東京タワー

第8回(2007年2月26日放送)

☆★
 オカンこと栄子(倍賞美津子)のガン再発に際し、副題にある「時々、オトン」のオトンこと兆治(泉谷しげる)にも珍しくまとまった出番が出来たおかげか、これまでよりもドラマに振り幅が出ていた点はよかった。オカンの手術が万全に成功したことを祝うかのように、窓にも鏡にも映りまくる東京タワー三昧の大盤振る舞いもいかにも似つかわしい。まなみ(香椎由宇)と母・恵子(朝加真由美)の話もようやくまともに登場したが、ここをこれだけ薄く、しかもいびつに扱う理由はこれまでのところさっぱりわからない。(麻生結一)

第7回(2007年2月19日放送)

☆★
 雅也(速水もこみち)の母であるオカンこと栄子(倍賞美津子)をフィルターとして、10年間実家に帰っていない徳本(高岡蒼甫)を筆頭に、実家の旅館が経営危機らしいまなみ(香椎由宇)、さらには過労で倒れる鳴沢(平岡祐太)の話までもをオカンのもとに収斂させるのはちょっと話が平板すぎやしないか。この手の話で平板から逃れるのも至難の業だろうけれど。(麻生結一)

第6回(2007年2月12日放送)

☆★
 オカンこと雅也(速水もこみち)の母・栄子(倍賞美津子)がいよいよ東京に出てくる話以降につき、ちょっとは話に変化が見られるかと期待したが、相変わらずまったりと新鮮味のないエピソードが羅列されるのみ。ことごとくその先が読めてしまうのが悲しい。キャスティングにもいずれ慣れるだろうとここまで見てきたが、依然として慣れない。(麻生結一)

第5回(2007年2月5日放送)

☆★
 前回でちょっとよくなったと思ったのに、またもや味の薄いドラマに戻ってしまっている。エピソードにコクがないので、お涙頂戴パートがとってつけたようにようになってしまっているのはいただけない。
 雅也(速水もこみち)がオカンこと母・栄子(倍賞美津子)と叔母・香苗(浅田美代子)を伴って訪れたのが、リクエストのハワイじゃなくてハワイアンセンターの類だったのは、このドラマ同様に味の薄い『ヒミツの花園』第4話と同じじゃないか。雅也と急接近中のまなみ(香椎由宇)にとってのカメラマンとしての最初の仕事が神楽坂の路地の撮影って、こちらは薄味にもコクがある『拝啓、父上様』とのコラボレーション?そういうお遊びもドラマの内容が充実していれば楽しめるのかもしれないが。(麻生結一)

第4回(2007年1月29日放送)

☆☆
 ダイジェスト的だったこれまでと比べると、雅也(速水もこみち)のイラストレーターとしての初仕事までを描いた今回にはそれなりのドラマが存在した。ガンを宣告されたオカンこと母・栄子(倍賞美津子)が雅也が書いたイラストを見ず知らずの人に自慢するエンディングも、お涙頂戴としての機能をちゃんと果たしていた。時代の空気感は相変わらず皆無。だったら、1990年代半ばの設定はいらないんじゃないだろうか。(麻生結一)

第3回(2007年1月22日放送)

☆★
 何の緊張感もない伸びきったゴムのような大学生活も大して描かれぬままに終わりをつげちゃって、次は就職活動篇になるのかと思いきや、雅也(速水もこみち)があっさり自由宣言してしまうためにこちらもあっけなくスルー。それまでバカ丸出しだった大学生たちが、就職活動を契機に急につまらない大人の仲間入りをするとはまったくだけれども。
 雅也はアルバイトをハシゴするがどれもうまくいかず、お金は底をついて、バカボンこと耕平(柄本祐)も道連れにアパートも追い出されて路頭に迷うことに。ついには自らの越えてはならない一線と課していた、オカンこと母・栄子(倍賞美津子)から上京時にもらった1万円もパチンコですってしまって、と展開するのだが、どうやってもみじめったらしく見えないのは月9枠のゆえだろうか?ドラマとしては、みじめったらしく見えなきゃいけないんだろうけど。
 「就職超氷河期」との言葉は出てきたが(おそらく1994、5年ごろ?)、相変わらず時代の雰囲気が醸し出される要素はまったくない。それに比べるならば、入院したハル(赤木春恵)のことを思い出す連なりに回想される、1980年夏の筑豊篇の方が断然雰囲気が出ていていい。雅也(広田亮平)とハルがチャンネル争いする様も、もはや昭和の1ページということで。
 ただ、各エピソードは何となく唐突でピンとこない。ラストの振り返りもまたとってつけたよう。展開が早いので、いずれどこかのタイミングでしっくりとくることを期待できなくもないのだが。(麻生結一)

