ホタルノヒカリ
第9回(2007年9月5日放送)
☆☆★
らしいよさは随所にあったものの、これまでに比べるとちょっと乱暴な展開も目立った。蛍(綾瀬はるか)をあからさまに無視し始めるマコト(加藤和樹)は、別に蛍のジャージ姿が嫌だったのではなく、高野(藤木直人)と親しげに談笑する自分が知らない蛍が許せなかったとのことで、実に真っ当な理由であった。要(武田真治)が撮った資料写真の中に、ジャージ姿の蛍が映りこんでいたとは、あまりにもアクロバティックだったけれども。
蛍の失踪はエピソードとしては面白かったが、設定のリアリティにはちょっと疑問も残った。となると、どうしても不自然になってしまう蛍が倉庫に閉じ込められる過程のいっさいをオフにしたのは正しいお話の運びだったとも言えるか。ついに発見された蛍を走りこんで抱きしめる高野の心情は、蛍がマコトとの同棲を決意して出て行く時にも同様、レンタルビデオの延長料金の立替話に置き換えられる。このあたりの慎ましさ、含みこそこの作品をありきたりのドラマに終わらせていないところだ。
ちょっと頑張る蛍さんといつも通りのアホ宮とのコントラストも定番の緩まった感じで、蛍を演じる綾瀬はるかは本当に安定している。最終回が楽しみな数少ないドラマである。(麻生結一)
第8回(2007年8月29日放送)
☆☆★
ジャージな蛍(綾瀬はるか)も難なくマコト(加藤和樹)に受け入れられ、一緒に住む段取りにまで一挙達するも、実際の蛍のジャージ姿をマコトに見られるや、どうも簡単にかいかないらしい空気が流れるまで。インテリア事業部での抽選は建前、高野(藤木直人)の計らいで蛍が獲得したヘリコプターで花火鑑賞権を獲得し、蛍とマコトで空中デートする場面はこのドラマらしからぬ派手さだったけれど、むしろその直後に町内会の防犯パトロールに参加する蛍の方が何となくしっくりとするのはこのドラマならではの緩まったよさであった。(麻生結一)
第7回(2007年8月22日放送)
☆☆★
初デートに続いてのトピックがお泊りとは当然の成り行きか。ハードルが高いと思われたお泊りが早々決定する展開は、変にもったいぶらないこのドラマの潔い美点。ところが腹部の贅肉が気になってきて、マコト(加藤和樹)の家の目前から逃げ帰ってしまう蛍(綾瀬はるか)が有限不実行のダイエット計画を推進させるに至っては、ここ最近の傾向に変化なく、蛍演じる綾瀬はるかのオンステージとなる。
そんな独演会の調子も楽しくはあるけれど、そこから少しドラマを深化させる高野(藤木直人)の存在は、この第7回ではとりわけ際立っていた。別居を経て、ついに離婚した元妻・深雪(黒谷友香)に対して、蛍の干物ぶりをそれは彼女が外で頑張っている証拠と擁護する高野の言葉が心にしみる。誰よりも蛍のことを理解している高野の立ち位置がはっきりしたことで、ドラマの展開にはより幅を期待できるようになったのではないだろうか。(麻生結一)
第6回(2007年8月15日放送)
☆☆★
どうもこのドラマは偶数回の方が出来がよさそう?! 初デート話にて大人の女性然と振舞うことに苦戦する蛍を演じる綾瀬はるかのコメディエンヌぶりは、もはやすっかり板についている。蛍のことに関して相談を受けていた高野(藤木直人)が酔いつぶれたマコト(加藤和樹)を蛍の家に運んだことにするあたりの微妙さも、蛍とマコト、蛍と高野のそれぞれのツーショットの姿がよかったりすることで何となく違和感も薄れていく。快適に見通せるのは語り口のうまさでもあろう。(麻生結一)
第5回(2007年8月8日放送)
☆☆★
もはや全編にわたってオモシロを貫く、へそで茶を沸かす“顔なし女”雨宮蛍(綾瀬はるか)だけに、以前のような仕事とプライヴェートでのテンションの差異は出にくくなっている。それでも高野(藤木直人)との掛け合いは依然として楽しげだし、綾瀬はるかの好演にはもはや普遍の安定感がある。手嶋マコト(加藤和樹)との顛末をなかったことにしようとして、蛍が久々初回分のように寝っ転がってまったりしてくれたのもちょっとうれしかったり。自分を愛おしいと思え、思いは言葉にしなければ伝わらない、との蛍に対する高野のアドバイスは視聴者の共感ポイントだろう。
高野のはからいによって蛍が15階の会議室に閉じ込める繰り返しは、いかにもラブコメディらしいテイスト。あのスペースの狭さでマコトが再三にわたってそのことに気がつかないあたりも、このベタさにはフィットするか。山田姉さん(板谷由夏)の代役で出席した結婚式の二次会にマコトまで現れる物語の自由気ままぶりは、蛍とマコトのツーショットを作り出す力技だけれども、幸せをやっかむ蛍の心の声は相も変わらず面白かった。
曽野美奈子(浅見れいな)がクライアントからの指定の色を間違えたために、スタッフ総出でペンキを塗りなおして事無く終えるエピソードは、ここ最近よく見る流行のエピソード?!
