エラいところに嫁いでしまった!

第9回(2007年3月8日放送)

☆★
 山本磯次郎(谷原章介)の実家に居候することになった山本君子(仲間由紀恵)。ひょんなことから近所の谷村加代子(野際洋子)と張り合い、婦人会の親睦会で山本志摩子(松坂慶子)と共に日本舞踊を披露することになってしまった。しきたりをこなすのに忙しく、我慢出来なくなった君子は東京へ戻ろうとするが、磯次郎に本音をぶつけているところを志摩子に聞かれてしまう。志摩子は落胆を隠せず、君子も帰るに帰れない状況に。意地で日本舞踊を練習した君子は、不安を抱えつつ親睦会へ向かう。志摩子は来ず、君子は1人きりで山本家への素直な気持ちを打ち明ける。しかし、全て吐き出した君子がふと会場の入り口を見ると、そこには志摩子が微笑んでいた。
 このドラマに中途半端に登場してきた加代子は、この最終回のためにいたのだった。展開には必要なキャラクターだが、少し扱い方が雑だった。また、山本奈緒(渡辺夏菜)の活躍があまりなかったのがもったいない。そして今回の君子が山本家への本心を告白するシーンは、今まででも印象に残るものになっていた。ラストは結局主人公3人の関係は変わらずに終わったが、それはそれで「エラいところに嫁いでしまった!」らしくて良かったのではないか。心に残る秀作というドラマではないが、終わってしまうと寂しい、あのドタバタぶりがまた見たくなるような作品だった。(花宮有栖)

第8回(2007年3月1日放送)

☆★
 仕事で、自宅出産について取材をすることになった山本君子(仲間由紀恵)。ちょうど親戚の守山由美(濱田マリ)が出産を控えているため、君子は再び山本志摩子(松坂慶子)の元へ。由美は出産前で食欲旺盛だが、血圧が高いため皆は心配している。しきたりで由美の言うことを聞かなくてはいけない君子は、山本磯次郎(谷原章介)と共に翻弄される。取材だからと割り切ってはいるが、不安になるとわがままになってしまう由美を気に掛けている。しかし、由美の余りの勝手さに我慢出来なくなった君子は、「いい加減にして下さい!」とその場を収めるのだった。その後出産は無事に終わったが、君子の貫禄の良さに驚いた山本家の面々は再び同居話を蒸し返すのだった。
 由美の性格がフィーチャーされた第8話だったが、それは以前から描かれていたことで少々新鮮味がなかった。だが、最後はそれぞれの夫婦の形が映し出され上手くまとまっていたように思う。家族の温かさが伝わってきた。エラい思いをしながらも、だんだんと山本家にいるのが楽しいと感じるようになってきた君子。山本家への感情が変化してきた今、彼女は最終回で同居に対してどんな決断をするのだろうか。このドラマらしい締め括りが見たい。(花宮有栖)

第7回(2007年2月22日放送)

☆☆
 熟年離婚についての取材をしていた山本君子(仲間由紀恵)は、偶然に女性と一緒にいる山本波男(本田博太郎)に出会う。「このことは内密に」と言われた君子は、二人の仲を怪しむ。そんな中、君子と山本磯次郎(谷原章介)は山本志摩子(松坂慶子)と波男の結婚四十周年を祝うパーティーへと向かう。しかし、そこで磯次郎に浮気疑惑がかかり、波男の行動にも不信感を抱く。ある日、君子は波男が再び先日の女性と一緒にいるところを目撃する。君子がこれは決定的に浮気だと思った矢先、なんとその女性が山本家を訪ねてきてしまう。いよいよ離婚の直談判かと緊迫した空気が漂うが、その女性は箪笥職人であり、波男が昔傷つけてしまった志摩子の桐箪笥の代わりに新しいものを作ってもらったことが判明するのであった。
 勘違いが勘違いを呼んだ第7話であった。効果音が多用され、うるさく感じたのが気になった。ドラマを面白くしようという気持ちは分かるのだが、ネタや効果音の多用は逆効果を生む可能性がある。今回は夫婦の絆をテーマにしたストーリーだったが、終始“温かい夫婦のエピソード”で終わってしまっているのが残念だ。もう少し、ドラマ的に盛り上げても良かったのではないだろうか。だが最後の波男と志摩子のやりとりはお茶目で、二人の表情にはとても好感が持てた。特に本田博太郎のキャラクターはしっかりしていて、表情の豊かさに笑わされた。情けない山本家の男性陣には毎回呆れるが、同時にどこか親しみやすいものを感じるのも事実である。(花宮有栖)

第6回(2007年2月15日放送)

