こどもの事情

第9週(2007年8月27〜31日放送)

☆☆★
 今クールにおける昼のドラマの粒ぞろいぶりには大いに救われる思いだ。とりわけ、『こどもの事情』はなかなか見られないような充実した出来ばえであった。次回を待つ喜びのあるドラマがなかなか見当たらない中で、この作品は物語のその先の成り行きがどうしても知りたくなるドラマだった。
 最終週もこのドラマらしい誠実が随所に垣間見られてうれしくなってしまう。音楽プロデューサーの仕事について地域授業で話すことを頼まれた未来(後藤果萌)の父・慎太郎(デビット伊東)は、その機会を利用することでクラスメートたちを巻き込み、デビューが近い健人(森田直幸)のメイキングDVDを作ろうとする。慎太郎の試みは仕事として至極当然に思えるが、歌詞つきの曲に違和感を覚えて結局デビューをあきらめてしまう健人の決断もまた好感が持てるものだった。つい挟んでしまいそうな場面、健人と慎太郎が言い争うようなシーンがないのも賢明だった。直接的でない表現がむしろそれぞれの心情を分厚くしているようにさえ思える。
 第1回の成功を受けてか、麻紀(橋本甜歌)の父・正樹(柳沢慎吾)が指名される第2回の地域授業がこの最終週の白眉だった。そこに少しもネガティブなニュアンスが含まれないのが正樹のスタンスであるとともに、このドラマのスタンスである。夢中になれる人生の宝物を見つけてほしいという正樹のメッセージは心に染み入るも、健人の決断に直結するような何かが付け加えられてもとも思った。ただ、それをやらないのがこのドラマの清さとも言えるか。
 ひまわりクリーンサービスが大手に吸収合併させられることになり、真利(田中律子)は社長である片岡(山田スミ子)から美智子(纐纈麻子)、もしくは良美(もたい陽子)に対するリストラ勧告を託される。真利の立場は、慎太郎(デビット伊東)がかつて正樹(柳沢慎吾)にしたそれと重なってくる格好だ。そしてこの無理難題が真利に起業を促す。
 健人の件で責任を取らされて子会社に出向させられた慎太郎を力強く激励するかおる(中島宏海)の態度はちょっと意外だった。真利とかおるのコントラストは不完全燃焼に終わったけれども、そもそもその前宣伝自体がドラマの内容とずれていたようにも思える。仮にパート2があるとするならば、真利とその真利に雅俊(小阪風真)を通じて謝罪したかおるが織り成す二人のコントラストは、違った意味でいっそう際立ったものになるのではないだろうか。その際にも何卒藤本匡介、神山由美子両脚本家の続投を願いたい。それにしても、このお二人の分担はどういうことだったのだろう。この最終週は神山さんが月、火担当で、そのあとから最終回までが藤本さんの担当だった。
 最後の健人による教室コンサートは、意外な顔まで含めての出演者総出演だったのがちょっと面白かったも、そのいかにもな夏休みドラマの仕様にそういったターゲットのドラマであったことを改めて思い出した。そこに描かれたこどもとおとなの事情は、子供にも大人にも共感できる要素が満載だったが、ドラマの作りは実に大人の仕様であった。(麻生結一)

第8週(2007年8月20〜24日放送)

☆☆☆
 第7週で健人(森田直幸)に告白した麻紀(橋本甜歌)と未来(後藤果萌)との関係がこじれにこじれる第8週。娘たちの関係悪化は親たちにも呼応して、真利(田中律子)とかおる(中島宏海)のバトルも勃発。慎太郎(デビット伊東)をめぐっての過去話まで持ち出され(「そんな人(=慎太郎)、全然私のタイプじゃないから」との真利の一言にかおる激怒!)、真利はかおるにヘルパーの仕事を解任させられる。改めて二人は絶縁状態に。真利が慎太郎のことをどう思っていたかも判明したので、おとなの三角関係話はこれで終わりなのだろう。それにしても、真利とかおるの言い合いは面白かった。いや、怖かった。
 長きに渡って学校を休んだ未来が誰の力を借りるわけでもなく、自らの力で成長し復活するのがいかにもこのドラマらしいリアリティ。それに関して誰かが圧倒的に活躍するわけでもなく、

