ハケンの品格

第10回(2007年3月14日放送)

☆☆★
 ハケン弁当で手一杯のマーケティング課。そんな中、大前春子(篠原涼子)や森美雪(加藤あい)ら派遣社員の契約終了を迎えたが、二人は仕事を終えるとすぐに会社を出てしまう。そしてハケン弁当の販売当日、肝心の弁当箱が大雪で届かず、里中賢介(小泉孝太郎)はピンチに。そこに弁当箱と共にパラシュートで降り立ったのは春子だった。一方、東海林武(大泉洋)は名古屋の子会社で働くが本社とのギャップに苦しみ、春子の事も忘れられずにいた。またスペインに向かった春子も武が気になっていた。ある日、武が仕事をしていると、そこに突然春子が現れるのだった。
 小型機を飛ばしパラシュートで着陸と、今までで一番派手な展開を見せた第10話。それでも、メリハリのついたストーリーと会話は最終回でも視聴者をしっかりと楽しませてくれた。契約更新の下りは少しさっぱりし過ぎていたかもしれないが、会社を出た春子が美雪の成長を褒めるシーンは上手くまとまり良かったと思う。登場人物も親しみを持てる性格ばかりで、特に春子のキャラは人気があるのも頷ける。彼女の凛々しい表情とテンポの良い脚本はとても魅力的だった。エンターテイメント性に優れた作品であったため、何らかの形での続編を希望する声も多いことだろう。(花宮有栖)

第9回(2007年3月7日放送)

☆☆★
 里中賢介(小泉孝太郎)は、突然辞表を出し行方不明になってしまった東海林武(大泉洋)の代わりに「ハケン弁当」のプレゼンを務める。プレゼンは成功し、弁当は特別販売されることに。一方、武が大前春子(篠原涼子)にプロポーズしたことがマーケティング課全員にバレてしまう。武に連絡がつかず、心配した賢介は武の家へと向かう。留守だったためハケン弁当の特別販売の会場に来てくれとメモを残すが、販売当日武は姿を見せなかった。企画も上手くいき、ようやく武も見つかったマーケティング課は、ほっと一息つく。また、もう少しで会社を出ていくことになる春子に、賢介は契約の更新を考えるように言うのだった。
 武が会社に来なくなり春子との絡みがなくなった途端、ドラマ全体でコメディ的な面白さが減ったように感じた。やはり春子と武のコンビは欠かせなく、篠原涼子の役のつかみ方の上手さが分かった。一ツ木慎也(安田顕)も、それほど重要な役ではないが光っているキャラクターの一つだ。ただ、今回の展開の中で浅野務(勝地涼)の後輩でありもうすぐ新入社員になる那須田(斉藤祥太)がやってくるというのはあまり必要なかった。その代わりに、ハケン弁当の製作過程を面白く入れた方が盛り上がったかもしれない。また、明かされた春子の過去は想像がつくもので意外性がなかった。次回はいよいよ最終回。武と春子の関係や春子の契約更新など、気になる大きな見所が残っている。(花宮有栖)

第8回(2007年2月28日放送)

☆☆★
 森美雪(加藤あい)が考案した企画を、東海林武(大泉洋)が担当することになる。意気込む武の姿を見てマーケティング課は意気消沈。しかし、里中賢介(小泉孝太郎)は武のために、企画のためのアンケートを行う。桐島敏郎(松方弘樹)は武に見合い話を勧め、武は良い返事をもらう。だが、武は大前春子(篠原涼子)に咄嗟に「本当に結婚したいのはお前だ」と告白してしまう。しかしある日、敏郎は賢介を飛ばすと言い、武は更なる葛藤を抱えてしまう。イライラが溜まった武は、そこにやって来た賢介を罵倒してしまう。殴り合いになったが、お互いを理解し合った2人はどこか清々しいものを感じていた。その翌日に企画の披露があり、そこで武は「これは私の企画ではない」と明言したのだった。
 序盤とは印象が変わりすっかり悪者になってしまった敏郎だが、このキャラクターがいなければドラマは盛り上がらない。ただ、簡単な理由ですぐ社員をクビにするという行動は少々リアリティがなかった。今回は、部長からもらった縁談は捨てられない、しかし本当に好きなのは春子……と苦悩する武の心情も描かれていた。また、同期の賢介とのギクシャクした関係も盛り込んでいた。“結婚に関するアンケート”は少しやりすぎかとも思えたが、春子の本当の気持ち、そしてハケンの敵である武の変化は大きな見所だ。物語はいよいよ終盤を迎えるが、笑いもシリアスな面も取り入れ、まだまだ視聴者をしっかりと惹きつけるストーリー展開になっていた。(花宮有栖)

