ライアーゲーム

第11回(2007年6月23日放送)

☆☆
 いくらなんでも最終回3時間スペシャルは長すぎでしょうと思うも、これまでのダイジェストの合間に、ライアーゲームの仕掛け人らしいハセガワ(北大路欣也)とエリー(古瀬美智子)のシーンを挿入するという構成により、実は秋山(松田翔太)ではなくナオ(戸田恵梨香)こそがこのゲームの主役だったということが明らかになるという趣向は、この変則的な編成を活かしたものだったとは思えた(敗者復活戦がどうにも理屈に合わないものだった謎も解けた!?)。ダイジェスト後の本当の「最終回」部分でも、ナオのバカ正直さが展開の鍵を握り、ようやく主役らしい存在感を発揮したという印象。そんなナオに対するヨコヤ(鈴木一真)の裏切り、フクナガ(鈴木浩介)の意趣返し、そして最後のターンは秋山によるヨコヤの(あるいは秋山自身の)救済と、無駄のないスリリングな展開で、最終回らしいカタルシスはきっちり存在していた。最後までバカ正直なままだったナオの姿に感動して地獄絵を天使の絵に描きかえてしまったハセガワというキャラクターの苦悩はあまりに軽すぎるとは思うけれど、少なくとも「ドラマ」としてオチをつけようとした意思は感じられた。
 しかし、そんな本編の出来映えとは別の話として、やはりもの申したいのはその番組としてのあり方。最終回直前の総集編特番はもはや珍しくも何ともないが、よもや総集編と最終回を抱き合わせにしてしまうとは。こんなことをやるとますます「毎週ドラマを見る」という行為の意味がなくなって、視聴率だってどんどん取れなくなりそうな気がするのだけど。少なくとも、この枠の次の番組を毎週見る気は失せてしまいそうだ。(桜川正太)

第10回(2007年6月16日放送)

☆☆
 ヨコヤ(鈴木一真)の“透視”とオオノ(坂本真)の“必勝法”は取り引きでつながっていたということらしいのだが、それにしても秋山(松田翔太)以外の登場人物はほぼ全て、持ちかけられた取り引きにもれなく乗っちゃう単純な人々なのですね、「リストラゲーム」の際も気になったが。まあそれぐらいはフィクションということで大目に見るとしても、オオノがどうやって1万円単位の金額をヨコヤに伝えたのかの描写はむしろ、フィクションだからこそやっておかなければならなかった部分ではなかろうか。まるで「リストラゲーム」の時のフクナガ(鈴木浩介)のように、作り手側にとってのみ都合のいいやり方をぬけぬけとやっているあたりがこの番組に没入できない理由だったりする。
 その後、ヨコヤが実は秋山の母を死に追いやったマルチ団体の主謀者だったということが明らかになり、秋山は冷静さを失って「水の国」を危機に陥れる。このあたりは、豹変した秋山に涙するナオという場面なども含めて、役者の演技がもたらす空気感のようなものが物語を支え、この番組がようやく“ドラマ”と呼べるものになったかと思われた瞬間だった。そうなると、終盤の“逆転”がいささか予定調和気味であったとしても(そしてまたしても、持ちかけられた取り引きにもれなく乗る単純な人々が出てきたとしても)、やはりある種の爽快感は残るわけだ。
 それにしても、秋山VSヨコヤの構図になるとどうしてもヨコヤの存在感が負けてしまう一因は、あのヘンなカツラのせいではなかろうか。フクナガあたりならマンガチックな髪型もネタですむが、秋山VSヨコヤぐらいは、役者の生身同士で対決させてあげてもよかったように思うのだけど。(桜川正太)

第9回(2007年6月9日放送)

