どんど晴れ

最終週「来る者帰るがごとし」(2007年9月24〜29日放送)

☆★
 最終週における密かなる最大の“どんど晴れ”は、最後にして最大の難敵・元板長の篠田(草見潤平)を夏美(比嘉愛未)がついに懐柔したことだったか。篠田は復帰して以降、夏美とは目も合わせていないように思えたが、トピックが女は板場に入るべからずとなってから夏美の方から急接近。その要求も拍子抜けするほどにあっさりとのむあたりは、もはや板長・浩司(蟹江一平)の下で働く一介の職人である(この体制で今後やっていけるとも思えないのだけれど)。篠田にそのことを告げるのに一瞬ためらう環(宮本信子)もさすがは最後の最後までどういう立ち位置なのか判然としないキャラクターだった。
 それにしても、過去ゲストがこれほどまでに最終盤に再登場してくれる朝ドラも珍しいだろう。経済評論家の斎藤愛子(とよた真帆)ばかりか、韓流スターのジュンソ(リュ・シウォン)までも新たなシーンで登場とは何という豪華さ。それが作品のクオリティに関わるものではなかったとしても、ここまでにぎやかしくやってくれると少なくとも懐かしい気持ちにはさせてくれた。あのエピソードもとんでもなかったなぁ、なんて振り返えさせるあたり、まさに加賀美屋の精神「来る者帰るがごとし」?!

アーサー「あなたはもう我々のリーダーじゃない」

と秋山(石原良純)に対して言い捨てるアーサー(セインカミュ)は、まるで『ハゲタカ』(第59回イタリア賞受賞)から抜け出てきたかのよう。時代劇の悪代官並みのわかりやすさを極めるそんなアーサーを演じるセインカミュには、『さくら』の最終週ではいい人の塊だったロビーの面影はもはやない。乗っ取り屋の黒幕を思わせた梶原(中尾彬)がその後まったく登場しなかったのは、中尾さんのご病気のせいだったか。それとも単なる『ハゲタカ』へのオマージュだったか(何のためのオマージュだったかは不明も)。
 なぜ秋山が加賀美屋サイドに寝返ったのかも、さしたる説明はなかった。まぁ、もはや風鈴しか作らなくなった平治(長門裕之)が耳打ちするように、ただただ夏美の座敷わらし力に屈服したということだろうが。そういえば、カツノ(草笛光子)、平治、政良(奥田瑛二)、秋山、環が集う座敷わらし同好会に伸一(東幹久)も仲間入りを果たす。それがドラマの最後のオチって。やはりこの朝ドラは夏美が座敷わらしであったこと自体が主眼であったらしい?!
 『ハゲタカ』ばりに国際的な賞を写真で受賞したらしいアキ(鈴木蘭々)の絵葉書コメント、

「着いたよ、グランドキャニオン、いい写真撮って帰るからね アキ」

は絵葉書中動画でもわざわざ再現。聡(渡邉邦門)は父・龍一郎(夏八木勲)を簡単に説得して盛岡に戻れるだろう、という根拠なき楽観主義もある意味すごい。その祖母・敏恵(丹阿弥谷津子)は加賀美屋に宿泊中病気になった岸本様だったも、夏美の看病は父・啓吾(大杉漣)の看病のために途中頓挫した。そういう話の並びはいかなる効果を狙っていたのだろう?それなりのエピソードを割いて加賀美屋を去ったはずの清美(中村優子)はいつ仲居に復帰したの?浩司と挙式まじかの彩華(白石美帆)の借金は?新館開業をアピールするべく、さんさ踊りに加賀美屋メンバーが総出で参加している間、お客様へのおもてなしの心は何処に?今は『ちりとてちん』が“どんど晴れ”してくれることをひたすら祈るのみである。(麻生結一)

第25週「一番大事なもの」(2007年9月17〜22日放送)

☆★
 笑顔があれば何でもできるとの夏美(比嘉愛未)のかけ声のもと、驚きの昔話的世界に突入した最終週の一週前。なるほど、この朝ドラはタイトルの世界観には偽りなしだったか。加賀美屋の乗っ取りを企てる秋山(石原良純)は元々日本の大手銀行においてニューヨーク支店のトレーダーを務めていたが、巨額粉飾事件を起こして投獄され、その後に外資起業にヘッドハンティングされた経歴を持つことが判明。どこまでもひたすらに『ハゲタカ』のパロディである。そんな秋山率いる乗っ取り屋一味の中では、環の啖呵までも冷静にタイプするユナ(ヨンア)に逆に微笑ましい気持ちになったり。一味の一人である西田を演じる池内万作は宮本信子さんの実子。大河とダブルで親子競演を連打するNHKの面目躍如だ。
 環(宮本信子)の前には幽霊大女将・かつの(草笛光子)が現われ、ここに何でもありの号令が鳴らされた?秋山にそそのかされた仲居や板前たちが一斉に加賀美屋を去ったところにたたみ掛けて、啓吾(大杉漣)が脳梗塞で倒れたために、夏美は盛岡→横浜間を行ったりきたりの大忙し。そんなドサクサの只中、ついに環も夏美を座敷わらしの分身と確認する。これで夏美=座敷わらし同好会メンバーは、カツノ、平治(長門裕之)、政良(奥田瑛二)秋山に続いて5人となった。秋山が先で環が後の真相やいかに?それとも別に何もないのか?
 加賀美屋の窮地を知った加賀美屋にゆかりのある人たちが、近距離、遠隔地を問わず全員結集!加賀美屋への総出の恩返しの様相に、この朝ドラのここまでがこの昔話調になだれ込むための序章だったかと微妙な心持になる。それにしても恩返しメンバーに元板長の篠田(草見潤平)が含まれていたのには驚いた。第17週で夏美の懐柔プランからはずされた篠田をここにきて復活させたということは、夏美の懐柔を完全なものにするという企てか?イーハトーブの面々が格式高い加賀美屋のおもてなしをフォローできるのか?すべては最終週に明らかになる?!(麻生結一)

