今週、妻が浮気します

第11回(2007年3月27日放送)

☆★
 植木屋さんだと思っていたら実は会長さんで、って、またえらく既視感のあるネタを堂々と持ってくるなぁと敬服の念さえ抱きそうになってしまうけれど、ともあれそれで「現代公論」は廃刊を免れてハイ良かったねという感じ。続けてどういう必然性があったのかよくわからないままに自分こそが“今妻男”ことGo Aheadだと告白したハジメ(ユースケ・サンタマリア)が編集部の皆から生温かく対応されるのはまあ良いが、ハジメへのレスという形でQ&Aサイトに続々書き込まれた「奇跡」はプリントアウトで束にされて渡されるのみで、文字通り十把一絡げ状態なのが何だかもったいない。結局ウェブサイトというメディアはほとんど有効活用されていなかった。そして後半、河野(鈴木浩介)の結婚式のスピーチで陶子(石田ゆり子)にやり直しを迫るあたりは、シチュエーションとしてはいささか陳腐な部類に思えるも、このあたりは役者の演技が持ち上げてくれて、それなりに良い場面となっていたか。だが、それでハジメと陶子はよりを戻すのはそういうものだとしても、前回二人が離婚を決意するに至ったどうしようもない気持ちの問題がどう処理されたかにいっさい触れられていないのは、ドラマとして不誠実な気もする。要するに時間が解決したって、それだけのことなんだろうか?
 レビュアーとしては正直☆ひとつに断罪したい衝動に駆られるも、画作り、特に屋外でロケ撮影をされたシーンがとても美しかったので、その分★プラスといったところ。それにしても、こんなタイトルでありながら、ここまで「浮気」と向き合わなかったドラマってのも、ある意味すごい。(桜川正太)

第10回(2007年3月20日放送)

☆★
 先週ラストの状態から、ドラマ内時間では一晩語り合って、しかし視聴者的にはアバンタイトルの5分程度で、ハジメ(ユースケ・サンタマリア)と陶子(石田ゆり子)は離婚を決断。ここはもう少し時間をかけてもよかった気がしたが、とにもかくにも二人は離婚届にサインをする。それを区役所に出しに行ったハジメが、離婚届と婚姻届が同じ窓口ってことに憤るあたりは可笑しいけれど、だからって二名の証人の署名捺印を忘れていて出直しなんてのはちょっと安易すぎるやり方のようにも思えるような。それでもその後、区役所の夜間窓口に改めて離婚届を出しに行き、窓口の人と共に電気ストーブに当たるシーンは、しんみりとして良かった部分ではあった。対して、陶子と力(加藤翼)が出ていく日、陶子の父(中丸新将)に託していた手紙でハジメの気持ちが語られるなんてのは、なんとも陳腐な場面にしてしまったなという印象。Q&Aサイトをネタにしていても結局はオールドメディアが使いやすいってことでしょうか。そして独り身となり、仕事に張り切ろうとするハジメを襲うのは「現代公論」廃刊の危機らしいのだが……。「今週、妻が浮気します」というドラマの最終回へ向けての引っ張りがそれって、いくらなんでもピントがずれてるってもんではなかろうか。(桜川正太)

第9回(2007年3月13日放送)

☆★
 何にビックリしたって、小町編集長(江波杏子)までもが、「ハジメ(ユースケ・サンタマリア)イコールQ&AサイトにおけるGo Ahead」だっていつの間にかわかってたこと。その根拠が、「裏妻企画」の記事があまりに真に迫っていて経験者しか書けないと思ったから……って、カンが良すぎるにも程があるというか、ある意味ハジメが編集者としてめちゃくちゃ見くびられてるというか。まあこのドラマのこれまでを思えばこれぐらいの唐突は軽く許せるほうではあるけれど、そういうところも含め相変わらず散見される台詞回しやシチュエーションのラフさあるいは安易さがもう少しどうにかなれば、今回のエピソードなどはせめて☆☆レベルではあったかもしれない。
 ともあれ、ずっと「陶子(石田ゆり子)に裏切られた」の一点張りだったハジメが、自分こそが実は最初に約束を破った方だということにゆっくりと気づいていく展開はセオリー通りではあるが、役者の好演にロケ映像の美しさも手伝って安定感のある出来映えだった。お互いに許し合えたと思った瞬間に、先週ラストの陶子の書き込みの問いかけ「あなたは、妻が他の男性に抱かれたことを、忘れられるのですか?」そのままに、理性ではどうしようもない感情に流され陶子を抱きしめることができないハジメの様子も、ようやく身につまされるレベルになったという印象である。(桜川正太)

