アンナさんのおまめ

第10回(2006年12月15日放送)

☆☆
 小久津王子(桐島優介)からのプロポーズを承諾したリリ(ベッキー)。恭太郎(柏原収史)とアンナ(杏さゆり)は、二人の真意が気になって仕方がない。デートを尾行までして確かめようとする恭太郎とアンナ。しかし二人はどうやら本気の様子。本来ならリリから離れられてうれしいはずの恭太郎だが、なぜか心が落ち着かない。そしてリリの結婚式当日。恭太郎は欠席するつもりだったが、いてもたってもいれなくなり教会へ急ぐ。が、教会にすでにリリの姿はなかった。リリの父・龍一郎(草刈正雄)に連れ去られて空港へ向かっていたのだ。なんとか追いついた恭太郎はリリに「オレにはアンナが必要なように、リリ、お前も必要なんだ」と叫ぶ。互いに駆け寄る二人。と、そのときリリの足元にレンタルビデオの貸し出し袋が。リリは映画のように結婚式でドラマチックに連れ去られたいだけだった事が発覚。むなしく絶叫する恭太郎。そして同棲を始めたばかりの恭太郎とアンナの新居にリリが転がりこみ、三人での新しい生活が始まるのだった…。
 放送開始当初はどうなることかと思われたこのドラマだったが、回を重ねるにつれ面白くなっていった。ベッキーと柏原収史の息が合い始めた頃に終わってしまったのが残念。今クール、ベッキーに関しては、NHK土曜ドラマ「ウォーカーズ」での演技も同時に観られたのだが、役どころに合わせて演技を切り替える器用さには驚かされた。「はなまるマーケット」、「きよしとこの夜」などバラエティ番組で見せる機転の良さにも感心していたが、女優としても今後間違いなく活躍できると確信した。これからの活動を注目したい女優の一人である。(仲村英一郎)

第8回(2006年12月1日放送)

☆☆
 リリ(ベッキー)がスカウトされキャバクラ嬢に。超勘違い振りが予想外に客にうけ、あれよあれよという間にNo1になる。面白くない同僚のキャバクラ嬢たちはリリにいじめをするが、当然効果無し。一方、リリを心配するアンナ(杏さゆり)は恭太郎(柏原収史)にリリのボディガードを命じる。渋々引き受けた恭太郎だったが、神崎組組長の愛人でリリをねたんでいるキャバクラ嬢の罠にかかり、囚われの身に。なんと恭太郎のピンチに組に乗り込んできたのはリリだった。リリのスーパー勘違いな行動には神崎組も歯が立たず、難なくリリと恭太郎は脱出に成功。体を張って救出に来てくれたリリを見直した恭太郎だったが、「神崎っちに恭太郎が好きなのはリリだって教えに来ただけだけどぉ〜?」との一言で見事撃沈。
 ベッキー演ずるリリの勘違い振りが楽しいこのドラマだが、ベッキーのド派手で個性的なファッションも見所の一つ。今週は、“極道の妻”風の和服で神崎組に乗り込んだベッキーだったが、かなりさまになっていた。また、それに合わせた極妻らしい演技もなかなか達者なもの。どんな演技でも無難にこなすベッキーは今後の注目株かもしれない。(仲村英一郎)

第7回(2006年11月24日放送)

☆☆
 リリ(ベッキー)が貧血で倒れて病院に運ばれる。精密検査の結果、胃に影があることを知ったリリは、自分の死と向き合いこれからは不幸な人を助けていくと決意する。しかし、そこは超勘違い女リリのこと、相変わらずな勘違いで逆に人に迷惑をかけてばかり。一方、リリの様子がおかしいことに気づいたアンナ(杏さゆり)と恭太郎(柏原収史)は、リリの胃の影を知り、愕然とする。不憫なリリの希望をかなえて海に連れてきた恭太郎は、思わず「天国では必ずお前を選ぶ」と慰める。しかし、その瞬間再びリリは意識を失い倒れてしまう。運び込まれた病院の医師の言葉は恭太郎たちを唖然とさせた。胃の影はリリが誤って飲み込んだボタンで、リリは野生児並みの健康体だという・・・。しっかりと恭太郎の言葉を覚えていたリリは恭太郎にプロポーズされたと大はしゃぎ。そして恭太郎は今日も涙にくれるのであった。
 想像通りのオチではあったが、今回も笑わせてくれた。胃に影がある、ということをアンナも恭太郎も早とちりして大騒動になってしまったわけだが、この勘違いはリリの影響がついに恭太郎たちにも及んできた証だろうか。回を重ねて行くにつれ、面白くなっていくこのドラマ。意表をついた展開が巧みである。(仲村英一郎)