第7回(2007年2月21日放送)

☆☆★
 大前春子(篠原涼子)が勤める会社で、企画コンペが行なわれることになる。社内外問わずという条件のため、森美雪(加藤あい)は企画を考える。それを読んだ里中賢介(小泉孝太郎)は内容を褒めるが、東海林武(大泉洋)は派遣の企画が通るわけがないと主張し、美雪の企画書は賢介の名前で出すように言う。賢介に想いを寄せている美雪はそれでもいいと同意するが、賢介は納得出来ずに美雪の名で企画書を提出してしまう。その企画はベストファイブに残るが、社員たちは美雪に派遣の分際で企画を出すなんてと責められる。揉め事になったため、桐島敏郎(松方弘樹)は美雪をクビにしてしまう。悩む賢介は美雪のために敏郎に話をしに行くが、そこで体を張って美雪のクビを防いだのは春子だった。
 マーケティング課の社員・派遣の掛け合いは面白く、テンポ良くなっていっているが、話の内容が第5話の小笠原繁(小松政夫)のものと似てしまっていたのが残念だ。だが、「社風に合わないから」などという言葉だけで簡単に切り捨てられてしまう派遣の危うさや、会社内での立場関係の暗黙の了解があるのだということが良く伝わってきた。派遣社員というものをよく知らない人間にも分かりやすく脚本が作られているのが、このドラマの大きな長所だ。今回は、篠原涼子の表情もとても愉快だった。春子のキャラがしっかり立っていて、見ていて安心する。また、浅野務(勝地涼)は美雪のことを想っているが、中々動き出す様子がないのが気になる。残りの数話で、社内の恋愛模様がメインとなって描写されていくのかもしれない。(花宮有栖)

第6回(2007年2月14日放送)

☆☆★
 バレンタインデーに向け、新しい企画を立てた東海林武(大泉洋)。イベントの初日にチョコレートが完売したため二日目は増やそうとするが、武と大前春子(篠原涼子)のせいで大量に残ってしまう。二人はチョコレートの製造者(もたいまさこ)に謝りに行くが、そこで妊娠中の娘(遠山景織子)が産気付いてしまう。だが助産士の資格を持っている春子が応対して無事お産は終わり、チョコレートの製造元と会社との関係はこじれずに済んだ。その夜、里中賢介(小泉孝太郎)や森美雪(加藤あい)が春子のために集まり、サプライズパーティーをする。そこでは冷たい態度をとった春子だが、もらったカードを読んで一人涙を流す。バレンタインデーは春子の誕生日でもあったのだ。
 多少先の読める展開ではあるが、今回も笑わせるシーンは笑わせ、泣かせるシーンは泣かせてと分かりやすくメリハリのあるストーリーになっていた。武と春子のやり取りも、回を重ねるごとに面白くなっている。春子は3ヶ月後に別れなければならない同僚たちに情が移らないように努めるが、彼らの思いやりに思わず感情を抑え切れなくなる。そんな春子の心情の演出があったのが印象的で良かった。徐々に会社でも表情を出すようになってきた春子は、これからどの様な変化を見せてくれるだろうか。(花宮有栖)

第5回(2007年2月7日放送)

