春のワルツ
第7回「母の眠る島へ」(2006年11月16日放送)
☆☆★
置き忘れられたフィリップ(ダニエル・ヘニー)の携帯電話がきっかけでウニョン(ハン・ヒョジュ)がチェハ(ソ・ドヨン)の本音を聞いてしまう話にしろ、ウニョンが泥棒と間違えられたところにチェハが居合わせる話にしろ、使い古されたネタといえばそうなのだけれど、こういうオーソドックスなシークエンスほど安心して楽しめるのがこのドラマの大きな長所。その後、母親の墓参りをしようと故郷の島を訪ねたウニョンの前にフィリップが突然現れ、帰りの船をうっかり逃してお泊まりコースという流れも既定路線といった感じだが、いつもながらウニョン×フィリップの組み合わせは雰囲気がよいので、こちらもドラマ的にはノープロブレム。伸びをするフリをして女の肩に手を回す男、なんてベタなシーンも、この二人なら微笑ましく見られる。一方で、ウニョンに対してざわつく心に悩むチェハも、その端正なマスクにしか魅力を感じられなかった開始当初に比べると、ずいぶんと切ない存在感を醸し出すようになってきた。それに対し、繰り返しになるが、四角関係を構成するもう一人であるイナ(イ・ソヨン)は未だに魅力的に見えてこない(ウニョンに対するライバル役としても、一人の女性としても)。チェハがウニョンのために買ったコンパクトを、自分にプレゼントしようとしていると誤解しているあたりが糸口になると良いのだが。
今回、久々に少女ウニョン(ハン・ソイ)が回想で登場。どうやら彼女、手術後に一度は島に戻ったものの、その後スホ(ウン・ウォンジェ)の父チョンテ(イ・ハヌイ)に半ば騙されてソウルに連れてこられ、そのまま置き去りにされたということのようなのだが、この展開はいくらなんでも駆け足過ぎて納得できない。こんなことなら、台詞で簡潔に語ってくれた方がまだマシというものだ。もうひとつ気になるのは、病院の記録でウニョンが死亡したことになっている理由で、今回の回想でこれも説明されるかと思っていたがそれはなかった。2〜3話あたりで展開された過去話自体は良かったし、現代での話も今回のようにそれ単体で動いてくれればそう悪くないのだが、そのふたつが絡み合う部分になると途端に語り口が鈍る印象がどうしてもぬぐえない。(安川正吾)
第6回「謎の小箱」(2006年11月9日放送)
☆☆
ウニョン(ハン・ヒョジュ)が自分の思い出の中の少女ウニョン(ハン・ソイ)でないとチェハ(ソ・ドヨン)が思いこんだ理由のひとつ、ウニョンの消息を病院の担当者に聞くシーンが直接的に描写されず、チェハが思い出す言葉という形でのみ視聴者には提示されているのだが、些細なことながらこれが物語のバランスを崩した。ウニョンに対するチェハの諦念がまったく実感できないものになってしまっている。自分のものでない記憶を自分のものとして抱えなければならないチェハの切なさは随所に感じられるものの、これまたスホ(ウン・ウォンジェ)がチェハに成り代わる過程がはしょられたが故に高まりきれない。迷いの中で、ウニョンとの関係をますますこじれさせてしまったチェハはイナ(イ・ソヨン)と急速に接近するのだが、本命をあきらめざるを得なかったが故に手近にいた女に声をかけた程度のものにしか見えないことも、結局はここまでの過程が描き切れていないことに起因するのではないだろうか。
それでも、フィリップ(ダニエル・ヘニー)とウニョンのシーンはやっぱり微笑ましい。作り手もそれをわかっているのだろうか、これでもかというぐらいに長時間にわたり、二人の絡みのシーンを入れてくる。これはこれでいささかバランスを欠いている気もするのだが、強引だがチャーミングなフィリップと、派手ではないが清楚で意志の強いウニョンといういかにもラブストーリー的に美しい取り合わせの妙ゆえにこちらはあまり気にならず。“謎の小箱”をつい手にしてしまったウニョンがチェハから罵声を浴びせられるシーンで次週へというまたぎ方は、いかにもドラマティックでわくわくさせられるところだ。(安川正吾)
第5回「ピンク・トラック」(2006年11月2日放送)
☆☆
ソウルに帰ってきたチェハ(ソ・ドヨン)とフィリップ(ダニエル・ヘニー)、二人の男がそれぞれに所在の掴めないウニョン(ハン・ヒョジュ)を探し求めるというお話。それ自体は、まあ恋愛ドラマ初期の他愛もないエピソードと言うことで納得もするが、そのあたりの比較的ゆるいお話はきっちり語られる割に、結局過去の回想においてスホ(ウン・ウォンジェ)がチェハに成り代わることになった過程はすっとばされたままというバランスの悪さには少々疑問を感じる。さらに今回の回想を見ると、「10才ぐらいまでピアノに触れたこともなかったスホがチェハに成り代わってからピアノに打ち込んで15年経ったら世界的ピアニストのできあがり」という、「純情きらり」もびっくりのご都合展開を本気でやってしまう恐れも見えてきた。もしそうだとしたら、これまでの評価をすべて星半個分ぐらいずつマイナスしてしまいたいところだ。いやしかし、少年スホと現在のチェハの顔のあまりの違いを思えば、まだ何らかの仕掛けがある可能性もあるか!?
