鬼嫁日記 いい湯だな

第5回(2007年5月15日放送)

☆☆
 『鬼嫁』シリーズのパート1とこの『いい湯だな』の最大の違いは、早苗(観月ありさ)の有り様だろう。パート1では不条理の化身のようで不快極まりなかったヒロインも、このパート2ではまるで別人のように自らも改心する人に。噛む癖がある男性遍歴までも赤裸々に語る陽光院(野際陽子)の存在もユルユルながら功を奏している。
 一馬(ゴリ)が「竜乃湯」をファミレスに替えようとする試みが、実は詐欺師(仲本工事)にだまされていただけだったと頓挫する話は別にどうということもない。ただ、暗くておぞましいドラマばかりを見せられている中では、これほどに脱力していい湯だなとなれること自体がもはや貴重にも思えてくる。その程度で点数を上げていいのかとも悩むが、少なくとも今クールのCXのドラマの中ではこれが一番のオトナ向きである。実は芸人を目指していたウェイトレスの美加(柳原可奈子)のウザイ一人芸もまだ楽しめるようでよかった。
 ちなみに、『プロポーズ大作戦』は小ネタ、小風俗の連なりを見せられるのみでドラマとしての感慨はこれまでなかったも、第5回に登場した礼(長澤まさみ)の祖父・大志を演じた夏八木勲のかっこよさにはしびれてしまった。時々こういうこともあるので、いかなるドラマとて侮れない。(麻生結一)

第4回(2007年5月8日放送)

☆★
 何かが劇的に変わったわけでもないが、早苗(観月ありさ)と一馬(ゴリ)の娘・まどか(遠藤由実)を中心にすえたエピソードはそれなりに微笑ましかった(密かに今テレビドラマ的に取り上げられる頻度ダントツ第1位のいじめ問題)。「ユリユリのワンポイントレッスン」をはじめとした定番が複数用意してあるのも見飽きずにすむのでありがたいし、香港映画ばりのNG集も脱力しきったこのドラマには似つかわしい。
 ドラマを見ようと意気込むと拍子抜けするのみだが、これはこれでありなのだろう。『特命係長只野仁』が安定してその脱力ぶりを楽しめるのと同じ域である。お元気になられて本当によかった加藤茶のおじいちゃんぶりも、以前のアクがすっかりと抜けて実にいい感じである。
 ただ、裏の『セクシーボイスアンドロボ』もお忘れなく。時々に長打が期待できる今クール数少ないドラマですので。(麻生結一)

第3回(2007年5月1日放送)

☆★
 早苗(観月ありさ)が設置した極近監視カメラで見張られている中で、一馬(ゴリ)が携帯電話を忘れた美人の客(木内晶子)との浮気を夢見る展開が肩透かしなのは、過去2回とまったくの同様も、これまでのような懐古的な共感までも消えていたのはマイナスポイントである。
 ただ、これがもはや通常のドラマではないと認識できるならば、何となく見通せる域だ。通常のドラマ以外のレビューは必要ないのかもしれないが。(麻生結一)

第2回(2007年4月24日放送)

☆★
 騒々しい『花嫁とパパ』と並べて見ると、いっそうこのドラマの脱力ぶりが際立つ格好。テレビは大きさ云々ではなく、みんなで見る方が楽しかった第1話と、常連客に優しい銭湯を目指す第2話のフォーカスは、ノスタルジックな方向性で一貫しているので、楽チンに見通せるのはうれしい。
 早苗(観月ありさ)が一馬(ゴリ)に突きつける無理難題は、ここまでリアリティから離れると、むしろ納得できてしまったり。ユリ(蛯原友里)の「ユリユリのワンポイントレッスン」がドラマとは無関係に楽しげなのも、どうやら普遍らしい。つまり、ドラマとして見なければそれなりに楽しめるドラマと言えるかもしれない。
 ただ、同時間帯でどちらを見るべきかと問われるならば、圧倒的に『セクシーボイスアンドロボ』の方をお薦めします。テイスト的試行錯誤の半ばに思われるけれど、途中まで我慢して見ていただけると、ひねりのきいた教訓譚に最後は深くうなずけるはずだ。(麻生結一)

第1回(2007年4月17日放送)

☆★
 パート1よりも銭湯に舞台を置き換えたこちらのほうが、話がにぎやかしくなっていいんじゃないだろうか。どちらにしても、『花嫁とパパ』以上にレビューを拒絶するタイプのドラマであることは、あらかじめお断りしておかなければなりません。
 またもやのセルフパロディ、いかにも蛯原友里のようなモデル・秋山ユリ(蛯原友里)によるユリユリのワンポイントレッスンだけをピックアップして見ても、ある意味楽しめるのかもしれないし。陽光院を演じる野際陽子の剃髪姿は朝ドラの『ほんまもん』以来か?! どちらにしても、野際陽子さんは日本一の剃髪女優に違いない。(麻生結一)

鬼嫁日記 いい湯だな

フジテレビ系火曜22:00〜22:54
制作:関西テレビ、MMJ
プロデュース:安藤和久、東城祐司、布施等
原作:カズマ『実録鬼嫁日記』
脚本:尾崎将也
演出:塚本連平(1、2)、池添博(3、7、9、11)、小松隆志(4、6)、植田尚(5、8、10)
音楽:仲西匡
主題歌:『Again』谷村奈南
挿入歌:『ブランケット』ナナ・イロ
出演:山崎早苗…観月ありさ、山崎一馬…ゴリ、秋山ユリ…蛯原友里、進藤祐介…山本裕典、高岡健作…高知東生、高岡久美…鈴木砂羽、倉田綾…樋井明日香、山崎まどか…遠藤由実、桜沢美咲…川島なお美、池田貴美子、鈴木美恵、井口玲子、白石朋也、武田航平、成田昌児、木内晶子、小林賢二、真島公平、松田悟志、大谷充保、久保田磨希、安岡正樹…仲本工事、吉岡信三…不破万作、塾長…橋下徹、立花伸吉…池田鉄洋、警察官…川田広樹、オクイシュージ、深見亮介、柳原可南子、宮本真希、陽光院…野際陽子、山崎竜五郎…加藤茶