風林火山

第32回「越後潜入」(2007年8月12日放送)

☆☆☆
 武田の砥石城攻めと勘助(内野聖陽)の越後潜入が並行に描かれた秀逸回。武田旗印の文字を初めてにして鉄砲で撃ち抜く長尾景虎(Gackt、もしくはガクト)は早々に神がかりぶりを発揮する。鉄砲商人・道安になりすました勘助は、鉄砲100丁を用意せよとの無理難題を突きつけられるも、これで存分に家中を探れると最初は上機嫌だったが……。
 武田の謀にまんまとはまって劣勢に立たされた村上義清(永島敏行)は、平蔵(佐藤隆太)の進言を採用して敵対する高梨といったん和議を結び、取って返して砥石城を攻めあぐねる武田軍に大勝。軍議で発言しちゃうとは、平蔵もまったくえらくなったなぁ。ほとんど機能していない信濃守護・小笠原長時(今井朋彦)に高梨の遣いとしてのお鉢が回ってくるくだりは、この第32回でもっとも笑えたところ。緊張感の中に、さらりとおかし味をブレンドしてくるあたりのセンスのよさもこの大河の美徳である。
 長尾家の重臣・大熊朝秀(大橋吾郎)の導きにて、長尾景虎と宇佐美定満(緒形拳)が初めて対面するも、この重要会談の場になぜだか道安こと勘助も召集される!越後守護としての朝廷からの下知を待って宇佐美の元を訪れた景虎の殊勝さに宇佐美は静かに感激。
 その後、神がかりな景虎、とことん脱力系の宇佐美、ひたすら汚らしい道安=勘助は杯を交わすことに。ここでの仏門に帰依し、女人への欲を絶つ男3人衆の問答がすごかった。「人を救えるは神仏のみ」と言い切る景虎に、「人の欲を否としてはならぬ。欲を嫌うこと。それもまた欲にとらわれた考え」と諭す宇佐美の達観に包容力あり。そして晴信を心底嫌う景虎に対して、晴信にも俗世の利ありと。その末に道安、宇佐美に預けられる!ちょっとしたたらいまわしである。
 白眉は、砥石崩れの伝聞。一ヵ月後、さらに宇佐美を訪れた景虎、さらには宇佐美の軒猿(=忍びの衆)から事の次第を聞き及ぶも、なすすべない勘助が何とも歯がゆい。すでに道安=勘助と宇佐美に見破られていて、勘助はビックリ仰天。まぁ、いくら情報がなかった時代とはいえ、勘助の容貌ならばそれなりの知名度はあったろうて。(麻生結一)

第31回「裏切りの城」(2007年8月5日放送)

☆☆★
 軍議にて「かくも早く信濃を手に入れることができるとは、まことに長き道のり」とドラマ開始早々に一笑いとるギャグ担当の諸角虎定役、加藤武が第31回のトメ。活躍はここのみであったが……。
 越後の長尾景虎(Gackt、もしくはガクト)の器を見極めるため、勘助(内野聖陽)は鉄砲商人として越後に向かう。水戸黄門並のフットワークのよさである。その直前、村上攻めは急いてはならぬと勘助に戒められていたにも関わらず、砥石城攻略後に真田の里再興をはやる真田幸隆(佐々木蔵之介)は、相木市兵衛(近藤芳正)の進言に耳を貸して策を講じる。重臣の中にいる村上方の間者をでっち上げる一芝居は、それとわかっていても緊迫感があった。
 村上軍は真田方の待ち伏せにあって壊滅。その中にあって、矢崎十吾郎(岡森諦)が命を落とす。義父を失った平蔵(佐藤隆太)はこれでいっそう武田への憎しみを深くするのであろう。
 紀州根来寺の僧侶・道安に化けた勘助が昔の勘助並みに汚い!そんな汚らしい勘助と対面した景虎演じるGackt、もしくはガクトの演劇的反射神経のよさに早々驚かされる。これは次回からが楽しみである。(麻生結一)

第30回「天下への道」(2007年7月29日放送)

☆☆★
 景虎(Gackt、もしくはガクト)にようやく本格的にスポットが当たる。長尾家の家督争いがついに決着。景虎は越後の国司となるも、その越後はいまだ群雄割拠が続く。その統一のキーパーソンとして宇佐美定満(緒形拳)が初登場。板垣(千葉真一)亡き後、早々トメに座った。
 鉄砲100丁仕入れるために今川に港を借りに行った勘助(内野聖陽)の野望は、越後の海と駿河の海の二つの海を甲斐が貫くこと。さらに勘助は景虎がいかなるものか確かめるために、鉄砲商人になって越後へ潜入するプランをぶち上げる。なるほどこうやって勘助と景虎は絡むのか。
 そういえば、平蔵(佐藤隆太)がヒサ(水川あさみ)の夫に。出世しましたね。(麻生結一)

第29回「逆襲!武田軍」(2007年7月22日放送)

☆☆★
 板垣(千葉真一)、甘利(竜雷太)の両雄を失った第28回が表とすれば、晴信(市川亀治郎)がその負け戦によって武田家の家訓ともすべき忘れかけていた心を取り戻す第29回は裏の回。実に入念に作りこまれたこの2回は、その裏と表で一息に思わせた。
 軍師としての勘助(内野聖陽)もまた息を吹き返す。7月の暑さにたまらず武具を脱いで裸でダラダラとしていた信濃守護・小笠原長時(今井朋彦)の奇をついて大勝。その気の緩みを進言した高遠頼継(上杉祥三)は捕らえられて切腹。塩尻峠の合戦は「戦場の血を夕立が洗い」、武田は信濃においてその汚名をそそぐ。板垣の遺志がこめられた翻る諏訪神号旗敵がたまらなくヒロイック。こういうカッコよさがこの大河の真骨頂である。トンボ=亡霊・板垣による「人は城、人は石垣、人は堀、情けは見方、仇は敵」の舞にはやはり凄みあり。この大河の板垣は本当にすごかった。(麻生結一)

第28回「両雄死す」(2007年7月15日放送)

☆☆★
 武田軍と村上義清(永島敏行)とが激突した上田原の合戦における、板垣(千葉真一)の最期はあまりにも壮絶。板垣の凄みが千葉真一のそれと重なって、感動的であった。馬から落ちてからの板垣の殺陣、とりわけ槍との二刀流はひと際ダイナミック。背景の雲がまた絶妙で(ただ、実写オンリーではないかもしれない)。もはや板垣の右腕となった伝兵衛(有薗芳記)を晴信(市川亀治郎)の影武者に見立てるあたりもシャレている。
 それに比べると、副題「両雄死す」のもう一人、甘利(竜雷太)の死はあまりにも無様。謀がいかにも不得手な甘利は分不相応の謀に死す。村上軍に単身乗り込んでいくやり方は無策極まりなかったが、そこから見事脱走に成功したのにはちょっと驚く(しかも馬まで拝借して)。最期の犬死ぶりは『太陽にほえろ!』での不意打ちに命を落とす殉職を思い出させたりして。甘利の自己犠牲精神はわかるとしても、勘助(内野聖陽)が喩える「甘利=槍、板垣=楯」の置き換えは、見た目では真逆ではなかったか。それにしても、勘助は目立たなかったなぁ。晴信は力んでたなぁ。
 残念だったのは、せっかくの騎馬戦だったのに、ほとんど主要武将の上半身しか映っていなかったこと。ロングショットが効果を挙げていた場面もあったけれど、全体的に窮屈だった。 (麻生結一)