現代編に関しては、ひたすらに無口な美青年であるチェハと、愛嬌のあるハンサムガイという印象のフィリップの対比はなかなか楽しく、悪くない。けれど、ただ一人ウニョンに対抗できる存在であるはずのイナ(イ・ソヨン)のキャラクターに全く魅力が感じられないのはどうにも歯がゆい部分。チェハがイナのレコード会社の所属になって、少しは仕事している様子が出てくるかと思えば、どこまでも色ボケしているようにしか見えない。まあそういう意味では、ウニョンにしても現代の彼女よりも少女時代のウニョン(ハン・ソイ)の方がよっぽど強烈に印象に残ってはいるのだけれど。(安川正吾)
第4回「帰郷」(2006年10月26日放送)
☆☆★
回想は一時おあずけとなり、現代編へ。チェハ(ソ・ドヨン)の演奏会の後、フィリップ(ダニエル・ヘニー)からパーティに誘われたウニョン(ハン・ヒョジュ)は、先に着いていたチェハとイナ(イ・ソヨン)に会い、ここでようやくこのドラマの主役たちが一堂に会することに。それによって生まれる微妙な駆け引き感は、恋愛ドラマとしてはやっぱり必要不可欠な要素で、これでずいぶん雰囲気も引き締まった。自分の前では“アリス”と名乗ったウニョンのことを誤解したチェハがウニョンに冷たく当たるなんてシーンは、初回の不出来が影響してか若干唐突な印象ではあるのだが、この二人が愛し合うようになるのであろう今後の展開を思えばニヤニヤさせられるところ。この後のウニョンとフィリップのカタコト同士のやり取りも、第1話に続いて楽しかった。翌朝、あの“アリス”こそ、自分の思い出の中の少女ウニョン(ハン・ソイ)であることにチェハが思い当たるまでも丁寧に積み上げられていたし(回想編を見るにつけ、本来はこういう丁寧さこそがこの作品のペースなのだろう)、ウニョンと彼女を追ったチェハのクリスタルミュージアムでのすれ違いも、いい感じでやきもきさせられて、ようやくこのドラマも軌道に乗った印象。その2カ月後にチェハが韓国に帰ることを決意するための説得力も充分だ。韓国語を猛勉強したらしいフィリップのカタコト会話がもう聞けないのかと思うと少々残念ではあるけれど。
ハーフであるフィリップになぞらえて、自分も半分がチェハでもう半分は別の人間だと語るチェハの言葉から、再び回想パートへ。倒れたウニョンを病院に運び込んだスホ(ウン・ウォンジェ)は、そこで自分のことをチェハと呼ぶ婦人に出会う。なるほど、ここから「スホ=チェハ」の謎が解明されていくわけだな、よしよし……と思ったら、スホはあっという間に「チェハ」名義のパスポートを持って、婦人とその夫とともに海外へ旅立ってしまった!?次回予告を見る限りでは、どうやらそこまでの経緯は次回に説明してくれるようだが、それなら一体なぜこんな妙な構成にしてしまったのか。次回への引っ張りということならば、それまでの要素でじゅうぶん成立しているのに、これもやはり再編集ゆえの歪みだろうか?ともあれ、このラスト数分以外は、現代パートも含めてなかなかに気持ちよく見られる出来映えだったことは明記しておこう。(安川正吾)
第3回「星のない街」(2006年10月19日放送)
☆☆★
今回も回想編の続き。ウニョン(ハン・ソイ)の手術代を盗んだ父親チョンテ(イ・ハヌイ)を追って、紆余曲折の末スホ(ウン・ウォンジェ)がウニョンとともにソウルにたどり着くまでが、やはりこれでもかというぐらいの細やかさで描写されたエピソードだった。父親のしたことを知ったスホが、同級生や島の人々から追い詰められていくあたりの出来映えがとりわけ出色。異国の街での地に足に着かないやり取りよりも、こういう湿度の高いシチュエーションの方が断然しっくり来る。
ソウルへの道中で、現在のウニョン(ハン・ヒョジュ)が初回に電車の窓に描いたスマイルマークの由来も明かされ、二人の思い出の歌である「雪山讃歌」もとい「愛しのクレメンタイン」も(いささか唐突ながら)やっと登場する。ようやく腑に落ちたというか、ここへきてやっと、初回時点でのチェハ(ソ・ドヨン)の心情がある程度わかったような気になった。セオリー的には提示する順番が逆であるべきな気がするのだが、もしかして、日本向けに再編集されるにあたって変えられたりしたのだろうか?まあ、初回でオーストリアロケという気合いの入った部分を見せておきたかった気持ちもわかるけれど。
ともあれ、相変わらず子役の存在感が素晴らしく、今回はほとんどそれのみで話を引っ張ったと言っても良いぐらい。「スホ=チェハ」の謎の真相は未だ見えてこないままに、次回からはまた「現在」に戻るようだが、さて、この瑞々しさを保ったまま展開してもらえるだろうか?(安川正吾)