第24週「加賀美屋の危機」(2007年9月10〜15日放送)

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 大手のホテルチェーンがリゾート開発を画策。手を組んでいる外資の乗っ取りグループが老舗旅館を標的するとは、完全なる『ハゲタカ』第1エピソードのパロディではないか。この最終盤にセルフパロディ化を試みてくるとは、ある意味ビックリ。
 黒幕を漂わせる梶原役で中尾彬が登場するや、いっそう『ハゲタカ』を匂わせる。さらに、秋山(石原良純)がぞろぞろと連れて歩くハゲタカ的乗っ取り屋の一人、アーサー演じるセイン・カミュは、BSの朝ドラ再放送枠で放送されている『さくら』でもまたリゾート開発を強行する外資系リゾート会社の社員にして、ヒロインの元フィアンセであるロビー役だった三重構造まで敷かれている?!
 そんな完全セルフパロディの試みもお構いなしに、夏美(比嘉愛未)はおろかな行いを連打する伸一(東幹久)の肩を持ったり、秋山と伸一がビジネスパートナーだとイーハトーブでベラベラと話したり、その上で家族の和?それとも輪?を説いたりと、相変わらずに天然娘ぶりを遺憾なく発揮。もはや、これもまたある意味楽しげでもあるのだが……。(麻生結一)

第23週「不気味な影」(2007年9月3〜8日放送)

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 カツノ(草笛光子)の死を乗り越えられずにいた夏美(比嘉愛未)は、仲居頭・時江(あき竹城)の物まねを披露するまでに回復。指導する立場にある若女将が自分で汚れを拭いている様を時江に見られるのはマズイというエピソードだったも、女将である環(宮本信子)には見られていいってこと?随分と不思議なお話に思えるけれど、それほどまでに夏美は環を完全懐柔したってことか。
 すでに登場済みの表向き経営コンサルタント・秋山(石原良純)のいかにもわかりやすい悪人ぶりが実にいい。夏美の敵か見方か中途半端を貫き通して見るものを大いに混乱させた環(宮本信子)や、賢人か否かその最期までよくわからなかったカツノあたりに比べると、秋山の悪そうな人相は雲泥のわかりやすさである。もちろん、わかりにくいよさを追求する物語もあるだろうが、このドラマはそのタイプではない。ホステスのレナ(野波麻帆)を使って秋山にまんまと丸め込まれた伸一(東幹久)はいくらなんでもわかり安すぎるわけだが。
 そんな秋山は夏美を座敷わらしに見間違う!これで夏美=座敷わらしを認識した仲間たちはカツノ、平治(長門裕之)、政良(奥田瑛二)に続いて4人目か。ってことは、秋山は見た目ほどに悪人じゃない?!(麻生結一)

第22週「悲しみに負けない笑顔」(2007年8月27〜9月1日放送)

☆☆
 叙情的な見せ方に徹した第22週は、この朝ドラにとっての最高級の週だった。若女将になるとともに、健太(鈴木宗太郎)&勇太(小室優太)のおばちゃんになった夏美(比嘉愛美)はその美しさこそいっそうに際立つも、大女将・カツノ(草笛光子)の死を乗り越えられないままに。大女将との思い出に夏美が沈む場面はいずれも雰囲気があり、その見せ方も実に美しかった。平治(長門裕之)作の風鈴の音色も心に染みる。まるで『どんど晴れ』ではないよう?!
 いつもの『どんど晴れ』らしさも随所に。常連中の常連である前田夫妻(北見俊之&児島美ゆき)を一字違いで他の客と勘違いしていたも、万事丸く収まったと見るや、

夏美「これに懲りずにまたいらしてください!」

と、悪気のない極素直なリアクションを見せる夏美はいつも通りの豪快すぎる天然的夏美であった。まぁ、前田夫妻が到着時に一声かけたならば別に大した問題にならなかったような気もするが……。(麻生結一)

第21週「加賀美屋の一番長い日」(2007年8月20〜25日放送)


 柾樹(内田朝陽)と政良(奥田瑛二)の父子の和解に数分しか費やさなかったこの朝ドラが、夏美(比嘉愛未)と柾樹の結婚式、およびカツノ(草笛光子)の大往生には一週間を費やした。確かに文字通り「加賀美屋の一番長い日」(第21週副題)ではあったか。実に摩訶不思議な構成である。
 さらなる驚きは、加賀美家に分家があったという新事実!柾樹が加賀美屋の跡を継ぐことに異論を唱える分家代表・加賀美弘道(でんでん)に対して、環(宮本信子)はにらみを利かせて強権を発動する。これではちょっとした恐怖政治である。その後は内輪の苦労話が語られたり、身内の自慢話が続出したり。まぁ、結婚式とはそういうものだとも言えるのだけれど。
 いくらおもてなしの心をモットーとする加賀美屋とはいえ、大女将・カツノの生死と結婚式とでは比べようもないと思うのだけれど、ほったらかしにされても三々九度の段取りをテレキネシスで言い当てるカツノの執念には大いに気の毒になる。加賀美屋女将に代々伝わるエンプティボックスの秘密には?となったけれど。第一、あの挙式には親戚しか出席していないのでは。自分たちが数少ない部外者であると水森アキ(鈴木蘭々)がもらしていたはずだ。となると、お客様に対するおもてなしも何もないことになる。
 終いにはこの結婚が支配人としての柾樹主導ではなく、夏美の若女将就任が大前提であったカツノの心の内を平治(長門裕之)が代弁する始末。せっかくのおめでたい席に妙な難癖で水を差すとは、何てことだ!夏美にとって生涯忘れることのできない一日は、視聴者にとってはあまりにも長々しい一週間だった。(麻生結一)

第20週「家族の和」(2007年8月13〜18日放送)