第27回「最強の敵」(2007年7月8日放送)

☆☆★
 負けを恐れるが故の暴走ぶりに拍車のかかった晴信(市川亀治郎)は、力攻め第2弾として信濃最強・村上義清(永島敏行)と戦うことを宣言。そんな晴信に対して涙の進言をする板垣(千葉真一)の一挙手一投足は、全身全霊の遺言に思える。一方、村上義清への内通を約束する甘利(竜雷太)の真意やいかに。この先を読めない歴史に不勉強であることを、ここでは素直に感謝することにする。勘助(内野聖陽)の切羽詰っていないスタンスを叱咤しつつ、その肩に手をかける悲壮から、甘利(竜雷太)の心中は明々白々であるのだが。
 この第27回を見る前に第28回の長編予告編を見てしまったがために、心はすでに第28回にある。この第27回は第28回の序章と考えるべきであろう。(麻生結一)

第26回「苦い勝利」(2007年7月1日放送)

☆☆★
 負け知らずの晴信(市川亀治郎)は負けたものの気持ちを推し量る気持ちに鈍くなる、か。信濃佐久郡の志賀城主・笠原清繁(ダンカン)が上州・関東管領の上杉憲政(市川左團次)の援軍を期待して武田に挙兵するも、晴信の再びの力攻めによって打ち破られる。毎度の如く勘助(内野聖陽)は「戦わずして勝つは最善の策なり」と進言したも、「何を得意げに!」とついに耳を貸さなかった晴信。その専横な振る舞いはかつての父・信虎(仲代達矢)に重なるも、実際には負けを知らぬゆえに負けを恐れる晴信の心情が最後の最後に触れられて、さらになるほどと納得させられた回であった。相変わらずここで描かれている歴史はそれに不案内の身には初物尽くしも、登場人物たちの心情がきちんとフォローされているので、道に迷いっぱなしになることは決してない。
 越後長尾家の兄弟対決にひたすら虚しくなる景虎を演じる“Gackt”むしろ“ガクト”が予想に違わず強力。台詞に独特の妖気が漂う。豪胆大味な晴信とナイーヴな景虎とのわかりやすい対比はすでに出来上がっている。
 驚いたのは、第8回「奇襲!海ノ口」にて、相木市兵衛(近藤芳正)の導きによって海ノ口城を落ち延びた平賀源心(菅田俊)の娘・美瑠姫(菅野莉央)がオトナ・美瑠姫(真木よう子)になって再登場したこと。話はちゃんと続いてたんだ!(麻生結一)

第26回「苦い勝利」(2007年7月1日放送)

☆☆★
 負け知らずの晴信(市川亀治郎)は負けたものの気持ちを推し量る気持ちに鈍くなる、か。信濃佐久郡の志賀城主・笠原清繁(ダンカン)が上州・関東管領の上杉憲政(市川左團次)の援軍を期待して武田に挙兵するも、晴信の再びの力攻めによって打ち破られる。毎度の如く勘助(内野聖陽)は「戦わずして勝つは最善の策なり」と進言したも、「何を得意げに!」とついに耳を貸さなかった晴信。その専横な振る舞いはかつての父・信虎(仲代達矢)に重なるも、実際には負けを知らぬゆえに負けを恐れる晴信の心情が最後の最後に触れられて、さらになるほどと納得させられた回であった。相変わらずここで描かれている歴史はそれに不案内の身には初物尽くしも、登場人物たちの心情がきちんとフォローされているので、道に迷いっぱなしになることは決してない。
 越後長尾家の兄弟対決にひたすら虚しくなる景虎を演じる“Gackt”むしろ“ガクト”が予想に違わず強力。台詞に独特の妖気が漂う。豪胆大味な晴信とナイーヴな景虎とのわかりやすい対比はすでに出来上がっている。
 驚いたのは、第8回「奇襲!海ノ口」にて、相木市兵衛(近藤芳正)の導きによって海ノ口城を落ち延びた平賀源心(菅田俊)の娘・美瑠姫(菅野莉央)がオトナ・美瑠姫(真木よう子)になって再登場したこと。話はちゃんと続いてたんだ!(麻生結一)

第25回「非情の掟」(2007年6月24日放送)

☆☆★
 由布姫(柴本幸)が出産した四郎への思い強く、早々天下取りまでも夢想する勘助(内野聖陽)は、諏訪家の後継問題を見越して早速画策。今は亡き諏訪頼重(小日向文世)の嫡男にして晴信(市川亀治郎)の甥にあたる寅王丸(澁谷武尊)の出家を雪斎(伊武雅刀)に委託する旨を晴信に承諾させる。勘助が今川義元(谷原章介)、寿桂尼(藤村志保)、そして雪斎と問答する場面はこの第24話の白眉。寅王丸が事実上の人質であるそのすべてを了解する寿桂尼のお見通しぶりが実に凛々しい。
 領国のことは誰よりも心得ているとの自信満々は、日増しに強まる晴信の傲慢、慢心の表れか。嫡男・太郎に家督を譲ることを確約してほしいと迫る三条夫人(池脇千鶴)に激昂する晴信の言葉は、かつて父・信虎(仲代達矢)が晴信に吐きすてた言葉と同じであった。亀治郎の晴信はわかりやすく横暴化している。
 風林火山紀行でも取り上げられていたが、晴信若干26歳(27歳?)にして制定された甲州法度之次第がドラマ中にもピックアップ。制定に携わった駒井政武(高橋一生)と春日源五郎(田中幸太朗)の掛け合い、晴信評が随所に興味深かった。童のケンカに親が出てきるとろくなことがないのは今も昔も同じこと(今クールの連ドラでもろくなことになってなかった)。主君自らも従うべしとの最後の一文を加えるべきとの駒井の進言を締めに持ってくるあたり、派手な見せ場のなかった回も巧みに締めるこのドラマのピリッとしたよさが出ていた。(麻生結一)

第24回「越後の龍」(2007年6月17日放送)

☆☆★
 福島彦十郎(崎本大海)による怨恨な銃弾に倒れた勘助(内野聖陽)が、その後意識を失っていた10日間に見る夢想を厚塗りでCG処理するあたりはいかにもと言えばいかにも。ただ、勘助の命を救った真田幸隆(佐々木蔵之介)によって紹介された長尾景虎の様は、それをもしのぐCGキャラ風であった。さらに驚いたのは、景虎を演じる“Gackt”がむしろ“ガクト”であったこと!どちらにしても、ガクトの景虎像は一味違ったものになりそうで楽しみだ。
 反対に心配だったのが、戦における一身の忠言も力攻めを決意する晴信(市川亀治郎)に疎んじられる板垣(千葉真一)の力みきった死相。真田幸隆の懐柔に成功して甲斐に戻った勘助に晴信の今後を託すあたり、板垣のその後があまり長くないことをうかがわせる。千葉真一のカッコいい板垣が出来る限り長く見たい。
 その諸悪の根源は、男児・四郎を出産した由布姫(柴本幸)の軽口。勘助の存在がなければ、晴信は早々負けていたかもしれないと板垣が言ってましたよ、なんて聞かされた日には、僕だって一人出来るもんとなるはず。それがお嬢様的天然とすると腹立たしく、また謀った詭道とすると末恐ろしい。
 それに比較するならば、最初は憎き武田方への鞍替えに猛烈反対するも、最後の最後には真田幸隆の決断に付き従う幸隆の妻・忍芽(清水美砂)のきりりとした様がまぶしかった。死の淵から生還、意識を取り戻す最中で目前とした女性に姫様=由布姫を妄想するも、実際にはお方様=忍芽だった勘助(内野聖陽)は別の意味でそのまぶしさに仰け反っていたも。その冒頭から終盤に至るまで、珍しく笑いの要素の多い第24回であった。(麻生結一)

