いい女

第6週(2006年12月4〜8日放送)

☆☆★
 今さらながらに夫・誠一(山崎一)に養ってもらいながら、チャラチャラと何をしてたんだろうと己を省み始めてからの詩織(石野真子)は色ボケぶりもすっかり晴れて、誠一との離婚を契機に自分の足で歩んでいくことを決意するにつけ、むしろ段々魅力的に映ってくる。と同時にドラマの面白みも麻子(山下容莉枝)が急死した第2週以来に復活。千波(松本圭未)、若葉(中村久美)も含めた45歳かしまし娘たちの愛に関する不幸の吹き溜まりぶりがあまりにも人間臭くて面白い。

詩織「18やそこらの子供にわかってたまるもんですか!」

との絶叫には実感がしみてくる。
 早匂(野村宏伸)を奪い取るべく、小ずるく詩織をだましていた熱い愛を知る女・蜜子(斎藤陽子)を平手打ちにした地点から今一歩はぎれが悪かった詩織も、直後に謝りに戻ってしまうあたり、長期プランに及んだ嫌がらせさえも自らの反省材料に塗り替えてしまうのか。ここで本気で人を愛する熱い心を持たなかった自分に詩織が向き合ったことで、早匂との今後にも楽しみが出てくる。
 マザコン男と付き合うことに耐えかねてか、反動で合コンに行くも、その夜に具合の悪くなった愛猫・メグが死んでダブルショックを受ける千波(松本圭未)の、そのいかにも結婚できないタイプぶりも、15歳年下のフランス語講師・マルセルと愛の逃避行を遂げた若葉(中村久美)のまぶしさの前ではかすんでしまった。と思ったら、パリのシャルル・ドゥ・ゴール空港から直接引き返してきちゃったって。成田離婚ならぬ、シャルル・ドゥ・ゴール破局?(麻生結一)

第5週(2006年11月27〜12月1日放送)

☆☆
 あんなにもモテモテだった詩織(石野真子)は離婚を決意するや否や、仕事を失い、本多(岡田浩暉)からも別れを言い渡されて、一転何もかも失ってしまう。いや、まだ早匂(野村宏伸)が余ってるから大丈夫でしょう。詩織をどん底にまで追い詰めていくやり方はなかなかに意地悪も、離婚するしないであれだけコロコロと変わられては(途中で数え切れなくなるる)、タイミングを逸すべくして逸したという気もしてくる。密子(斎藤陽子)が唱える複数男性説の実践は、少なくとも詩織には向いてなかったか。
 不倫相手・美樹(長谷川恵美)は会社の大株主の娘につき、望むと望まざるに関わらず、夫・誠一(山崎一)は結婚せざるをえない状況に。こちらのパートの扱いは相変わらずおざなり極まりないが、密かにこっちの方を描いた方が面白かったかもと思ってみたり(当然、コメディとして)。
 あんな馬鹿オヤジでもオヤジはオヤジと、終いには涙ぐんだりしちゃう長女・美香(吉高由里子)がどんどんいい子になっていく。言葉遣いはリアルすぎるほどにひどいけれど。(麻生結一)

第4週(2006年11月20〜24日放送)

☆☆
 早匂(野村宏伸)がロンドンに出張してる間に、詩織(石野真子)のファーストチョイスが本多(岡田浩暉)に形勢逆転。どうにも言動がおかしい蜜子(斎藤陽子)に加えて、同じ研究室の栗原(小林麻子)まで出てこられては、早匂の方が面倒臭くなるのもわかる気がする(そういう理由で別れたわけではないも、これまでだって付き合っていたかも微妙)。
 ちょっとぐらいは裏があるのかと思われた夫・誠一(山崎一)の不倫も、その相手にして19歳の百瀬(長谷川恵美)が自宅まで乗り込んできて、誠一の上司・持田(車だん吉)の話のままであったことが判明。これには大いに拍子抜けする。
 ここまでのガラの悪さからすると、長女の美香(吉高由里子)こそが悪さしそうな雰囲気だったも、万引きで捕まったのが次女の由梨(吉田紗也加)の方だったのにはちょっとビックリ。だからどうだという展開でもなかったりするあたりは、エピソードのリンクが今一歩に思えるこのドラマらしいと言えばらしいか。
 ここまで詩織の恋愛的後塵を拝していた千波(松本圭未)が、フランス語教師との年の差恋愛でいい感じの若葉(中村久美)もぶっちぎって一躍トップランナーに?! 急いては事を仕損じるとも言いますが、鉄は熱いうちに打てとも言いますからね?どちらにしても、かしまし3人45歳女の集いが最大の見所です。(麻生結一)

第3週(2006年11月13〜17日放送)

☆☆
 ロンドンに出張した早匂(野村宏伸)と、そんな早匂とのダブル不倫を匂わせる蜜子(斎藤陽子)にやきもきしたり、夫・誠一(山崎一)が19歳のアルバイトと不倫していることが発覚したり、さらには父・陽司(前田昌明)が入院したりと受難もいろいろあったけれど、早匂に引き続いて担当編集者の本多(岡田浩暉)にもモテモテの詩織(石野真子)に、これ以上何の不足があるというのでしょうか。比べるならば、若葉(中村久美)、千波(松本圭未)の恋愛的不遇が気の毒で。とりわけ『だめんず・うぉーかー』と化した千波がみじめ過ぎる。
 長女の美香(吉高由里子)のガラの悪さが若干改善。見せ場がなかっただけかもしれないが。(麻生結一)

第2週(2006年11月6〜10日放送)

