純情きらり

最終週「いのち、輝いて」(2006年9月25〜30日放送)


 今さらながらに思い起こされる第1週、きらきらと輝いてスタートしたこの朝ドラ。桜子が美山加恋から宮崎あおいに引き継がれる鮮やかさを目の辺りにして、きっとこのヒロインは半年間を通じて大いに羽ばたいてくれるものと予想したが、その終焉がまさかこんなにも残念な結果に終わろうとは想像できなかった。
 このドラマの制作者たちは、どうしても桜子にピアノを弾かせたくなかったのだろう。桜子の発病はそうとしか解釈できない。その結核の描き方にしても、あまりにも中途半端に思えた。私の祖父は戦中に結核で亡くなったのだが、その若くしての晩年は隔離病棟から外に出られず、面会もかなわなかったと聞いている。戦中と戦後では状況は若干違うのかもしれないが、ちょくちょく出歩くばかりか、子供たちと壁越しで過ごしてしまう桜子のあり様にはやはり疑問だけが残った。
 もちろん、リアリティを突き詰めてばかりではドラマにならないだろうけれど、であるならばせめて自作自演のリサイタルは開いてほしかった。そういう到達点こそが、帯ドラマならではの楽しみ、喜びではあるまいか。比較してしまわざるを得ないのだけれど、そのあたりの欲求を十二分に満足させてくれた『美しい罠』にはいっそう感嘆した。あのドラマには、終始見続けたもののみに与えられるカタルシスがあった。最終週にして、あの酷烈なタッチは特筆に価する。
 この朝ドラは、日本初の女性ジャズピアニストの半生を描いていると前宣伝で聞いていたはずだったも、それは私の聞き違いだったのだろうか。それとも、使用楽曲の版権の問題からDVD化できない『てるてる家族』の反省が、こういう形で示されたということか。どちらにしてもこの半年間において、桜子が音楽家であった時間はあまりにも短かった。
 反対に、画家たちの話はのべつ分厚かった。最後の最後に、またしても展覧会は開かれるのか。冬吾(西島秀俊)が死にかけちゃう話にいたっては、何のことやらさっぱりわからない。まさか冬吾まで死んじゃうの、とハラハラさせたつもりだとするならば、もういい加減にしていただきたい。桜子の担当医役でフィニッシュのみに平田満が出てくる豪華版のキャスティングも、平田満ならば再放送枠『君の名は』での活躍ぶり(あまりにも煮えきれない男を好演)で十分である。
 それにしても残念な朝ドラだった。桜子には羽ばたけるチャンスが幾度となくあっただけに、口惜しい気がする。そして、放送前からコラムで褒めちぎってしまったことを、ただただ反省するばかりである。(麻生結一)

第25週「夢に見た演奏会」(2006年9月18〜23日放送)


 人知れず逝くというのはある種の美学だと思うが、徳治郎(八名信夫)は人知れずすぎ!あれだけ出番も口数も多かった徳次郎に対するこの扱いはどうにも腑に落ちない。大体、ここで徳次郎を逝かせてしまう意図は何だったのだろう。泣かせようとしたわけではないことは間違いないとして。
 桜子(宮崎あおい)と達彦(福士誠治)の結婚式に途中から来て、途中で帰った磯(室井滋)のデタラメぶりにもひっくり返った。桜子の磯の間柄って、その程度のものでしたっけ?
 あれから1年3ヶ月の昭和22年7月。慌しい中にも幸せな毎日送っちゃってる山長話再びって、もういい加減この話は飽きたでしょ。戦後すぐの混乱の空気感をみせつつ、

「お前が何をするかだ!」

と皆に問う『君の名は』の志の高さと比べるならば、『純情きらり』は色ボケ以外の何ものでもない。
 西園寺先生(長谷川初範)のお姿を久々に拝めたのはうれしかったが、桜子の作曲に魅せられて、という展開はまったくいただけない。東京音楽大学受験時に圧倒的な才能を示していたならばまだしも、その後趣味程度にしか練習も勉強もしてない桜子が、作曲の才能を開花させるという話は受け入れ難いし、実際の桜子の曲がポピュラー、シリアスのどちらにしても、戦後すぐの音楽シーンの息吹を感じさせないのも興ざめだ。
 斉藤先生(劇団ひとり)の再登場に、まだドラマが立派だったころの最初期に思いをはせたりもしたが、よくよく考えてみると、斉藤先生が不自然にドラマからフェイドアウトした第5週のあたりから、すでにこの物語的崩壊ははじまっていたのかもと振り返ったりしてみる。(麻生結一)

第24週「あなたがここにいる限り」(2006年9月11〜16日放送)

☆★
 ついに念願のジャズピアニストデビューを飾った桜子(宮崎あおい)。ここにいたる展開が少なくとも1ヶ月半は遅すぎた。遅すぎたけれど、もはやそれは言うまい。日本人の小娘にジャズの何たるかがわかるのかと、客の米兵から飛ばされる野次!まさに夢にまで見た『純情きらり』の理想形が、ここについに果たされているのだから。
 ところが、仙吉(塩見三省)から桜子の戦中奮闘記を聞かされた達彦(福士誠治)が演奏会場に駆けつけると、桜子が持ち前のジャズフィーリングを復活させて、米兵からも拍手喝さいを浴びる段になって、だんだん不安になってくる。こんなにも容易に桜子はジャズ的達成感を味わっていいものか?
 一緒に演奏しているジャズメンたちの自己紹介も皆無とは、いったいどうしたことだろう。画家の話をやる時間があったのなら、むしろそういったところこそを手厚くやるべきではなかったか。嫌な予感は的中して、達彦の後押しにも関わらず、桜子はジャズ断念を宣言。まったくこのドラマは桜子にどうしても音楽をやらせたくないらしい。
 突然、東京から訪ねてきた冬吾(西島秀俊)の存在もまた、ドラマのピントをボケさせる。マージャン三昧の笛子(寺島しのぶ)はもはや問題外だが、まだ戦争は終わっていなかったのが、妻・笛子の存在によるなんて言ってしまう冬吾の物言いは、あまりに不謹慎だ。達彦のPTSDのエピソードの舌の根も乾かぬうちに、何たる実感のなさだろう。
 唯一の収穫は、ヒロを演じるブラザートムがだんだんすまけいさんに見えてきたことぐらいだろうか。(麻生結一)

第23週「思いがけない帰還」(2006年9月4〜9日放送)

☆★
 唐突に金を借りようとしたヤスジ(相島一之)が桜子(宮崎あおい)をなじる以上にヤスジの方がよほど人が変わってしまっていたり(キャラクターが乱高下を繰り返すこのドラマ的には、ヤスジの変容など一貫している方かもしれないが)、八重(原千晶)の夫に戦死の公報が届くも、物語としてそこをフォローしていなかったためにやり過ごすしか方法がなかったりと(チラッと一回登場したが、果たして誰だったか?)、困惑の真綿が早々に視聴者の首を絞め始めるが、桜子が代用教員になったのを契機に再びドラマに音楽が戻ってきた!
 子供たちが笑顔で唱歌のジャズアレンジを桜子におねだりするあたりの躍動こそがこのドラマの真骨頂である。頼むからこの時よ続いてくれとひたすらに懇願していると、躁状態の笛子(寺島しのぶ)が贅沢三昧ぶりをひけらかして有森家に乱入。これにはまたまたやってくれたなと苦笑するしかない。冬吾(西島秀俊)の絵がバカ売れしてることを言いたかったんでしょうけど。

