演歌の女王

第10回(2007年3月17日放送)

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 大河内ひまわり(天海祐希)の弟子の五味貞子(成海璃子)がひまわりの家を訪れるが、そこには大切な反物とひまわりの髪飾りが残されているだけだった。貞子がひまわりの居所を掴むために知り合いを訪ねていくと、ひまわりは今までに沢山の人々を幸せにしてきたことがわかる。一方、ひまわりは自殺を図るために雪山へ向かっていた。遂に雪の中に倒れるひまわりだが、田丸ヒトシ(原田泰造)の幻想を見てまだ自分が幸せになっていないことに気付く。声を取り戻したひまわりは、病院で皆の前で「女のわかれ道」を歌うのだった。
 ひまわりの本当の夢は、紅白に出ることではなく歌を歌って人々を幸せにすることだった。メインになるはずの紅白への道を描かなかったのは期待はずれで残念だったが、そういう意味で彼女はとうとう「演歌の女王」に輝いたのだ。何よりも最後のひまわりの晴れやかな笑顔がそれを物語っていた。脚本の力不足で「女王の教室」ほどのインパクトは残せなかったが、人間関係を描写した温かいラストはこのドラマのファンを幸せにできたのではないだろうか。また、無理な展開が多かったため全体的にあまり好調とは言えなかったが、キャストの頑張りには拍手を送りたい。(花宮有栖)

第9回(2007年3月10日放送)

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 病院から大河内ひまわり(天海祐希)の家へと逃げてきた田丸ヒトシ(原田泰造)。しかしすぐに警察が来てしまい、ひまわりはヒトシと花田信(武井証)を連れて弟の信友勝也(黄川田将也)の元へ向かう。しかし勝也は株で失敗し、自殺しようとしていた。ひまわりはどうにかそれを止め、思い直した勝也は、翌日別れる時にひまわりに父の居場所を教える。それからひまわりは信を元の母親のところに戻し、ヒトシを自首させようとする。田丸真佐美(酒井若菜)のおかげもあり、自首を決意したヒトシ。それを見送ったひまわりは、遂に父親に会いに行くのだった。
 展開が上手く行き過ぎていて、全体を通してまとめているだけのストーリーになってしまっていた。最終回を目前にしているため仕方がないのかもしれないが、やはり面白味が足りなかっただろう。また、警察が個人情報を提供したり、警官を押し退けて逃げるなど、このドラマ中で教育上悪い影響を与えるシーンが入っていたのも気になった。だが、父親に冷たい態度を取られショックを受けたひまわりの姿はとても痛々しかった。声が出なくなり演歌の道も閉ざされたかと思えるひまわりは、最後に幸せを掴み取ることができるのだろうか。(花宮有栖)

第8回(2007年3月3日放送)

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 地方で宣伝活動を行うことにした大河内ひまわり(天海祐希)。しかし、体調を崩してしまい宣伝は中断、田丸道代(池内淳子)のアルツハイマー病が悪化していると聞き東京へ舞い戻る。道代は昔好きだった人に会おうと暴れ、病院から抜け出してしまう。家へ戻った道代は、田丸ヒトシ(原田泰造)を昔の恋人だと勘違いし、不安を打ち明ける。ヒトシは優しい言葉を掛け、道代はやっとのことで病院へ戻る。しかし、ヒトシは「私を死なせて」という道代の言葉が忘れられず、毒薬を購入し、道代を殺して自分も死のうとする。だが、それに気づいたひまわりはヒトシを止めて逃げ出し、二人の逃避行が始まったのだった。
 田丸真佐美(酒井若菜)の性格がすっかり変わってしまい、何だか張り合いがないように感じたが、天海祐希を始めキャストの頑張りが演技を通して伝わってきた。いよいよ物語は佳境に入ってきたが、少し詰め込みすぎで展開が速すぎると感じた。特に後半、ストーリー展開にかなり無理があった。「なんでこうなるの!?」と思うシーンも多々あったが、重い展開になってきた。第6話・第7話の脚本は面白くなってきたように思えたが、今回はキャストの熱演に脚本が付いていっていない感じがあった。これ以降は重要なストーリーになると思われるので、現実味が無くなり過ぎてしまわないようにして欲しい。次回はひまわりの父親が登場し、再びひまわりの家族にスポットが当たるようだ。(花宮有栖)

