スロースタート

前編「NOのなかのYES」（2007年1月27日放送）

☆☆★
　引きこもりやニートと呼ばれるの若者たちの社会復帰を支援するNPO法人「スロースタート事務局」で働くレンタルスタッフの激闘の日々を描いた社会派ドラマ。アバンタイトルで主人公の谷口未散（水野美紀）は自らの仕事について、「その心に話しかけ、揺さぶりをかけ、外に引き出して社会へとつなぐ仕事」と語る。心に話しかける作業はあまりにも気長で、その揺さぶりは時として逆効果になることもある。それでも根気よく社会へとつなぐ試みの過程が、不器用にも真摯に語られていたこのドラマの第1回には大変好感が持てた。
　引きこもっていた若者の初外出を想像するオープニングが、ドラマの全貌をイメージさせてくれていい。スロースタート代表である真壁（近藤正臣）がかつて教師をしていた時の教え子であり、車のメーカーに勤めている矢沢仁（杉本哲太）が休日に仕事を手伝う羽目になる展開はいかにも段取り的だが、この仕事の趣旨を手っ取り早く説明する上では致し方ないか。未散がなぜ携帯電話を持たないのか（持てないのか？）の謎にも興味が沸く。「ボランティアじゃなくて、レンタルでスタッフを貸し出す」仕事と念を押されると、そのお値段の方も気になってくるのだが。
　大学に入るも引きこもりになった前田信吾（金井勇太）の、

信吾「挫折もできない」

という言葉があまりにも痛切に響く。第2回は話が違うようなので、これからでもご覧いただきたい力作である。（麻生結一）