夫婦道(ふうふどう)

第8回(2007年5月31日放送)

☆☆
 高鍋園に突然やってきた次期総理大臣候補・沢口省吾(柴俊夫)が学生時代の聡子(高畑淳子)の恋人だったというメインストーリーに対して、受けの演技に終始しているはずも、やはり康介(武田鉄矢)の右往左往ぶりが際立ってしまうのはドラマ的にいいことなのか、悪いことなのか。前世と占われたピラニアのエサを危うく免れた金魚に必死に語りかける康介が悲しいやら、せつないやら。生まれかわったら「将軍」という名の鯉になりたいとは、またしても『華麗なる一族』をセルフパロディに仕立てるか。(麻生結一)

第7回(2007年5月24日放送)

☆☆
 健太(佐藤銀平)の演劇志願が公になって(なぜに旭川?)、康介(武田鉄矢)と修造(橋爪功)はいつものごとく大喧嘩。康介の台詞はアドリブ満載にしか聞こえないほどに、康介演じる武田鉄矢のマシンガン話芸はさらに流麗に。孤独な老人が白骨死体と化す末を案じられるカワウソのお父さん、修造を演じるさすがの橋爪功も随所にたじたじに映る。
 健太の自作自演『お茶畑でつかまえて』において、自身がモデルのキャラクターはお茶の神様にまで上り詰めてて康介が号泣、なんてお遊びもそれなりに楽しい。ちょっとビックリしたのは、健太の夢を応援するために中森土木に押しかけ嫁になるも、逆に健太から拒絶されてしまう若葉(本仮屋ユイカ)が、康介たちの呼びかけに応じることなく、必死に皿を洗っているシーン。その内にこもるひたむきさが『ファイト』の優にそっくりでゾクッとさせられた。(麻生結一)

第6回(2007年5月17日放送)

☆☆★
 本筋は若葉(本仮屋ユイカ)と修造(橋爪功)の息子・健太(佐藤銀平)の結婚話だったのだが、健太の元恋人にして健太が主宰する劇団の主演女優・緑川麗子(岩佐真悠子)の勘違いにより、念願の結婚の夢にすっかりと舞い上がった“ミスお茶娘審査員特別賞”受賞者・夏萌(山崎静代)の膨れ上がる妄想ぶりがあまりにも哀れで、そちらの方で大いに笑わせていただいた。
 ぎっくり腰に襲われた修造と夏萌による義父と義娘的掛け合いなどは、ネタばれしているゆえにいっそうむなしくもおかしい。また、出演者の掛け合いもそこまでおふざけが過ぎないのも加減がよかった。夏萌の心根のよさも浮かび上がって、見終わったのちの後味もここまででベストであった。
こういう何の変哲もないホーム・コメディ仕様に何となしの安心感を誘われるのは、今クールの惨状ゆえであろうか。(麻生結一)

第5回(2007年5月10日放送)

☆★
 康介(武田鉄矢)と修造(橋爪功)が小料理屋を営むかおり(三原じゅん子)に対して入れあげ合戦を繰り広げる番外編的なお話。武田鉄矢→三原じゅん子→本仮屋ユイカと連なる金八ラインに感慨深くなるか、はたまた武田鉄矢と橋爪功が披露する話芸を堪能するか、いろいろと楽しみ方はあるのだろうけれど、別になくても困らなかった回であったのは事実だろう。(麻生結一)

第4回(2007年5月3日放送)

☆☆
 茶園業そのものが取り上げられればリリカルな喜びは増すだろうと書いた途端に、高鍋家最大のイベントである八十八夜の茶摘がクローズアップされてうれしかった。おばさんでも摘み子の皆さんが新芽を摘む茶畑の緑が目にやさしい。康介(武田鉄矢)が摘まれたばかりの葉をぼてからボロボロと落とすのはその道の達人としてはどうかと思ったけれど、一芯二葉のうんちくなどはいかにもそれらしく、見進めていくにしたがって無性に狭山茶が飲みたくなった。
 晴れて“マー君”こと山崎(石倉三郎)の結婚が許されてた次女・八夜子(たくませいこ)は高松に。どうやらドラマから完全アウトした模様も、三女・若葉(本仮屋ユイカ)と康介の永遠のライバル・修造(橋爪功)の一人息子・健太(佐藤銀平)の色恋沙汰がすぐさま続いてよどみない。末っ子・茂(鈴木悠人)が実は出来がよかった意外性も絡んできて、ドラマの本筋自体は楽しめる域である。
 それだけに最後の夫婦の格言のはずしっぷりがいっそう余計に思える。大体「ご苦労様と言い合える」ではなくて、「お疲れ様と言い合える」でしょうに。(麻生結一)