☆☆★
 パソコンが使えず、現在は会社の戦力にならない小笠原繁(小松政夫)。桐島敏郎(松方弘樹)はもう嘱託契約の更新はできないと言うが、東海林武(大泉洋)や里中賢介(小泉孝太郎)たちはどうにか繁を会社に留めようとする。しかし突然国税庁の査察が入り、ある古い資料を探さなければならなくなる。繁は長年働いていて昔の事でも分かるため、そこで資料を探すのに一役買ったのだ。大前春子(篠原涼子)の助けもあり、会社のピンチを救った繁はこの会社にとって必要な人材だということが証明され、リストラは無事取り止めとなった。
 今回は美雪のエピソードは特に入らず、メインのストーリー展開を集中して見ることができた。実際はリストラを白紙にするということはそんなに簡単にはいかないし、春子の救出劇は大げさだったが、この盛り上げ方があってこその「ハケンの品格」なのだ。適当な緊張感を保たせつつ進んでいくストーリーは小気味良く、見終った後に気持ち良さを覚えるドラマは視聴者に好印象を残すだろう。また、春子の会社での振る舞いは唐突で冷たいが、時々見せる繁への優しさには温かいものを感じた。春子と武は相変わらず威嚇し合っているが!(花宮有栖)

第4回(2007年1月31日放送)

☆☆
 ロシアの会社と重要な取引をすることになった東海林武(大泉洋)。話し合いは難航するが、痺れを切らせた大前春子(篠原涼子)が強引に成立させる。一方、初めての給料をもらいその少なさに落胆する森美雪(加藤あい)は、もっと時給の良い派遣先を探し始める。受付の仕事を見つけ面接に行こうとする美雪は、嘘をついて会社を休んでしまう。しかし、春子が今のようなスーパー派遣になったのは、最低でも3ヶ月は派遣として職場から逃げなかったからだと知った美雪は、今の会社で頑張っていこうと決心する。また、武はロシア会社との交渉を無事終えた春子を食事に誘うが、きっぱりと断られてしまうのだった。
 武と春子は犬猿の仲だが、同時にどこか惹かれ合ってもいる。里中賢介(小泉孝太郎)の存在もあり、この三角関係は波乱を呼びそうだ。春子が葛藤し、どのような判断をするのか面白くなっていきそうだ。ただ、春子が凄い剣幕でロシア人バイヤーと契約を結ぶシーンにはなぜ日本語訳が無かったのだろうか。どういうやり取りがあったのか、そこにも訳があると更に笑えるシーンになっただろう。そして、前回までの話に比べ盛り上がりがいまいち薄れてしまっていたように感じた。熱が出てしまい仕事に身の入らない春子の姿はとてもユーモラスで、オフとオンのギャップを表情豊かに演じている篠原涼子の演技力を引き立てるストーリーにはなっているのだが、一番の見所が霞んでしまうのは中弛みに繋がってしまうだろう。(花宮有栖)

第3回(2007年1月24日放送)

☆☆★
 企画として、マグロの解体ショーを行うことにした東海林武(大泉洋)。有名なマグロ解体のプロのツネさん(小野武彦)を目玉にしようとするが、ふとしたことでツネさんは怪我を負ってしまう。イベント直前までツネさんの代わりを見つけられない武は、自分に責任があると思い辞職を考える。その姿を見た里中賢介(小泉孝太郎)は大前春子(篠原涼子)にどうにかできないかと頼み込むが、春子はそれを突き放す。しかし、イベント当日、急遽ツネさんの代わりを引き受けてくれたのは春子だった。解体ショーは無事終了し、武は素直に春子に感謝する。そして突然春子にキスをするのだった。
 いくら多種多様な資格を持っていると言っても、マグロ解体は流石にできないだろう。ドラマを盛り上げるための展開ではあるが、苦笑してしまった。賢介が春子に訴えるシーンには思わず見入ってしまったが、武がいきなり春子にキスするというのはどうなのだろうか。助けてくれたという理由からだとしても、感情の変化が急過ぎる感じがするが、それが良い運びになるのかは今後の展開にかかっている。社内の恋愛模様も見所だ。今回は、合コン派閥に入ってしまった森美雪(加藤あい)の姿も描かれていた。そんな美雪に鋭い言葉を投げ掛ける春子。少々大げさなシーンの中でも、やはり春子の台詞はしっかり際立っていた。(花宮有栖)

第2回(2007年1月17日放送)