真利「どうしたらいいんだろうね」

と連呼されるふがいなさが逆に真摯に感じられるところだ。ようやく学校に出てきた未来だったも、程なくして授業中に泣き出す。しかし、クラスメートから責められる麻紀を助けたのもまた未来。「そんな単純じゃない」との未来の言葉はそれまでの落ち込みぶりとコントラストになって、いっそう真実味を帯びて聞こえる。
 実母・奈美子(円城寺あや)に引き取られた健人はデビューに関して大いに悩むも、奈美子の再婚相手・平田(高橋長英)はとてもいい人だった。ブログ開設に伴って健人の家庭訪問をする慎太郎の自信満々ぶりを鼻で笑う、元大手ゼネコンに勤めていた平田の対応が実に的を射ている。
 これまで無風だった正樹(柳沢慎吾)と慎太郎の関係も、同僚だった当時の過去から様々に持ち出されて、こちらも絶縁状態に。笑来軒で約半日バイトをした高学歴年長フリーター・古田(にわつとむ)の常軌を逸した使えなさにも振り回されて、温厚な正樹がこの第8週では二度キレる。ハッピーエピソードは木村(古澤蓮)と川上静香(藤田瞳子)が急接近したことぐらいだったか。
 それにしても、この昼ドラはたぐいまれなほどに充実した出来ばえである。夏休み仕様につき8月で終わってしまうのも致し方ないとはいえ、最終週を前にしてもう少し見ていたいと願わずにはいられない。まさに夏が終わらなければいいのにという心境。(麻生結一)

第7週(2007年8月13〜17日放送)

☆☆☆
 これまでになく深刻な週ではあったが(明るい話題は、近所で評判のお店と新聞に紹介されたせいで、笑来軒が盛況となる話ぐらい)、とことん暗くならないところにこのドラマのバランスのよさ、リアリティがあるように思える。健人(森田直幸)が余命いくばくもない徹(加藤久雅)の義足を注文するエピソードからするならば、徹に今一度生への意欲が蘇って、と予想するところなれど、そう簡単にはいかないところがこのドラマのシビアなところだ。徹の死を待たずして、珠美(西本はるか)が去っていく話も心に残った。過去にも彼に死なれている珠美への徹の配慮だったわけだが、健人と珠美が共同生活を送るいびつが説得力を持って解消されたわけだ。
 ついに徹が息を引き取るシーンも大仰さはこれっぽっちもない。ただ、人工呼吸器がはずされた徹の亡骸の横に健人が寄り添っているのみである。やはりこういうシーンには余計な台詞はいらない。
 その濃密過ぎるほどの時間をともに過ごしたことをきっかけに、麻紀(橋本甜歌)の健人への思いがついに抑えきれないところにまで。健人への告白は未来(後藤果萌)への裏切りを意味する。ここは当然、第8週のメインテーマになるのだろう。健人をデビューさせようとする慎太郎(デビット伊東)に、お悔やみのシーンを飛ばしてボイストレーニングが用意されていたのは、そのスタンスが明確になってわかりやすい捌きだ。
 一緒に住むことを説得するためにやってきた健人の実母・奈美子(円城寺あや)の、大人になったとき、今度は私を捨てなさいと正直な気持ちを健人にぶつけるシーンも印象に残る。台詞に力があるドラマである。(麻生結一)

第6週(2007年8月6〜10日放送)

☆☆☆
 まったくこの昼ドラには脱帽だ。祐介(鈴木駿)のインターナショナルスクール転校阻止作戦にしても、現状の連ドラならば麻紀(橋本甜歌)が全面的に勉強を手伝っている成り行きからいけば、きっと全教科平均80点以上のノルマを果たして、めでたしめでたしといくところだけれど、このドラマはそういう安易には流れない。コソクにも祐介(鈴木駿)はカンニングを実行。しかもその容疑はよりによって健人(森田直幸)にかけられてしまう。健人に罪をなすりつけようとする祐介に憤りつつ、無理矢理転校させられてしまうのではと心配する麻紀の複雑な心境に心が痛くなる。転校しなくてよくなった=親に見捨てられたと開き直る祐介をさらに叱咤する麻紀に対して、人間を低く見るなという祐介の叫びも悲痛だった(またすぐにダメダメな祐介に戻ってしまうのだけれど)。
 これまでピックアップされなかったクラスメートのエピソードが二つ。妊娠したかもしれないという美緒(伊藤麻衣)と、高慢がエスカレートする安藤(渥美貴士)の話は確かにちょっと唐突なれど、そのいずれもがきちっと麻紀たちの心情に絡んでいた。無視される安藤を内心あざけっていた麻紀がそんな自らを反省する真摯さはこのドラマならでは。
 やはり、かおる(中島宏海)は健人がオーディションを受けていたことを知ることとなって激昂。ただ、真利(田中律子)と慎太郎(デビット伊東)の間にホットラインが存在する件は伏せられたままである。あまり残りの回数もないので、もしかするとこのホットライン自体は物語的な発展性を持たないのかもしれない。(麻生結一)