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 第119回に2つのビックリが。最大のビックリは、第1回放送分で登場した“どんど晴れ”な家族写真に何と物語が追いついたこと。なるほどこれがラストシーンではなかったのか。ナレーションで少々胡散臭いと説明されて秋山(石原良純)が初登場したりと、今後に何らかの新しい展開も用意されているようではある。
 思わず見逃してしまいそうなビックリがもう一つ。柾樹(内田朝陽)との結婚準備に向けて、夏美(比嘉愛未)の実家から送られてきた白無垢の披露のされ方には思わずのけぞった。

恵美子(雛形あきこ)「ごめんなさいね、勝手に広げて」

って、やはり人の実家から送ってきたものを開けるばかりか、勝手に広げちゃダメでしょ。どんなに白無垢が広げられている画が撮りたかったとしても。
 加賀美屋の後継に柾樹(内田朝陽)が決定して、すっかり腐っていた伸一(東幹久)だったも、カツノ(草笛光子)が伸一に自らの株券すべてを譲渡することを宣言して、副題通りに「家族の和」が図られる何となく微笑ましく思えるお話も、所詮は人生金だと言われているような気がして。それが真の意図ならば、いっそう納得のいくところだけれど。(麻生結一)

第19週「女将の決断」(2007年8月6〜11日放送)

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 この第19週でもっとも驚かされたのは、柾樹(内田朝陽)の父・政良(奥田瑛二)が第18週から引き続き登場したこと。まぁ、二十数年に及ぶわだかまりをほんの数分で溶解してしまう父子だけに、さらに第20週に政良が継続登場したとしてももはや驚くまい。
 カツノ(草笛光子)が病に倒れたのをきっかけに、夏美(比嘉愛未)と柾樹(内田朝陽)の結納が横浜で執り行われるまでの展開はトントン拍子。そしてついに、その席にて環(宮本信子)が夏美派に寝返る!夏美の若女将就任、および加賀美屋の跡継ぎがロンドン帰りにして実子の伸一(東幹久)ではなく、柾樹になることを正式表明する。環の裁定に食って掛かったのは伸一の妻・恵美子(雛形あきこ)だったも、すべてはこの人が若女将になりたくないと言ったことに端を発することを我々は忘れない。どちらにしても、気の毒なのは伸一その人。ただ、柾樹が破壊した地元とのつながりの修復に、伸一が尽力している姿はいくらなんでも唐突に思えた。(麻生結一)

第18週「遠野への旅」(2007年7月30〜8月4日放送)

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 あまりにも唐突に遠野編。観光雑誌の取材ということで、夏美(比嘉愛未)がカメラマンの水森アキ(鈴木蘭々)とコンビを組むのは確かにつじつまは合っている。もっとも印象に残ったのは、何と言っても夏美がカッパ淵にダイブするシーン!これだけも☆分はあったか?! 少なくとも3台のカメラでマルチ撮影されている力の入れようも、物語以上に微笑ましかった。さすがはガテンな夏美である。体の張り方は歴代朝ドラヒロイン中でも上位だったりする?!
 ずぶ濡れの縁でお宅にお世話になることになった石川政良(奥田瑛二)と柾樹(内田朝陽)が、実は父子だったという仰天的偶然は、どう考えても重要エピソードのはず。この横糸で2ヶ月ぐらいは話を作れそうにも思えるが、柾樹の父親に対するわだかまりはほんの数分で解消されてしまう。北海道からやってきた高田三郎(深澤嵐)=風の又三郎と座敷“夏美”わらしの遭遇をはるかに超えて、あまりにも不思議なエピソードだった。
 政良と柾樹のハイパースピード和解に比べれば取るに足りないことだけれど、座敷“夏美”わらしが風の又三郎からもらったくるみが、翌日外に落ちていたのはどうしたことか?大切にしているならば部屋にあるだろうはずも、もらってすぐに捨てちゃった?部屋になかった確認のシーンがあったとするならば、見逃してすみません。(麻生結一)

第17週「柾樹の孤立」(2007年7月23〜28日放送)

☆★
 柾樹(内田朝陽)が加賀美屋の改革に本格着手するも、魚の仕入れ方法をめぐっていきなりに総すかんを食う。業者からマージンを受け取っていたことも暴かれた板長の篠田(草見潤平)が職人たちも引き連れて去ると、料理の算段がつかない加賀美屋は一時的にパニック状態に。ここで環(宮本信子)は板場に女はおりてはいけないというこれまでの慣例を破り、また久則(鈴木正幸)が元板前の腕を披露することで、この窮地を乗り越える。そんな家族一丸の中には夏美(比嘉愛未)の姿もあって、ついに夏美は加賀美家全員に受け入れられた?
 あまりにも残念だったのが、夏美の懐柔プランから最難関と思われた篠田がはずされてしまったこと。この悪代官的板長をいかにして夏美が弱体化させるかを期待していたのに。柾樹の元カノ・藤村香織(相沢紗世)、女将候補のライバル・彩華(白石美帆)に続いて篠田もアウトして、これで夏美の強敵はいなくなった。『ちりとてちん』開始まであと2ヶ月もある。イーハトーブの面々の仲良しぶりだけが見どころにならないことを祈るのみ。(麻生結一)

第16週「競い合いの決着」(2007年7月16〜21日放送)

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 例の旅行雑誌が発売されて、加賀美屋を訪れた調査員が彩華(白石美帆)の担当した客ではなく、夏美(比嘉愛未)の担当した客であったことが公式に判明。

環(宮本信子)「夏美さんの勝ちね」

と変なところで公正ぶったり、そうかと思ったら夫・久則(鈴木正幸)と息子・伸一(東幹久)と悪だくんで、すべてをなかったことにしようとしたり、今にはじまったことではないけれど環のスタンスの定まらなさといったらもう手のほどこしようがない。
 先週に触れた女将修行の勝ち負け選定基準の不備に関して、彩華はズバリ環に問う!負けをほのめかされた彩華に逆に迫られると、またもや態度を保留する環は自分でもどうしたいのかわからなくなっている人物にしか見えない。
 借金の取り立て屋まで登場する追い討ちも含めて、夏美に対して敗北を認めた彩華は、ついに加賀美屋を後にする。さすがにドラマの不出来まで救うことは難しかったとしても、ぬるま湯状態だったこの朝ドラに喝を入れてくれた極悪人的孤軍奮闘ぶりには感謝である。第11週からここまでは、ある意味彩華の朝ドラであった。彩華がいなくなった次週以降が大いに心配だ。(麻生結一)