☆★
 なんだか釈然としなかった敗者復活戦はとりあえず忘れて、ライアーゲーム3回戦。いかにも怪しげな、というよりはむしろヘンな人って感じのヨコヤ(鈴木一真)が加わり、一同は「水の国」と「火の国」に分かれて「密輸ゲーム」を開始。ゲームのルール説明シーンにおいて完全に「ドラマであること」を放棄してしまっているのはさんざん繰り返しているけれど、執拗なまでに入る字幕を見ると、だんだん開き直りがひどくなってきてるような。対視聴者的に好評だったってことなのかもしれないけれど、この分ではそのうちドラマも、最近のバラエティ番組のように「セリフの字幕が逐一入る」みたいな状況になるんじゃないかと、物語とはまったく別の次元で戦慄を覚えたり。
 ともあれ一進一退を繰り返す、ナオ(戸田恵梨香)や秋山(松田翔太)の「水の国」陣営と、ヨコヤらの「火の国」陣営。ヨコヤが自称超能力者で、ナオ達が密輸しようとしている額をばっちり言い当ててしまうあたりのからくりはまぁ今後のお楽しみとして、残念だったのは「水の国」で一人必勝法を見つけたらしいオオノ(坂本真)が、自らを支配者だと言い始めるあたりの描写がいかにも通り一辺倒だったこと。平等だった共同体の中で支配被支配の関係性が生まれる瞬間というのは作品のテーマとも関わっているのだろうし、もう少し丁寧にやっても良かったのではないかと思える。こういう些細だが大切な部分に気が利かせてあれば、多少なりとも「ドラマ」として楽しむ気になれるのだけれど、プレゼンテーションされているのはやっぱり「あらすじ」のみである。(桜川正太)

第8回(2007年6月2日放送)

☆★
 「リストラゲーム」の主導権を完全に握ったナオ(戸田恵梨香)が自らの意志で「全員が幸せになる方法」を選ぼうとする展開は悪くないのだが、10回目の投票結果からナオの選んだ結論までが一気呵成に語られず、間に説明が長々と挟み込まれるあたりにがっかりする。騙しあいをしなければ借金を背負うことはない、なんてことから説明しなければならないものだろうか?百歩譲ってある程度の説明は必要だったとしても、ここまで開き直った形でやられてしまうと、フィクションとして集中力を持って見られるテンポは確実に失われている。CMをはさんで同じような場面が繰り返される見せ方もドラマというよりはバラエティ的。最終回は3時間“超拡大”スペシャルだそうだが、そういう編成の仕方までバラエティ番組のようだ。もしかして、これをドラマだと思って見てきた視聴者こそが、作り手の仕掛けたライアーゲームにまんまとだまされてたってこと!?(桜川正太)

第7回(2007年5月26日放送)

☆★
 この手の話で、どういうネタが「お粗末」と呆れるべきものでどういうネタなら「巧妙」と評価できるかは、見ている人のひらめきとか知的レベルとかによるところが大きいわけなので、一概には言えない。それにしたって、今回ナオ(戸田恵梨香)がフクナガ(鈴木浩介)とやった「勝率50%のゲーム」はあまりにも「お粗末」な部類に入るのでは。ゲームを終えて尚そのからくりに気づけないあまりに馬鹿さんな主人公は、まさに白馬の王子のごとく現れた“ナオの私物扱い”な秋山(松田翔太)の助言を得て、フクナガに意趣返しをすることに。目一杯カマトト演技をしてフクナガを追い込むナオはなかなかキュートではあるが、やり口はけっこう古典的。ともあれそんな寄り道を経て「リストラゲーム」にて10票を得たナオは(というか秋山は)さらに仕掛け、他のプレイヤーから10票ずつだまし取って大逆転をする……って、確かにあらすじだけを追えばスカッとする展開なのだが、ナオが各プレイヤーから10票を得る過程などの細部を考え始めると、どうにも釈然としない部分も多い。そういうことは考えず大筋だけを追うべき話ってことなのだろうけれども。
 BGMなどを含めテレビ番組としては耳目を引く感じに作ってあると思うので、トータルとしての出来映えをどう評価するかは好みの問題なのかもしれないが、ながら視聴しているぐらいがちょうどいい作品だということだけははっきり言えそうで、正直これをドラマと呼ぶのも少々抵抗がある。(桜川正太)