第8回(2007年3月6日放送)

☆★
 力(加藤翼)を連れて出て行った陶子(石田ゆり子)が、仕事でも育児でも追い詰められていく様は悪くないのだけれど、冒頭で陶子を殴ったっきり全く存在をなくしてしまう陶子の両親や、「どうしちゃったんですか、前はこんなことなかったのに」と保護者相手にあまりにストレートにのたまう保育園の保母さんなど、相変わらずディティールはお粗末にされっぱなし(どうでもいいけど陶子の両親のシーンは、大仰な演出に部屋のセットも手伝って、役者の豪華な「こたえてちょーだい!」といった趣でした。それでいいのかどうかは敢えて問いませんが)。加えて、月刊誌である「現代公論」が、「裏妻企画」のゴーサインが出てからほんの数日(にしか見えなかった)で本屋に並んでいるあたりのラフさ加減にも呆れてしまう。まあそれでも、苦悩する陶子を演じる石田ゆり子さんは美しかったし、お話的にもようやく「妻の浮気の顛末」という本筋をたどり始めてくれたおかげで、前回・前々回などよりははるかに見やすかった。
 最後のシークエンスで、ハジメ(ユースケ・サンタマリア)と陶子がQ&Aサイトを媒介にして本音をぶつけ合うことができるあたりは、この企画がやっとドラマ的に成立したと思われた部分。とはいえ、ここまでのエピソードで性的なものをひたすら避けて通ってきたせいで、陶子が書き込んだ

「あなたは、妻が他の男性に抱かれたことを、忘れられるのですか?」

という言葉が字面ほどの破壊力を持てなかったことは本当にもったいない。視聴者的には「陶子が春木(藤井フミヤ)に抱かれている」というイメージを喚起された覚えはとんとないですからね。劇中の人物だけが苦悩していて、ドラマ自体はまったくその心情に肉薄できていない印象である。
 蛇足ではあるが今回目を惹いたのが、街の風景をバックにしたシーンで、やたらと工事現場が出てきたこと。年度末の東京の街角を無自覚に撮った結果かとも思ったが、あるいは夫婦の関係が「工事中」であるという不安定さを表しているようにも見えて、ここは興味深かった。(桜川正太)

第7回(2007年2月27日放送)


 夫婦の関係がテーマである以上、話が夫側の浮気ネタになること自体に問題があるとは思わないけれど、いくら酔った勢いでやったことだったからって、妻の浮気をどうこう言いながら自分の浮気をそうも都合良く忘れていられるものだろうか?それを「今の今まで忘れてた」で済ましてしまうあたり、なんと不誠実な主人公、というよりは、なんと(視聴者に対して)不誠実なドラマかと、もの悲しい気分になる。それに比べれば、そのときの浮気の相手、売れっ子セレブ作家・水沢舞(山口紗弥加)こと田ノ上塔子の絡み方にまったく新味がないことなどは、まだ許せる域かもしれない。ずっと言いたかった「浮気の理由」を、4週越しでようやくハジメ(ユースケ・サンタマリア)に言うことができた陶子(石田ゆり子)の回想で語られる、「陶子の心が春木(藤井フミヤ)に傾いた一瞬」が、説得力を持ったシーンとして描かれなかったのも残念だが、もはやそういう、映像作品としての評価をうんぬんするレベルの出来映えでもない。(桜川正太)

第6回(2007年2月20日放送)


 そもそも人に仲人を頼もうというときにアポ無しで突然来るものなのかとか、そういうツッコミを冒頭からさせてしまうあたり、細やかさがまったく欠如している。それぐらいなら重箱の隅ということで済ましても良いけれど、河野(鈴木浩介)の彼女・亜里沙(MEGUMI)が元AV女優だったという事実を、河野が陶子(石田ゆり子)には話してハジメ(ユースケ・サンタマリア)に話さない理由さえ全然わからないというところまで来ると、もはや呆れかえるしかない。ハジメの結婚指輪にまつわる話にしても、あまりにおざなりすぎて、そこから何かの意味を汲み取ろうという気にさえなれないし。まあ、先週のラストでのハジメのナレーション、

ハジメ「来週、妻が反撃します」

がまったくのブラフで終わってしまっているあたりに、作り手の姿勢が見えてしまっているわけだけれど。(桜川正太)