第23回「河越夜戦」(2007年6月10日放送)

☆☆☆
 後に北条氏康(松井誠)の名を高めた「河越夜戦」の全貌。まぁ、この「河越夜戦」も毎度の如く初耳の歴史だったが、見進めていくに慣れ親しんだ戦いのようにさえ思えてくるから不思議。大軍を率いて圧勝を過信する関東管領・上杉憲政(市川左團次)の間抜けぶりと、そこをすかさずついた戦上手・北条氏康の夜襲の構図が、桶狭間の戦にそっくりだったりして。
 そういえば、オープニングは第22回のエピローグの続きだった。大海原に高々と上がる駿河の凧に例えて、風を読み、糸を操るものが戦に勝つと唱える晴信(市川亀治郎)に対して、2年前に南蛮から入ってきたばかりという種子島の威力を見せ付けて、風まかせではこの先ままならないと切り返す今川義元(谷原章介)の好対照が面白かったのはもちろんだが、この第23回がその後の義元までも見透かしているようだったと感じるのは勘ぐりすぎだろうか。
 時を同じくして、勘助を前にして氏康が鉄砲を見せびらかすも、その鉄砲を製作した紀州根来寺の津田監物とも勘助はツテがあったか。何という顔の広さよ。ここでの鉄砲のエピソードは、北条家が所有するもう一丁が河越城の北条綱成(石橋保)の元にあるという伏線になっている。花倉の乱以来に勘助を恨んでいる、先だって北条家の婿になった福島彦十郎(崎本大海)の銃弾に勘助、最後倒れる。ここに由布姫(柴本幸)の出産をかぶせてくる見せ方上手ぶりは憎いばかりだ。それにしても、最初は勘助の存在さえ忘れていたのに、次第に様々な人間関係的ディテール(勘助と福島彦十郎他)をパーフェクトに思い出す氏康は、やはり偉人のそれということか?!
 物語はさかのぼって、勘助が北条の援軍に加わった実の野望は、上杉憲政の家老の与力になっている真田幸隆(佐々木蔵之介)を武田方に引き入れること。かくして、勘助は氏康の命により上杉の本陣にあまりにも難なく潜入。かつては上杉の間者、そののちに北条の間者となるちょっとわかりづらい立ち位置の本間江州(長江英和)に伝令して、「河越夜戦」の影の首謀者になる。
 勘助曰く、才ある武将ベストツーは晴信と幸隆とのくどき文句も、武田を恨む幸隆は簡単には首を縦に振らない。それにしても、武田を恨んでる人、多いですねぇ。信虎(仲代達矢)の黒々しい幻影がチラチラ。初登場は幸隆の素破(すっぱ)、葉月(真瀬樹里)。同じような男役・加芽を『毛利元就』で演じていた葉月里緒菜→葉月里緒奈のことをふと思い出す。(麻生結一)

第22回「三国激突」(2007年6月3日放送)

☆☆☆
 再び諏訪在住となった由布姫(柴本幸)は、伊那攻略のために晴信(市川亀治郎)が諏訪につめていたおかげさまで見事ご懐妊。勘助(内野聖陽)のアドバイスに偽りはなかったと由布姫が勘助に感謝、勘助はその声かけに感激となるところで、長らく続いた一連の由布姫話はとりあえず締めくくられた模様。いい加減由布姫話にはお腹いっぱいになっていたので、ここらで男たちの物語に再びシフトしてくれたのは大いにありがたい。
 サブタイトル「三国激突」 のままに、武田、今川、北条それぞれの思惑がぶつかり合う展開は、この大河ドラマのもっとも状態のいい時のそれであった。8年前に今川と武田の同盟に怒った北条が侵略した駿河の富士、および駿東郡の解説も懇切丁寧でわかりやすい。富士川の東で起きた騒乱“河東の一乱”、習ってませんねぇ。
 北条を攻め滅ぼすべく武田に援軍を要請するも、実の心中は違っていた今川家の軍師・雪斎(伊武雅刀)と勘助の激突は妖気さえ漂って絶品。信虎(仲代達矢)以来にご無沙汰であった歪んだクローズアップも頻発して見ごたえがあった。こちらもお久しぶりであった今川義元(谷原章介)の勘助嫌いもまた相変わらずで。
 雪斎、北条氏康(松井誠)の敵同士と通じている郡内・小山田(田辺誠一)は用意周到、勢力地図まで製作して、北条と結ぶ案を晴信にプレゼンしたにもかかわらず、雪斎の手の内で動かされていたと勘助に聞かされてガックリ。実際は晴信こそがすべてをお見通しだったと勘助に念押しされて、さらにガックリ。
 由布姫と二人して親方様(=晴信)を欺いてはいないかと、いったんは勘助を疑う板垣(千葉真一)だったが、熱っぽく身の潔白を訴えた勘助に板垣はあっさりと納得、さらには懺悔する。晴信、板垣、由布姫、ミツこそが命を落とせる国=人であるとの勘助の熱弁中に、板垣の名も含まれていたのが効果テキメンであったか。

板垣「今、勘助という男を少しわかったような心持じゃ」

やっぱり効いてたみたい?! 最近の板垣は晴信の寝屋話といい今回といい、恋愛沙汰の専門になりつつある?! それにしても伝兵衛(有薗芳記)の有事目撃率は尋常ではない。
 誤解も解けて、心置きなく北条に乗り込む板垣と勘助の武者姿の勇猛ぶりといったら、もうカッコよすぎます。それを迎え撃つ氏康は最初勘助を思い出せないも、対面した際にはあたかもずっと覚えていたような口ぶり!ある意味勉強になります。
 板垣は「(氏康は)敵に回すに得策ではない」と勘助は晴信に進言したと氏康に絶好のタイミングで横槍。これで勘助への言いがかりは帳消しになった?! 勘助を召し抱えなかった義元は、己に見る目がなかったと鼻で笑い、同じく勘助を召し抱えなかった氏康は、己に見る目があったと噛み締めて言う。ここに義元と氏康のキャラクターが見事に描き分けられる。やはりこの大河の語り口のうまさは並ではない。
 エピローグ、晴信は義元に招かれて、太平洋の大海原を初めて見る。いずれ己が手で海へと抜けて見せると高笑いする晴信、いや亀治郎!大した貫禄であった。(麻生結一)

第21回「消えた姫」(2007年5月27日放送)

☆☆★
 かつて諏訪頼重(小日向文世)が自害した東光寺にて、由布姫(柴本幸)と三条夫人(池脇千鶴)が三度激突。三条の侍女・萩乃(浅田美代子)と由布姫の侍女・志摩(大森暁美)も交えて、由布姫によって振舞われた諏訪の甘酒を三条が飲む飲まないの心理戦がいきなりの見ものであった。
 重臣たちの圧力にさすがの勘助(内野聖陽)も由布姫をかばいきれず。晴信(市川亀治郎)は由布姫を諏訪に戻すことを決断する。ところが、その搬送中に由布姫は逃亡。吹雪く雪山を一人、しかも徒歩で由布姫を探し回る勘助の姿は、リアリティよりも様式を優先。じゃなかったら、とっくに凍死してるでしょう。
 どれほどの時間を勘助はさ迷い続けたか(ここもリアリティは言いっこなし)、ついに発見されたお堂に潜む由布姫は雪女のそれ。勘助の説得以前に、由布姫がすでにあまり見目麗しいとは言えぬ(by 三条)晴信にゾッコンラブ(死後か?!)だったとは。由布姫の生足を手で温める勘助が何ともせつなく映る。(麻生結一)