第3回(2007年4月26日放送)

☆☆
 次女・八夜子(たくませいこ)と“マー君”こと、会社の上司である山崎(石倉三郎)の結婚話に断固として反対する母・聡子(高畑淳子)が、自らも親の反対を押し切って康介(武田鉄矢)と結婚した過去に思い当たって、ついには二人の結婚を許す気持ちになるまで。霜よけである茶畑のファンが故障した際には、なぜか居残りしていた山崎が大活躍。ここで初めて茶園業そのものが取り上げられる。仕事そのものをもう少し分厚く描いてもらえればリリカルな喜びは増すだろうけれど、それをやると視聴率は確実に下がっていくと想定できるのは悲しい?!
 「ミスお茶娘コンテスト」に三度エントリーした長女・夏萌(山崎静代)は、誰よりも重い茶葉を担いで審査員特別賞を受賞。下馬評通りにグランプリに輝いた三女・若葉(本仮屋ユイカ)が自らの身を案じて(一家惨殺事件のニュースは結婚話ばかりではなく、こっちにもかかってた?!)、選挙違反をゆすりに審査員長を務める市議会議員の中森(橋爪功)に手心を加えさせたとしても、夏萌が確実に受賞できる部門の設立はお見事でした。ゆりかご代わりだったぼての話は相変わらずの後味のよさも、夫婦婦の教訓はむしろそれを打ち消しているように思える。(麻生結一)

第2回(2007年4月19日放送)

☆☆
 同じ定番のドラマの中でも、このホームドラマにはユーモアとペーソス、そして武田鉄矢の腹芸が満載につき、退屈知らずで見通せるのが大いにありがたい。第2話では、次女・八夜子(たくませいこ)と“マー君”こと、会社の上司である山崎(石倉三郎)の結婚話を妻・聡子(高畑淳子)にやんわり伝える第1ステップとして、マー君お得意のうどん打ち教室をとり行う康介(武田鉄矢)の悪戦苦闘ぶりが描かれていた。
 娘の結婚に直面して、本心応援したくないようで、結局応援してしまう康介の揺れ動く心情を、武田鉄矢が相変わらずの達者さで楽しませてくれている。今後各キャラクターの味わいが増してくれば、さらに面白くなってくるかもしれない。何はともあれという趣で、お茶を飲む結びも後味がいい。こうなってくると、いよいよちょっとズレ気味の夫婦の教訓は不要に思えるのだが。(麻生結一)

第1回(2007年4月12日放送)

☆☆
 他のオールスターに比べるならば、『華麗なる一族』では不完全燃焼気味だった武田鉄矢がその鬱憤を晴らすかのごとく、お茶作りに生涯を捧げている高鍋家の家長・康介役で早々独演会状態に突入。そんな武田鉄矢の演技というよりも話芸と、30回目のお見合いにまたしても敗れる長女・夏萌(山崎静代)の話がすべて相撲ネタに変容するパターンで、この第1回の大部分は占められていた印象である。
 最近の清水有生脚本作では、『家族』での誠実ぶりが心に残ったが、ラストに登場する夫婦道教訓のひねりのなさを見て、金八臭立ち込めるこのドラマにも同等のものを期待するのはちょっと難しいかと早くも不安になる。第2話でメインになりそうな次女・八夜子役にたくませいことは渋い。(麻生結一)

夫婦道(ふうふどう)

TBS系木曜21:00〜21:54
製作著作:TBS
制作:TBSテレビ
プロデューサー:柳井満
脚本:清水有生
演出:清弘誠(1、2、5、6、9、11)、大岡進(3、4、7、8、10)
音楽:城之内ミサ
主題歌:『早春譜』海援隊
出演:高鍋康介…武田鉄矢、高鍋聡子…高畑淳子、高鍋夏萌…山崎静代、高鍋若葉…本仮屋ユイカ、高鍋八夜子…たくませいこ、中森健太…佐藤銀平、高鍋茂…鈴木悠人、石黒賢、有川博、立石凉子、片岡富枝、辻義人、山里亮太(南海キャンディーズ)、宍戸勝、中山克己、伊澤柾樹、青木和代、山賀教弘、石井揮之、前田吟、菊池均也、倉田英二、酒井麻吏、上村依子、真山惠衣、三原じゅん子、岩佐真悠子、徳井優、井上浩、萩尾みどり、柴俊夫、井上夏葉、蟹江一平、児玉頼信、兎本有紀、米倉斉加年、冬島淳太郎…山崎銀之丞、木野花、山崎昌弘…石倉三郎、中森修造…橋爪功