第5回(2007年2月13日放送)

☆★
 春木(藤井フミヤ)との直接対決をもくろむ堂々(ユースケ・サンタマリア)の行動が、一度は空振りに終わるのは連ドラ的手法としてアリだとしても、そこから約30分間続く、春木を雑誌のグラビアに載せるの載せないのという話および至宝(西村雅彦)とその妻・君子(広田レオナ)の修羅場話が、相変わらず時間稼ぎにしか感じられないのはどうにもじれったい。君子の

君子「地獄に堕ちるときは、私も一緒に墜ちるから。復讐するなら、その覚悟がないとね」

という言葉はそれなりに意味があったとも思われるも、結果的に春木を殴り、その妻(大塚寧々)に浮気を暴露するに至った堂々にそれが影響したかと言えばそういうわけでもなさそうで、それだったらやっぱりあの約30分は「見る必要のない部分」ってことになってしまう。このドラマの数少ない見どころと言える広田レオナの怪演も、これでは意味をなさない。
 もうひとつ本作で大いに引っかかるのは、「現代公論」編集部での描写が多い割には、「プロの編集者としての堂々」がきちんと描かれていないこと。個人的感情で記事を差し替えようとするあたりはドラマに必要な葛藤というとらえ方ができなくもないが(それにしても安易すぎる葛藤だとは思うけれど)、そもそも校了の日の夜に堂々一人がさっさと帰ってるのはどうなのか。この日の夜までに、春木夫妻の幸せな姿を堂々に見せておかなければならないというドラマ的事情があったのはわかるが、そんな事情が透けて見えないように仕立てるのが作り手の腕の見せ所でしょう。
 で堂々のモノローグによれば、来週、妻・陶子(石田ゆり子)は反撃するらしく、本当にその通りならばこのドラマも面白くなると思うのだが、その割に次回予告では「仮面夫婦が仲人に!?」って、またどうでもいい話が大半の時間を使って語られそうな感じぷんぷんなのが何ともかんとも。(桜川正太)

第4回(2007年2月6日放送)

☆★
 見てるこっちが「た〜すけて〜」という気分だった前回から一転、ようやく「妻の浮気」に肉薄する話になって一安心。ハジメ(ユースケ・サンタマリア)が陶子(石田ゆり子)と浮気相手の春木(藤井フミヤ)を問い詰めるあたりの、テンションのかみ合わないやり取りなどには、それなりの面白さもあった。とは言え、何が言いたくて挿入されたのかよくわからないエピソード(今回は玉子(ともさかりえ)のお見合い話)に寄り道するのは相変わらずだし、その過程で起こる「玉子=Q&Aサイトにおけるプリン」という事実の露呈が何のドラマ的面白味ももたらさないのも非常にもどかしいけれど。それでも「妻の浮気」に関する話で終始してくれる限りにおいては、それなりに見どころが感じられるとは言えるか。それにしたって、浮気がテーマのドラマなのに、性交渉についての描写が

轟(沢村一樹)「そういう、つんつくつんつくみたいなことになったらどうすんだよ」

って台詞が精一杯ってのはやっぱり妙だと思いますけど。些細なことではあるが、このあたりに作り手の覚悟の程度が見え隠れしてるようにも思える。(桜川正太)

第3回(2007年1月30日放送)


 妻が浮気をしているという現実の話こそ描いて欲しいのに、のっけから編集部員達の「妻が浮気してたらどうするか」というその場限りの妄想話が挿入されるあたりでげんなりしてしまったが、結局この調子の話が延々と続く。

ハジメ(ユースケ・サンタマリア)「なんだよ、こういうことしてる場合じゃないのに」

 と言いたかったのは視聴者の方。試写状の日付に誤植があって、なんて話、時間稼ぎ以外の何ものでもないでしょう。原作であるQ&Aサイトでのやり取りが取り沙汰される割に、ハジメが影響されてるのはそのうちの一人「プリン」だけだったりするあたりも、おざなりなことこの上ない。
 結局、「今週、妻が浮気します」というタイトル通りの面白味があったのは、ホテルのロビーで待ち伏せしていたハジメが陶子(石田ゆり子)と浮気相手の男(藤井フミヤ)を追跡する最後の5分だけ。まともなドラマにできないのか、それとも最初からする気がないのかわからないけれど、これじゃドラマ以前にテレビ番組として欠陥品としか言いようがない。(桜川正太)

第2回(2007年1月23日放送)