第20回「軍師誕生」(2007年5月20日放送)

☆☆☆
 武田勢が包囲した長窪城に、かつて海ノ口城で勘助(内野聖陽)とともに戦った相木市兵衛(近藤芳正)の姿が。城主は望月?、大井?と入り乱れてよくわからなかったが、すでに勘助と内通していた相木が謀って、飯炊きの煙を合図に飯富虎昌(金田明夫)が先方を務める武田軍は一気に城を攻め落とす。勘助と相木の前段をまるっきり描かないのが、このドラマのスピード感の源である。おかげで、話が飲み込めないところもあるのだけれど。
 矢崎十吾郎(岡森諦)、その娘・ヒサ(水川あさみ)、そして平蔵(佐藤隆太)もまた長窪城に。勘助の降参しろとの声に耳を傾けない平蔵だったが、そういえばかつて矢崎にスパイした教来石景政(高橋和也)のお情けで、3人は落ち延びる。

勘助「侮ってはいけませぬぞ。いかに小者といえども」

グッとくる台詞である?! とにもかくにも、ヒサの鎧姿が凛々しかった。そういえば、相木市兵衛が海ノ口城から連れ出した美瑠姫(菅野莉央)は何処に?
 此度の謀略の褒美として、勘助には晴信(市川亀治郎)より最新の眼帯(家紋入り?)と陣羽織が贈られ、正式に武田の軍師に任じられる。2年の短き期間にて軍師にまで上り詰めたのは、最古参・諸角虎定(加藤武)の提案によるも、その実は勘助にコソコソさせないという裏の意味も。軍略はコソコソこそ肝要とは確かにそう。
 一方、由布姫(柴本幸)が晴信となじまないこと、早半年。晴信曰く、人寝ではむしろ奔放!なれど、事が終われば元の氷のはった湖がごとく!懐柔を託されるも、勘助にはその心を読めず。早々軍師解任の危機?! 三条夫人(池脇千鶴)は笛の音で由布姫の心の移ろいを察し、侍女・志摩(大森暁美)は、その心の乱れを女になったからと説く。みんな、生々しいなぁ。
 落ち延びた矢崎十吾郎、ヒサ、平蔵が火にあたっているところに、山伏姿にて真田幸隆(佐々木蔵之介)が暗闇からぬぬっと登場。笑った!ヒサの声色もケッサク。その後、ヒサたちは反武田で盛り上がる佐久・布引城の村上義清(永島敏行)のもとへ。この人、見るからに強そうです。(麻生結一)

第19回「呪いの笛」(2007年5月13日放送)

☆☆☆
 ようやく由布姫(柴本幸)が晴信(市川亀治郎)の側室となることを決意して、ドラマもググッと前進する。由布姫v.s.三条夫人(池脇千鶴)のガチンコ対決第2ラウンドでは三条、正体を取り戻す。確かにこの二人、定めにて晴信に嫁いだ同士なり。そして三条、つい本音を漏らす?!

三条夫人「かようなことを申してよいものか……。(晴信は)あまり見目麗しいとはいえませぬ。(苦笑)それじゃとて気落ちをしてはなりませぬ」

三条家は朝廷では笛と装束として仕えていたらしいも、三条夫人は笛が吹けない宝の持ち腐れ!というわけで、三条夫人は笛上手な由布姫に都より持参した笛を贈呈、そして見目麗しいとはいえない晴信をよろしくと頭を深々と下げる。直後、その贈られた笛を入念チェックする勘助(内野聖陽)を怒鳴りつけたは、由布姫が薄っすらと抱いた三条へのリスペクトゆえ。勘助は由布姫の身辺警護を任ぜられた勤めを忠実に果たしたのみなのだが。
 武田と諏訪が格別に強い結びつきであることを知らしめるための本式の祝言の後、第18回の重臣による評定で喧々囂々侃々諤々となった、問題の寝屋に至る。そこで何と由布姫は笛の独奏オールナイトを敢行!その笛の音を聴いて思わず眠りに誘われた晴信はそれに諏訪頼重(小日向文世)の呪いを思うも、源五郎(田中幸太朗)は三条夫人の呪いと断言。用意周到な勘助もさすがに笛の音までは調べ及ばず。あまりにも恐ろしいサブタイトル「呪いの笛」は、実はお笑いのネタでした?!
 また再び笛の独奏オールナイトを敢行するかと思いきや、晴信にその演奏を遮られた由布姫はその笛を侍女・志摩(大森暁美)から託された小太刀に持ち替えて晴信を襲う。クローズアップでは持っていなかったはずの小太刀が、ひきの画ですでに由布姫の手にある見せ方は鮮烈。ちょっと身のこなしが軽すぎる気もしたけれど、晴信が笛で相対する流れも時代劇的な様式がきれいだ。
 恨みを捨てねば生きられなかった勘助が由布姫とイコールのように、多くの家臣、領民の命運を背負うゆえ、もはや一人の男と女ではありえない(=国と国!)晴信と由布姫もまたイコール。ここで討たれるわけにはいかないと由布姫をねじ伏せた後の、晴信の心情告白がまた絶品だった。

晴信「一人になることを捨てて、かえって一人きりになってしまったがのう」

とは何とも含蓄深深しい。最初は違和感の塊だった晴信演じる市川亀治郎のくさい芝居も、それが次第に味に思えてくる。それを有効にするのも名台詞あってのことなのだが。(麻生結一)

第18回「生か死か」(2007年5月6日放送)

☆☆★
 心の臓を重く病んだ妹・禰々(桜井幸子)は諏訪から帰陣した晴信(市川亀治郎)に対して、寅王丸には晴信のようになってほしくないと恨み節を言い放ってまもなく逝く。ただ、実際の臨終のシーンはドラマにはなく、ナレーションがその幸薄い人生を締めくくるのみ。
 甲府の板垣の屋敷に入ってからも由布姫(柴本幸)のプンプン娘ぶりが持続される中、ちょっと面白かったのが、炎のような由布姫(柴本幸)を晴信の寝屋に入れるか否かで大もめする重臣の評定実況中継。ここで板垣(千葉真一)と並んで艶笑話に気を吐いたのは、意外にも(?!)最古参の諸角虎定(加藤武)であった。この間、ドラマが始まってから14分強、勘助(内野聖陽)いっさいしゃべらず。いったん口を開くや、晴信と由布姫の子作り案をぶち上げる。
 男女の睦み事もまた知略とばかりに晴信は由布姫に和歌を送るも、その歌を読むなり由布姫は爆笑!由布姫はこれが初笑いかな。そんな朗らかも長く続くはずもなく、由布姫v.s.甘利虎泰(竜雷太)、由布姫v.s.三条夫人(池脇千鶴)の二番勝負がドラマをダブルで緊迫させる。三条と刺し違える覚悟の甘利。最初は慰めの言葉をかけるつもりも、床の間に飾られた晴信の歌を見やるや、悪口雑言を浴びせる三条夫人(池脇千鶴)はその直前に出産したばかりの三男を失っていたか。
 そのすべてを見届ける勘助は、恨みを捨てねば生きられなかったかつての自らと由布姫の今とを重ね合わせる。サイブタイトル「生か死か」はストレートにシェクスピア。由布姫の決断のみならず、様々な生と死が交錯した第18回だった。(麻生結一)