第15週「伝統は変えられません」(2007年7月9〜14日放送)

☆★
 名は体を表すというが、それにしてもこの朝ドラはネタバレが大好きである。夏美(比嘉愛未)と彩華(白石美帆)の若女将バトル最終決戦を目前にして、不安げな夏美に声をかけるのが、

小田和正(歌)「きっとダイジョウブ♪」

と主題歌が分断されての小田和正とは、何たる飛び道具の使い様(第86回)。ここでは彩華と柾樹(内田朝陽)の抱擁問題も絡んでくるのだが、柾樹の広々とした包容ぶりにはワル過ぎる彩華も軟化するしかない。彩華の母・悦子(二木てるみ)が本当に入院していたことも判明した。てっきりこれも嘘かと思っていたのに。随分と彩華を擁護するインフォメーションも物語に含まれるようになってきたが、これはこれでちょっと残念な気もする。
 今一歩釈然としなかったのが、旅行ガイドブックの調査員が女将修行の勝ち負けをつける段取りである。観光協会からの依頼により、客を装った調査員が加賀美屋に訪れるのはいいとして、接客につくのが夏美と彩華のどちらか一人とすると、どう比較評価するというのか?どう考えても調査員である田辺(温水洋一)の担当を夏美が、どう見ても普通の客である川端(中島久之)の担当をあらかじめ事情を知らされていた彩華が受け持つも、例えどちらが調査員であったとしても、これでは評価の仕様がない。
 そんなデキレース未満もお構いなしに、夏美の天然ボケ接客は絶好調。岩手山についての語り部ぶりは旅館の仲居というよりも、むしろ幼稚園の先生だった。これぞ老舗旅館のおもてなしの心となると、その世界観はやはりデタラメなのだけれど、点数よりもはるかにドラマを楽しめていることも書き添えなければならない。朝っぱらからつっこみを入れ続けるにしても、比嘉愛未演じる夏美の浮世離れぶりがちょっと喜ばしく映りはじめる。これが夏美が持つ驚異の座敷わらしパワーだったりするのか?!(麻生結一)

第14週「二人の誓い」(2007年7月2〜7日放送)

☆★
 せっかくいじめられっぷりが板についてきて、夏美(比嘉愛未)の耐え忍ぶヒロイン像が芽生えつつあったところだったのに、柾樹(内田朝陽)が加賀美屋に帰還して再びドラマのタガは完全に緩んでしまう。一面の雪景色での再会は、誰が見ても韓流ドラマのパロディ。何をパロディにしたかというよりも、NHKの朝ドラの最重要シーンが何かしらのパロディでよかったのかという疑問は残る。NHKだからこれだったともいえるわけだが……。
 それ以前の問題として、夏美は柾樹との婚約を白紙撤回して女将修行にがんばってたのでは?白紙撤回は柾樹が復帰したらさらに撤回される時限立法だったということか?同じ旅館で働こうとも、ちょっとの期間は距離を置いて女将修行に励む夏美の方が好感も高かったと思うのだけれど、好感なんか気にしないとばかりにすでにデレデレ状態。それでも接客を一人でできるようになりましたって、一事が万事で簡単だ。
 柾樹の元カノ・藤村香織(相沢紗世)は加賀美屋にまで乗り込んだにも関わらず、真っ直ぐ過ぎる夏美にはかなわないとあっさり敗北宣言する。いっそ藤村香織にも女将修行に参戦していただいて、彩華(白石美帆)との三つ巴の戦いが見たかった?! 期待していた啓吾(大杉漣)との夢の対決も実現しないことに。何もかも無念。

伸一(東幹久)「まっ、帰ってきたなら仕方がない。お帰り柾樹」

という伸一のありえない台詞はちょっと面白かったけれど。(麻生結一)

第13週「真実の思いやり」(2007年6月25〜30日放送)

☆☆
 もともとの基準値が下がっていると、ちょっとよくなっただけでもかなり改善されたような気になる。第11週から投入された彩華(白石美帆)がいよいよ本格的に女将修行に突入して、夏美(比嘉愛未)のライバルに。彩華の心のよどみがひたむきな夏美を逆に輝かせ、久々にひきのある出来ばえになっていたように思えたのは、ここまでがあまりにもひどかったから?!
 腰を痛めた番頭・中本(高橋元太郎)に代わって松の手入れを担当したことで、またしてもガテンな夏美が戻ってくる。どうもこのヒロインは仲居姿よりもガテンな出で立ちの方がフィットする(第10週の南部鉄器職人バージョンしかり)。ここでの心のこもった手入れぶりで、中本も夏美に懐柔された模様。ひそかにちゃっかりしている夏美である。二時間サスペンスの犯人、もしくは『水戸黄門』の悪代官並みの人格しか与えられていない板長・篠田(草見潤平)に人並みの人格を与えるのも、そう遠いことではないかもしれない。
 いじめられっぷりも板についてきて、ある意味で調子が出てきた夏美だけれど、柾樹(内田朝陽)が戻ってきてボルテージが下がらないかちょっと心配。このまま啓吾(大杉漣)と柾樹の元カノ・藤村香織(相沢紗世)の対決が実現しないとなると、残念至極である?!(麻生結一)

第12週「裏の心と表の心」(2007年6月18〜23日放送)

