ラジオドラマ：2001年4～6月

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ラジオドラマの芸術

【2001年4月～6月】

その後の断腸亭日乗～佐渡情話編～

（NHK-FM:2001.6.16）

FMシアター
作/古川壬生　演出/川口泰典
出演/藤村俊二、岡崎友紀、小須田康人、吉村実子、仁科有里、柳澤愼一

☆☆★
　単発が原則のFMシアターでは例外中の例外となるシリーズ第3弾。冒頭のタコ寄せの術から、そのノリはいつもながら遊び心満載。オムライスの話、“ヌリヌリヌリのペタペタペタ”、とは何とリアルな。オムライスがどんぶりものであるという珍説まで飛び出して、言葉遊びも極まっていくわけですけど、聴いてる方よりも、書いてる本人の方が楽しそうという聴後の感想も、やはりいつも通り。もちろん、その楽しげな様のおこぼれぐらいは、頂戴できるんですけどね。

男たち

（NHK-FM:2001.6.9）

FMシアター
制作/NHK徳島放送局　作/富永智紀　演出/大久保篤
出演/林次樹、川原和久、河東けい、佐藤友紀、高津住男

☆☆★
　ハードボイルドなタイトルとは似ても似つかぬ、今様“弥次喜多道中”といったところか。今様だからって、おやじギャグ炸裂のノリ自体はなじめないけど、四国の秘境でイノシシ狩りをはじめるあたりから、異色の面白さになっていく。
　「金がなくても何とかなる。それは学生時代の美学だ。金があれば何とかなる。これが社会人の真実だ。」とは、身にしみるなかなかの名言。徳島放送局制作。

反面教師

（NHK-FM:2001.6.2）

FMシアター
制作/NHK大阪放送局　作/牧野晋哉　演出/訓覇圭
出演/石井正則、渡辺いっけい、濱田マリ、伊藤えん魔、出口結美子、山西惇、笑福亭松之助

☆☆★
　石井正則と渡辺いっけいの掛け合いが聴きどころのコメディ。部分的にはよく書けてて、抜群に面白いんだけど、ところどころアレって感じに緩い部分もある。まぁ、コメディとはそんなものなのかもしれないけど。大阪放送局制作。

残花の残り

（NHK-FM:2001.4.28）

FMシアター
作/山本雄史　演出/江澤俊彦
出演/塩見三省、庄司歌江、山西惇、鶉野樹理、阿部朋子、下塚誠、飯沼慧、小笠原町子、津島瑞穂、押切優子、堀尾佳世

☆★
　ここしばらくラジオドラマに乱立してる介護物。リストラ、離婚、自殺未遂とエピソードには事欠かないんだけど、それも何か取ってつけたような感じで、良心的な作品という以外の印象はない。

カサブランカ

（NHK-FM:2001.4.21）

FMシアター「放送協創作ラジオドラマ脚本懸賞募集佳作」
作/横山玲子　演出/江澤俊彦
出演/鬼頭典子、倉野章子、岩崎良美、頭師隆雄、草野裕、米山奈緒

☆☆
　第29回創作ラジオドラマ脚本懸賞募集の佳作入賞作品のドラマ化。最初の３分で状況説明から心情告白までの一通りをやってしまい、その後の10分ですべての裏話までもダイレクトに説明しきってしまうやり方に、これってわかりやすいドラマを書くことを競う賞だったのかなと、？な気分になる。
　愛人の存在を知るあたりは、三角定規で角度まで測って書いたような丁寧な筆致で、奇想天外は何もないけど、定型はきちっと守られている。もう一人の父親の顔をあぶりだす作業をほとんどやらないのは、ドラマとしての幅を失うとはいえ、それはそれで一つのやり方だろう。ただ結局、終末期医療の広告塔風に落ち着いてしまう展開には肩透かしを食わされた。大人になったらわかる、といった空々しい言葉でまとめに入るあたりは特にいただけない。医者の台詞にも疑問が。まず言わないだろうというような内情吐露は、リアリティに欠ける。聞いてるほうも、そこまで説明してもらわないとわからないほどバカじゃない。
　母、娘、愛人の三者三様のズルさ、怖さ、気持ち悪さをさらっとナレーションにして表現してしまうあたりの残酷さは、絵空事と言ってしまえばそれまでだけど、やはり男のライターでは書けない表現の領域。御骨の肩身分けというエスカレートぶりには、ただただ驚くのみだけど。

北千島女工節異聞

（NHK-FM:2001.4.14）

FMシアター
作/大久保昌一良　演出/保科義久
出演/古尾谷雅人、上杉祥三、いしのようこ、三上剛仙、IKKAN、山崎満

☆☆☆☆
　これってラジオのオリジナル？ぜひ映像で見てみたいと思わせるスケール壮大な男のドラマの傑作です。逆にここまでのスケール感は、オーディオ・ドラマという想像の世界だからこそ可能だったとも言えるでしょうけど。
　主人公の骨太な生き様と太棹の音色がピッタリで、とりわけ真冬の海に響き渡る「北千島女工節」が最高。古尾谷雅人、上杉祥三、いしのようことキャストも揃っていて、久々に噛みごたえのある作品でした。