第17回「姫の涙」(2007年4月29日放送)

☆☆★
 相変わらず息をつかせぬワンブレスの見せ方は堂に入っているのだが、奇妙に思える箇所もチラホラ。ただ、その奇妙ささえもこのドラマの味のようにも思えてきたりして。命を救った由布姫(柴本幸)を独断で逃がそうとした勘助(内野聖陽)だったが、そこに意図ありと思ったか否か、晴信(市川亀治郎)は由布姫を側室にすると言い出す。
 ここで首をひねったのが、諏訪より戻った板垣(千葉真一)にその旨を晴信(市川亀治郎)が言い放つ場面が、晴信の嫡男・太郎の守役を仰せつかった飯富虎昌(金田明夫)とその弟・源四郎(前川泰之)の立ち話よる伝聞になっていた構成。台詞にエフェクトをかけて囲み、律儀に回想じみたテイストを出してはくれているのだが、そうしなければならなかった意図はさっぱりわからない。晴信の側室問題でとっさの嘘をつくも、三条夫人(池脇千鶴)の侍女・萩乃(浅田美代子)に見破られ(聞き破られて?)、嫌味を言われてしまうわかりやすさとは対照的である。
 第17回随一の見せ場は、高遠との戦に諏訪家嫡男・寅王丸を連れ出そうと、晴信が諏訪頼重(小日向文世)を失った禰々(桜井幸子)と掛け合う場面であった。三条夫人を晴信の「ただの腹」呼ばわりまでした禰々は、晴信をかつての信虎(仲代達矢)になぞらえるが、晴信はすべては定めと言い捨てる。絶品は禰々が晴信に寅王丸を手渡すカット。俯瞰画から寅王丸はフレームアウトして、そこには禰々の震える手が残る。見ているこちらもまた身震いする。
 勘助によって逃がされた由布姫は、道中浪人どもに襲われるが、そこに勘助が駆けつけて命を救う。まさに勘助の自作自演、一人芝居の極めつけである。摩利支天を捨て、人の世の生き地獄をかみ締める由布姫(柴本幸)とミツが重なって見える意図は、いっそう鮮明になってきた。(麻生結一)

第16回「運命の出会い」(2007年4月22日放送)

☆☆★
 降伏した諏訪頼重(小日向文世)、その妻にして晴信(市川亀治郎)の妹・禰々(桜井幸子)、頼重の妹・由布姫(柴本幸)の処遇をめぐっての第16回も、一気呵成に見せきる力はいっさいの衰えを知らない。一兵たりとも武田軍を失うことなく、諏訪の地を奪い取ることに成功した勘助(内野聖陽)は一転、諏訪一族を根絶やしにすることを画策する。しかし、桑原城に立て篭もっていた由布姫は自害を拒否。次の瞬間、勘助は由布姫の手を引いて城内を行くのだった。
 勘助が由布姫の美女ぶりにほだされて命を救ったとすれば、それはどうかと思っただろうが、由布姫の姿がもっと生きたいと願ったミツ(貫地谷しほり)に重なったとすれば、それはいろんな意味で大いに説得力がある。いろんな意味で。
 飯富虎昌(金田明夫)、小山田信有(田辺誠一)、教来石景政(高橋和也)、原虎胤(宍戸開)、諸角虎定(加藤武)、そして甘利虎泰(竜雷太)ら重臣たちの密談でもミツの死がトピックに。このあたりの手厚さにも抜かりがないのがこの大河の素晴らしいところだ。
 それにしても、ミツの存在感が記憶に新しい貫地谷しほりが主演する次の朝ドラ『ちりとてちん』のキャスティングは素敵。あとは内容ということで。(麻生結一)

第15回「諏訪攻め」(2007年4月15日放送)

☆☆★
 高遠頼継(上杉祥三)を動かすことで、戦わずして諏訪頼重(小日向文世)を屈服させることに成功した勘助(内野聖陽)。さらに発言権を増してきた勘助に対して地団太を踏む甘利虎泰(竜雷太)という対立構図は前話とまったく同様も、策謀を畳み掛けてくる語り口は相変わらずスピード感があっていい。
 そしていよいよ由布姫(柴本幸)が初めて(?)まとまった台詞を吐く。勘助へのたてつき方以上に、言葉のセレクトぶりがかなりのうるさ型を思わせる?!(麻生結一)

第14回「孫子の旗」(2007年4月8日放送)

☆☆★
 関東管領上杉の軍が信濃の佐久に侵攻したのに乗じて、晴信(市川亀治郎)を侮る諏訪頼重(小日向文世)は武田との盟約を破って出陣。関東管領軍と戦わずして和睦し、武田を出し抜いて佐久の地を我が物とする。そんなこんなに逸る武田家の重臣たちの進言を差し置いて、勘助の諏訪勢二分案が晴信により採用されたために、とりわけ甘利虎泰(竜雷太)が怒るのなんのって。
 そんな緊迫した攻防から程遠く、勘助は晴信と隠し湯でさらに仲良しになる。

晴信「どこが気に入った?どこが好きじゃ?」
勘助「(中略)そのすべてを見通す眼光にございます」
晴信「馬鹿!わしのことではない。孫子のことだ。気味の悪いことを申すな(久々にかなり明るい!)」

確かにこれは仲良しを通り越して、ちょっと気味が悪いか?! そしてこの仲良し風呂中に勘助が披露した孫子の一説が、新しき甲斐の旗にまたまた採用。勘助の快進撃はドラマの面白みとイコールなり。(麻生結一)

第13回「招かれざる男」(2007年4月1日放送)

☆☆☆
 破格の待遇で召し抱えた勘助(内野聖陽)が口先だけの武勇を唱える語り者ではないことを家中に示すべく、晴信(市川亀治郎)は勘助に戦を仕掛ける、ってあたりの逆説ぶりがいかにもひねりの利いたこの大河ならではである。勘助と原虎胤(宍戸開)との船上一騎打ちは活劇的な面白みにあふれているも、このドラマの凄みはそれだけにとどまらない。
 疱瘡にかかった次男・次郎のために、三条夫人(池脇千鶴)と大井夫人(風吹ジュン)がひたすらに念仏を唱える場面と船上一騎打ちのカットバックは、この場面をただならぬシーンにまで引き上げている。ここの語り口は信虎(仲代達矢)追放に北条氏綱公御書置を引用してみせた第11話に近しい。
 三条夫人と勘助の初対面の場面の緊張感も尋常ではない。回を追うごとに、この大河は決して平凡な出来ばえにとどまらないことを証明しはじめている。さりとて、イカツイだけのドラマでないことは、みっともなく敗れる泳げない原虎胤がちょっぴりキュートだったりするところでも明白。それをまったく知らなかった勘助はさらにキュート。それとて、

勘助「兵者詭道也」

か。勘助、字はうまくない模様。(麻生結一)

第12回「勘助仕官」(2007年3月25日放送)