桜子「お姉ちゃん、変わったね」

ここは正確に言えば、「“また”変わったね」である。
 そこに秋山(半海一晃)が訪れ、桜子に進駐軍相手のジャズバンドのピアノ担当を打診。苦節5ヶ月半、ついにドラマが本筋に突入してくれるのかと大いに期待するも、間髪おかずについに達彦(福士誠治)が復員。ただ、桜子との再会も大感動とまではいかないのは、桜子の素行の悪さ=恋多き女ぶりに尽きるかもしれない。達彦が戦争によるPTSDで苦しむ中、再びドラマから音楽は遠ざかっていき……。
 基本的な疑問なのだけれど、ピアノのみならず、いかなるジャンルの大家でも、日々練習しないとその腕は鈍るもの。冬吾は戦前、戦中と常に描き続けてきたので、その点で今の売れっ子ぶりは納得のいくところか。ところが、この未来のジャズピアニストさんはどうだろう。練習してる姿などさっぱり見えないのに、毎度ガーンとピアノで決めまくってくれる。ただ、今さらそこに疑問を呈してもどうしようもないので、実は戦中も沈まない鍵盤ででも影ながら練習していたということにしておいて、もうしばらくの辛抱ということで見続けることにしましょうか。いずれ達彦が箪笥の中から血染めの沈まない鍵盤を発見してくれるのを祈るのみだ?!(麻生結一)

第22週「さよならを越えて」(2006年8月28〜9月2日放送)


 戦時下に生きる恋多き女の物語だったのか、この朝ドラ!まったく開いた口がふさがらないとはこのことだ。桜子(宮崎あおい)と冬吾(西島秀俊)が共有してきたこれまでの膨大な時間の中で、何がしかの伏線でもあったならばまだしも。いや、すべては突然に起こる。それがこの朝ドラの身上なのだから、そういうデタラメが続出しても、もはや致し方なしとあきらめるしかないか。
 陽から陰へと性格を激変させた笛子(寺島しのぶ)も、何を目的にわざわざ泊りがけで桜子と冬吾を2人きりにするわけ?音楽のドラマを期待する気持ちも、『不信のとき』の出来損ないのようなものを見せられ続けるにつけ、もはやこれまでとなえてしまう。
 登場人物一人一人の心情が手に取るようにわかる『君の名は』とは雲泥の差である。『君の名は』だって、万全の朝ドラではないというのに。これまでにもいろんな戦中を描いたドラマを見てきたが、これほどまでに戦時下を感じさせないドラマも珍しい。すべてが残念に思える。(麻生結一)

第21週「生きる歓び」(2006年8月21〜26日放送)

☆★
 看護婦として奮闘する杏子(井川遥)は、空襲で妻子を失くし、負傷した鈴村(高橋和也)に再会。

杏子「ご無事だったんですね」

どう見ても全然無事じゃないと思うのだが……。そして杏子は家族を捨てた宣言に至る。唐突だ。
 磯(室井滋)と和之(荒川優)の親子の名乗りも、いきなりに血液検査結果持ち出すのか。変だ。
 桜子(宮崎あおい)がただ一人で枯れ木の下から救い出した冬吾(西島秀俊)は、その惨状を目にしてしまったことで絵が書けなくなってしまう。そんな冬吾の状況は、妻の笛子(寺島しのぶ)には桜子からの伝聞で伝えらえること多々。達彦(福士誠治)の生死が定まらぬ間に、桜子は冬吾に恋って、これはひどすぎる。冬吾と結婚する以前の、あの生き生きとしていた笛子もどこへ行ってしまったのか。続けざまに見ることで、『君の名は』のデタラメのダイナミズムが輝いて見えるとは。(麻生結一)

第20週「来ぬ春を待ちわびて」(2006年8月14〜19日放送)

☆★
 ここ最近の展開には首をひねるばかりだけれど、今週もまた奇妙が続出した。まずは戦況とはあまり関係のないところでの、かね(戸田恵子)の死。ここはこの朝ドラには珍しく、じっくりと粘って見せてくれたが、ドラマ当初のかねのキャラクターと今のかねとにどうにも整合性を見い出せず、戸田恵子の熱演をもってしても共感が薄くなってしまった設計ミスはいかにも残念である。
 最後には桜子(宮崎あおい)と山長愛で同調するタネ(秋山菜津子)にしても、だったらそれまでの悪代官キャラはなんだったのかといいたくなるし。『不信のとき』にて秋山菜津子が演じている石田純一ふんする夫ににらみを利かせる妻役は、悪代官キャラもあのベタドラマには似つかわしいのかもしれないが。
 それにしても、この相続争いの話は長かった。戦中の話の、しかも音楽のドラマの中でやるべきエピソードだったか疑問だけれど、事態の収拾が桜子のトップダウンで片付けられてしまうのも雑だった。従業員への演説も空虚につき、心には響かない。
 達彦(福士誠治)の死の有無をサスペンスの道具にするのもやめていただきたい。ここまでにつむいできた桜子と達彦の美しき関係性がこれでは台無しになりやしないか。次週へのつなぎエピソードは東京大空襲だったわけだが、瓦礫の下敷きになった冬吾(西島秀俊)を桜子が奇跡的に発見!さらにはドサクサにまぎれて愛の告白?! 同じデタラメでも、『君の名は』のデタラメは15年の時を経て見るとなかなかにダイナミックで楽しめる。(麻生結一)

第19週「ショパンよ母に届け」(2006年8月7〜12日放送)

☆★
 どうにもおかしいのは、長らく山長の仕事をほっぽりだして東京で暮らしていた桜子(宮崎あおい)が、いったいどのタイミングで「お母さん」と呼んでしまうほどにかね(戸田恵子)と密になれたかという点。かねの妹・タネ(秋山菜津子)とその夫・利雄(六角精児)が新たにドラマに加わるも、音楽に関する物語の中で帳場に座る座らないの話を繰り返されても当然しっくりこない。副題 が「ショパンよ母に届け」だったので音楽も絡む話を期待したのだが、完全なる肩透かしを食わされた格好だ。
 杏子(井川遥)がネタの発端というのもいかにも象徴的だが、達彦(福士誠治)が戦死したか否かの憶測でしかない扱いも、あまりにも乱暴ではないか。いつの間にかかねの看病を開始していた達彦の又従兄弟・光子(田辺愛美)はどこから山長に忍び込んだ?! こう奇妙な展開が連打されると、あまり重要じゃないディテールまでも気になってくる。(麻生結一)

第18週「いつかまたピアノは響く」(2006年7月31〜8月5日放送)

☆☆
 桜子(宮崎あおい)の音楽的初仕事にスポットがあたったこともめでたいけれど、ドラマに音楽自体が戻ってきたのはさらにめでたい。このような「音楽が温かい小さい火をともす」お話こそがこの朝ドラには似つかわしいと思うし、現に最初期はそれが尽くされていたからこそ面白かったのだ。
 秋山(半海一晃)の不在により、桜子が単独で編曲した「故郷」がラジオから流れてくるシーンが、ここ最近週ではもっとも充実した出来ばえだったのもあまりにも当然のことだ。結局はピアノ線が供出されてしまうことによって、ピアノから音が失われてしまうも、ピアノがあるときにはそれほどでもなかったのに、なくなるや急にピアノに執着されても、という意地悪な見方をしたくなるほどに、早々音楽の香りはまたもや消え失せてしまった。どんなに音楽の道が閉ざされようとも、それに執着しようとするヒロインの姿を垣間見せてくれるならば、この時代を描く意義深さも感じられようものだが……。
 昭和18年夏、戦況が激しさを増す中、八重(原千晶)の恋人にして画家の守田(若林久弥)が出征してしまう。ところで、守田って誰でしたっけ?マロニエ荘住人で唯一単独エピソードがなかった八重がついにフィーチャーされるも、その恋人が誰だかわからないでは困惑するのみである。
 隣組長の鈴村(苅谷俊介)の息子にして傷痍軍人の浩樹(高橋和也)と、恋愛アドバスももはや達人の域に達しつつある杏子(井川遥)との淡い恋が速攻で終焉してしまう展開は、今までもそうであったがゆえに、もはや驚かされることもない。(麻生結一)