第2回「虹の貝殻」(2006年10月12日放送)
☆☆★
物語はチェハ(ソ・ドヨン)の演奏シーンから、子供時代の回想へと突入。初回におけるオーストリアの風景の上っ面感に比べて、ここで描写される南の島の風景はなんと生き生きしていることか。意識的に鮮やかにされたのであろうその画面作りは、いわゆるノスタルジー的な感傷からは遠いものの、なかなかに印象的で美しかった。
さらによかったのが、少年スホ(ウン・ウォンジェ)と少女ウニョン(ハン・ソイ)との交流が、これまた初回には全く感じられなかったきめ細かさで展開されること。スホが初めてウニョンを見かけるのが立ち小便をしながらだったり、二人の心が通じ合う小道具がハンバーガーだったりという、ロマンチックとは程遠いシークエンスだからこそ逆にある種の情緒が立ち上るあたりにしても、無理矢理ラブロマンス的雰囲気を作り出そうとしていた初回よりずっと好印象だった。子役二人の存在感の瑞々しさにも触れておくべきだろう。
気になるのは、この少年スホがチェハとイコールとして語られていること。学校に行くこともできなかった(当然、ピアノの英才教育を受けたわけはない)腕白少年が、十数年後に世界的ピアニストになるには何らかのドラマ的ウルトラCが必要だと思われるのだが、そのあたりの処理の仕方によって作品自体への印象がまったく変わりそうだ。(安川正吾)
第1回「巡り会い」(2006年10月5日放送)
☆☆
「冬のソナタ」が佳作だったことは事実なので、同じユン・ソクホ監督のこの「四季シリーズ」最終作もかなり好意的に見始めたつもりだったのだが、若くて美男子の世界的ピアニストが主人公という設定からして、あまりに“絵空事”な感じで、どうにも居心地が悪くてムズムズしてしまう。その“絵空事”を、いかに説得力のある形で気持ちよく見せるかというのが作り手の目指すところなのだろうし、そのためにオーストリアロケという気合いの入りようは方法論として正しいにしても、町の人々や風景のとらえ方が紀行番組じみているのでこれまたムズムズ感を増幅させる。
さらに、この主人公・チェハ(ソ・ドヨン)に関する描写がいただけない。いかにも気むずかしいアーティストといった風情で無愛想だったりする描写に新鮮さが皆無なのは百歩譲ってそういうものと納得してもいいけれど、神経質そうな割にコンサートの当日に電車で移動してしまうのを見ると、どういう人なのかわからなくなる。そこで乗り合わせたウニョン(ハン・ヒョジュ)にコートを汚され、その代わりに手渡されたクマちゃん柄のセーターを着るという罰ゲームに等しいことをあっさりやり続けるあたりも、もう少し突っ込んだ描写がなければその意図が掴めない。
ともあれ、汚したコートの代償としてウニョンは、前日に知り合ったフィリップ(ダニエル・ヘニー)からもらったコンサートチケットの1枚をチェハに差し出すのだが、他でもないそのチェハこそがコンサートのピアニストで……というのが、本作の主役二人の出会いの大雑把な抜粋。もっともこの二人、過去に何やら因縁があったらしいことがすでに提示されているけれども。とにかく現状では、チェハがウニョンに対してどういう気持ちを抱いているのかあまりにも不明瞭で、この二人のロマンスに期待しようにも何を期待すればいいのかわからないというのが正直なところだ。
ちょっと面白かったのはチェハの親友にしてマネージャーであるフィリップのバイリンガル(トリリンガル?)っぷりで、吹き替えも含めてこれはお見事。このフィリップ、青いスカーフでウニョンとイナ(イ・ソヨン)を取り違えるという紋切り型な登場シーンのせいで印象的には少々損をしたものの、英語メイン韓国語カタコトの彼と、韓国語メイン英語カタコトのウニョンが交流するあたりはなかなかに微笑ましく、ここはいい意味でムズムズしたところだった。一方、初恋の人であるチェハに会うため韓国から飛んできたイナは、いきなり幼少時の回想からフィーチャーされたりする優遇のわりには、今のところそう大きな存在感はない。今後、ウニョンの恋のライバルになっていくのだろうけれど…。
それにしても、随所で何やら乱暴にカットされているようなぶつ切り感があるのは、韓国ドラマを見るにあたって仕方のないことなのだろうか?シーンのつなぎ目が妙とかだけなら目もつぶるが、1話目にしてすでに、心情を説明するのに必要なディティールまでもが切られているように感じられる(チェハの心情がつかみづらいのはそのせいかもしれない)。それに比べれば、電車の中のシークエンスでシーン毎に車窓風景の流れる方向が違ったりするラフさは全然かわいいものだ、これはこれで大いに気にはなったけれど。(安川正吾)