☆★
 組合費が紛失したエピソードで、早々彩華(白石美帆)がワル中のワルであることが発覚。彩華の今カレ・浩司(蟹江一平)以外にはそのことが明るみにされないあたり(視聴者には“どんどはれ”するあたり)、このドラマらしいやり方だ。そんな不可解が薄まってしまうほどに、加賀美屋の板長・篠田(草見潤平)の設定は持続的にひどい。これほどまでに人格が伴ってない板長は二時間サスペンスの犯人ならまだしも、ドラマ的にちょっと記憶がない。ぜひとも坂下の竜次(梅宮辰夫)のところで修行し直していただきたい気分(思い返してもいい気分になれる『拝啓、父上様』)。番頭・中本(高橋元太郎)の夏美(比嘉愛未)に対する中途半端スタンスにいたっては、演者が気の毒にも思えてくるのだが。
 仲居頭の時江(あき竹城)はついに座敷わらしな夏美を見てしまった!カツノ(草笛光子)、平治(長門裕之)に続く第3号?座敷わらしな夏美はあまりにも流し目が妖艶。まぁ、その存在は妖怪なのだから、当然といえば当然なのかもしれないが。
 聡(渡邉邦門)が夏美に告白して、一時的に聡に思いをよせる佳奈が夏美に冷たくなるも、ここに持続性はなし。一方、柾樹(内田朝陽)に間借りさせてやる啓吾(大杉漣)と柾樹の元カノ・藤村香織(相沢紗世)がニアミスしたことで、こちらの興味はさらに継続する?!(麻生結一)

第11週「ライバル登場」(2007年6月11〜16日放送)

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 年に一度の加賀美屋の茶会にて、カツノ(草笛光子)は大女将からの引退を内外に発表(内外とは大きく出たものだ)。女将の証明でもあるエンプティ・ボックスをカツノから引き継いだ環(宮本信子)は名実ともに旅館の実権を握ったわけだが、環はこれまでだって女将だったわけだから、称号は変わらないってこと?だったら、“新女将”でも何でもないんじゃ。
 南部鉄器の名人・平治(長門裕之)の一件を根に持って、夏美(比嘉愛未)に厳しくなった環の人格変貌自体は、以前の中途半端ぶりに比べればマシだが、そこでこねられる理屈はいかにも環らしいもの(これまではカツノから夏美を託されていた云々)。夏美追い出し作戦第一弾として、復職した仲居頭・時江(あき竹城)の下に夏美をつけるも、ねたみ、そねみのない夏美の座敷わらしぶりに時江は早々軟化の気配も見せる。
 浩司(蟹江一平)のフィアンセとして彩華(白石美帆)が初登場。ドサクサまぎれに仲居になってしまうあたり、『花嫁とパパ』で白石美帆が演じる槙原にイコールの見るからに悪キャラである。そういえば、槙原の名前も“環”。道理で人格変貌を遂げたこちらの“環”とも気が合うはずだ。
 見逃せないのは、夏美の父・啓吾(大杉漣)が柾樹(内田朝陽)の元カノ・藤村香織(相沢紗世)の存在を知ってしまったこと。啓吾と元カノ・藤村香織の遭遇に今は一番期待している?!(麻生結一)

第10週「職人気質」(2007年6月4〜9日放送)

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 裏切りのない展開ならば、この朝ドラは歴代作品中でもすでにトップクラスかもしれない。男=柾樹(内田朝陽)のために女将になるのではなく、女将になりたいから女将になると標榜するニュー夏美(比嘉愛未)は、伸一(東幹久)がタイミングよく怒らせてくれた南部鉄器の名人・平治(長門裕之)を懐柔し、新作茶釜を手土産に見事加賀美屋に復帰する。
 かつて環(宮本信子)がつらねた美辞麗句に腹を立て、3年間加賀美屋のための茶釜を作らなかったほどの頑固者・平治も、ニュー夏美のお説教の前には形無しであった。ここは平治から「一生一作」の心意気を伝えられてこそ、ニュー夏美の精神的成長につながるはずと思うのだが、ニュー夏美お手製のブルーベリー入りパウンドケーキ、およびゼリーを振舞われては、平治もその金星に加担するしかなかったか。
 庭木担当以来、ニュー夏美はつなぎ姿も凛々しく南部鉄器作りに一日入門。庭木担当時代には、このまま『わかば』の仇討ちをしてほしいと密かに願ったものだが、今回は南部鉄器に「一生一作」を誓う職人の話に方向転換してほしいと強く祈った。それほどに比嘉愛未にはガテンな扮装の方がしっくりとくる。
 期待の星(?!)、元カノ・藤村香織(相沢紗世)は、おじ様支配人・吉沢(ささきいさお)と結託して、柾樹奪還を期している模様。自らがなしえなかったミッションをあっさりとやってのけたニュー夏美に対して、ついに環はカチンときた。第9週の副題「中途半端じゃ終われない」に刺激されたに違いない?!
 驚くべきは、この新作朝ドラを見たあとに、朝ドラ再放送枠の悪名高き『さくら』を見ると、『さくら』が面白く感じられてしまうことだ。まぁ、この第10週あたりがあの作品のピークだったわけだが。(麻生結一)

第9週「中途半端じゃ終われない」(2007年5月28〜6月2日放送)

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 夏美(比嘉愛未)の女将修行やいかに、とドキドキなれないのは、はじまった途端に“どんどはれ”(=ネタばらし)してしまった手前、いたし方がない。翼(川口翔平)の母にして経済評論家の斎藤愛子(とよた真帆)が夏美の教育論にシュンとなって、加賀美屋への損害賠償をあっさりと取り下げてしまう展開は、ヒロインが万能化する悪例のリフレイン。とよた真帆は前期の朝ドラ再放送枠『君の名は』でもヒロイン・真知子(鈴木京香)に敵対する美子といういわゆる悪役を演じていた。月日を経ようともそれが美人の宿命も、『君の名は』の役柄の方が断然魅力的であった。
 自らを見つめ直すために、ケーキ作りにまでさかのぼってみる夏美の愚直さはちょっと面白かったけれど、その結論が今カレのために女将になるんじゃないと行き着いたのはいまさらの感がある。愛する男のために女将になる、といっそ突き通してくれた方がむしろリアルだと思い始めていたところだったのに。
 ただ、「中途半端じゃ終われない」との副題は夏美に対してよりも、むしろ現仲居頭・環(宮本信子)のスタンスにこそ投げかけてみたくなる?! もうこうなったら、柾樹(内田朝陽)の元カノ・藤村香織(相沢紗世)に期待してみたりして(って、まだ登場してくれるのでしょうか?)。(麻生結一)