第6回(2006年11月17日放送)

☆☆
 今回は、ひょんなことからリリ(ベッキー)と恭太郎(柏原収史)の心と身体が入れ替わってしまうという話。設定はよくありがちなものでストーリー展開もありきたり。
 それでも問題なく楽しめたのは、ベッキーと柏原収史の演技力のおかげだろう。心と身体が入れ替わっているという設定は観ていても違和感が全く無く、もし途中から今回のドラマを観たとしても、その設定にすぐに気づいたはず。
 難しい演技であったと思うが、二人とも上手くそつなくこなしていた。違和感も感じなかった上に、笑いもとれる程であったからたいしたものである。役者として先輩の柏原収史に負けず劣らずの演技をしたベッキーに拍手を送りたい。(仲村英一郎)

第5回(2006年11月10日放送)

☆★
 今回は恭太郎(柏原収史)の実家、坂上家も巻き込んだリリ(ベッキー)の勘違い騒動。帰省することになった恭太郎にはアンナを両親に紹介する目的があった。が、なぜかリリもついてきてしまう。そして恭太郎の思惑とは裏腹に、事態はリリの勘違いのまま、事が進んでしまうのであった・・・。
 今回のゲストは恭太郎の父親役に仲本工事、母親役に山下容莉枝。山下がゲスト出演しているからか、二時間ドラマのパロディが随所にあって、二時間ドラマ好きにはたまらない。またそのパロディの刑事役に小野寺昭がスポット起用されていたのも遊び心があって楽しい。普段あまり観ることの無い山下容莉枝のコメディエンヌぶりも非常に良かった。山下にとっては新境地とも言えるのでは。(仲村英一郎)

第3回(2006年10月27日放送)

☆☆
 頭を空っぽにして観ることのできるラブコメに仕上がってきた。主役の桃山リリ役のベッキーもいいが、リリに勘違いされまくる恭太郎役の柏原収史の壊れっぷりに味が出てきた。それを証拠に、回を追う毎に表情が豊かになってきている。ただ、毎回リリに振り回されるだけの役柄になりつつあるのが少々不安ではある。恭太郎のマンネリ化を防ぐ意味でも、もうひとヒネリ工夫が欲しいところだろうか。
 今回は恭太郎の早とちりでリリの家族に交際を宣言してしまうというお話。リリに負けず劣らずの勘違い一家の桃山家ご一同の面々が初登場。父親・龍一郎役に草刈正雄、母親・美麗役に高橋ひとみ、兄・光役に池田努。全員揃っての勘違いぶりはお見事。この家族にしてリリあり、と言ったところか。キャスティングにも全く問題がない。2002年のテレ朝金曜ナイトドラマ「ツーハンマン(主演:中村俊介)」でも感じたことだが、草刈正雄はコメディもうまく演じる俳優であるから、今後も出番が増えることを期待したい。
 ラストはいかにもコミックが原作らしく、バナナの皮で滑ったり、アンナ(杏さゆり)に殴られて鼻血を出したり、と踏んだり蹴ったりの恭太郎で、いかにもステレオタイプな終わり方だったが、これはこれで良いと思った。冒頭でも書いたように、頭を空っぽにして楽しむのが、金曜ナイトドラマの面白さなのだから。(仲村英一郎)

第2回(2006年10月20日放送)