第6回(2007年5月19日放送)

☆★
 リストラゲームに勝ち残るためフクナガ(鈴木浩介)と手を組んだナオ(戸田恵梨香)、しかしもちろん

フクナガ「守るわけないじゃーん!」

と裏切られるわけで、その展開に意外さは全くない。前述のようにとにかく展開のみが頼りのドラマだけに、こういう「展開のための展開」しかないエピソードは面白味が半減してしまう。とは言えここから、秋山(松田翔太)なしのナオがどうやって逆転していくのかは若干楽しみなところ。……だったのだが、予告を見た限りではやっぱり秋山が乗り込んできて手助けしちゃうの?それはなんだか興ざめだなあ。ドラマとしてはギリギリのライン(を超えてる気もする)説明過多を、低予算を逆手に取ったような美術と演出のテンションとでそれなりに見続けられるものにしている気概は感じられる。(桜川正太)

第5回(2007年5月12日放送)

☆☆
 「少数決」決着編。大げさなタメやら見せ方やらに思わず笑ってしまったりして、番組としては楽しめているのだけど、これがドラマとしての面白さかというと微妙な印象。先週も言及したように「ゲーム」における駆け引きは悪くはないのだが、例えば今回なら秋山(松田翔太)の過去話になると途端にバラエティ番組の再現ビデオみたいな記号的描写になってしまってるあたりがその印象の所以だろうか。このところほとんどモブの一人といった扱いで、存在感ではライアーゲーム事務局のエリー(吉瀬美智子)にも劣っていたほどのナオ(戸田恵梨香)が、敗者復活戦においてようやく主体的にゲームに参加することになったのは良かった点。それにしてもこの敗者復活戦、一人の敗者を除いて全員が3回戦に進むって、なんだかゲームとして破綻してません?(桜川正太)

第4回(2007年5月5日放送)

☆☆
 先週も述べたがこの作品においてニュアンス的なものはいっさい捨て去られており、あらすじ(と、出演者のルックス)のみがドラマをドライブしている状態。狙ってやっているのだろうからそれ自体はまったく悪くないし、今回のエピソードも「少数決第3ゲーム」の結果発表直前までの先の読めない雰囲気はなかなかに面白かった。ナオ(戸田恵梨香)がSかMかなんてあたりでニヤニヤとさせてくれるあたりの余裕も、今までになかった部分であったし。
 しかし、「X」が勝利を宣言しその独壇場となる中盤以降はいささかテンションが落ちたか。説明がくどくなるのは仕方ないとして、「X」が“女”だとされた理由の説明などはあまりにいい加減では。「セクシーボイス」の持ち主がこんなところにも!というのは冗談にしても、それが可能な世界観だと知らせずに性別をうんぬんするのは、視聴者に対する後出しジャンケンに他ならないでしょう。まあこの手の不誠実なミステリーは残念なことに世の中にあまたあるので、百歩譲ってそれにも目をつぶるとしても、「X」が自らの正体を露呈した瞬間だと秋山(松田翔太)が言う小切手ネタが、さんざん引っ張ったわりに爽快感がないのは単純につまらない。しかし考えてみれば、ゲーム前に1億円取られた彼女も、どうしてわざわざ小切手にしたんだろうね、ナオなんかは賞金をそのまま現金でもらってなかったっけか。とかいうツッコミはするだけ野暮かな。
 その後、秋山の機転のおかげで「X」の勝利は確定せず再ゲーム、という流れまではもはや規定通りという感じで、見てる側としてはテンションは落ちっぱなし、にもかかわらず画面の中の「X」だけがやたらテンション高いのにはちょっとげんなり。しかしこの再ゲームの投票で、秋山がいきなり自分の手の内を見せたあたりは確かに意外かつ巧みで、ここは再び面白味を感じた部分。結論を言うと、行われている「ゲーム」自体の駆け引きは面白いが、それを使った「ドラマ」の部分はいまひとつ、というところか。(桜川正太)