こういう置きにいくようなところはこのドラマにふさわしくないように思えるが、
蛍「よくわからないよね」
なんて普通の会話がマコトとできたことに歓喜する蛍の話が、高野的にまさによくわからなかったりする、言葉の遊びなんかはやっぱり気が利いている。(麻生結一)
第4回(2007年8月1日放送)
☆☆☆
仕事とプライヴェートのテンションのギャップがやっぱり絶妙。蛍を演じる綾瀬はるかは、力んでないのに常にトップギアなのが何とも頼もしい。彼女の一挙手一投足がことごとく笑えるのは、その軽みゆえではないだろうか。点数も思わず大甘でよしとしたくなる。物語としては、シネコン内のデッドスペースに関する社内コンペで、タイヤ女、もしくはオオカミ女・雨宮蛍(綾瀬はるか)と、手嶋マコト(加藤和樹)をめぐる恋敵であるステキ女子・三枝優華(国仲涼子)のコンビ提案が採用されるあたりまでがとりわけ面白かった。雑誌そのままの着まわしを暗に批判されたときの、
蛍「この女!!!」
なんて心のツッコミもかゆいところに手が届く間合い。「もっとドロドロしなきゃ」にも大いに賛同である。
うれしいばかりではない、複雑な心境のときにはゴロゴロ転がるのが一番と、蛍と高野(藤木直人)が一緒に転がるシーンは奇妙なほどに幸せな気分に。Tokyo
Design Award ’07の“ロイヤルボックスシートプレミアムチケット”が連呼されるのもツボだった。
ビール断ちがたたっての禁断症状?!、蛍がマコトとのデートをすっぽかしてしまう一連は、いかにもらしい捌きではあったが、そこでは終わらせず。泣きながら縁側でビールを飲み、コンビニで買ったカレーパンにろうそくをさして、マコトの誕生日を一人お祝いする蛍が何ともせつないエンディングがここまでのハイテンションを程よくクールダウンさせてくれて、いい感じであった。(麻生結一)
第3回(2007年7月25日放送)
☆☆
エピソードの重なり合いが巧妙につき大いに笑えた第2話に比べてしまうとトーンダウンしている印象は否めないが、やはり蛍(綾瀬はるか)のパーソナリティは随所に魅力にあふれている。リノベーション済みの朝倉屋にて、マコト(加藤和樹)からチェアつきのキーホルダーをもらった蛍(綾瀬はるか)がうれしさのあまりに小躍りするシーンには、ある名作映画を思い出したりして。どちらにしても、綾瀬はるかが抜群にいいのは第1話から引き続いて。ただ、カメ女=ダンゴ虫=蛍と高野(藤木直人)との掛け合いをもっと見たい。第4話に期待である。(麻生結一)
第2回(2007年7月18日放送)
☆☆☆
第1話から雨宮蛍(綾瀬はるか)と高野(藤木直人)の絡みにはいい予感があったが、さらに調子が出てきた。恋愛関係ではない二人が丁々発止となる様は何とも楽しげだ。なかなかこういう組み合わせにドラマではお目にかかれないだけに、このオモシロ美男美女コンビはちょっと新鮮に映る。
関東甲信越地方を直撃する台風5号に万全なる準備を持って挑もうとする雨がっぱな高野と雨戸の下敷きになって早速にかっぱの報いをうける蛍とのドタバタシーンと、優華(国仲涼子)にマコト(加藤和樹)が“大人の女”(=蛍)とのその後について相談するしっとりシーンとの切り替えしはあまりにもタイミングが絶妙。ここでのマコトには優華が、優華には神宮司要(武田真治)が、神宮司要には山田姉さん(板谷由夏)が心を寄せる一方通行なバトン式の台詞群はさらに趣を変えて流麗であった。
自らご近所のパン屋さんである朝倉屋のリノベーションを提案するも、そのデザインに大苦戦するマコトを見かねて、蛍はリノベーションの失敗例資料集「失敗は成功のもと」を分厚く徹夜で作成。しかし、これをなかなかマコトに手渡せない空回りぶりがいじらしくて。仕事中にはそんな素振りをいっさい見せないも、家ではリアルに腰を抜かすヘビ女とのギャップ感がたまらない。何はともあれ、次回が待ち遠しい連ドラがようやく現れてくれたのはうれしい。(麻生結一)
第1回(2007年7月11日放送)
☆☆★
20代前半で恋愛を放棄、外で遊ぶよりも家で寝てたい干物女・蛍(綾瀬はるか)に、ドラマ開始早々久しぶりらしい恋の予感が。会社ではそれなりにOLしているも、いったん家に帰ればジャージ姿で食っちゃ寝生活を送る蛍のゆったりまったりぶりが実に楽しげだったので、もうしばらく蛍の純潔的干物勇姿を見ていたかった気もするが、さすがにそれでは連ドラとして成立しないか。どちらにしても、幅広い年齢層の女性に愛と勇気を与えてくれそうなドラマである。
蛍が借りている古きよき時代の香り漂う一軒家にて、不本意ながら同棲生活を強いられることになる会社では上司、実はその一軒家が実家である高野(藤木直人)とのかみ合わない応酬も持続的に面白そうだ。蛍役の綾瀬はるかは一世代キャスティングが若返った感じ。誠実を極める水橋脚本でこの題材がどのように描かれるのか、期待したい。(麻生結一)