第5週(2007年7月30〜8月3日放送)

☆☆★
 エピソードの粒立ちは相変わらずで、衰え知らずの安定感が頼もしい限りだ。同時間帯に放送されている東海テレビ制作の『金色の翼』も大変優秀な出来ばえだけに(第5週は未見)、どちらを見ればいいのか迷ってしまうところ。現状、夜の連ドラでは考えづらいうれしい悩みである。
 主役級の健人(森田直幸)に些細なことをきっかけとしてケンカを売った修平(伊東瞭)の主張にだって耳を傾けるのが、このドラマのこのドラマたるゆん。とばっちりで頭を打ち、病院送りになってしまったにも関わらず、麻紀(橋本甜歌)がヤンキーのりでそこに同調する鬱積にも奇妙なリアリティがある。健人はPTAの役員連から赤の他人である徹(加藤久雅)の彼女・珠美(西本はるか)との同居生活に難癖をつけられたりとさらに受難が付きまとうも、健人のギターの才能を見抜いた正樹(柳沢慎吾)が慎太郎(デビット伊東)を呼んで演奏を聴かせたことで、レッドキャップレコードのオーディションを受けるチャンスを得る。健人をめぐっての大きな展開が第6週に控えているのだろうか。大きなとはいっても、小さいでしょうけれど(ほめてます!)。
 様々な現在進行形から一人乗り遅れているのがかおる(中島宏海)だ。日本語学校の教師という立場上、むげに断るわけにもいかなかった外国人学生の相談に乗ったために、その男から付きまとわれて笑来軒に逃げ込むエピソードは、昨今の事件を思わせる。そのかおるは真利(田中律子)と慎太郎が携帯で連絡をとりあっていることも知らないし(週の冒頭にかおるへのホットラインが鳴るも、かおるには社長からだと嘘をつく)、娘・未来(後藤果萌)の彼氏である健人が夫・慎太郎が勤めるレッドキャップレコードのオーディションを受けたことも知らない。ここにも大きな爆発が待ち受けているのか。大きなとはいっても、小さいでしょうけれど(ほめてます!)。
 藤本匡介、神山由美子ご両人のシフトがまったく見えない。第5週では藤本さんが最初の3回を、神山さんがあとの2回を担当。いかなる理由かは存じ上げないが、神山先生が週末担当だなんて贅沢すぎる。(麻生結一)

第4週(2007年7月23〜27日放送)