第17週「希望は捨てません」(2006年7月24〜29日放送)

☆★
 めっきり感心できる点が少なくなってしまったこの朝ドラにあっても、以前と比べての笛子(寺島しのぶ)のやつれた感じはぱっと見ですごかった。とはいえ、笛子と冬吾(西島秀俊)の子供の目の病気の話はどうにも唐突に感じてしまう。まぁ、もはやこれぞこの朝ドラの定番と化してきてるような気もするが。
 時代も戦争に深まり、ドラマにも陰湿な空気が流れ始める。それは必然としても、やはり桜子(宮崎あおい)の主体的なお話が少なすぎるのはどうしたことだろう。西園寺(長谷川初範)と秋山(半海一晃)が嘆く音楽の制限にしても、桜子は自ら音楽を放棄しているのだから、もはやその共感の蚊帳の外ではないか。せっかく痛切に響くシチュエーションを有したのに、残念である。(麻生結一)

第16週「磯おばさんの秘密」(2006年7月17〜22日放送)

☆☆
 太平洋戦争開戦から1年3ヶ月たった昭和18年3月からドラマは再スタート。桜子(宮崎あおい)は、味噌だけでなくいまや醤油も作っている山長のすでに主軸に。いったん狂いはじめた歯車はそう簡単には修正されそうにない。
 もはやマロニエ荘のまかないおばさんと化している笛子(寺島しのぶ)は出産間近もすでに2人目とは、展開が早いというよりも、もはやショートカットと呼ぶに近いか。さらにはお産時に杏子(井川遥)不在で、桜子と磯(室井滋)が取り上げるって、そんなバカな。
 この週の主眼は、戦時下にあって展覧会を開こうとする新美術協会の面々の苦闘で、確かにそれは描かれていたとしても、このドラマは音楽についての物語ではなかったのか。のちのちに描かれるとしても、どうしてまず美術がくるのか、理解に苦しむところ。またこの展覧会の話にしても、戦争画を描くを迫られ書いているヤスジ(相島一之)の心情には触れられていたも、戦争が笑いを拒絶する様を切々と描いた『心はいつもラムネ色』のようなシビアさと反骨はそこにはなかった。磯(室井滋)が実の息子・和之(荒川優)に名乗りをあげない潔さは男前だったけれど。(麻生結一)

第15週「別れのコンチェルト」(2006年7月10〜15日放送)

☆☆
 若女将・桜子(宮崎あおい)、山長の危機救う、というもっとも望ましくない展開に第15週は費やされてしまった。東京に戻る云々で苦悩する冬吾(西島秀俊)と笛子(寺島しのぶ)の心情ももう少し大切にしてほしかった。杏子(井川遥)が東京へって、いつから杏子はドラマ的便利使いに。キヨシ(井坂俊哉)に赤紙が着てみると、大店の長男である達彦(福士誠治)との順番が逆なのではという疑問も沸いてくるのだが、そのあたりの詳細はよくわからない。とりあえずは、桜子が出征前の達彦と会えたのはよかった。(麻生結一)

第14週「若女将の試練」(2006年7月3〜8日放送)

☆☆
 何の前触れもなく唐突なエピソードが挿入されて、その週の間に解決してしまうという、朝ドラにもっとも似つかわしくないパターンがこの週でも繰り返された。かつて山長のまかないをやっていたタミ(阿知波悟美)にこの短期間で近しさを感じるには、いかにも難しい。
 リアリティを欠くほどにヒロインがリーダーシップを持って難題を収拾してしまう展開もまったくもって感心できない。いくらタミのフォローがあったとはいえ、国会議員を接待するための台所を桜子(宮崎あおい)が取り仕切れようか。味噌屋修行を桜子に課すかね(戸田恵子)のパーソナリティにも釈然としないところが多い。比較すると、一貫して冷徹な『君の名は』の徳枝(加藤治子)が輝いて映る。(麻生結一)

第13週「私には今しかない」(2006年6月28〜7月1日放送)

☆☆★
 有森家からピアノがなくなってしまい、音楽の匂いまでもがドラマから消えさってしまって早一年の昭和15年夏の設定から。序盤は桜子(宮崎あおい)と達彦(福士誠治)の再恋愛模様が中心となって新鮮味はないが、達彦に召集令状が届いたことをきっかけに、久々にドラマに音楽が戻ってくる。ベートーヴェンのピアノソナタ「熱情」には、達彦が己の心情をその演奏に託す。売り払ったピアノを桜子のために買い戻してくれた達彦の、「音楽を捨てるな」というメッセージにも視聴者として心強くなれるところ。
 そして桜子のピアノ演奏会として催された事実上の結婚式では、桜子と達彦がリストの『愛の夢』第3番を連弾。引き裂かれる二人の状況をロマンティックに包んでみせてくれた。この朝ドラのよさは何をおいても音楽である。戦争の影が迫ってくるほどに、音楽の香りをドラマから消さないでほしいと切に願うばかりだ。
 と思った矢先、瞬間的にいい人になったかね(戸田恵子)が再び元々のかねに戻って、山長で桜子に花嫁修業を強いる?またまた嫌な予感がしてくる。(麻生結一)

第12週「絆が試されるとき」(2006年6月19〜26日放送)

☆☆
 さして努力する姿も見せずに桜子(宮崎あおい)は東京音楽学校に合格。これでようやっと東京篇に戻るかと思わせるも、小鈴(早良めぐみ)の赤ちゃんをとりあげたとばっちりから、暴力夫に逆恨みされた杏子(井川遥)が治安維持法違反の汚名を着せられて特高に捕まったり、笛子(寺島しのぶ)が冬吾(西島秀俊)と学校の二者択一を迫られたりといろいろあって、結局桜子は進学をあきらめて家族のために働くことを宣言する。そんな桜子に対して、有森家の人々は夢をあきらめるなと応援。ちょっと前と真逆の展開に、ちょっと変な気持ちになった。冬吾(西島秀俊)の兄が有力代議士で、そのおかげさまをもって杏子が早々に無罪放免になる筋立てを筆頭に、展開が時折唐突過ぎるように思えたけれど、それだけ唐突な時代だったとも言えるかもしれない。このあと、いっそうつらい状況に追い込まれていくのだろうか。(麻生結一)

第11週「キューピッド志願」(2006年6月12〜17日放送)