第2回(2007年1月15日放送)

☆★
 まなみ(香椎由宇)にとっては雅也(速水もこみち)と初めて出会ったあのバスの中がスタートだったも、雅也にとっては東京に出てきたこと自体がゴールだったという結論に至るまでの、雅也の怠惰な1年間が描かれていたはずも、その時間経過が判然としないのは、とりわけ人生行路劇としては致命的である。雅也の挫折にしても、あまりにも浅瀬の勝負になっている。若者とは浅瀬に仇波を立てるものであるという主張であるならば、それはそれでよかったのかもしれないが、大学生活から一転、売れないフリーライターらしいもやし泥棒の手塚(石黒賢)らと戯れるに至るきっかけもまたよく見えなかった。
 確かに1989年を描いるているはずも、風俗的な面白さが皆無なのもさびしい。オカンこと母・栄子(倍賞美津子)の情愛話も最後にくっついてるだけではグッとこない。第1話の筑豊篇のような共感こそがこの物語の身上だと思うのだが。(麻生結一)

第1回(2007年1月8日放送)

☆☆
 ちょっと乱立気味の東京タワーだけに、もはや新味を期待するのは難しいかもしれないが、ノスタルジックな雰囲気の正統的な語り口は決して悪くない。1989年1月、18歳になった高三の中川雅也(速水もこみち)が武蔵野美術大学に合格して上京するまでを描いた第1回では、オカンこと母・栄子(倍賞美津子)との関係性に随所にじわじわとしみじみさせてくれた。確かにこれは、女性が見るのと男性が見るのとではかなり感覚に違いがあるかもしれない。となると、F1層が視聴ターゲットの月9にこのドラマが向いていたかどうかは、はなはだ微妙ということになってくる。
 1989年の風俗が必要以上に古めかしく見えてしまうのは筑豊の郷土色のせいか。それがよりしっくりときたのはむしろ子供時代の回想シーンとして途中に挟まれた1979年の方で、横っ腹が痛くて転校してきた小学校への登校拒否を繰り返す雅也(広田亮平)がナチュラルでかわいかった。ただ、女手一つで息子を育て上げた迫力を見せつける倍賞美津子演じるオカンはどう見ても小学生の母親には見えない。
 クライマックスの雅也の旅立ちのシーンは、この手の定番中の定番だけれども、オカンが手荷物に忍ばせた手紙にはやはりほろっとさせられる。ただこれは、ドラマの中の手紙に心打たれたというよりも、誰もが1回ぐらいはもらったことがあるかもしれない、親からの手紙を思い出すからだろう。そのあたりの引き出しがうまくいってくると、ドラマとしての成功にグッと近づくのではないか。(麻生結一)

東京タワー

フジテレビ系月曜21:00〜21:54
制作著作:フジテレビ
プロデュース:中野利幸
原作:リリー・フランキー
脚本:大島里美
演出:久保田哲史、谷村政樹
音楽:澤野浩之、河野伸
主題歌:『蕾(つぼみ)』コブクロ
出演:中山雅也…速水もこみち、佐々木まなみ…香椎由宇、山田耕平…柄本佑、前野和夫…山崎裕太、斉藤洋介、深沢敦、平賀雅臣、野添義弘、春海四方、広田亮平、松田昂大、児玉真楽、中川富美子…佐々木すみ江、藤本ハル…赤木春恵、藤本香苗…浅田美代子、中山兆治…泉谷しげる、中山栄子…倍賞美津子