☆☆★
 仕事で失敗続きの森美雪(加藤あい)は、派遣会社の一ツ木慎也(安田顕)に愛想良く振る舞う“キャラ立ち派遣”をしか生き残る道はないと言われる。早速実践してみるが、正社員たちにはいいように使われ、他の派遣からは非難されてしまう。そんな中、正社員と派遣との間で争いが起きる。東海林武(大泉洋)の「派遣は単純な労働力だ」という言葉に、大前春子(篠原涼子)と武は書類のホッチキス留めで勝負することになるが、春子はわざと負ける。それが気になった里中賢介(小泉孝太郎)がなぜかと聞くと、春子は正社員のプライドを傷つけてもちっとも面白くなんかないと答える。そして、自分のプライドより大切なものは派遣として生きて行くことで、それには正社員と共存していかなければならないと言う。
 ホッチキス対決というのはいかにもドラマ的だが、内容は前回より面白くなっているように感じられた。人間関係の微妙な変化が見ていて面白い。そして、メッセージ性を失わず、最後の春子の鋭い台詞の生かし方が上手い。視聴者に深い印象を与える言葉だった。ただ、正社員にとって大切なものも描かれていくべきだ。春子は美雪のことが気に掛かるようだが、美雪が昔の春子に似ているというのがこれ以降の展開の鍵の一つになりそうだ。派遣として生きることがプライドよりも大切だと言い切る春子には清々しささえ覚えたが、“大前春子”というキャラクターの性格を出し過ぎず、絶妙なところでリアルに演じていって欲しい。(花宮有栖)

第1回(2007年1月10日放送)

☆☆
 大前春子(篠原涼子)は特Aランクスーパーハケン。3ヶ月派遣として働くと次の3ヶ月は海外へ旅するという生活を送っている。ストーリーはスペインにいる春子が仕事のために日本に呼び戻されるシーンから始まる。ある食品会社に派遣社員として3ヶ月間勤めることになるのだが、残業・休日出勤はしないなど独自のルールで「お自給の分はしっかり働かせていただきます」と宣言する。そんな春子の態度に、東海林武(大泉洋)を始めとする正社員は戸惑いを隠せない。時を同じくして同じ会社に派遣された森美雪(加藤あい)。上京してきたばかりで勤務経験ゼロ、しかも不器用でパソコンも使えず、なんとかクビにされないようにと奮闘する。会議の資料の作成を頼まれ自宅へ持ち帰るが、翌朝出社時にタクシーの中に置き忘れてしまう。急いで捜索するが、タクシーは事故により廃車になってしまっていた。すぐに駆けつけタクシーを見つけた美雪たちだが、車が高い所にあるため資料を取ることができない。そこに現れたのは、クレーンを操る春子だった。そしてある日、武と里中賢介(小泉孝太郎)は桐島敏郎(松方弘樹)に誘われ飲みに出かけた。フラメンコの曲が流れる中、踊りながら登場したのはなんと春子だった…。
 派遣をテーマにしたドラマだが、正社員ならではの昇格争いという悩みにもスポットを当てている。もちろん派遣の実情についても分かりやすく、その悪い面と良い面が描かれている。派遣と正社員の対立も見所だ。春子のキャラクターは個性的を超して奇人とも思えるが、自分のスタイルを貫き昇格争いなど無駄だと言い切る姿には共感できる視聴者も多いのではないか。鋭い台詞も所々に効いている。ただ、気になるのがストーリー展開だ。書類を忘れるなど、少々ベタではないだろうか。タクシーの事故や、クレーンに乗り登場する春子には驚いてしまった。春子が職場で一切笑顔を見せない訳や、これからの活躍に期待したい。(花宮有栖)

ハケンの品格

日本テレビ系水曜22:00〜22:54
製作著作:日本テレビ
制作協力:オフィスクレッシェンド
プロデュース:櫨山裕子、内山雅博
脚本:中園ミホ
演出:南雲聖一
音楽:菅野祐悟
主題歌:『見えない星』中島美嘉
出演:大前春子…篠原涼子、森美雪…加藤あい、里中賢介…小泉孝太郎、東海林武…大泉洋、浅野務…勝地涼、黒岩匡子…板谷由夏、一ツ木慎也…安田顕、天谷リュート…城田優、島田香…入山法子、竹井瞳…清水由紀、ナレーション…田口トモロヲ、小笠原繁…小松政夫、天谷眉子…白川由美、桐島敏郎…松方弘樹