第3回(2007年4月28日放送)

☆☆
 ご丁寧にリハーサルまでやって「少数決」における駆け引きの必要性をわからせてくれるライアーゲーム事務局って意外と親切ですね、とそんな感想しか浮かばないほどに、微妙なニュアンスはもちろんツッコミどころさえ皆無なドラマが進んでいく。秋山(松田翔太)の“必勝法”にはなるほどと思いつつ、すぐにある疑問が浮かび、もしかしたらそれが“最悪のシナリオ”ってことなのではなかろうか、とか先読みをしながら見ちゃってるあたり、あらすじ自体はそれなりに楽しめてはいるのですけどね。それにしてもこの手の話って、役者の知名度でなんとなくその後の展開が透けて見えるのがいささか困りもの。それさえも裏切る予想外の展開があれば評価もぐっと変わるかな。
 しかし主役であるはずのナオ(戸田恵梨香)は全く見せ場がないなぁ。せめてチームメイトを集めるあたりに、彼女ならではの人の良さを発揮できるような場面があればよかったのに。(桜川正太)

第2回(2007年4月21日放送)

☆☆
 ナオ(戸田恵梨香)と藤沢(北村総一郎)の1億円奪い合いの決着そのものは、それなりにリーズナブルではあり、先週想定した“最悪のシナリオ”ではなかったので一安心。それでも何とも言えない物足りなさが残るのは、このドラマが人と人の騙し合いを事象でしか描いておらず、そこに至る心理には踏み込んでいない点だろうか。まあ、このナオという女の子が、獲得した賞金1億円を全部藤沢に渡してしまうことを何の葛藤もなくできちゃうキャラクターである時点で、そういうものを期待するドラマではないと言うことだろうけど、せっかく良いモチーフがあるのにもったいないなぁという気はする。とはいえ、若者向けの娯楽作でありそれ以上でも以下でもないという、作り手が意図したレベルにはきっちり作り上げてきている印象ではある。(桜川正太)

第1回(2007年4月14日放送)

☆☆
 45分(実質36分程度)という変則時間で繰り広げられるこのドラマには、タメとか思わせぶりとかは皆無。まるでダイジェストを見ているようで、軽快と言えば軽快、大味と言えば大味と言ったところなのだが、今時の若者向けにはこれぐらいがちょうどいいってことなのか。まぁ、主人公・ナオ(戸田恵梨香)が参加させられた「ライアーゲーム」の設定自体がかなりマンガチックなものであるからして、あまりグダグダやっていても説得力のなさが露呈するだけだろうし、こういうやり方は正解なのかも知れない。とはいえ、ナオと組んだ詐欺師の秋山(松田翔太)が、対戦相手・藤沢(北村総一朗)を心理的に追い詰めていく手法はまだしも、金の隠し場所を突き止める手段はまたずいぶんと大味なこと(ラジカセって……)。次週に持ち越された藤沢との対決の決着にも、一抹の不安を感じてしまう。この不安を払拭してくれる出来映えであってくれると良いのだが。それにしても、たとえマネーの奪い合いに犯罪性がなくても、いきなり人の家の庭であんなことしたり勝手にあがりこんだりするのは犯罪になる気が……というのは重箱の隅ですね、はい。(桜川正太)

ライアーゲーム

フジテレビ系土曜23:10〜23:55
制作著作:フジテレビ
プロデュース:志牟田徹
原作:『LIAR GAME』甲斐谷忍
脚本:古家和尚
演出:松山博昭、大木綾子
音楽:中田ヤスタカ(capsule)
出演:神崎直…戸田恵梨香、秋山深一…松田翔太、谷村光男…渡辺いっけい、エリー…吉瀬美智子、神崎正…福井友信、藤沢和雄…北村総一朗