☆☆★
 浪人中にもかかわらず、さっぱりピアノを練習しなくなった桜子(宮崎あおい)は、文字通りの「キューピッド志願」ぶりでドラマの黒衣に。代わってのこの朝ドラの中心人物は冬吾(西島秀俊)に、もしくは冬吾とその女たちになってしまった。果たして受験は大丈夫?どう考えても、去年の方が勉強してたでしょうに、とこのヒロインのことが心配になりつつも、桜子の陽動作戦に引っかかった笛子(寺島しのぶ)、さらには冬吾の見合い相手にして、まさしく無理心中の相手だった御崎しま子(光浦靖子)らも加わって、マロニエ荘で展開される舞台劇調もそれなりに盛り上がったのは、やはり冬吾が魅力のあるキャラクターとして描かれているからだろう。
 再び岡崎に舞台を移してからは、「冬吾と笛子」というタイトルで別ドラマを制作してほしいほどに、さらにこの二人が際立ってくる。喫茶マルセイユの前で冬吾が笛子に強引にキスするシーンは特に印象に残る。
 河原(池田鉄洋)との離婚以降、まったく目立たなかった杏子(井川遥)は飛び込み妊婦・小鈴(早良めぐみ)の赤ちゃんを取り上げて、その変貌ぶりをちらっと垣間見せる。そのあたりに比べると、桜子のエピソードはやはりボリューム不足。達彦(福士誠治)に見返りのない愛を説く冬吾がドラマを締めて、やっぱりこの第11週は冬吾のためのものであったと思わせた。(麻生結一)

第10週「夏の日の別れ」(2006年6月5〜10日放送)

☆☆★
 達彦(福士誠治)の音楽学校をやめて、山長の当主となるという決意は、同時に音楽を捨てきれない桜子(宮崎あおい)との別れを意味していた。二人の蜜月が短かかろうことは、クイックな展開を身上とするこのドラマ的には順当にも思えるが、それにしてもまた早いですね。
 この第10週は桜子=達彦ラインこそがメインストーリーだったも、むしろ面白かったのは、笛子(寺島しのぶ)=杉冬吾(西島秀俊)ラインの方。『スターウォーズ』の旧シリーズだって(そういう言い方でいいんでしょうか)、ルーク・スカイウォーカーの話よりもハンソロとレイア姫の恋愛話の方が断然面白いように、神妙なメインストーリーよりも軽妙なサブ的ラブストーリーの方が輝いているパターンは映画、ドラマに関わらず、古今東西の物語によくあることで、この第10週もまさにそれだった。
 東京篇でのもっとも含蓄のあるキャラクター・冬吾と、岡崎篇でもっとも人間臭い笛子が結びつけば、それで面白くならないはずがない。冬吾が岡崎に来た理由はそれなりにあるにせよ、有森家に居ついてしまう展開は強引にも思えるが、二人の時間がここまで微笑ましければそれも大した傷には感じられない。ただ、クイックな展開がここでも適用されるとすると、この二人の関係性も早々解消してしまうのだろうか。もちろん、長々と同じことを繰り返すよりは、クイックにやってもらう方を願うけれども。(麻生結一)

第9週「今宵、君と踊ろう」(2006年5月29〜6月3日放送)

☆☆★
 達彦(福士誠治)の母・かね(戸田恵子)がかくも突然にマロニエ荘に現れて、桜子(宮崎あおい)と格闘に至ったかと思ったら、今度は達彦の父・拓司(村田雄浩)も登場して大騒動に。これまでかねの尻に敷かれっぱなしで存在感が希薄だった(それもまた面白かったのだけれど)拓司は達彦に差しでアドバイスを送って、ついに含蓄のあるところを見せるも、その矢先に危篤状態の一報。
 第2週では桜子(宮崎あおい)の父・源一郎(三浦友和)が、第5週では斉藤(劇団ひとり)が何の前触れもなくドラマを去っていっただけに、今回ももしやと思っていると、拓司もそのままに逝ってしまった。これがこの朝ドラの方針なのだろうけれど、そのキャラクターが熟成寸前にドラマからアウトさせてしまうのはあまりにももったいない気がする。
 軍歌の作曲要請に苦しむ西園寺(長谷川初範)と、実は25年前、西園寺が指揮していた大阪の少年音楽隊における一番弟子だった秋山(半海一晃)との絡みもこの週のみどころだった。「皇国ノ民」を秋山が成り代わって演奏する場面は時代背景を色濃く映したエピソードとして印象に残ったが、どうしても演奏できなかった西園寺が退いてから、秋山が駆けつけるまでのそれなりの時間、軍人たちがおとなしく待っていたかと思うと、ちょっと変な気もした。
 独立絵画賞を受賞した冬吾(西島秀俊)へのライバル心から、八州治(相島一之)は大陸への取材旅行を受ける。その八州治の壮行会になぜか西園寺が!秋山とのジャムセッションが雰囲気あったから、別にいいんだけど……。(麻生結一)

第8週「初めての連弾」(2006年5月22〜27日放送)

☆☆☆
 前半は笛子(寺島しのぶ)と徳治郎(八名信夫)が、後半にはかね(戸田恵子)がマロニエ荘に現れて、いつも以上ににぎやかしくなった第8週にあって、とても心に残るエピソードが二つあった。一つ目は、その前提の説明に大いに時間がかかる。達彦(福士誠治)に思いを寄せるハツ美(たくませいこ)にせがまれて、3人で銀座の喫茶店を訪れた桜子(宮崎あおい)がそこで偶然にも再会したのは、東京の出版社で編集の仕事をしている、もう立派な職業婦人然な薫子(松本まりか)。逃げるように岡崎を去った薫子だけに、もう少しドラマティックな再登場になるのかと思ったが、その役目はこれまた偶然に裁判所で再会したらしい斉藤(劇団ひとり)との引き合わせ役だった。ここで桜子と斉藤が再会できないくだりは、斉藤の思いもしみてきていいのだけれど、偶然の再会がW仕立てではあまりにも取ってつけたようである。あと、かつて達彦にお熱だった(死語?)薫子の痕跡さえないのはどうしたことだろう。もはや薫子はイデオロギーにこそお熱ということか?
 心に残ったエピソードはこれを受けてのところ。同じ相手に二度失恋して涙していた桜子(宮崎あおい)は、更なる人生勉強が必要と冬吾(西島秀俊)に連れ出されて洋画を初体験する。『舞踏会の手帖』『オーケストラの少女』をはしご見する桜子のスクリーンを見つめる眼差しに、その心が解き放たれる様がじわじわと伝わってきてとてもいい気分になれた。人生の苦々しさは『舞踏会の手帖』に勝るはずがないも、桜子は『オーケストラの少女』の方を気に入った模様。鶴の巣篭もり(=年に2、3回大作制作のために部屋に閉じこもる)に入った冬吾の一言一言は、いつもながらに心に響く。
 もう一つは、るり子(初音映莉子)と松尾(村杉蝉之介)が急先鋒として、ダンスホール通いを糾弾されての退塾通告書を突きつけられる桜子が、西園寺(長谷川初範)からもらったチャンスを見事に生かして、アドリブ演奏でみんなをぎゃふん(死後?)と言わせる場面。

西園寺「彼女は非常に耳がいい」

との桜子の才能を認める言葉は、第2週冒頭からのエコーだ。やはりこのドラマは音楽が絡むと俄然輝く。夕日に照らされて、ニューオリンズのピアノを爪弾く桜子も同様。「やはり好きなことはやめられない」というシンプルな動機が、このドラマを常に凛としたものにしてくれている。
 桜子と達彦の急接近はちょっと変わったキスシーンもうれしはずかし(死後?)にいい感じ。「きらきら星変奏曲」の連弾に(ちょっと前に『毎日モーツァルト』で取り上げられました)、その日のきれいな星空が想像できるようだった。(麻生結一)