第7回(2007年2月24日放送)

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 再び大河内ひまわり(天海祐希)のマネージャーを始めた荻本次郎(段田安則)は、地方の旅館で売り込みをしないかと誘う。一方、ひまわりは田丸真佐美(酒井若菜)と田丸ヒトシ(原田泰造)の兄達が田丸道代(池内淳子)を施設に入れようとしているとヒトシに相談される。だが、道代は自ら施設に入ると主張、店はヒトシと真佐美に継がせると言い解決した。ある日、真佐美が店を売ろうとしている所を目撃したひまわりは、本当に愛していないのならヒトシと別れてくれと頼み込む。だが、誤って階段から落ちてしまった真佐美をかばい、ひまわりは重傷を負う。病院で、真佐美は自分の本当の気持ちをひまわりに打ち明ける。それを聞いたひまわりは、ヒトシとはもう縁を切り、演歌の道へと進むことを決めたのだった。
 少しずつ改善されていっている「演歌の女王」。序盤から勢いが出ないまま視聴率が低迷してしまった今、第6話から徐々に良くなっていく脚本がとてももったいなく感じる。また、今回は天海祐希と酒井若菜の熱演が泣かせる回であった。人前で本音が出せないという真佐美の性格は取って付けたようで少々無理がある気がするが、病院での告白シーンは今まではあまり見なかった酒井若菜の演技を見せつけられた。また、シリアスなシーンが続く中、最後はひまわりと次郎の狩人の「あずさ2号」のデュエットで終わるという展開はメリハリが付いていて面白かった。次回からは、遂にひまわりが自分の幸せのために動き出す。今後のひまわりの成功や、ヒトシとの関係がどうなっていくのかが気になるところである。(花宮有栖)

第6回(2007年2月17日放送)

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 離婚の危機に瀕した荻本次郎(段田安則)が大河内ひまわり(天海祐希)に相談に来る。ひまわりは仕方なく次郎の妻と話をしに行くが、つい妻に同情してしまい結局問題は解決しない。すると今度は田丸ヒトシ(原田泰造)がやって来て田丸道代(池内淳子)の病気について相談するが、もう関わらないと決めたひまわりは突き放す。ある日、ひまわりが街頭で自分のCDを売り込んでいると、テレビ局のプロデューサーに声を掛けられ演歌のオーディションに出場することになる。遂に本番を迎えたが、次郎が自殺すると言い出し、さらに道代がいなくなってしまったとヒトシから助けを求められたひまわりは、オーディションを抜け出してしまう。アルツハイマーで息子さえ分からなくなってしまった道代に、ひまわりは「女のわかれ道」を歌う。すると道代は元に戻ったが、病院を出たひまわりの頭上に次郎が飛び降りてくる。何とか助かったひまわりは、突然ヒトシに一緒に暮らそうと告白されるのだった。
 人のために尽くさずにはいられないひまわりに、徐々に運が向いてきた。しかし、ヒトシに告白されたひまわりには波乱の展開が待っていそうだ。道代のために持ち歌を歌ってあげるシーンなど、人と人の繋がりを盛り込んだ回だった。天海祐希の熱演も光り、健気な姿に好感を持った視聴者も多いのではないか。そして今回は妄想ではなく、遂に本当に渇を入れてしまったひまわり。特別枠にまでしてもらったのに結局オーディションを受けないという展開はもどかしかったが、メインテーマの演歌に向けてようやく動き出したのは良かった。エンジンがかかるのに少々時間がかかり過ぎたが、今後の脚本の質の向上に全力を注いで欲しい。(花宮有栖)

第5回(2007年2月10日放送)