☆★
 シェークスピアの引用と夢オチならぬ夢始まりがこのドラマの恒例らしいことは別にいいとしても、エピソードとテーマの乖離っぷりまでを恒例にするのだとすれば、困ったものだとしか言いようがない。ハジメ(ユースケ・サンタマリア)と陶子(石田ゆり子)の結婚記念日でありながら浮気のXデーイブという、このドラマのテーマに踏み込むのにこの上なくうってつけな日の描写を、作家の原稿をなくす&下痢で飛び込んだ公衆トイレで盗撮魔疑惑をかけられるというベタこの上ないシークエンスでやっつけられてしまったのは、先週に続いて目を疑ってしまったところ。そもそも大事な作家の原稿が入った鞄を置き忘れるだけならともかくその後ずっと気づかないなんて、いくら妻の浮気で上の空だとしても、仮にも編集部で「デスク」と呼ばれる人としてはあり得なさすぎるレベルでしょう(先週の、指揮者のマネージャーに対する暴言騒ぎもそうだったが)。鞄が見つかったから盗撮魔疑惑が晴れたというのも(玉子(ともさかりえ)の台詞で説明はされていたけれど)まったく腑に落ちない。そんなその場限りの展開ばかりが重なるから、主人公の人物像はブレにブレ、結局肝心の浮気ネタのほうも全く緊迫感を帯びてこないわけで。で、いよいよ来週、妻は浮気するらしいのだが、さて、そろそろ夫婦の話にしてはもらえないだろうか。(桜川正太)

第1回(2007年1月16日放送)

☆★
 いきなりシェークスピアの引用が行われるあたり「役者魂!」再びかと思ってしまったけれど、画面は忠臣蔵の中途半端なパロディということでまったく意味がわからない。ドラマの貴重な冒頭をなんの象徴的効果も及ぼさないそんなシーンに費やす暴挙には驚かされたが、その後の本編は、そこで垣間見えたちぐはぐさを1時間以上に渡ってご丁寧に展開しただけだったりもして(世界的指揮者・緒方清洵(上條恒彦)をめぐる話と、本来のテーマとの乖離っぷりには目を疑った)、そういう意味では象徴的シーンになっていたと言えなくもない。
 扇情的なタイトルは確かに時代性もあって悪くないし、浮気される夫がユースケ・サンタマリア、浮気する妻が石田ゆり子というのはハマるハマらないで言えばハマっているのだが、今のところそれぐらいしか褒めるべきところがないとも言える。足の裏の臭いで浮気を感づくなんてあたりの“女側の目線”はそれなりに面白くもあるが、致命的なのは“男側の目線”への踏み込みがほとんど見られないこと。“妻の浮気”というのはすなわち他の男と寝ているということのはずなのに、そのとらえ方がどこかしら形而上的で、夜の生活にまったく話が及ばないのもちょっとお上品すぎるようにも思えるし。別にシモネタを展開しろというのではないが、そのあたりも含めた本音が行き交うからこそ面白い意見交換サイトでのやり取りを原作にしている割に、いかにも人畜無害に収まってしまっているのには物足りなさを覚える。まあこの枠のここしばらくの実績を考えれば仕方ないかというところでもあるけれど。(桜川正太)

今週、妻が浮気します

フジテレビ系火曜21:00〜21:54
制作著作:フジテレビ、共同テレビ
企画:中島久美子
プロデューサー:小椋久雄
原案:『今週、妻が浮気します』GoAhead&Co著
脚本:吉田智子
演出:村上正典、佐藤祐市
音楽:佐藤直紀
主題歌:『てんやわんやですよ』クレイジーケンバンド
オープニングテーマ:『た・す・け・て』クレイジーケンバンド
挿入歌:『あふれる』My Little Lover
出演:堂々ハジメ…ユースケ・サンタマリア、三枝陶子…石田ゆり子、泉玉子…ともさかりえ、轟真一郎…沢村一樹、至宝君子…広田レオナ、河野恵介…鈴木浩介、馬場敦…和田正人、蟻田ミキオ…宅間孝行、美濃部善男…皆川猿時、堂々房子…大森暁美、市川勇、鶴田忍、吉永みり子…西沢ユカ、工藤…矢柴俊博、自転車便の男…巌大介、堂々力…加藤翼、茜…松尾美紀、ミキ…河本麻希、菜月…吉田智美、文壇バー・マスター…山下賢治、上條恒彦、小町ゆかり…江波杏子、至宝勝…西村雅彦