☆☆★
 第3週にあまりの痛みに悶絶していた健人(森田直幸)の叔父・徹(加藤久雅)は骨肉腫であると判明。片足を切断する手術を余儀なくされる。健人とつきあうことをめぐって、もはや駆け込み寺と化している小田家に身を寄せていた未来(後藤果萌)だったが、友達としてつきあうことを前提として父・慎太郎(デビット伊東)に連れられて家に帰る。その後、慎太郎がかおる(中島宏海)に浮気の解消を宣言するエピソードは未来の伝聞になっていた。やはりこのドラマは小田家の物語なのだと改めて思う。
 正樹(柳沢慎吾)の新作ラーメンは雅俊(小阪風真)発案のポテチップス入りの雅俊ラーメン。ただ、これはあまり食べたくないなぁ。そんな正樹は時給700円で笑来軒に健人をバイトとして雇おうとする。かおるの口座から勝手に30万円引き出して渡そうとした未来だったも、その申し出は健人から即座に断られる。どちらも共通して健人へのやさしさに満ちているものだ。ただ本当は中学生はアルバイトをしてはいけない模様。
 かおるは念願の日本語教師のボランティアをはじめるも、週3日のハードワークにヘルパーを雇うことに。そこで堀江家に派遣されることになったのが真利(田中律子)とは何とも苦々しい。かおるが調子に乗って忙しそうに振舞う様がまた感じ悪くて。その直前、PTAの役員会で前回いじめに関して発言したかおるから意見の機会を奪ったPTA会長に対して、これぞいじめと正面きって文句を言った真利(田中律子)には感謝の念もあるはずだろうし、その態度には大いなる悪気があるとも思えないのだが、悪気がないのがもっとも悪いという見方も出来るか(テーカップを重ねないで云々もいかにもという感じ)。ここでのいじめ話は、新たに会社にて真利と同僚になった佐藤敏子(石黒志伸)の息子にして、麻紀(橋本甜歌)と同じクラスの光治(石原英秀)がこれまで仲の良かったグループに無視されるエピソードとも連なっている。
 健人が小田家でアルバイトとして働き、真利が堀江家で家事ヘルパーとして働くという変則たすきがけ状態に、一人どこにも絡んでないと寂しがっていた祐介(鈴木駿)は、インターナショナルスクールに転校させられそうになる。ここで訪問が2度目になる祐介の母・紀子(西山諒)と担任の木村(古澤蓮)を交えて、なぜだか小田家会談に。ここでは前の学校でいじめられていた未来の切実な言葉が届いて、祐介の転校は阻止された。
 真利は堀江家での家事作業中に、めっきり仕事量が減って帰宅した慎太郎と遭遇。夕食の有無を連絡するために携帯番号を教えあう二人。そこのことは正樹にもかおるにも言い出せない。これは怪しい雰囲気になってきた。第20回という中途半端にして、脚本のクレジットに神山由美子さんのお名前が初お目見え。このままチェンジするんだろうか?

未来「うちがラーメン屋さんならよかったのに……」

慎太郎「無理言うなよ……」

本当はしっとりとしたシーンのはずも、本当のラーメン屋さんであるデビット伊東にこの台詞を言わせるあたりにクスッとなる。(麻生結一)

第3週(2007年7月16〜20日放送)

☆☆☆
 実に誠実なドラマだ。“こどもの事情”、“おとなの事情”に加えて、それぞれの“家庭の事情”に様々考えさせられる。エピソード自体はどれも何の変哲もない。未来(後藤果萌)が健人(森田直幸)と付き合っていることを宣言したことで、かおる(中島宏海)と慎太郎(デビット伊東)がそれぞれ違った方法で健人を品定めしようとしたり、エリートの父親になぐられている祐介(鈴木駿)はいったん小田家にかくまわれるも、そのことで怒鳴り込んできた祐介の母・紀子(西山諒)と真利(田中律子)が言い争いになったり。そのいずれもにワンサイドに偏った見解がないのはこのドラマの美点である。また、各登場人物たちの心情はそれっきりというわけではない。一つ一つが丁重に蓄積されていっているのだ。だからこそそれらが織りなされた物語に一通りでない含みがやどるのだろう。
 平面的に描かれがちだったかおるも、真利とともにPTA役員に強制的に就任させられたかと思いきや、イジメの加害者に対するペナルティに関して強く質問する姿を見せて、真利ならずともを驚かせる。このエピソードは未来が以前の中学でいじめられていたことを、その説明の前にほのめかしていた格好。ドラマにはやはりこうあってほしいものだ。(麻生結一)

第2週(2007年7月9〜13日放送)

☆☆★
 このドラマのミソは、“こどもの事情”にも増して、“おとなの事情”が入念に描かれていることである。認知症の父親を介護するためにパートを休もうとするもあえなく却下された清掃員仲間の美智子(纐纈麻子)を代弁すべく、社長の片岡(山田スミ子)に掛け合おうとする真利(田中律子)が、自給アップを提案されるなり何も言えなくなってしまうあたりの苦々しさに、このドラマのカラーはよく表れている。
 正樹(柳沢慎吾)が何気なくラーメン店で流していたジャズにも意味があったのか。レコード会社を正樹がなぜ退職したのか、第1週で明かされなかった理由にもこのジャズはかかっている。それゆえに、「崖っぷちラーメン」への出演を取りやめた後にもラーメン作りを伝授してくれた尾形(坂西良太)のアドバイスを受け入れて、ジャズを店でかけなくなったところに、正樹のラーメンに賭ける並々ならぬ決意が自然と伝わってきた。
 2年前に慎太郎(デビット伊東)が正樹のリストラを判断していたという重大な事実が、しばらく伏せられたあたりの間接ぶりも実に徹底している。こういう積み重ねこそがドラマの含みを生むのだ。そのことを後々に聞かされた慎太郎の妻・かおる(中島宏海)が無視を決め込む真利にお金を渡そうとして、さらに関係を悪化させる思慮の欠如ぶりにも、このキャラクターの様が即座に浮き彫りとされる。麻紀(橋本甜歌)、未来(後藤果萌)、健人(森田直幸)の“こどもの三角関係”も丁寧に描かれていて大いに好感が持てるが、どうしてもおとなたちの今後に興味は向いてしまう。(麻生結一)