☆☆★
 お寺の僧侶に、水に祟られていると言われた山本君子(仲間由紀恵)。山本志摩子(松坂慶子)が改築のために井戸のお祓いをすると聞いた君子は、山本磯次郎(谷原章介)と共に飛んで帰る。しかし、そこにはいつもと違いやる気のある君子を睨みつける守山由美(濱田マリ)の姿があった。由美は、夫の守山保(温水洋一)との仲がこじれてしまい、離婚すると主張し実家に帰ってきたのだ。君子と志摩子、山本波男(本田博太郎)はそんな二人を元に戻そうと企む。三人のおかげで離婚は取り止めとなったが、今度は君子が悩む番だ。志摩子を始め、山本家の人々は君子と磯次郎との同居にむけてすっかりその気になっていたのだった。
 由美と君子が意気投合するシーンがあったが、役者がとても楽しそうに演じているのが印象的だった。意地悪な役だが憎めないという由美のキャラクターも際立ち、良かったと思う。また、山本源之介(近藤芳正)のギャグは入れ過ぎで少しうるさく感じるが、磯次郎とのコンビはユーモラスでこちらも楽しく演じているのが伝わってくる。君子・志摩子・波男のウインクのやり取りという遊んでいるシーンもあり、全編を通して楽しさが伝わってくる回だった。今回のストーリーにはホラーテイストも入っていて、笑える展開になっていた。ただ、ドラマの約半分が放送された今もなお、志摩子・君子・磯次郎の性格には相変わらず変化がない。これ以降の展開で三人は変わっていくのだろうか。それとも、最後まで三人の関係は変えないつもりなら、脚本の面白さが更に大切な命綱となってくるだろう。(花宮有栖)

第5回(2007年2月8日放送)

☆☆
 些細なことで怪我をしてしまった山本君子(仲間由紀恵)を気遣い、山本志摩子(松坂慶子)と君子の両親を東京に呼んでしまった山本磯次郎(谷原章介)。志摩子は君子の親孝行を成功させるのに良い機会だと張り切るが、君子にとってはありがた迷惑だ。早速東京ツアーに出掛けるが、そこで君子は親とけんかしてしまい、「私の記事なんて読んだこともないくせに」と突き放してしまう。しかし志摩子が、君子の父は君子の初めての仕事の記事を大切に持っていると教えてくれる。親の気持ちに気づいた君子は、自分から仲直りするのだった。
 両親、そして志摩子が上京するという新しい展開を見せた第五話であった。コメディ色を抑え子を想う親の気持ちが描かれていたが、もう少しメリハリが必要だったと思う。しかし、全体的に他の回より落ち着いた運びになっていたのは新鮮だった。またもや志摩子に翻弄される君子だが、彼女のおかげで親の優しさも知ることができた。中途半端な感じはあったが、親子の関係にスポットを当てたホームドラマに仕上がっていたと言えるだろう。また、山本家には新しい家族の一員、山本源之介(近藤芳正)も加わり更に賑やかになってきそうだ。仕事に姑に……君子の悩みの種は減らないが、少しずつたくましくなってきた姿を思わず応援せずにはいられなくなった。(花宮有栖)

第4回(2007年2月1日放送)

☆☆
 食べ物に誘惑され、再び山本志摩子(松坂慶子)のもとへ舞い戻る山本君子(仲間由紀恵)。山本家から出た町長選挙の立候補者、山本源之介(近藤芳正)を応援しなければならないため、君子はご馳走を食べたらすぐに東京へ帰ろうと決意する。しかし、たまたま仕事に空きができてしまいやむなく手伝うことにする。対立候補の谷村豊(石橋蓮司)は人気だが、源之介は元同級生にさえ相手にされない嫌われ者。山本家は全力で応援するが、努力もむなしく協力を得ることができない。豊は山本家の悪い噂を広め、悪質な陰謀を企てる。そんな中、豊派と源之介派がたまたま町中で出会ってしまい、源之介は豊から誹謗中傷を受ける。余りの言われように堪え切れなくなった君子は、「山本家を笑うな!」と思わず山本家を庇う。結局源之介は落選してしまったが、元同級生たちが実は源之介を応援してくれていた事を知り涙するのだった。
 今回は話のテンポが良くなり、見所がしっかり盛り上がっていた。同じ展開が続いていたので、ここで流れが変わるのは必然だが安心した。しきたりは登場せず、嫌々ながらも選挙に協力する君子。相変わらず大変な思いをしながらも、山本家に少しずつ愛着を持ってきている様子には微笑ましいものがある。このドラマは、視聴者に君子に対してどれだけ愛着を持たせることができるだろうか。また、今回一番の盛り上がりを見せたのは、君子が豊に啖呵を切るシーンだ。とても爽快で、その後の君子の反応も面白かった。マンネリから抜け出せた今、今後は新鮮味を感じさせるストーリー展開を見せて欲しい。(花宮有栖)

第3回(2007年1月25日放送)

