僕の歩く道

第5回(2006年11月7日放送)

☆☆★
 真っ当すぎるほどに真っ当な展開を、ここまで正面きってやられるとむしろ新鮮だったりする感慨は『僕の生きる道』を見たときの感想に近い。それ以来とも思える感覚がこれかと思うと、橋部敦子脚本はそれだけに個性的ということなのだろう。
 河原(葛山信吾)と結婚する都古(香里奈)が動物園を去ることに動揺しないように、結婚という概念から教え聞かせる母・里江(長山藍子)が、輝明から自らの結婚について問われて、言葉に詰まるシーンにはたまらなくなった。里江を演じる長山藍子のここでの心境演技が今話の白眉。
 結婚式で輝明からぶっきら棒に差し出された花束を手に、涙する都古(香里奈)に輝明が笑って見せようとするラストにもこのドラマらしい誠実がにじむ。こういう捌きがいやらしくならないのもまた、このドラマならではである。
 食堂のメニューに毎日カレーの輝明のためにチキンカレーが加わったのは何て融通の利く動物園なんでしょう。単に効率を重んじたのみとも言えるが。(麻生結一)

第4回(2006年10月31日放送)

☆☆☆
 不倫相手・河原(葛山信吾)との関係に悩む都古(香里奈)の心の移ろいが軸になっていたが、もっとも印象的だったのは、都古が輝明(草なぎ剛)を誘って休日にお出かけする場面で、そのファンタジックな見せ方には心洗われる思いだった。

都古「気持ちいいねぇ」

まったくである。ここの海辺のシーンの美しさは今話の白眉。
 普段の自分本位ぶりが強調されるほどに、唐突に垣間見せる輝明(草なぎ剛)の人間味、優しさ(それは輝明が意図していなかったにしても)がいっそう大切な瞬間のように見えるところをあらたまって説明するわけでもなく、空気の流れで伝えてくれるあたりは、このドラマのとりわけ際立っているところと言えるだろう。泣きじゃくる都古に輝明が傘を差し掛ける場面にはじんわりと胸が熱くなる(韓流ドラマで学習していたわけだが)。(麻生結一)

第3回(2006年10月24日放送)

☆☆★
 飼育係としての輝明(草なぎ剛)に兄・秀治(佐々木蔵之介)の息子・幸太郎(須賀健太)が動物園で遭遇。そのことで恥ずかしい思いをした幸太郎は輝明から5千円をせしめるも、嘘をついてはいけない、約束を破ってはいけないと、輝明は誰にお金を貸したか明かそうとしない。話がここで止まっては趣がないも、幸太郎に恥ずかしい思いをさせてしまったことを怒っているかどうかを気にしていたという輝明の後ろめたい気持ちが発覚して、何となく温かい心持になれるあたりがこのドラマの真骨頂である。だんだん教育テレビの道徳ドラマのようなテイストになってきてる(教育テレビの道徳ドラマはこのドラマのようにはまじめでなかったりするので、教育テレビのドラマ以上に教育テレビ的と言った方が正しいだろうか)。(麻生結一)

第2回(2006年10月17日放送)

☆☆★
 天竺ねずみの中でも一番おとなしいジンジン専属担当だった輝明(草なぎ剛)が、すでに天竺ネズミの解説のすべてを暗誦しているところを見せて、ついに動物園に正式採用になるところまでの第2回。その間の輝明の心情に関しては、説明的なところはほとんどない。それなのに、輝明の気持ちの移ろいが染み入るように伝わってくる。このドラマが目指すところはまさにそれだろうし、現状見事にその意図は当たっている。
 物語と見せ方の同調ぶりも早々に冴え渡っている。動物園に勤めていることを輝明が誇らしげに言うラストには、見てるこちらまで誇らしげな気持ちになった。(麻生結一)

第1回(2006年10月10日放送)

☆☆★
 『僕の生きる道』の静かなる誠実には大いに心を打たれたが、『僕と彼女と彼女の生きる道』には作為的なところが見え隠れして引っかかるものも残った。今作は『僕』シリーズ3部作の最終章に位置づけられるらしいが、内容はこれまでの連なりと何ら関連がないので、前のことを言っても仕方がないかもしれない。黒字に白のタイトルは『僕の生きる道』の方に同じ。
 第1回の重点は、31歳の自閉症の男性であり、なかなか仕事が長続きしない主人公・輝明(草なぎ剛)の説明に当てられていた。ただ、それが説明的なだけでとどまらなかったのは、淡々とした語り口が独特のテンポ感を生んで、一味違った何かを見るものに印象づけていたからだろう。演出のカラーによるものだろうが、そのあたりは『僕の生きる道』の方に通じるものがあるだけに、今後の展開にも期待を持たせるところだ。
 決して怒ったりしないと輝明が主治医・堀田(加藤浩次)に語っていたも、一緒の動物園で働くことになって、結局はその言動に輝明を怒鳴りつけてしまう幼なじみで獣医師の都古(香里奈)をはじめ、輝明を取り巻くキャラクターたちが輝明を鏡として成長していく姿がこれからの眼目になるのは間違いないだろう。ただ、幼馴染という設定の輝明と都古が、かなり年齢が離れて見えたのにはちょっと首をひねった。(麻生結一)

僕の歩く道

フジテレビ系火曜22:00〜22:54
制作:関西テレビ、共同テレビ
アソシエイトプロデューサー:石原隆
プロデュース:重松圭一、岩田祐二
脚本:橋部敦子
演出:星護(1、2)、三宅喜重(3、4、6、8、10)、河野圭太(5、7、9、11)
音楽:本間勇輔
主題歌:『ありがとう』SMAP
出演:大竹輝明…草なぎ剛、松田都古…香里奈、大竹秀治…佐々木蔵之介、大竹りな…本仮屋ユイカ、三浦広之…田中圭、大石千晶…MEGUMI、河原雅也…葛山信吾、大竹幸太郎…須賀健太、堀田丈二…加藤浩次、大竹真樹…森口瑤子、亀田達彦…浅野和之、青木大輔…澤田俊輔、水野楓…星野奈津子、山本武…滝直希、ピエロ…ごっちくん、少年・輝明…熊谷知博、少女・都古…八木優希、入園者…吉田晋一、カップル・男…石原誠、カップル・女…田代裕季、セールスマン…小豆畑雅一、主演女優…中沢純子、主演男優…累央、道を尋ねる老婦人…宮内順子、道を尋ねる老人…山本勝、合コン女…坂田裕美、合コン男…坂田鉄平・田口聖一・道躰雄一郎、雑誌記者…大塚和彦、お天気お姉さん…石塚初美、いじめっ子…糟谷健二、古賀の元妻…那須佐代子、田原真一…岩戸秀年、古賀和彦…塩野魁土、五島…青木一、五島の妻…青木かずみ、眼鏡屋店員…足立龍弥、高野…山田明郷、田原真一…岩戸秀年、中年女性客…青木和代・大村眞利枝・かとうけいこ、レポーター…永衣美貴、遠足の少女…伊藤沙莉、古賀の息子…浅利陽介、都古の母…ひがし由貴、河原の友人…綱島郷太郎・山下征彦、自転車屋・店員…城戸光晴、久保良介…大杉漣、古賀年雄…小日向文世、大竹里江…長山藍子