第7週「貧乏なんか怖くない」(2006年5月15〜20日放送)

☆☆★
 昭和13年4月、西園寺(長谷川初範)のピアノレッスン初日から第7週は元気よくスタート。東京音楽学校の受験の時から嫌味な感じだった岩見沢るり子(初音映莉子)が西園寺宅の待合室で遭遇するなり、桜子(宮崎あおい)に対する嫌がらせを本格化させ始める。こういうライバル役は強力な方が盛り上がるので、ドンドン嫌味にがんばっていただきたい。西園寺の授業も予想に違わず、ピアノのテクニックだけを教えるのではないスタイルに期待感がある。時間いくらのレッスン料と発想してしまう貧乏人が教えを請うには、演奏途中に転寝されたり、お茶飲んだりのゆったりした時間の流れは優雅過ぎるかもしれないけれど。
 貧乏人は音楽家になれないと言い放たれたるり子への反発心から、連日連夜ピアノを練習するのだけれど、笛子(寺島しのぶ)から父・源一郎(三浦友和)の一回忌に帰ってこなくてもいい旨を伝える絶縁状が届いたことも追い討ちに、早々スランプに陥る桜子。見かねた冬吾(西島秀俊)が連れて行ってくれたダンスホール・ニューオリンズで、桜子がジャズのビッグバンドの演奏に遭遇するシーンがこの週のピークだった。曲もセントルイスブルースで、源一郎とマサ(竹下景子)が久々に回想で登場する。
 週半ばからは、ニューオリンズのダンサーにして、引退して妾になる決意を固めたマリ(椋木美羽)の話がすべてになるのだが、朝ドラの性質上からいっても、一つのエピソードをその週内で集中的に完結させるやり方は不向きだと思うのだが。その男との関係性も伝聞が多くて今一歩伝わらないために、マリの境遇が共感の域に届かないままに、桜子の説得もあって翻意してしまうのではあまりにも普通だ。週をまたいで別エピソードと絡めるやり方が人間関係が複雑になりすぎるためと敬遠させているのであれば、残念なことである。
 マリは見た目はダンサーっぽいのだけれど、ダンスをするとそれほどのダンサーに見えないのは、売れてないという設定にはピッタリということか。指名がかからずに椅子に一人座る雰囲気の方がむしろ素敵だったり。マリの境遇に身近らを重ねてという説明はあったのもの、桜子のマリへの固執ぶりもピアノの練習がおろそかになるようでは、達彦(福士誠治)ならずともマロニエ荘に引っ越して、意見したくなってくる。
 マリは引退を回避したはいいものの、あそこまで指名がかからないとこれからどうやって稼ぐんでしょうね。冬吾は津軽訛りも手伝って、存在感を深めつつある。(麻生結一)

第6週「サクラサク?」(2006年5月8〜13日放送)

☆☆★
 いよいよ桜子(宮崎あおい)は東京音楽学校受験のために東京へ。岡崎→東京間が汽車で6時間とは、当時からすでにそれほど遠い場所ではなったんですね。同行した達彦(福士誠治)にライバル心むき出しで終始ピリピリするあたりは、ケンカするほどに仲良くなっていく男女の仲の定番中の定番でいう感じでいい雰囲気。
 マロニエ荘の住人・絵描きの花岡ヤスジ(相島一之)が主犯の置き引き騒ぎは、最初の実技試験までに荷物を明け渡さないのもかなり悪質だが(アパート引き払いの件があったとしても)、合否賭けとダブルになるといっそう感じが悪い(4人中3人は桜子が落ちる方に賭けてた!)。とりあえずは、勝手に達彦の味噌をカバンから取り出しちゃダメでしょ。
 最終試験の実技前、秋山均(半海一晃)がサックスで奏でる生のジャズに聴き惚れて、というあたりもドラマの今後を考えると重要なエピソードになるところだろうが、試験には危うく間に合わなそうになり、手もケガして弾き直しする羽目になるまでいってしまうと、展開のための展開にも感じられて、単なる桜子の注意不足にも思えてくる。
 この朝ドラはこれまでもそうだったけれど、エピソードの粒立ちで見せていくタイプのそれではなく、登場人物たちの魅力こそが生命線のような気がする。当然、東京編でも新キャラクターたちのパーソナリティがより鮮明になってくれば、エピソードもそれに引っ張られてより面白くなってくるはずだ。
 そのあたりは、桜子が試験に落ちてからが顕著に。ついに音楽の夢は終わったとマロニエ荘の住人に当たりちらす桜子に対して、いかにも芸術家っぽい視点で桜子を諭す杉冬吾(西島秀俊)がクローズアップされて、ドラマのしみじみ度は途端に深まった。自らのピアノの音に自ら慰められ、癒されていくあたりの後味にはただただしんみり。職業は絵描きかと問われた野上八重(原千晶)が、お金をもらって初めて絵描きと答えるあたりも、みんなが横一線という感じが出ていていい。
 高貴さ漂う西園寺(長谷川初範)の何気ない一言一言にも含蓄があって今後にも期待感があるが、鮎川周介(中山仁)との間に12歳の子供がいることが発覚した磯(室井滋)の大人の影と優しさの同居がこの週では絶妙だった。稽古代をきちっと値切ってるあたりがいかにも磯らしかったけれど。(麻生結一)

第5週「運命の分かれ道」(2006年5月1〜6日放送)

☆☆★
 第2週に父・源一郎(三浦友和)の死が描かれていたのには大いに驚いたが、今度は桜子(宮崎あおい)との両思いが発覚して実質的な婚約にまで至った斉藤(劇団ひとり)が唐突に有森家を、つまりはこのドラマを去る。直前まで最重要人物だった人が次回にはいなくなっている唐突ぶりはこのドラマの定番になったりするのだろうか。まだ1ヶ月強しか経過していない段階で潔いというか、登場人物やエピソードを出し惜しみしないところを見ると、今後のためのドラマテックな展開は列をなして待機しているのかもしれない。次にどのキャラクターが消えてしまうのかを予想すると、ちょっと怖いのだが。
 実際には実家が倒産して債務を背負ったために海軍燃料廠への転職を余儀なくされていた斉藤の誠実さは、真実を知って斉藤についていくとすがる桜子にかける言葉の数々でここに極まった。桜子にとっての音楽は人生を照らす光である、これは桜子の前途を物語る言葉なのだろう。前を向いてひたむきに生きていけば、またどこかで二人の道が交わるかもしれないと斉藤は言うけれど、これが岡崎で斉藤を見た最後だったというマサ(竹下景子)の語りは、今後二人の人生が大いに交わることはないことを暗示していた。
 出戻った二女・杏子(井川遥)も夫・河原(池田鉄洋)との夫婦関係を解消することで万事解決。河原のイジメがさらにエスカレートした方がドラマとしては楽だと思ったが、それをやらないところもこのドラマのスタンスなのだろう。実は河原と血がつながっていなかった母・幸恵(山田昌)はもっと活躍するのかとも思ったが。杏子はここから唐突に産婆を目指すことになる。