☆☆
 ベッキーが弾けてきた。桃山リリに乗り移ったように、超勘違い女になりきっている。しかも「かわいい」超勘違い女と思えるようになってきたから不思議である。
 初回レビューでは「テンションに緩急が無かった」と書いたが、今回もそれは無い。むしろ「テンションが高まった」くらいだ。しかし、そのテンションの高さがやけに面白くなってきた。ドラマの中でのリリの決め台詞である「?みたいなぁ?」がこれでもかというほど連発され、いまだに耳に残っている。洗脳されてしまったというか、つい日常会話でも使ってしまいそうである。
 恭太郎(柏原収史)のリリへの気持もわずかながら変容してきたように思えた。「お前だけだ、こんなにめんどくせー勘違い女は!」という恭太郎の独り言は、リリを意識し始めた証と言えるだろう。また、リリの親友アンナ(杏さゆり)の「自分の幸せよりリリが幸せになってくれる方が嬉しいんだ」と恭太郎に語るシーンも、アンナのリリへの気持が非常に分かって良かった。単なるギャグラブコメだけではないのかもしれないと思わせられる回であった。
 初回に比べ、出演陣の息も合ってきてまとまりがでてきたと思う。このままの調子でいくと、想像以上に大化けするかもしれない。(仲村英一郎)

第1回(2006年10月13日放送)


 原作は「白鳥麗子でございます!」など、ぶっとんだキャラクターが主人公として大暴れする漫画が人気の鈴木由美子。このドラマの主人公は、自分が超美人な魔性の女と信じて疑わないというこれまたぶっとんだキャラの桃山リリ(ベッキー)。その異常なまでの勘違いがもとで周囲の者を大騒動にいつも巻き込んでしまうという、ギャグ満載のラブコメディである。ちなみにベッキーにとってこれが初の連ドラ主演作となる。
 タイトル「アンナさんのおまめ」について説明しておこう。リリの親友でありルームメイトであるアンナ(杏さゆり)は超美人のOL。「おまめ」とは「美人のおまけ」という意味。つまり、リリ=アンナのおまけということ。
 原作が鈴木由美子だけに、主人公であるリリは確かに相当ぶっとんだキャラであった。金曜夜のドタバタラブコメディなので、脳みそを空っぽにして大笑いさせてほしいところだったのだが、いまひとつ笑えなかった。設定もストーリーも役者も揃ってはいるのだが、全体的に消化不良である。難を言うなら、リリの勘違いギャグが多すぎて、しかもそのテンションに緩急が無かったことだろうか。いわゆるワンパターンな笑いに陥っていて少しくどかった。
 なぜアンナは勘違い女リリをあんなに大事に思っているのかという素朴な疑問に関しても、すとんと胸におちる説明はなされなかった。役者陣では、アンナ役の杏さゆりの演技に若干難があった。唯一救いだったのは、ナレーターが本田博太郎であったことか。作品の雰囲気に一番馴染んでいたのは彼だった。
 この手のラブコメのことだから、リリとアンナの恋人・恭太郎(柏原収史)がくっついたりとかくっつかなかったりとか、起伏に富んだ展開になるであろう。
 いずれにしても、今は今後に期待するしかない。(仲村英一郎)

アンナさんのおまめ

テレビ朝日系金曜23:15〜24:10
制作著作:tv asahi
チーフプロデューサー:桑田潔
プロデューサー:三輪祐見子
原作:鈴木由美子『アンナさんのおまめ』
脚本:高山直也(1、3、4、6、7、9、10)、深沢正樹(2)、福島治子(5、8)
演出:常廣丈太(1、2、6、9、10)、加門幾生(3、4、7)、近藤俊明(5)、浅見真史(8)
音楽:梅堀淳
主題歌:『VERY LOVE -0.5℃』MAO/d
ナレーション:本田博太郎
出演:桃山リリ…ベッキー、西園寺アンナ…杏さゆり、坂上恭太郎…柏原収史、間三平…徳井義実、神野亜紀…滝沢沙織、鶴岡正人…渡邉紘平、亀田勇…大東俊介、久保寺…伊藤正博、吉野院長…大浦龍宇一、林田看護士…犬山イヌコ、月灯ほのか…木内晶子、蛭子能収、田村裕、中村靖日、ヨーコゼッターランド、安藤なつ、河原さぶ、坂上はるみ…山下容莉枝、坂上次郎…仲本工事、中村有志、小野寺昭、大河原権造…萩原流行、火車ワタル…長谷川朝晴、山下医師…六角精児、宝部さやか…松下萌子、神崎岩雄…神保悟志、大島蓉子、黒田アーサー、小久津王子…桐島優介、大沢樹生、大河内浩、桃山光…池田努、桃山美麗…高橋ひとみ、桃山龍一郎…草刈正雄