☆☆
 仕事が忙しくなる山本君子(仲間由紀恵)に、山本磯次郎(谷原章介)は実家で女正月をするが行かないかと誘う。のんびりできると聞いた君子は賛成し、山本志摩子(松坂慶子)のもとへ向かう。家へ着くと、早速男性陣が世話をしてくれる。君子は温泉へ行こうとしたが、またもやしきたりに縛られてしまう。ようやく温泉に行けることになったが、そこで守山由美(濱田マリ)に今までのしきたりは全て子宝祈願のためだったと知らされる。子供はまだ作るつもりはないと言う君子を由美たちは非難し、それに我慢出来なくなった君子は自分の思いをぶつけてしまう。そして、それを聞いた志摩子を泣かせてしまう。苦悩する君子だが、志摩子が泣いていた原因は腹痛だったことが分かるのであった。
 何度も同じ失敗をしてしまう君子も君子だが、磯次郎の責任の無さにも呆れてしまう。第1話から成長していないように見えるが、これから少しずつ変わっていくのだろうか。嫌味のない志摩子の態度、特に最後のオチには笑ってしまったが、やはり話の構成は前回と変わらない。展開の中弛みが気になったのが1番の問題だ。後半、志摩子の優しさが出ていたのは良かった。山本波男(本田博太郎)の心遣いは心地良かったし、山本栄太郎(橋本さとし)は君子にとって信頼できる人になりそうだ。(花宮有栖)

第2回(2007年1月18日放送)

☆☆
 親戚が亡くなったため、やむを得ず再び山本磯次郎(谷原章介)の実家に戻らなくてはならなくなった山本君子(仲間由紀恵)。「僕に任せて」という磯次郎の発言から二人で葬儀を進行しなければならなくなるが、君子は聞いたこともないしきたりに困惑する。相変わらず失敗ばかりの磯次郎を助けつつ、自分の仕事もしなければならない君子。てんてこまいになりながらも準備に走り回り、何とか葬儀は終了するが、君子のちょっとした失敗を守山由美(濱田マリ)たち親戚は非難する。だがその時、本当に助けてくれたのは君子だと、真実を話して君子をかばってくれたのは磯次郎と山本志摩子(松坂慶子)だった。
 今回、急に「しきたりだから」と言い出す志摩子はさすがに理不尽に感じた。前回指摘した通り、基本的な運びが前回と同じになってしまっていたので、視聴者を逃す原因になってしまう可能性も危惧しなくてはならない。だが、君子の目での表現が面白く、驚きや怒り、困惑や不満をとてもユニークに表している。そして、エスカレートし過ぎてはいけないが、いじめ役の由美はこの作品にはいなければならないキャラクターになってきた。主人公三人だけでなく、由美と君子とのいざこざも見所になっていきそうだ。(花宮有栖)

第1回(2007年1月11日放送)

☆☆
 結婚した山本君子(仲間由紀恵)と山本磯次郎(谷原章介)。2人は磯次郎の実家で披露宴をすることになる。意気込んで磯次郎の実家へ向かう君子だが、なんとそこはとんでもない大豪邸でしきたりを重んじる家柄だったのだ。その上、磯次郎の母、山本志摩子(松坂慶子)は君子が何でも出来る嫁だと誤解しているために、断れない性格の君子は自分で自分を追い込んでしまう。そして披露宴当日、とうとう我慢し切れなくなった君子は白無垢姿のまま家を飛び出してしまう。それを追いかけた磯次郎は、君子の正直な思いを聞き自分もまた告白する。家へ戻ると披露宴が始まるが、君子の投げやりな態度を親戚たちは非難する。そんなムードを変えたのは、磯次郎の飾り気のない素直な言葉だった。披露宴を終え自宅へ戻った君子と磯次郎だが、すぐに志摩子から電話がかかってくる。そんな志摩子のお節介に、君子は「エラいところに嫁いでしまった…かもしれない!」と嘆くのであった。
 展開のテンポもよく、君子と磯次郎の掛け合いも小気味良い。君子の断れない性格には歯痒さを覚えるが、彼女の見せる表情はとても豊かだ。脇を固める個性的な面々も面白い。コメディタッチな中に感動させるような台詞も盛り込まれているのだが、これだと各話の構造が同じになってしまわないだろうか。今後は視聴者を飽きさせないような工夫や、笑わせるだけでなくどこまで感動させられるかに期待したい。嫁と姑、そして夫という月並なテーマだが、どこかズレた3人の関係の変化、そして彼らを取り巻く人々には注目だ。(花宮有栖)

エラいところに嫁いでしまった!

テレビ朝日系木曜21:00〜21:54
制作著作:tv asahi
プロデューサー:桑田潔
原作:槇村君子『エラいところに嫁いでしまった!』
脚本:後藤法子
演出:片山修
音楽:吉川慶、高見優
主題歌:『拝啓○○さん』やなわらばー
出演:山本君子…仲間由紀恵、山本磯次郎…谷原章介、守山由美…濱田マリ、山本栄太郎…橋本さとし、守山保…温水洋一、佐倉里穂…猫背椿、山本奈緒…渡辺夏菜、山本源之介…近藤芳正、中西晃一…中村靖日、谷村加代子…野際陽子、ボーノ先生…大澄賢也、守山夏帆…嶋田あさひ、守山春奈…峯晴香、鈴本登紀子…鈴木登紀子、篠原…阿南健治、福部純一…大滝秀治、守山ミツ…菅井きん、僧侶…麿赤兒、槇村佑介…平泉成、槇村友子…星野知子、山本波男…本田博太郎、山本志摩子…松坂慶子