☆☆★
 ホテルでの打ち合わせ後、編集担当の本多(岡田浩暉)に突然キスされたり、めまいに悩まされていたのが更年期障害と診断されたりと、詩織(石野真子)自身にもいろいろあったけれど、コレージュ出身者で30年ぶりに再結成された4人組の中でもリーダー的存在だった麻子(山下容莉枝)の突然の死には、本当に驚いた。KISSのコピーバンドのライブでは、絶唱につぐ絶唱。あんなに元気だったのに……。燃えるような恋をして、女としての幸せをもっと味わいたいと死の直前に噛み締めるように放たれた言葉は、麻子の遺言のように後々まで響いてきて、残された詩織、若葉(中村久美)、千波(松本圭未)の3人が麻子を振り返る語らいをいっそうしみじみとさせる。
 麻子役の山下容莉枝は同じ週の『アンナさんのおまめ』ではこれまた胸を患っているも、村のカラオケ大会連覇がかかっている恭太郎(柏原収史)の母親役で登場して、『北の宿から』を熱唱。あまりにも似通ったシチュエーションにちょっと驚いたが、どちらにしても歌もお上手でした。
 麻子の死というショックから詩織たちを襲う「明日死んだらどうしよう」という不安感も、麻子の魂に後押しされる形で、「明日死んでも後悔しない」という心境に転化するあたりはなかなか後味がよかった。エステに通い始めてから陽に焼けるからという理由でガーデニングをやめていたも、庭に咲いた一輪のコスモスを麻子のメッセージと受けとめるのが詩織の場合だったが、同週の『おみやさん』もまたコスモスねたでした。それでも、蜜子(斎藤陽子)が仕掛けるエステ的お金のかかる罠は続くのだけれど。
 それにしても、長女の美香(吉高由里子)のガラの悪さは相変わらず度を越えている。こんないいお母さんの娘なのにどうしたことでしょう。(麻生結一)

第1週(2006年10月30日〜11月3日放送)

☆☆
 「いい女」ならぬ、もはや「いいおばさん」の中村、旧姓上原詩織、45歳(石野真子)は、結婚20年目の専業主婦業のかたわら、フランス語の翻訳の仕事をしている。なぜフランス語なのかという疑問は、パリのコレージュ(フランスの4年生中学校)出身者が30年ぶりに集うミニ同窓会への案内が届いいたことで即判明。仕切り役の(いかにも金持ちそうな)近内麻子(山下容莉枝)、社長婦人のセレブ・川島若葉(中村久美)、弁護士のバツイチ・松原千波(松本圭未)、エステサロン経営の戸川蜜子(斉藤陽子)と、その同窓会に出席しているそれぞれが詩織には輝いて見えて、そこから一念発起して蜜子のエステに通うことになるのだが、その後それぞれがそれぞれに大したことはなかったことを告白するまでもなく、もともと詩織が一番素敵に見えてしまうのは了解するしかないだろう。
 年齢は一世代下だろうけれど、『大好き!五つ子Go2!!』の桃子(森尾由美)が同窓会で人生を振り返ったのもついこの間。同じ枠で同じようなテーマが連続するのは企画に問題があるようにも思えるが、まさにこれが今のトピックとも言えるか。かつての恋人で、現在はノーベル賞も狙える位置にいるらしい日本で一番注目されている化学者らしい早匂和樹(野村宏伸)から付き合ってくれと迫られたり、新しく詩織の担当になった編集者・本多浩行(岡田浩暉)からは、官能の解放に一晩過ごすことを提案されたりと、詩織が急にモテモテになるあたりで、あのドラマとは根本的に違っている。それにしても長女・美香(吉高由里子)のガラの悪さと言ったら……。
 脚本はここのところ「愛の劇場」を度々手がけている西荻弓枝。西荻さんはオリジナル以外やらないと耳にしたことがあるのだけれど、これは原作物のようなので、こちらの勘違いだったかもしれない。どちらにしても、詩織が大いに共感を誘うキャラクターであることは間違いないだろう。
 ちなみに先週までやっていた同枠の『スイーツドリーム』の主演も漢字違いの史織(いとうあいこ)。まぁ、いいんだけど。(麻生結一)

いい女

TBS系月〜金曜13:00〜13:30
愛の劇場
製作:MMJ、TBS
企画:高野阿弥子
プロデュース:布施等
原作:藤本ひとみ『いい女』
脚本:西荻弓枝
演出:今井和久、二宮浩行
主題歌:『私の中の「いい女」』中村中
出演:中中村詩織…石野真子、早匂和樹…野村宏伸、戸川蜜子…斎藤陽子、近内麻子…山下容莉枝、川島若葉…中村久美、松原千波…松本圭未、上原陽司…前田昌明、中村美香…吉高由里子、中村由梨…吉田紗也加、車だん吉、松井紀美江、栗原理沙…小林麻子、乃木涼介、棟里佳、池田昌子、橋本啓輝、木村翠、黒部幸英、津村和幸、上原英子…星野晶子、天田暦、山本東、八木真吾、堀川裕生、小島康志、立花彩野、長谷川恵美、本田清澄、山田百貴、舩阪裕貴、青木一、岡田秀樹、建部和美、浮田久恵、矢澤稀依子、伊藤瑞稀、島崎隆一郎、中村柊芽、田村義晃、土方みなみ、舟田走、長谷川愛、馬場伸樹、中浜奈美子、志賀聖子、市川千恵子、菅野観愛、三原珠紀、阿部六郎、澤木明日香、菅原潤子、渋谷有希子、臼井かつみ、大塚洋、萩原一樹、片桐栞那、田戸岡和樹、森沢早苗、ヘイデル龍生、佐藤裕、田中登志哉、藤本至、Loic、Max、antonio、Gilles、中村誠一…山崎一、本多浩行…岡田浩暉