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 母の信友星江(高畑淳子)が若いホストに貢いでいると聞き、心配する大河内ひまわり(天海祐希)。そんな時、田丸ヒトシ(原田泰造)がやって来て田丸道代(池内淳子)の様子がおかしいと相談される。道代と話したひまわりは、彼女のアルツハイマーが進んでいることを知る。ヒトシと田丸真佐美(酒井若菜)には病気のことは内緒にしてくれと頼まれるひまわりだったが、それが原因で再び真佐美に嫉妬される。また、星江が実家のたこ焼き屋を売り払ってしまったことが発覚、帰る場所がなくなってしまったひまわりは悲嘆に暮れる。ホストクラブに向かったひまわりは、ホストを刺そうとした星江に誤って刺されてしまうのだった。
 相変わらず展開に新鮮味が無い「演歌の女王」だが、あまりにもパターン化しすぎてしまっている。所々に印象的な台詞が入ってはいるのだが、この先も工夫が見られないと視聴率の上昇は望めないだろう。タイトルにもなっている演歌はメインの話に出てこないし、何とも中途半端だ。悪くすれば、天海祐希の人気、そして歌唱力に頼るしかなくなってしまうかもしれない。また、ひまわりと真佐美が取り合うヒトシの魅力が伝わってこないのも問題だ。そこまでヒトシに思い入れる理由が描かれていないため、視聴者としては納得できない。この消化不良を解消してくれるストーリーに改善されるよう期待したい。(花宮有栖)

第4回(2007年2月3日放送)

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 田丸道代(池内淳子)の誕生日会に呼ばれた大河内ひまわり(天海祐希)。そこで、料理に虫や下剤が入っているなど田丸真佐美(酒井若菜)から陰湿な悪戯を受ける。一方、田丸ヒトシ(原田泰造)は金になるからと何匹もの犬をひまわりに預ける。ヒトシと仲良くするひまわりに嫉妬した真佐美は、相談にのって欲しいと呼び出す。しかし、そこに現れた温水啓司(温水洋一)に本性をバラされてしまった真佐美は開き直り、未だにヒトシが好きなひまわりは嘘つきだと責め立てる。ある日、アルツハイマーになってしまった道代を庇ってひまわりは怪我をする。真佐美の事と道代の事で悩むひまわりだが、ついヒトシに告白してしまうのだった。
 今回も相変わらず同じ展開が続き、やはりこの脚本は余りにも安易な作りになっている。ただ、今回の見せ場であるひまわりと真佐美の取っ組み合いは面白く、真佐美のキャラクターは侮れない。ヒトシとひまわりが一夜を共にしてしまったという事実により、今後真佐美はひまわりにどんな攻撃を仕掛けてくるのかが楽しめそうだ。ただし、前回で訴えたいじめ反対という言葉に矛盾してしまうため、そのいじめは陰湿になり過ぎてはならない。道代の病気やひまわりの母の信友星江(高畑淳子)、居候の五味貞子(成海璃子)と花田信(武井証)など、多くの問題を抱えているひまわりは果たして1つ1つ解決していけるのだろうか。(花宮有栖)

第3回(2007年1月27日放送)

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 大河内ひまわり(天海祐希)は、学校でいじめられている家出少女、五味貞子(成海璃子)を放っておけず引き取ることにしてしまう。お金を同級生に取られていると聞いたひまわりは、いじめを解決するために勇んで教室へ向かう。しかし、ひまわりの行動は逆効果になってしまい、貞子は去ってしまう。その夜、貞子は遺書を残し学校の屋上から飛び降り自殺をしようとする。駆けつけたひまわりと花田信(武井証)はどうにか止めさせようとするが、貞子を助けたひまわりが誤って屋上から落下してしまう。大怪我を負ったひまわりだが、貞子を救えたことに安堵する。しかしある日、田丸真佐美(酒井若菜)がやって来てひまわりに「二度と私たちの前に現れるな」と宣戦布告するのだった。
 いじめられっ子役の成海璃子が、歩き方など仕草を工夫していたのには感心した。今回のストーリーは最近叫ばれているいじめ問題に関するものだったが、メッセージ性は「女王の教室」の時より薄れてしまっていた。それというのも、ひまわりがガツンと鋭いセリフを言うシーンは全て妄想だという設定にしてしまっているからだ。視聴者として冷めてしまうのも仕方ないだろう。ひまわりが漢字を使って相手に忠告するシーンや毎回の大怪我など、前回と展開が似たり寄ったりになってしまっていてしつこさを感じる。これから、真佐美のキャラクターをどれだけ引き出せるかが大きな見所となってきそうだ。(花宮有栖)

