰さは一切なし。とにかく攻めて攻めてというメロドラマの鉄則がビシバシと決まりまくっていました。そんなドラマツルギー的な部分もさることながら、私を毎回驚かせてくれたのは、そのテクニカルな部分でのレヴェルの高さです。一つ一つのアングルを取ってみても、おざなりさは皆無。その練り上げぶりは尋常じゃなかった。
 言いえて妙なキャステイングも最高。荻野目慶子と渋谷琴乃の激突って、普通思いつきませんよ。烈火の如き荻野目慶子に対して、常にその火消し役となるのが渋谷琴乃。そんな二人の立場が最後の最後で微妙に入れ替わっちゃうところなんか、しびれたなぁ。放送半ばあたりだったでしょうか。以前のスキャンダル騒動から五社英雄監督が救ってくれたという逸話を語った荻野目さんのインタビュー記事を読むにつけ、杏子に荻野目慶子自身がうっすらと重なり合って映りました。女優が女優を演じるって、虚と実の狭間を行き来することなんですよね。渋谷さん、遅ればせながら、ご出産おめでとうございます。
 このドラマの原作者は、言わずもがなのうつみみどりさん。そんな彼女が司会をつとめる『いい朝8時』(毎日放送)に荻野目慶子がゲスト出演したときは、これまた凄かったなぁ。系列違いなんておかまいなしにガンガン番宣してしまう様は、ドラマを地で行く大物MCのなせる技(『幼稚園ゲーム』を制作するCBSに対するMBSのいやがらせ?)。そういえば、最近めっきり見かけなくなったキンキンも杏子の父親役でいい味出してたなぁ。
 めったに言わない台詞を吐きたくなりました。続編が見たい。『女優・杏子2』が無理なら、『料理人・友子』でもいいですから、東海テレビさん、よろしくお願いいたします。(麻生結一)