☆☆★
 勘助(内野聖陽)の武田家仕官大作戦、せこい!それがまた、いかにも勘助っぽいとも言える。青木大膳(四方堂亘)に駿府滞在中の板垣信方(千葉真一)を襲わせる一見の愚作が、実は板垣が甲斐の国の守護となった晴信(市川亀治郎)にお伺いをたてるところまでをも計算に入れた緻密な策謀だったとは。青木大膳を事前の仕込みで斬り捨てる非情ぶりも、非ヒロイックなこの主人公らしい。この卑怯者ぶりは勘助のイメージとして後々にまで居残るだろう。
 以前の北条の内部事情も、今回の板垣信方(千葉真一)が駿府を訪れる話も、どちらも青木大膳からの裏情報だった。無骨を絵に描いたような青木大膳が密かなる情報通だったのは、ドラマ的な都合のいい設定か。それとも当時の浪人たちにはそういう情報網があったということだろうか。
 それにしても、このドラマ、女っけがありません。女性キャストで台詞があったのはヒサ(水川あさみ)と禰々(桜井幸子)だけで、それも一言二言のみだし、由布姫(柴本幸)はもはや無言役の趣だ。こうなったら、トコトン男臭さを突き詰めていただきたい。(麻生結一)

第11回「信虎追放」(2007年3月18日放送)

☆☆☆
 息子・晴信(市川亀治郎)が父・信虎(仲代達矢)を甲斐から追放するべく、用意周到に準備され、そして果たされた誰一人血を流すことのない謀反の一部始終。櫓の上から見下ろす晴信とその家臣たちと、下から見上げる信虎の構図が抜群だったロケの効果はやはり絶大。また、父・北条氏綱(品川徹)から息子・氏康(松井誠)への遺言状である、北条氏綱公御書置の引用が、この場面のアイロニーをさらに強めて見事だった。

信虎「飯富虎昌(金田明夫)、諸角虎定(加藤武)、原虎胤(宍戸開)!」

と甘利虎泰(竜雷太)も合わせて、みんな信虎がから賜った“虎”つきだったんですね。ここでもまた信虎は顔のアップ中心の捌き。瞳に涙を浮かべたその表情はこれまでの狂気の人から一転、あまりにも痛々しい。
 勘助(内野聖陽)が今川の使者として登場すると、ドラマの主眼は勘助の復讐劇にシフト。今川義元(谷原章介)から賜った革の高級眼帯を捨て去って、ミツ(貫地谷しほり)が作ってくれた藁の眼帯に付け替える場面から、勘助は尋常ならざる殺気をほとばしらせる。それに気付いた信虎は、何と先に仕掛けるか。もはや破れかぶれの信虎の殺気は、勘助のそれにも負けていない。
 唐突に眼前に広がった草原での一騎打ちは視覚的にもまた見ごたえたっぷりだった。ついに勘助が太刀を抜いたそのときの信虎の含み笑いは、いったい何を意味していたのだろう?もしかして、己自身を笑っていたのだろうか。
 せっかくの緊迫した場面も、青木大膳(四方堂亘)が信虎に斬りかかって即終了となるも、グ〜ンと草原が俯瞰になるロングショットも挟まって、ここでの画作りはことごとく見事だった。それでも信虎は歪んだアップで一貫させるとはぶれないなぁ。

信虎「わしが育てたあのような猛々しい武将」

と息子・晴信を賛嘆する信虎の言葉はその思いと矛盾するところでここに極まる。信虎には今後もコンスタントの登場を希望したい。(麻生結一)

第10回「晴信謀反」(2007年3月11日放送)

☆☆
 息子・晴信(市川亀治郎)が父・信虎(仲代達矢)を追放する前夜祭のような回。武田家内々の工作に、今川との駆け引きも絡まってきたにはきたが、全体的には意外にあっさりと皆々で同意。ただ一人真相から取り残されたままに駿河へ向かった信虎がかなりの間抜けに見える。
 己で己を弔うかのように死人状態の生活を送っていた勘助(内野聖陽)が、飯富虎昌(金田明夫)と教来石景政(高橋和也)の密談を立ち聞きする安易さもちょっとどうかと思ったけれど、主役である勘助がメイントピックから取り残されるのもまた困った話ではあるか。(麻生結一)

第9回「勘助討たれる」(2007年3月4日放送)

☆☆★
 山本勘助(内野聖陽)、海ノ口城を落とした武田晴信(市川亀治郎)を弓矢で狙った平蔵(佐藤隆太)の身代わりとなって、天井から転落参上。そんな勘助を成敗しようとする板垣(千葉真一)の抜きの早さはやっはり日本一だなぁ。板垣がというよりも、千葉真一がというべきかもしれないが。
 自ら勘助の首に向けて太刀を振り下ろすが、すんでの所で止め、「偽軍師、山本勘助が首を討ち取った』と晴信が勘助の命を救ってやる場面は、大いに見ごたえがあった。こういう土埃にまみれた緊迫感こそがこの大河ならではの味わいになっていくのではないだろうか。生き恥をさらしたくなくともらす勘助に笑いながら、

板垣「自ら地獄に参れ!」

って、まったく板垣のカッコいいことといったら。
 この第9回は初登場のキャラクターも多数で、ただでさえ複雑な人物相関ががさらに複雑に。晴信の妹・禰々(桜井幸子)を同盟を結ぶ諏訪頼重(小日向文世)に嫁がせるも、頼重がかつて側室に生ませた娘・由布姫(柴本幸)のあまりの美しさには、信虎は完全エロじじいと化す。諏訪の家臣・矢崎十吾郎(岡森諦)の一人娘・ヒサ(水川あさみ)は、勘助と別れて行き倒れていた平蔵の命を救い、興味を持つ。大河名物の男役はヒサかな。
 そして、信虎に甲斐から追放されると悟った晴信は信虎を水害にたとえ、板垣に謀反をほのめかす。この作品には塊で見せきるような不思議な感覚があって面白い。(麻生結一)

第8回「奇襲!海ノ口」(2007年2月25日放送)

☆☆☆
 正直言って登場人物たちは誰が誰だかよくわからなかったが(初めて出てきてすぐ死んで、名前も難しいし)、それでもこれだけ面白いのだからまったく大したものである。武田軍を迎え撃つ平賀源心(菅田俊)を城主とする海ノ口城に、これまでコンスタントに汚らしかった勘助(内野聖陽)がようやっと鎧姿にて入場。
その初仕事であった城の泥塗りやら何やらと、諸国の戦を見聞して得た兵法を連発する勘助がいよいよ本領発揮して、信虎(仲代達矢)が率いる八千の武田軍を見事に退却させる。しかし、初陣にしてしんがりを務めた晴信(市川亀治郎)が三百の手勢でまさかの夜討を仕掛けてきたため、追い討ちをかけるべきとの勘助の進言を聞き入れなかった平賀源心は、晴信に討ち果たされる。
 それにしてもこのドラマの男臭さは何たることか。カメラに映った全登場人物中、女性は台詞なく自害した平賀夫人(三原わかほ)とその娘・美瑠姫(菅野莉央)のみ。美瑠姫は子供にて、大人の女性のしゃべりは一言もなかった回ということになる。その踏ん切りのよさが何とも頼もしい。
 その美瑠姫は相木市兵衛(近藤芳正) とともに落ち延びたので、これが最後の出番というわけではないだろが、何せ誰が誰だかよくわからないので、そのあたりもさっぱりわからない。歴史の何たるかがわからないのはちとつらいけれど、それでもドラマ的にそのボルテージが高まってきてることだけはよくわかるのである。(麻生結一)

第7回「晴信初陣」(2007年2月18日放送)