笛子(寺島しのぶ)「何でそんな突拍子もないことを言い出すの?」

まだ自らが主体となったエピソードがない笛子は、ここでもきちっとフォロー側に回ってくれました。
 山長の新年会で達彦(福士誠治)は東京音楽学校受験を宣言。そのことを桜子にそそのかされたと勘違いした母・かね(戸田恵子)が有森家に怒鳴り込んでいく展開は期待通りで、そこで久々に磯(室井滋)とのバトルが再戦。この二人はドラマから消えることなく、最後の1ヶ月までコンスタントにバトルを繰り広げてくれることを願うばかり。
 売り言葉に買い言葉で、達彦のピアノには絶対に負けないとかねに言い放った桜子だったが、ヒロ(ブラザートム)の店・喫茶マルセイユのピアノでベートーヴェンのピアノソナタ作品10-3(第7番)を流麗に弾きこなす達彦の演奏を実際に聴いて愕然。直前までの威勢のよさも吹き飛んで、桜子は敗北感にさいなまれる。受験課題曲をベートーヴェンのピアノソナタから任意に選べるの中にあって、今の実力では難しい曲を選んでしまうと墓穴を掘りかねないという西野(キムラ緑子)の助言に従い、作品10−1(第5番)をセレクトした直後だけに、その実力の差にいっそうショックを受ける桜子だった。ここで敵同士と達彦にはき捨てる桜子を見て、ニヤリとして頭を抱えるヒロがちょっと気持ち悪かった?!
 そんな敵同士だったはずの達彦の受験をかねに認めさせるようにと演奏会を企画する桜子は敵に塩を送る上杉謙信の精神!時は昭和13年3月、いよいよ受験のために上京することになった桜子でありました。(麻生結一)

第4週「プロポーズは突然に」(2006年4月24〜29日放送)

☆☆☆
 第3週の副題「恋のプレリュード」の予測通りに、この第4週が前を受けた本題になっている。極度の近眼により笛子の腰巻に触ってしまう風呂上りの斉藤(劇団ひとり)を徳治郎(八名信夫)が変態呼ばわりして追い回す出だしから元気いっぱいも、おかげでその後の杏子(井川遥)のエピソードがいっそう重苦しく感じられることに。
 手紙に対する杏子(井川遥)の返信を不審に思った桜子(宮崎あおい)は、斉藤と一緒に名古屋に赴く。そこで桜子は河原(池田鉄洋)に扱き使われてばかりの杏子の結婚生活を垣間見る。岡崎に帰って、河原宅でつぼを割ってしまったことを悔恨する斉藤の真摯さに心引かれたか、いまだに針が落とされたことがないショパンのレコードを聴かせてあげようと、桜子は源一郎(三浦友和)の形見の蓄音機を斉藤に貸す。貸すまでいかないとしても、せめてレコードを聴かせてあげればと最初から思っていたも、心が打ち解けた証として満を持してここに蓄音機が登場した。二人で一緒にショパンのノクターン聴くシーンがいい。
 桜子の中に淡い気持ちが広がるも、斉藤のために何かしてあげたいことがいもりのえさ取りとは安上がりというか、素朴というか、かわいいというか。ところが、斉藤の部屋で女性の写真を見つけてしまったことに動揺して、桜子はそのレコードを割ってしまう。
 割れたのはレコードだけではなかったか、ピアノの練習にも身が入らず、西野(キムラ緑子)からもレッスンの休みを言い渡されてしまう桜子。ここで桜子と斉藤の仲を取り持って、随所に懐の深いところを見せるのが勇太郎(松沢傑)とはちょっと意外な感じ。時折めかしこんんで外出する斉藤は、実は見合いでふられた恩師のお嬢さんにドイツ語を教えに通っていたわけだが、玄関で待つお嬢さんもまんざらでもないように見えたが。レコードを弁償するために桜子が売ったバイエルって、達彦(福士誠治)からもらったものじゃ?違いましたっけ?
 キヨシ(井坂俊哉)の恋煩いの原因が桜子と斉藤の仲にあることを知った徳治郎(八名信夫)の表情に瞬間悪役の片鱗が。結局は満場一致でいい年の笛子(寺島しのぶ)と斉藤を結び付けようとする力学が働く。剣道初段取得で型を披露する笛子があまりにも喜ばしい。実際には斉藤が桜子のために買おうとしていたも、笛子のためと磯(室井滋)が早合点したせいで、17歳向けの帽子をかぶることになる笛子はあまりにも痛々しい。その後、マスター(ブラザートム)が存在感のある喫茶店にて、斉藤は笛子に対して交際を断るとともに、桜子への思いを伝える。ここで今度は人形の首を壊す斉藤。確かによく物を壊す人っていますけどね。
 傷心の桜子は、河原宅でとり行われた謡の会に赴いた達彦から、その場で居眠りしてしまったことの罰として河原に杏子が暴力を振るわれていたことを伝え聞く。居眠りするほどに、という描写で杏子のその後を浮き彫りにするあたりは熟練の技。堪りかねた桜子は磯が急病で倒れたと書置きして、杏子を実家に連れ戻してくる。そこに河原が乗り込んでくるシチュエーションだったら、やっぱり磯を演じる室井滋の仮病演技に期待しちゃうでしょ。期待は半ば満たされた程度だったけれど。
 ここで「妹の学費ほしさに結婚した」と言い放って、河原は本性を露に。そこまで言われちゃ、仮病中の磯だって、剣道初段の文武両道派・笛子だって黙っちゃいられない。杏子を救出したことで、自らの夢を断念せざるを得なくなった桜子のジレンマもよくわかるところ。それでも今度は奨学金を狙って受験勉強を続ける桜子に、斉藤が思いを寄せてくれているという事実が笛子から告げられる。同じ目的に対してのまったく別の新たなるジレンマをさらに抱えて、ドラマは複合的に盛り上がってきている。有森家は戦前にしてドイツ語の辞書があるお宅なんですね。(麻生結一)

第3週「恋のプレリュード」(2006年4月17〜22日放送)

☆☆☆
 父・源一郎(三浦友和)の死はあまりにも残念だったが、その余韻もかみ締めつつとなるあたりはドラマ的にはプラスアルファの部分だ。桜子(宮崎あおい)と勇太郎(松沢傑)の将来を思った二女・杏子(井川遥)は、進学の援助を交換条件に名古屋の河原(池田鉄洋)のもとに嫁ぐ。結婚式は昭和12年7月。支度金をつぎ込んで嫁入り道具の桐箪笥までは揃えるも、その中身までは間に合わず、着物は方々の知り合いに借りてその量をごまかそうとするが、親戚たちにチェックされてあえなく発覚。郷土色満載というか、これは何たる習慣。
 しゅうとの幸恵役は愛知県が舞台になるドラマには欠かせない存在の山田昌。その幸恵が末代の恥と杏子を怒鳴りつけた直後、まだ杏子が廊下の後ろから来ているのに、河原が片っ端から電気を消してしまう場面は、その後の仕打ちを暗示してるようで、悲しいやら不気味やらで秀逸。マザコンにして神経質な河原のとんでもない男ぶりは、これからエスカレートしていくのだろう。
 笛子(寺島しのぶ)が生活の足しにと下宿人を置くことを画策。大いに反対する徳治郎(八名信夫)も加わっての下宿人探しがてんやわんやというお決まりのパターンを挟みつつ、不動産屋を探しているところを偶然に知り合った桜子が連れて帰った師範学校の物理教師・斉藤(劇団ひとり)がその下宿人になる。斉藤が善良かつ優しい男に感じられるのは、すべてにおいて河原と真逆ゆえか。 
 そして笛子は剣道に目覚める。コメディロールは磯(室井滋)、かね(戸田恵子)の独壇場かと思っていたが、密かに笛子がツボの模様。
 昨年の東京音楽学校の課題曲を模擬試験として、 西野(キムラ緑子)はベートーヴェンのソナタという難曲で桜子をテストするも、猛練習の末についに桜子はそれを弾きこなした。古くなったたらこのおにぎりの効果がどこで出てしまうのかというサスペンスつき。まるで遺言のような桜子にあてた源一郎の手紙を見た笛子も、ついには桜子の受験を承認することに。それにしても、学校の音楽室で夜通し練習なんて牧歌的な行為は、今ではもはや考えれない。音楽室の作曲家の肖像画が戦前から普遍であったことに、ちょっとうれしくなる。平成も同じなんでしょうか。
 週の最後に兄が出征する親友・薫子(松本まりか)のエピソードが。「君死にたまふことなかれ」の横断幕で抗議の意を表すも、石を投げつけられる薫子を助けるべく、泥棒騒動を起こして、斉藤はいっそう桜子の中での株をあげる。「恋のプレリュード」なる週タイトルからすると、プレリュードから先もあるってことか。
 桜子から発禁本を預かったエピソードは、大事にならないままに餞別の米に紛れさせて薫子に返される。この親友はいずれまた再登場するのだろう。戦争の只中を描くこの朝ドラが、その入り口に差し掛かった週であった。(麻生結一)