第8週「失意の帰郷」(2007年5月21〜26日放送)

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 女将修業から脱落、次に何をやったらいいか皆目見当がつかない夏美(比嘉愛未)は、横浜に戻るなり柾樹(内田朝陽)との同棲生活を開始させ、むしろ幸せそうに見える?! 敷居が高かった実家に戻ろうとするも、父・啓吾(大杉漣)に追い返されてしまう展開は、この極端を繰り返す父親の言動としてはむしろ整合性がとれていたかもしれない。
 あまりにも絶好なタイミングでアメリカから帰国した柾樹の元カノ・藤村香織(相沢紗世)と夏美との美形対決が、よりによって柾樹のアパートで実現。元カレ、元カノ、バツカレあたりがお得意な小松さんだけに、ここでの元カノ登場もまた当然の成り行きだったか。まさか再来年の大河ドラマ『天地人』には、元カノは登場しないでしょうけれど。
 啓吾、香織の有り様ははまだ許容範囲として、解せないのが柾樹の決断である。一時期は夏美と別れてでも加賀美屋の跡を継ごうとしていたのに、今度は夏美のために加賀美屋の跡を継げないと言う。二者択一に引き裂かれるキャラクターこそがドラマを盛り上げると思うのだが、ここでの柾樹はいっさいの迷いなく一貫性のない行為に突き進む。こうなったら、香織に魔性の女ぶりでも期待してしまおうか。(麻生結一)

第7週「女将修行、断念」(2007年5月14〜19日放送)

☆★
 夏美(比嘉愛未)は庭木担当からついに客室係の見習いに昇格。加賀美屋に宿泊する経済評論家の斎藤愛子(とよた真帆)と息子・翼(川口翔平)の受け持ちになって、翼を座敷わらし話で怖がらせていたあたりまでは絶好調だった。しかし、盛大に盛り上がるさんさ踊りに翼を連れ出した帰り、イーハトーブにてそばアレルギーの翼が食べたお菓子がそば粉入りにつき、翼は発作を起こしてしまう。ちなみに、そのお菓子を買ってきたのはビリー・ジョナサン先生(ダニエル・カール)。
 詳しい説明もろくすっぽ聞かずに訴訟を起こすと言い出す斎藤女史の感じの悪さのみならず、大女将を引責辞任してけじめをつけようとするカツノ(草笛光子)、仲居頭に降格となる環(宮本信子)、さらには夏美の指導係につき、責任を取らされて加賀美屋を追われる時江(あき竹城)と全員が総出で極端に走る展開は相変わらずだ。
 ただ、いつまでも中立でございますと環に中途半端を決め込まれても修行物としては盛り上がらないので、旅館の全スタッフに総すかんとされる状況に耐えられず、夏美が盛岡を後にする流れはやはり必然だったろう。その方法のクオリティに差こそあれ。
 仲居の着物のままに病院まで一目散にかけていった夏美は、歴代朝ドラヒロイン中でもいい走りっぷりでは上位にランクする。この体力さえあれば、いかなる苦難にもびくともしないであろうことは少なくとも予測できる。(麻生結一)

第6週「浅倉家ご一行様」(2007年5月7〜12日放送)

☆★
 イーハトーブにて家族と再会を果たした夏美(比嘉愛未)は思わず涙。盛岡に来てまだ1ヶ月足らずなのに、その間様々な経験をした夏美にとっては何年かぶりの再会に思えたらしいのだが、その旨のナレーションがなかったらまったくわからないところだった。このドラマにはナレーションが不可欠と改めて思った次第?!
 ちょっと面白かったのは、夏美の弟・智也(神木隆之介)がイーハトーブの住人である岸本(渡邉邦門)が修行中の南部鉄器の工房を訪れる場面。とはいっても、物語的に面白かったのではなく、南部鉄器の工房が興味深かったのみ。
 そういえば、恋人の柾樹(内田朝陽)も週のはじめに登場したはずも、朝倉家ご一行が大挙して盛岡を訪れた後はすっかりその印象がかすんでしまった。構成の問題である。(麻生結一)

第5週「信じるこころ」(2007年4月30〜5月5日放送)


 下宿じみた空間にヒロインが居住する展開はここ最近の朝ドラの悪しき伝統になりつつあるが、夏美(比嘉愛未)が下宿するイーハトーブは何と喫茶店を兼ねている。今後の朝ドラは、ヒロインの本拠地となる下宿が何を兼ねるかも見どころになってしまう?
 それにしてもこの喫茶店、もしくは下宿の住人のじゃれあいぶりは、朝ドラ史上でも一、ニを争うか。通常含まれるべき不可解キャラもそこにはいない。とりわけ仲良しの仲居・佳奈(川村ゆきえ)に、いまさら柾樹(内田朝陽)との出会いを語る夏美による回想シーンは、いかにもGW進行らしい緩まり方だ。さらには韓流スター・ジュンソ(リュ・シウォン)が加賀美屋を訪れる展開に、真っ当なドラマ風はついに消滅してしまう。
 NHKは韓流のことを通常“カンリュウ”と発音していたかと思うが、このドラマでは“ハンリュウ” と言わせていた。市井の人に語らせるならば、それは“ハンリュウ”しかありえない。意外に柔軟なこの対応が、最大の感心ポイントであったのが、この第5週である。

則子(佐藤礼貴)「冬ソナにはじまって、オールイン、チャングムと韓流のドラマだったら何でも聞いて!」

とちゃっかりNHK的韓流の歴史がおさらいされるも、そこに『春のワルツ』は含まず、ちゃっかり番宣を回避した格好。ジュンソの回想シーンは字幕つきの韓流ドラマ風で、忠実なセルフパロディが試みられる。
 ちゃっかりといえば、夏美の父・啓吾(大杉漣)はいつの間にか柾樹を許していた模様。母・房子(森昌子)の泥酔は、実は視聴者の怒りを代弁していたのか?ドラマではもはや死語化していたと思い込んでいた、