☆☆★
 酒は朝方しか飲まない等々、勘助(内野聖陽)に対する北条氏康(松井誠)の謎かけは意地悪に次ぐ意地悪。戦は欲を満たすためにするものではないと言い放つ氏康に、それは恵まれた境遇だからこそ言えることと切り返すのがやっとの勘助。武田を討ちたければ、恨みを忘れて己の大望だけを見つめよと捨て台詞を残す氏康が、

晴信(市川亀治郎)「恨みでは武田は討てんぞ、山本勘助!!! (中略) 失望の中にこそ、真の大望は生ずる!!!」(第4話)

と奇妙なほどに明るく言い放った晴信の姿とうっすらと重なってくる。
 武田がダメなら今川へ、今川がダメなら北条へと仕官先を求めて渡り歩く勘助の節操のなさが、逆に這いつくばって生きていくバイタリティに映って何とも魅力的である。そんな勘助は次なる舞台・信濃にて、瞬く間に平蔵(佐藤隆太)と遭遇。その平蔵が仕える真田幸隆(佐々木蔵之介)の食客として、勘助はこの地にとどまることになる。真田幸隆は見るからに不遇な祖国行脚の浪人が大好き?! 恨みは戦場で人を強くするも、足元もすくうのも恨み。要は使いこなすことが肝要と説く真田は、北条氏康とは一味違った懐の深さを見せる。
 紅葉が「おめでたさん」な縁側で、三条夫人(池脇千鶴)にもらした言葉は本音だったかそうでなかったか、晴信に厳しくあたる信虎(仲代達矢)がいっそうに嫌らしくなってきた。どこまでも平行線をたどるこの父と息子。センターをはずした信虎のアップはかなり怖い。確かにあれだけ明るいキャラで迫られるとちょっと嫌かな?!
 そして信濃の国佐久郡海ノ口城を目指して、晴信は初陣。晴信と勘助は敵同士として合間見えることになるらしい。真田の妻・忍芽役でお久しぶりの清水美砂が登場。三条夫人役の池脇千鶴と並んで、朝ドラヒロインの揃い踏みである。ミツ(貫地谷しほり)亡き後、女っけのないこの大河ドラマだけに、がんばっていただきたいところ。(麻生結一)

第6回「仕官への道」(2007年2月11日放送)

☆☆★
 武田への復讐を果たすべく、今川への仕官を願うも、梅岳承芳改め今川義元(谷原章介)に辱めを受けた勘助(内野聖陽)はその足で、今度は上杉の間者が潜んでいると申し出て北条氏康(松井誠)に仕官を願い出る矢継ぎ早の展開は、いよいよダイナミックが本始動になったかと期待させるものだった。しかし北条には福島越前守(テリー伊藤)の子息・彦十郎(崎本大海)が加護されており、花倉の乱では今川の家臣であったと暴露された勘助が絶対絶命のピンチとなったところで次回へ。このあたりの盛り上げ方も巧みだ。
 過剰なほど活舌よく声が明るいゆえに若いんだか年寄りなんだかよくわからない晴信(市川亀治郎)は、これまた極端に脱力した京都の公家の娘・三条夫人(池脇千鶴)と政略結婚。この両極端夫婦の今後も見守らねば。(麻生結一)

第5回「駿河大乱」(2007年2月4日放送)

☆☆★
 今川氏のお家騒動、花倉の乱を描いた第5回。梅岳承芳(谷原章介)とその軍師・雪斎(伊武雅刀)の策謀により、宿敵・武田信虎(仲代達矢)は約定を結んでいた福島越前守(テリー伊藤)に援軍を送らず。福島群は花倉城での篭城に耐え切れずに敗走。勘助(内野聖陽)は宿敵・信虎に対しての間接的な復讐の機会を失う。
 逃げ落ちる福島越前守に仕えた実兄・山本貞久(光石研)との一騎打ちを経て、ついには腹を切った貞久の介錯をせねばならなかった勘助の境遇の何たる皮肉。そしてここに山本貞久を演じたミスター大河ドラマ、光石研の出番が終わる。
 顔見世的な登場人物が多いので、歴史に明るくないものにとってはわかりにくいところも多いが、骨太なドラマ作りは味の薄い民放の連ドラ群とは比べようもない。ただ、オープニングにその回を含めた解説を入れるのにはやはり賛同できない。余計にワケがわからなくなってしまうと思いませんか?(麻生結一)

第4回「復讐の鬼」(2007年1月28日放送)

☆☆★
 第3回のラストからすでに暗示はあったが、鹿狩りにて正体を失う信虎(仲代達矢)によって、廉なくミツ(貫地谷しほり)が殺されてしまう。その首から提げられた小像 「摩利支天」が信虎の放った矢からいったんミツの命を守ったにもかかわらずである。直接の描写はなかったが、その後に追い討ちをかけた信虎の残忍ぶりがいっそうクローズアップされるところ。
 この大河の最序盤はミツの野太い生きっぷりこそに心惹かれていたので、早すぎる死はあまりにも残念。ミツを演じる貫地谷しほりはその最期までとても高級だった。ただ、ここで 副題の通りに勘助(内野聖陽)が「復讐の鬼」と化さなければ、『風林火山』が『風林火山』ではなくなってしまうとあっては、この展開も致し方ない。
 第4話最大の見どころは、直後に村にやって来た板垣信方(千葉真一)と勘助との壮絶な対決であった。これほどまでに激しい殺陣を大河で見たのは『武蔵 MUSASHI』以来か。千葉真一は『柳生十兵衛七番勝負』の宮本武蔵ぶりもすごかっただけに、今後の大太刀回りにも期待したい。
 それにしても、晴信(市川亀治郎)が妙に明るい。勘助との初対面に、

「恨みでは武田は討てんぞ、山本勘助!!! (中略) 失望の中にこそ、真の大望は生ずる!!!」

って明るいなぁ。(麻生結一)

第3回「摩利支天の妻」(2007年1月21日放送)

☆☆
 仕官かなわず、勘助(内野聖陽)が再び甲斐に戻ってくるお話。勘助の子を身ごもったミツ(貫地谷しほり)が相変わらず貫禄があっていいも、他は無風の印象であった。第2回では誰だかよくわからなかった晴信(市川亀治郎)が、父・信虎(仲代達矢)からの風当たりを弱めるためのうつけ者として本格登場したけれども、様々に違和感があった。いずれ慣れるとは思うのだが……。(麻生結一)

第2回「さらば故郷」(2007年1月14日放送)

☆☆★
 諸国をまわる修行の旅を終え、勘助(内野聖陽)が故郷の三河牛窪に戻ってくるところからで、途中に駿河国富士郡山本村に生まれた源助(勘助の幼名・山内颯)が出家を拒み、大林勘左衛門(笹野高史)に拾われて大林家の嫡男となる24年前の回想が挟まれる。しかし、15年ぶりに帰った大林家には実子の勘兵衛(門野翔)が生まれており、勘助があげた敵将・赤部下野守(寺島進)の首も勘左衛門の手はずで勘兵衛の手柄にされてしまうところで、勘助は大林家との絶縁を決意する。