第2週「ピアノがやって来た」(2006年4月10〜15日放送)

☆☆☆
 この第2週に早くも大転換を迎えるドラマの展開も、細やかな描写に丁寧な作りは依然として維持されていて、大変見ごたえのある朝ドラになってきている。西園寺(長谷川初範)の演奏会に行きたいばっかりに、薫子(松本まりか)が達彦(福士誠治)に当てた恋文を自分が書いたと嘘をついて、自転車で演奏会に駆けつけるエピソードから生き生きとしていていい。結局演奏会には間に合わないも、誰もいなくなった演奏会場で「セントルイスブルース」を弾いていたことをきっかけに、西園寺に声をかけてもらう。鍵盤に指を押し込む癖をオルガンを弾きなれているためと見破る西園寺も、奏法的には桜子のピアノはすでにジャズ風だったってことか。
 勢いに乗った桜子は(?)、女学校卒業後に東京の音楽学校で音楽の勉強がしたいとの一世一代の決心を、杏子(井川遥)のお見合い前夜に表明。そんな杏子と河原(池田鉄洋)のお見合いを勇太郎(松澤傑)を伴って見に行ったことで、桜子の連続お見合い覗き記録は2週にまで伸びる。第1週の源一郎(三浦友和)のお見合いは、リアルタイムでは子供時代の10年前だけれど。これもまた定番になるのか、その席で面白話を披露する磯(室井滋)がやっぱり楽しい。磯のミシンと桜子のオルガン、そして源一郎のジャズと三拍子そろって騒々しい中で、おとなしい杏子の存在を忘れて茶の間の電気を消しちゃう、つまりは杏子の存在感のなさがネガティブキャンペーンされたのがよかったか、妻は主婦としての義務を果たすべきと考える河原はそんな杏子を気に入る。
 この第2週の最初の見ものは、新入生歓迎会での桜子によるジャズ調の合唱伴奏。良妻賢母をかかげる女学校の女生徒にとっても胸のすくジャズバージョンの「花」は、見てる方も胸がすく思いに。ただ、ここでの「将来の心配も何もかも忘れてピアノを弾いた最後の思い出」という今は亡き桃子の母・マサ(竹下景子)の不穏なナレーションがひっかかってくる。
 俗悪なる演奏によって風紀を乱したことで一週間の停学になる桜子は、さらにかつてのガキ大将にして、今は山長で修行中のキヨシ(井坂俊哉)が起こした他愛ない乱闘騒ぎに巻き込まれて、警察に連行されてしまう。そして桜子は、普段から目をつけられている音楽教師の西野(キムラ緑子)に退学をほのめかされる。そこに駆けつけた源一郎は桜子をぶち、西野に頭をさげるように強要。この機転によって、桜子は西野に許されることに。
 憤る桜子に道すがら草笛で応える源一郎がいい。すべては音楽学校を目指すための嘘も方便という源一郎のとても現実的な発想がとても清く思えるのは、源一郎の思考がここまでにきちっと積み重ねられているからだろう。時代物のドラマだけに、こういうロケシーンも大変貴重に思える。
 そして大いに残念だった源一郎を襲う落石事故。源一郎が土砂崩れの現場に借り出されている間に、停電中に有森家にだけ真っ先に電気がつくのもその後の不幸の前触れだったか、源一郎は意識不明の重体に。いったんは小さいころから弱ってる動物を蘇らせていたという桃子の神通力によって(?!)、意識を取り戻す源一郎だったが、りんごをむく桜子の姿に妻・マサを重ね合わせるままに、そのまま逝ってしまう。回想のマサはこの第2週でも登場を果たしたが、源一郎亡き後はどうなるのだろうか。マサを回想できるキャラクターはもはや徳治郎(八名信夫)ぐらいなんだけど。
 ラジオから聴こえてくる「セントルイスブルース」も、その後にピアノが届くエピソー ドも、リアリティを乗り越えての余韻があっていいのだが、ドラマ的には第2週でキーパーソン中のキーパーソン、源一郎を失ったのは大変なマイナスのようにも思える。エピソードを出し惜しみしない潔さがこの後のプラスに働くことを祈るのみ。ただ、退 職金がピアノに化けたことを嘆く笛子(寺島しのぶ)にも一理あるような。
 その仏壇が生活レベルにしては豪華に見えたのは、やはり愛知県が舞台のドラマならではということか。桜子の豪傑ぶりに影響されていったんはお見合いを断る杏子(井川遥)の、物言わぬ様でそのパーソナリティがうっすらと透けて見えるあたりも実 にいい。(麻生結一)

第1週「父の見合い」(2006年4月3〜8日放送)

☆☆☆
 昭和3年(1928年)、8歳の桜子(美山加恋)がみそ樽に落ちる場面からはじまるこの新しい朝ドラ。BSの朝ドラ再放送枠でつい先日までやっていた『かりん』もまたみその老舗の話だったために、1年間の長きに渡って朝はみそ三昧かとちょっと気が重くなるも、主人公の家はみそ屋さんではないとわかって、ちょっぴりホッとする。祖父・徳治郎(八名信夫)が元みそ職人という設定で、どっぷりと八丁みその蔵元「山長」の人々も絡んでくるので、ほぼみそ絡みの話ではあるも、どちらにしても味噌汁を飲む時間帯に見るドラマですからね。
 桜子の父・源一郎(三浦友和)は存命も、母・マサはすでに亡くなっているという設定につき、写真のみで登場。そのマサ役に竹下景子の起用というその心は、このマサこそがナレーションを担当するためだった。ならば名古屋弁でもよかったんじゃと思うが、尾張弁と三河弁は違うってことでしょうか。
 どちらにしても、通常ならばかなりの変化球と感じるこの語りの存在も、『風のハルカ』のナレーションが由布岳(=中村メイコの名調子!)だったせいで、普通にさえ感じてしまうのだから不思議なもの。動くマサは、源一郎との結婚前に結婚行進曲をピアノで弾く回想シーンでチラッと登場。今後もこうした使われ方をするのかも。
 それにしても、ヒロイン・桜子の子供時代を演じる美山加恋と、16歳から桜子になる宮崎あおいの引継ぎに違和感がないのには驚いた。通常の朝ドラからすると、子役時代は短かったも、第1週の副題にもなっている「父の見合い」への思いや母・マサの形見のオルガンの話など、美山加恋演じる桜子はとても充実していた。
 そして8年後の昭和12年(1937年)、女学校四年生になった桜子として宮崎あおいが登場する。ここまでは隅々にまで実に立派で、ノスタルジー溢れるタッチ、語り口の落ち着いたトーンにも魅力があった。(麻生結一)