夏美「私と仕事とどっちが大事なの?」

という台詞を再現ビデオ以外で久方ぶりに聞いたのが、この週最大のサプライズだった?!(麻生結一)

第4週「親の気持ち」(2007年4月23〜28日放送)

☆★
 加賀美屋の跡を継ぐことに執念を燃やしている女将・環(宮本信子)の息子である伸一(東幹久)の妻にして、旅館の娘というサラブレッド中のサラブレッド・恵美子(雛形あきこ)が女将修行に参戦。はじき出されるように、夏美(比嘉愛未)は母屋の家事をやらされるのだが、いつものようにまったく動じることなく、食事の支度に洗濯、掃除、さらには恵美子の子供である健太(鈴木宗太郎)と勇太(小室優太)の母親代わりにまで全力投球する。
 さらに夏美はライバルのはずの恵美子の悩みにさえ、女将候補の格の違いを見せつけるかのように的確アドバイス。母親不在の寂しさゆえにいなくなってしまった健太と勇太を一緒に捜索したことでちょっとした絆までをも生んだか、これまで環に口答えしたことのなかった恵美子が子供たちのために女将修行からの離脱を言い出せたのも夏美のおかげということになって、ある意味驚きのどんど晴れに。すべてが収まったころに登場した大女将・カツノ(草笛光子)に対して、

NR「さすがカツノでございます」

って、何もしてないんじゃ?その貫禄は素晴らしいですが。
 健太役の鈴木宗太郎君は愛の劇場『スイーツドリーム』でも東幹久扮する父親の息子役だったが、あのドラマで一之瀬(東幹久)と結ばれた天才的な舌を持つパティシエ・史織を演じたいとうあいこは現在『『趣味悠々』と『サラリーマンNEOシーズン2』に出演中。物語にはまったくこんがらがらないが、東幹久演じるキャラクターは何となくこんがらがってくる。
 ただ、最低からはじまった視聴率はすっかり持ち直しているとのこと。ここしばらくの朝ドラは、作品のできばえと視聴率が反比例する関係にあるのか。夏美がビリー・ジョナサン=先生(ダニエル・カール)を天狗と見間違えるオカルトテイストな締めくくりぐらいの面白は全編に望まないけれど?!(麻生結一)

第3週「おもてなしの心」(2007年4月16〜21日放送)

☆☆
 何だか釈然としないままに夏美(比嘉愛未)の仲居修行が開始。大女将・カツノ(草笛光子)に夏美を押し付けられた女将・環(宮本信子)の心中を察してか、環派の仲居頭・時江(あき竹城)はこのジャンルでは定番ともいえる極端なしごきを繰り出すも、いじめられ不感症なのか、夏美にはまったく通用せず(大体、外出する宿泊客のために靴をずらしておく気配りをいまだにわからないというのはあまりにも鈍感。鈍感だけにいじめにもめげないのかな)。
 夏美が敷物を用意していなかったために、常連客・吉田(山本圭)が雨にぬれた石畳に足を取られて転倒、怪我をしたことで、いよいよ夏美も窮地に追い込まれるかと思いきや、夜通し吉田の部屋の前で待機する環に相乗り、しかも居眠りまでしてむしろ大物ぶりを誇示。妻を亡くして傷心の吉田を癒し励まして大感謝され、いよいよ夏美は無敵の存在になってきた。
 旅館物にはつきものだけに、早々夏美が集団にいじめられたりするものとばかり思っていたも(半端にその片鱗は見せたが)、すでに親友呼ばわりされる若手の仲居・佳奈(川村ゆきえ)よりも一回り大きな身体の持ち主らしく、夏美は何が起こってもびくともしない強靭なヒロイン像の模様。そんな彼女が豪快に平らげるじゃじゃ麺がおいしそうだった。(麻生結一)

第2週「ひとりぼっちの旅立ち」(2007年4月9〜14日放送)

☆★
 柾樹(内田朝陽)のために女将になる宣言したはずの夏美(比嘉愛未)も肝心の柾樹に無視されてはお気の毒としか言いようがない。そんな柾樹も実は夏美のことを思っての別れの決断で、という展開も型通りならば、夏美にパティシエとして成功してほしかった父・啓吾(大杉漣)の激昂から勘当まで流れも意外性は限りなくゼロに等しい。
 そんな定番の男たち、柾樹と啓吾に共通するのは、あまりにも極端に走る点なれど、極端に走る人など一人も出てこなかった『芋たこなんきん』の後にこれを見てしまうと、いっそうに朝から違和感を感じてしまう。
 ヒロインを演じる比嘉愛未のがんばりぶりは、現状それほど多くはない好感ポイントの一つだが、前ヒロイン(=藤山直美)の含蓄と並べてしまうのはあまりにも酷というものだ。仲居修行を大女将のカツノ(草笛光子)に認められた夏美が女将の環(宮本信子)に託された第2週の結末から、ここ数週間の展開が見えてしまったようにも思えるが、この朝ドラにはそんな安直な予想を裏切ってくれそうな気配を感じない。裏切ってほしいものだが。(麻生結一)

第1週「わたし女将になります」(2007年4月2〜7日放送)