勘左衛門「言いそびれておったが、そなたの父と母はそなたが放浪中に身罷られた」

って、そんな大事なことを言いそびれられちゃ、やっぱり絶縁するしかないでしょうね。
 その後、駿河に向かった勘助は実兄の山本貞久(光石研)と再会する。貞久役に扮するはレギュラー大河役者の光石研!『武蔵 MUSASHI』『新撰組』『義経』と連続出演していたも、『功名が辻』ではお姿を拝見できずさびしく思っていたところに、早々の大河復活である。
 この兄・貞久との関係性が、信虎(仲代達矢)によって手合わせさせられるる武田家の嫡男である勝千代(後の信玄・池松壮亮)と弟である次郎(園部豪太)との関係性とも折り重なって見えて、早々にドラマとしての分厚さが出てきた。(麻生結一)

第1回「隻眼の男」(2007年1月7日放送)

☆☆
 新しい大河ドラマはまたもや戦国物と新鮮味に欠けるが、井上靖の原作はこれが初大河とは意外や意外。生誕100年の幸先は上々ということで(それにしても昨年のイプセンの没後100年、シューマン没後150年は寂しかった。没後的アニヴァーサリーは生誕のそれを上回れないということ?!)。
 主要登場人物がCGキャラクター風に紹介されるアバンタイトルを見て、最初にキャスティングのリストを眺めた時の不安が再びよぎったが、『てるてる家族』のいい思い出が残る大森寿美男脚本作だけに(『クライマーズ・ハイ』も力作でした。これを土曜ドラマ第1弾にすればよかったのに)、今後への期待は残す。
 諸国を放浪する浪人者に過ぎなかったのちの山本勘助(内野聖陽)、大林勘助が初めて甲斐の国にやってきたところから物語はスタート。武田信虎(仲代達矢)らのほとんどが顔見世的な登場に過ぎなかった中で、二度にわたって勘助に命を助けられる葛笠村の農民の娘・ミツ(貫地谷しほり)が一人気を吐いていた。(麻生結一)

風林火山

大河ドラマ
NHK総合日曜20:00〜20:45
制作・著作:NHK
制作統括:若泉久朗
原作:井上靖
脚本:大森寿美男
演出:清水一彦、磯智明、田中健二、東山充裕、福井充広、清水拓哉
音楽:千住明
語り:加賀美幸子
出演:山本勘助…内野聖陽、武田晴信(信玄)…市川亀治郎、長尾景虎(上杉謙信)…ガクト(Gackt)、三条夫人…池脇千鶴、飯富虎昌…金田明夫、小山田信有…田辺誠一、馬場信春(教来石景政)…高橋和也、柿崎景家…金田賢一、相木市兵衛…近藤芳正、原虎胤…宍戸開、河原村伝兵衛(伝助)…有薗芳記、武田信繁…嘉島典俊、駒井政武…高橋一生、武田信廉…松尾敏伸、武田太郎…木村了、北条新九郎…早乙女太一、浪…占部房子、葛笠太吉…有馬自由、おくま…麻田あおい、長尾晴景…戸田昌宏、春日源五郎…田中幸太朗、飯富源四郎…前川泰之、庵原之政…瀬川亮、北条氏綱…品川徹、朝比奈泰能…下元史朗、武藤永春…中山正幻、松田七郎左衛門…榊英雄、前島昌勝…塩野谷正幸、安…あめくみちこ、菊代…水沢アキ、山本貞幸…伊藤高、牧野成勝…津村鷹志、真田幸隆…佐々木蔵之介、妻鹿田新介…田中実、忍芽…清水美砂、萩乃…浅田美代子、平蔵…佐藤隆太、ヒサ…水川あさみ、美瑠姫…真木よう子、於琴姫…紺野まひる、リツ…前田亜季、今川義元(梅岳承芳)…谷原章介、桃…西田尚美、笠原清繁…ダンカン、河原隆正…河西健司、妻鹿田新介…田中実、禰々…桜井幸子、ミツ…貫地谷しほり、由布姫…柴本幸、矢崎十吾郎…岡森諦、小島五郎左衛門…高田延彦、津田監物…吉田鋼太郎、平賀源心…菅田俊、山本貞久…光石研、福島越前守…テリー伊藤、北村右近…きたろう、長野業政…小市慢太郎、葉月…真瀬樹里、真田信綱(源太左衛門)…森脇史登、竜若丸…太賀、岡部親綱…宮路佳伴、小山田弥三郎…浅利陽介、四郎…斉藤圭祐、長尾政景…建蔵、春原若狭守…木村栄、春原惣左衛門…村上新悟、深井…荻野英範、宮下…竹田寿郎、葛笠茂吉…内野謙太、高梨政頼…大鷹明良、近習…大野清志、四郎…本川嵐翔、初鹿野伝右衛門…宮坂ひろし、屋代越中守…大谷亮介、大須賀久兵衛…村井克行、軒猿…竜小太郎、望月源三郎…伊沢弘、芦田信守…飯田基祐、三条西実澄…光岡湧太郎、四辻季遠…西川端、太郎…小林廉、寅王丸…澁谷武尊、北条綱成…石橋保、晃運字伝…冷泉公裕、真田源太郎…荻原真治、真田徳次郎…坂井和久、本間江州…長江英和、福島彦十郎…崎本大海、上杉朝定…竹本純平、風魔…吉井有子、遊女…下川ともこ、マキ…おおたにまいこ、大井貞隆…螢雪次朗、楽厳寺雅方…諏訪太朗、望月源三郎…伊沢弘、望月新六…松原正隆、真田源太郎…中村圭祐、侍女…栗山かほり、諏訪満隆…牧村泉三郎、守矢頼真…大木章、高遠連峰軒…木津誠之、武田太郎…加藤清史郎、浪人たち…外川貴博・野上昇馬・中谷隆信、侍女…松山愛佳、シテ…佐久間二郎、ツレ…角当直隆、ワキ…森常好、笛…一噌庸二、小鼓…幸信吾、大鼓…安福光雄、後見…小島英明、地謡…古川充・坂真太郎・桑田貴志、有賀清正…京一郎、諏訪頼高…小野賢章、川除頭領…鶴忠博、医者…久保晶、青木大膳…四方堂亘、大井宗芸…庄司永建、飛鳥井雅教…亀山助清、源太郎…中村圭佑、武田次郎…園部豪太、大井行頼…上杉陽一、平賀夫人…三原わかほ、美瑠姫…菅野莉央、玄広恵探…井川哲也、彦十郎の母…大須賀裕子、藤七…松川尚瑠輝、源助…山内颯、庵原家家来…二橋進、近習…五十嵐大輔・久米原信昭、今川氏輝…五宝孝一、側室…松谷由起子、武田勝千代…池松壮亮、大林勘兵衛…門野翔、諏訪頼重…小日向文世、高遠頼継…上杉祥三、諏訪満隣…小林勝也、大林勘左衛門…笹野高史、赤部下野守…寺島進、勝沼信友…辻萬長、村上義清…永島敏行、須田新左衛門…鹿内孝、本庄実仍…木村元、津田監物…吉田鋼太郎、常田隆永…橋本じゅん、小笠原長時…今井朋彦、志摩…大森暁美、キヌ…絵沢萠子、直江実綱…西岡徳馬、北条氏康…松井誠、清水吉政…横内正、倉賀野直行…大門正明、大熊朝秀…大橋吾郎、上杉憲政…市川左團次、太原崇孚雪斎…伊武雅刀、上杉定実…鈴木瑞穂、庵原忠胤…石橋蓮司、諸角虎定…加藤武、甘利虎泰…竜雷太、板垣信方…千葉真一、大井夫人…風吹ジュン、寿桂尼…藤村志保、武田信虎…仲代達矢、宇佐美定満…緒形拳