ライフ

第5回(2007年8月4日放送)

☆☆
 単旋律としての物語には興味が沸くし、演出のパンチが随所に効果的なのはこれまでと同様である。愛海(福田沙紀)派が積み上げてくるいじめの数々に、その都度リアクションを見せる歩(北乃きい)のあり様が単なる繰り返しにならないのは、演者の巧みによるものかもしれない。
 2度目のトイレでのいじめが実行されるか否かのギリギリで、それまでは見て見ぬふりをしていた薗田(北条隆博)が割って入って、その場の勢力図を一時的に逆転させる空気感の作り方、タイミングなどは見事だった。今度の展開へ期待感を匂わせるところだ。
 せっかくのプラス要因も、佐古敏克(勝村政信)、克己(細田よしひこ)のおなじみのいかれた親子コンビが登場すると台無しになる。単旋律としての物語のよさが、このステレオタイプなキャラクターの混入によってぶれてしまうのがいかにも惜しい。ここに愛海と肉体関係にあるアキラ(山根和馬)が本格参入すると、さらにその傾向は助長されるのだろうか。小さな陰湿ないじめの積み重ねほどに怖く、うんざりさせるものはないと思うのだけれど、それではテレビドラマにならないという見方もあろう。もはやテレビドラマ的なるものなど、無視していただきたいのだが。(麻生結一)

第4回(2007年7月21日放送)

☆☆
 愛海(福田沙紀)一派による歩(北乃きい)へのいじめはいっそう陰惨を極め、いったんは自殺まで試みる歩だったが、羽鳥未来(関めぐみ)からの天国的な励ましを受けて、ついに愛海一派に立ち向かうべく決意するところまで。繰り返し登場していた机と椅子が教室から放り出されるショッキングなシーンにまで物語が追いついて、これで第1部が終了ということらしい。なるほど、そういう構成だったのか。
 演出は随所にパンチが効いている。歩が佐古(細田よしひこ)とデジカメを奪い合うシーンなどは地味に迫力があった。歩が保健室に逃げ込んでベッドの下に隠れるくだりは、学園物を越えてもはや逃亡者のそれ?! 羽鳥未来から歩にお守りであるシルバーのブレスレットが贈呈されるくだりが輝いたのは、それまでに積み重ねられた動のシーンとのコントラストが際立ったためである。
 羽鳥未来の天国的な存在感が実にいい。リアルに過ぎるいじめに埋め尽くされた世界にあって、ただ一つのリアルじゃないあり様が歩ならずとも救いになる。こういう直線的な構造のドラマはいわゆるのテレビドラマ向きではないかもしれないが、このテーマを貫くのならばいわゆるテレビドラマ的にあまり手広くならない方がいい。第2部以降も果敢に挑戦していただきたい。(麻生結一)

第3回(2007年7月14日放送)

☆☆
 放棄されたかに思えた短いエピソードを積み重ねていくスタイルが復活。この題材ならば、この語り口の方がドラマ自体がタイトになるし、いじめがエスカレートしていく中での椎葉歩(北乃きい)の心情もよりストレートに伝わりやすくなるのではないだろうか。
 新入生交流合宿において、歩と安西愛海(福田沙紀)派との亀裂はより鮮明に。皿洗いを押し付けられる歩を見かねた羽鳥未来(関めぐみ)が、花火に興じるガラの悪い愛海派の連中に冷水をぶちまける様がやっぱりカッコいい。朝方の湖畔で歩と未来が語り合う場面も印象に残る。担任教師・戸田 (瀬戸朝香)のリアクションがあまりにも不可解な、未来の上履きが隠されるエピソードはもう少しうまくやってほしかったが、歩の立ち位置の変化はわかりやすかった。
 いじめのリハーサルを仕掛けたりといった際の愛海の目力が本格的に怖くなってきている。副担任・平岡役の酒井美紀は、昨年放送された東海テレビの昼ドラ『紅の紋章』でも見た目は同型の教師役を演じていた。女郎であった過去をやたらとカミングアウトしたがるあのときの教師役と今回の役がどうしてもかぶって見えるので、平岡も何らかのカミングアウトをするのではないかと出番のたびにヒヤヒヤとなる?!(麻生結一)

第2回(2007年7月7日放送)

☆★
 エピソードの積み重ねは早々に放棄されて、ちょっといっちゃってるキャラクターが物語のテイストを決定づけてしまったのはいかにも残念である。椎葉歩(北乃きい)を監禁する佐古克己(細田よしひこ)やその父・敏克(勝村政信)のようなキャラクターはわざとらしい舌なめずりや、唐突に暴力を振るったりさせておけば成り立つゆえ、いかにも便利ではある。ただその手はもういやというほど見せられているので、またかという気分にしかならない。歩にとっての唯一の救いになりつつある羽鳥未来(関めぐみ)は、この陰鬱なドラマを見る側にとっても数少ない光明か。(麻生結一)

第1回(2007年6月30日放送)

☆☆
 短いエピソードをブロックのように積み重ねていくドラマの作り方はいまどき流行らないも、このいじめをテーマにしたドラマがそれをやっていたのにはちょっと驚いた。確かに因果関係のスパンが短いいじめのようなトピックにはその描き方も有用に思える。ただ、そのやり方でワンクール通すのだろうか。その煽りがかった見せ方が開設間もないこの枠のカラーの打ち出しのみだったとすると、のちのちにがっかりするだろう。
 西館高校への入学前後を酷烈に見せることで、主人公である椎葉歩(北乃きい)のキャラクター、とりわけトラウマは鮮明になった。安西愛海(福田沙紀)との対比も一目瞭然で、実にわかりやすい。ただ、少々心配な登場人物もチラホラ。初めて見る演者が多い中、キーパーソンのような羽鳥未来(関めぐみ)が見るからにカッコよさそうである。(麻生結一)

ライフ

フジテレビ系土曜23:10〜23:55
制作著作:フジテレビ
プロデュース:中野利幸
原作:すえのぶけいこ『ライフ』
脚本:根津理香
演出:谷村政樹、加藤裕将
音楽:海田庄吾、山嵜廣和
主題歌:『LIFE』中島美嘉
出演:椎葉歩…北乃きい、安西愛海…福田沙紀、佐古克己…細田よしひこ、篠塚夕子…大沢あかね、廣瀬倫子…星井七瀬、岩本みどり…末永遥、中村静香、夏目鈴、薗田優樹…北条隆博、狩野アキラ…中村友也、山田健太、二階堂智、岩城正志…矢島健一、安西大治郎…小野武彦、佐古敏克…勝村政信、羽鳥未来…関めぐみ、平岡正子…酒井美紀、戸田和佳絵…瀬戸朝香、椎葉文子…真矢みき