☆☆
 タイトルの『どんど晴れ』とは、民話の最後に使われる「めでたしめでたし」の岩手バージョンらしい。ということは、しょっぱなからネタばれしてしまったこの新しい朝ドラは、はじまった途端に「どんどはれ」してしまったことになる。
 小松江里子脚本で旅館の女将になる話はすでに『女将になります!』を見ているし、押しかけ後継ぎものだったら『農家のヨメになりたい』もあった。この真新しい朝ドラがまさか以前の二つのドラマをミックスしたような話のはずはないだろうと高をくくっていると、これがまさに二つをミックスしたようなお話で、ここに最大のビックリが。
 逆に、お話にはほとんどビックリするところはない。ちょっと面白かったのは、恋人である柾樹(内田朝陽)の実家を訪れた夏美(比嘉愛未)が、老舗旅館のしきたり云々に振り回されるのかと思いきや、逃げ出した鶏を元飼育係の本領を発揮して軽々と捕まえたりと、逆に夏美が旋風を巻き起こす展開だったところ。まぁ、しきたりに振り回されるドラマは『エラいところに嫁いでしまった!』で食傷気味につき、むしろありがたい。
 夏美を演じる比嘉愛未は、通常であればヒロンのライバルタイプに回るような、朝ドラヒロインにしては珍しいほどの美形。ただ、彼氏のために女将になる宣言は、何となく共感できないなぁ。まさに『農家のヨメになりたい』のヒロインなのだけれど。その『農家のヨメになりたい』にも似たような役回りで出演していた宮本信子演じる女将の環、夫の久則(鈴木正幸)、息子・伸一(東幹久)はいかにもそれっぽい音楽に合わせて、早々悪人三人衆の趣。このまま、ひたすらにわかりやすい物語が貫かれるのだろうか?点数は第1週のご祝儀です。(麻生結一)

どんど晴れ

NHK総合月〜土曜08:15〜08:30
連続テレビ小説
制作・著作:NHK
制作統括:内藤愼介
作:小松江里子
演出:木村隆文(1、2、3、6、10、15、18、21、23、26)、渡邊良雄(4、5、7、11、16、19)、一木正恵(8、12、13、25)、黒崎博(9、14、17)、小島史敬(20)、須崎岳(22)、安達もじり(24)
音楽:渡辺俊幸
主題歌:『ダイジョウブ』小田和正
語り:木野花
出演:加賀美(浅倉)夏美…比嘉愛未、浅倉啓吾…大杉漣、浅倉房子…森昌子、加賀美伸一…東幹久、加賀美恵美子…雛形あきこ、加賀美柾樹…内田朝陽、小野時江…あき竹城、原田彩華…白石美帆、ジュンソ…リュ・シウォン、斎藤愛子…とよた真帆、岩本裕二郎…吹越満、加賀美久則…鈴木正幸、加賀美浩司…蟹江一平、水森アキ…鈴木蘭々、浅倉智也…神木隆之介、ビリー・ジョナサン…ダニエル・カール、岸本聡…渡邉邦門、松本佳奈…川村ゆきえ、武井康子…那須佐代子、石原清美…中村優子、篠田誠…草見潤平、中本努…高橋元太郎、本田則子…佐藤礼貴、橋本恵…藤井麻衣子、浅沼英雄…遠藤信、小山哲也…宇佐見健、新井保…与座嘉秋、村田良雄…渡部朋彦、益田直子…堀有里、伊藤涼子…南まりか、加賀美健太…鈴木宗太郎、加賀美勇太…小室優太、座敷童&浅倉夏美(回想)…橋口恵莉奈、岩本咲…兼崎杏優、加賀美俊江…中江有里、吉沢正人…ささきいさお、アーサー…セインカミュ、西田一敏…池内万作、ユナ…ヨンア、藤村香織…相沢紗世、山室英喜…中原丈雄、高林久美子…別府あゆみ、秘書…藤崎ルキノ、斎藤翼…川口翔平、山室道代…大沼百合子、加賀美弘道…でんでん、吉岡紀美子…あめくみちこ、まぶりっと…沼田爆、里中レナ…野波麻帆、前田啓介…北見敏之、前田朋子…児島美ゆき、客…赤崎ひかる、鉄器屋の店主…多田研三、司会者…天野勝弘、マネージャー…七世一樹、医者…長谷川公彦、看護師…杉浦美和、支店長…五王四郎、宮部…山上賢治、銀行員…小須田康人、巫女…小松千鶴、親戚たち…小杉幸彦・春日井順三・山口玲子・岩手太郎、子供時代の柾樹…櫻井遼太郎、医者…須永慶、望月勝…真夏竜、上岡秀治…飯島大介、高田三郎…深澤嵐、美咲…あんな、博人…ささの貴斗、大樹…谷山毅、ひな…相原鈴夏、みう…松浦愛弓、語り部…正部家ミヤ、田辺雅宏…温水洋一、川端泰司…中島久之、澤田…森富士夫、澤田の妻…小林由利、原田悦子…二木てるみ、吉田佐知代…中原果南、林田裕一…木村元、市役所職員…田中要次、ラジオ局DJ…マギー審司、店の親父…蛭子能収、上野…川地民夫、家政婦…丘ナオミ、弁護士…ふるごおり雅浩、同僚社員…佐藤幹雄、医師…渡辺憲吉、看護師…猪岐英人、看護師…加藤直美、木下涼子…葉山ゆりあ、通訳…崔哲浩、関谷…大林丈史、関谷の妻…蓬莱照子、山崎満、相沢ケイ子、高柳葉子、岩手太郎、立花一男、市原尚弥、畠山孝一、夏映子、大門裕明、カネダ淳、戸沢佑介、関えつ子、山口みよ子、芦沢孝子、たつづきくみ、浅田和子、加世幸市、柊紅子、森喜行、畑中美耶子、川野目亭南天、多田研三、牟田浩二、井上博一、波多江清、中村由起子、河野うさぎ、佐藤麻梨子、新井量大、本多晋、小倉馨、中山克己、園部貴一、小浜正寛、白石朋也、久保田芳之、天乃大介、岩ゲント、川嶋秀明、畠山孝一、伊藤良正、岩井梅我、秋山譲二…石原良純、岸本隆一郎…夏八木勲、岸本敏恵…丹阿弥谷津子、梶原亮介…中尾彬、吉田松太郎…山本圭、佐々木平治…長門裕之、石川政良…奥田瑛二、加賀美カツノ…草笛光子、加賀美環…宮本信子