第2回(2007年1月20日放送)

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 田丸ヒトシ(原田泰造)の子供で、家出した花田信(武井証)を預かっている大河内ひまわり(天海祐希)はヒトシに話をしに行く。だがヒトシは信をまるで他人の子のように扱う。ひまわりは信を本当の母親のところに帰そうと奮闘するが、信は反抗的な態度をとる。一度は母親のところに帰った信だが、再び逃げ出してしまいひまわりとヒトシは必死で追い掛ける。ひまわりは途中で転んでしまい怪我をするが、信はしばらくひまわりと一緒に暮らす事を約束する。そしてある日、ひまわりはホテルから出てくるヒトシとばったり出会う。しかし、一緒に出てきたのは中学生の女の子だった。
 「女王の教室」からのパロディシーンがいくつかあり、次回も予告を見る限りではたくさんのネタが出てきそうだ。女王の教室ファンは楽しめるだろうが、パロディに頼り過ぎないようにして欲しい。今回は新しいキャラクターも登場し、それがどのように田丸真佐美(酒井若菜)とヒトシとの関係に影響を与えていくかに注目だ。ただ、ひまわりは過去の自分と同じ境遇だからしゅんを守ろうとするが、それだけの理由だと彼女はかなりの“良い人”になってしまわないだろうか。そうすると感情移入できなくなり、ドラマの内容が軽くリアルさが欠けてしまう可能性がある。そして今回、真佐美が本性をあらわし始めたのが面白い。徐々に勢いが出てきたひまわりとの対立は見物になりそうだ。(花宮有栖)

第1回(2007年1月13日放送)

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 性格なのか運なのか、不幸な人生を歩む大河内ひまわり(天海祐希)。演歌で紅白出場を目指しているが、以前ささやかなヒットを飛ばしたことがあるだけで現在は借金に追われる生活を送っている。ある日、ひまわりは昔何度も裏切られた男、田丸ヒトシ(原田泰造)に再会する。ヒトシは二人でCDを出そうと持ち掛け、まだヒトシを想っているひまわりはつい話に乗ってしまう。だがひまわりはまたもや裏切られ、遂に我慢は限界に。ヒトシと田丸真佐美(酒井若菜)の結婚式に乗り込もうとするが、誘拐犯と誤解され捕まってしまう。すぐに釈放されたひまわりだが、帰宅途中に出会った男の子はなんとヒトシの子供だったのだ。
 天海の豊かな表情は楽しめるが、基本的な展開が「嫌われ松子の一生」に似てしまっている。ストーリーは先が読めてしまい、逮捕されてしまうシーンなど突飛過ぎる箇所もいくつかあるのが残念だ。過去が説明的になってしまっていて、所々に入るCGは中途半端な感じが否めない。「女王の教室」に負けぬよう、天海の頑張りと不幸ぶりに期待したい。今後、ヒトシとの関わりでどのようにひまわりの人生が変わっていくのかに注目だ。(花宮有栖)

演歌の女王

日本テレビ系土曜21:00〜21:54
制作著作:日本テレビ
プロデューサー:大平太、太田雅晴
脚本:遊川和彦
演出:大塚恭司、岩本仁志、木内健人
音楽:池頼広
主題歌:『君の好きなとこ』平井堅
出演:大河内ひまわり…天海祐希、田丸ヒトシ…原田泰造、一条真佐美…酒井若菜、信友勝也…黄川田将也、矢沢…平山広行、武井証、志田…半海一晃、信友星江…高畑淳子、羽田美智子、幸子…福田麻由子、温水啓司…温水洋一、萩本次郎…段田安則、田丸道代…池内淳子