第1週(2007年7月2〜6日放送)

☆☆★
 もともとは『キッズ・ウォー』の夢よもう一度というスタンスなのだろうが、それにしてはいかにも渋いドラマだ。ちょっとした台詞や言動にも、キャラクターの成り立ちがそつなく盛り込まれている。第1週から手厚い脚本、そして演出にとても感心させられた。
 ドラマの冒頭から説明的な台詞はほとんどない。大手のレコード会社を父・正樹(柳沢慎吾)が唐突にやめてしまったために、小田家の長女・麻紀(橋本甜歌)が有名私立中学の受験をあきらめなければいけなかったことも、その中学から堀江家の長女・未来(後藤果萌)が転校してきたことで初めて判明する。脱サラ後の正樹がラーメン屋を営んでいることすら、しばらくはわからない。脱サラの理由が自主的な退職なのか、リストラなのかは、今現在もわからない。背景説明に懇切丁寧が過ぎる最近の連ドラに比較すると、こういう何気ない物語への導きは新鮮にすら映る。
 正樹と正樹の妻・真利(田中律子)は、バツ悪く再会を果たす堀江かおる(中島宏海)とその夫・慎太郎(デビット伊東)とかつては同じレコード会社で働く同僚だった。スタート地点は一緒だった小田家と堀江家だったも、今ではその2つの家族には大変な経済格差が。経済的な差はあらゆる生活水準の差に連なり、片や真利はカルチャーセンターの廊下で清掃のパートをし、片やかおるはそのカルチャーセンターにボランティアを目的とした日本語教師の養成講座に通っている。ベタなコントラストは単なるつらい話を連想させるも、小田家と堀江家のそれぞれにリアルがあるせいか、そういう一辺倒な印象はまったく与えない。それこそがディテールを描ける帯ドラの強みであるし、それがあるから次週も見たいと思わされるのだ。
 家族のためと出演を一大決心するテレビ番組「崖っぷちラーメン」に、結局は出ないことを決断する正樹が、番組名物であるラーメンの鬼・尾形(坂西良太)から再びラーメン作りでしごかれ、怒鳴られている第5回のラストは、次週への引っ張りとして実にわかりやすいし、あまりにも正しい。こういうリアルとケレンの積み重ねで、クオリティの高いオリジナルストーリーを紡いでいっていただければ、視聴者としてはこれほどうれしいことはない。今クール、もっとも楽しみなドラマの一つである。(麻生結一)

こどもの事情

TBS系月〜金曜13:30〜14:00
製作著作:中部日本放送
企画・プロデュース:大羽秀樹
脚本:藤本匡介、神山由美子
演出:小柳津恵一、西村信、青山貴洋
音楽:多田彰文
主題歌:『Altair(アルタイル)〜キミと出逢えたこと〜』少年カミカゼ
エンディングテーマ:『こいはなび』高岡亜衣
出演:小田真利…田中律子、堀江かおる…中島宏海、小田麻紀…橋本甜歌、堀江未来…後藤果萌、原健人…森田直幸、川端祐介…鈴木駿、木村宏治…古澤蓮、川上静香…藤田瞳子、丸山美智子…纐纈麻子、西田良美…もたい陽子、小田雅俊…小阪風真、堀江大輔…斉藤臣、山崎修平…伊藤瞭、長谷川碧…高木千佳、栗林珠美…西本はるか、藤原先生…手塚学、原徹…加藤久雅、尾形道久…坂西良太、片岡絹代…山田スミ子、堀江慎太郎…デビット伊東、小田正樹…柳沢慎吾