参考:非公式コラムVol.11

純情きらり

NHK総合月〜土曜08:15〜08:30
連続テレビ小説
制作・著作:NHK
制作統括:銭谷雅義
原案:津島佑子『火の山―山猿記』
作:浅野妙子
演出:小松隆(1、2、5、10、14)、田中健二(3、4、6、11、15、19、22、26)、海辺潔(7、8、12)、福井充広(9、13、16)、石塚嘉(17、20、23)、大関正隆(18、21)、松川博敬(22)、熊野律時(22)、岡本幸江(24、25)
音楽:大島ミチル
語り・有森マサ:竹下景子
出演:松井(有森)桜子…宮アあおい、杉(有森)笛子…寺島しのぶ、杉冬吾…西島秀俊、鈴村(有森)杏子…井川遥、松井達彦…福士誠治、鈴村浩樹…高橋和也、若山百合子…木村多江、鈴村士郎…苅谷俊介、吉村タミ…阿知波悟美、御崎しま子…光浦靖子、斉藤直道…劇団ひとり、有森勇太郎…松澤傑、野木山与一…徳井優、マスター・ヒロ…ブラザートム、秋山均…半海一晃、高島キヨシ…井坂俊哉、松浦タネ…秋山菜津子、松浦利雄…六角精児、野上八重…原千晶、花岡八州治…相島一之、工場長…不破万作、沢井ウメ…木野花、飯島校長…大門正明、村木教頭…市川勇、西野シヅ子…キムラ緑子、橘マリ…椋木美羽、高野薫子…松本まりか、守田敏…若林久弥、鮎川和之…荒川優、小野寺ハツ美…たくませいこ、岡村伊蔵…外波山文明、岩見沢るり子…初音映莉子、松尾…村杉蝉之介、木下…河西健司、看護婦長…石井苗子、鈴村美智子…中村綾、杉加寿子…奥山志紀、杉亨…本川嵐翔、篠原先生…伊藤昌一、鈴村幸…岩本千波、おふみ(店員)…藻田るりこ、お清…福田らん、治…ペ・ジョンミョン、耕助…大竹浩一、平助…佐藤祐一、松井輝一…竹内龍之介、番組担当者…伊藤恵輔、看護婦…阿美朝子、松井輝一…志村武宣、医師…俵木藤太、記者…相場貴晴、料亭女将…東山明美、食堂店主…九太朗、マルセイユの客…藤本洋子、看護婦……雨音めぐみ、下山医師…佐藤文雄、杉亨…澁谷武尊、杉加寿子…佐々木麻緒、鈴村幸…新井優歌、少年A…濱川歩、少年B…藤原健太、高橋…夏原遼、岩佐…山本東、ベーシスト…川原田智也、戦友の父…山崎之也、戦友の母…外海多伽子、マネージャー…ジャック・ウッドヤード、クラブの客(声)…アンドリュー・ブケニア、吉田…宮崎吐夢、画商A…河野正明、画商B…たんぽぽおさむ、緑…戎怜奈、宏…大島捷稔、あかね…中西夢乃、祐二…相馬大海、坂口良太…横田剛基、野上敏子…石井さくら、若山哲平…途中慎吾、衛生兵…吉本信也、園田軍曹…井之上隆志、みつる…平田悠一、近所の婦人…倉橋悦子、警防団…高橋修、平田義男…吉田理恩、岡部洋介…早稲田いぶき、患者…伊東知香、写真屋…伊藤正博、三味線…本條広駒、踊り…花柳佐郁、杉加寿子…櫻井詩月、新藤医師…山瀬秀雄、島本医師…阿部六郎、光子…田辺愛美、看護婦…鈴木ちさ、松浦太郎…鈴木駿介、婦人会長…山口みよ子、郵便屋…本多晋、落語家(声)…柳家権太桜、アナウンサー(声)…矢田耕司、教授…波多江清、少年…中井澤亮・広野健至、食堂のおかみ…長岡忍、手代…永田恵悟、お由美…柳下季里、須藤医師…小杉勇二、郵便屋…土田アシモ、特高刑事…五宝孝一、山口議員…真実一路、平山…針原滋、母親…奏谷ひろみ、大村少佐…長谷川公彦、兵士…木幡竜、松井達彦(幼少時代)…萩原駿行、町長…神山寛、兵事係…池浪玄八、女客…秋桜子、男A…古川健、男B…佐藤博秋、視学官…大林丈史、小鈴…早良めぐみ、信吉…いけだしん、キク…二宮弘子、しずえ…恩田恵美子、ヨシ…花原照子、校長…野村信次、刑事…大関正義、警官…天田暦、女学生…石川由依、巡査…楠見彰太郎、緑…江口ナオ、女…高橋睦美、若林聡美…佐々木維子、聡美の母…速水陽子、新藤医師…山瀬秀雄、看護婦…鈴木ちさ、梅奴…岡本易代、若槻彰…河合龍之介、客…加藤晃良、熊井勇吉…佐藤誓、郵便配達…大木章、ダンサー…小野孝弘、ボーイ…笹木彰人、受付…菅原祥子、店員…山上賢治、試験官…世古陽丸、公園の男…花ケ前浩一、中年男…浦崎宏、河原亮一…池田鉄洋、大助…宮沢大地、客…田中允貴、客…浜田悟、客…長谷川ほまれ、耕輔…大竹浩一、吉崎校長…大嶽隆司、吉崎美穂子…西山真以、帽子屋の店員…渋谷宏美、仕舞…伊藤嘉章、地謡…長谷川晴彦、レコード店主…諏訪太朗、紳士…デビット伊東、植村…富岡晃一郎、山田…後藤康夫、親戚の男…本多隆二、配達の男…村澤寿彦、医師…野口雅弘、看護婦…木田有香、松本課長…佐野光洋、消防団の男…上杉陽一、市役所職員…森戸宏明・知嶋大貴、みさえ…北原ひとみ、かず代…春田瑠里、好子…阿部麻似子、秘書…天野勝弘、ホール役員…亀井彰夫、有森桜子(子供時代)…美山加恋、有森笛子(子供時代)…北乃きい、有森杏子(子供時代)…尾崎千瑛、有森勇太郎(子供時代)…佐野観世、松井達彦(幼少時代)…柳井宏輝、安江…筒井真理子、高島専蔵…大八木淳史、学校の先生…板尾直子、役場課長…平田康之、女子職員…野里知広、大助…宮沢大地、高島キヨシ…村瀬継太、耕輔…下山葵、治…水田吏維也、ピアノ教師…柿丸美智恵、ピアノ演奏…吉井一摩・上野朋洋・湯川珠美・津嶋麻子・村田孝樹、ホルン演奏…岸上穣、小林医師…平田満、河原幸恵…山田昌、鮎川周助…中山仁、西園寺公麿…長谷川初範、松井拓司…村田雄浩、沖田徳治郎…八名信夫、浦辺仙吉…塩見三省、松井かね…戸田恵子、鮎川(有森)磯…室井滋、有森源一郎…三浦友和