相棒 Season V

第3回(2006年10月25日放送)

☆☆
 町内会の中に犯人がいるというアガサ・クリスティ調で、これまた『相棒」ではおなじみのテイストだが、時効後の被害者遺族の復讐というタイムリーな題材に行き着くのは『おみやさん』パート5の初回とイコールであった。だったら、それは『おみやさん』にお任せしてしまえばとの意地悪な感想も、『相棒』ウォッチャーとしては許されるのではないだろうか。
 動機、裏事情はともかく、犯人探しとして早々臭ってしまうあたりはひとつのパターンをなぞっているがゆえも、過剰なまでの防犯意識の矛盾がトリックの綻びになるつつき方や、町ぐるみの自己暗示としての犯行と結論づけるあたりは、いかにも『相棒』的だったと言えるかもしれない。
 『おみやさん』や『富豪刑事』シリーズで出てくれば、もう少しいい評価になったかもしれないが、残念ながらこれは『相棒』であった。(麻生結一)

第2回(2006年10月18日放送)

☆☆
 幽霊屋敷の密室トリックにオカルトテイスト、さらには姉妹の財産をめぐる骨肉の争いと揃えば、その様相は「ザ・相棒」なのだけれど、内容は随分と弱腰で今シーズンの行く先もまた心配になった。
 不動産屋にもぐりこんで、さらには警官である薫(寺脇康文)にその洋館を売りつけたるほどに財産管理に用意周到だった町子(国分佐智子)の最終的な立ち位置がまずは曖昧。もっといけないのは、「お金よりも大事なものがある」的な、まるで『おみやさん』のような丸い結論に至るラスト。お金に強い『富豪刑事』だったら(?)、この展開こそを楽しみにしてしまっただろうも、このドラマは苦味が身上の『相棒』シリーズである。何より、国分佐智子とその妹・久美子を演じた夏生ゆうながここでおみや入りしてしまっては、お二人が『おみやさん」にゲスト出演する際の面白みが薄れてしまうではないか?!(麻生結一)

第1回(2006年10月11日放送)

☆☆★
 相棒シリーズのシーズン5の初回は毎度のごとく2時間バージョンのポリティカルサスペンスで決めてくれて、それはそれで満足でなくはない。脚本は前シーズンでは初回スペシャル、中だるみ防止スペシャル(=正月スペシャルだったか)、および最終回スペシャルしか手がけてくださらなかった、このシリーズの生みの親でもある輿水さんにつき、右京(水谷豊)が右京であることを貫いて、次期首相候補である日本自友党の政調会長・宗家(勝野洋)をネチネチと小さく追い込んでいく感じはいかにもこのシリーズらしく堂に入ったものだった。
 構えは大きく、出口は小さくという『相棒』ならではの変則モーションも輿水脚本ゆえに耐えられるところもあろうが、前シーズンのように初期メンバー以外の方の脚本作となると、微妙にそのあたりの共通理解にズレが生じて、『おみやさん』や『京都』シリーズのような単にスケールの小さな話になってしまうことも否めなかっただけに、第2回以降に一抹の不安がないわけではない。
 22年前、右京が刑事としはじめて担当した強盗殺人事件の当事者にして、宗家の秘書をしている御手洗聖子(奥菜恵)が将来の政治家を目指す志はいいとしても、これだけのスキャンダルにまみれてしまっては、その前途はあまりにも多難であろうことにもチクッと一刺ししてくれてこその右京だとも思ったが、それではあまりに後味が悪くなったか。
 エピローグで、小野田官房室長(岸部一徳)が近い将来の右京との対決をちらつかせるあたりは、このシリーズの終焉を臭わせたのだろうか。(麻生結一)

相棒 Season V

テレビ朝日系水曜21:00〜21:54
制作:tv asahi、東映
チーフプロデューサー:松本基弘
プロデューサー:島川博篤、西平敦郎
脚本:輿水泰弘、古沢良太、岩下悠子
監督:和泉聖治、森本浩史
音楽:池頼広
音楽監督:義野裕明
出演:杉下右京…水谷豊、亀山薫…寺脇康文、亀山美和子…鈴木砂羽、宮部たまき…高樹沙耶、伊丹憲一…川原和久、三浦信輔…大谷亮介、芹沢慶二…山中たかシ、角田六郎…山西惇、米沢守…六角精児、内村警視長…片桐竜次、中園警視正…小野了、小野田公顕…岸部一徳、御手洗聖子…奥菜恵、御手洗嘉代…馬渕晴子、御手洗律子…平淑恵、御手洗眞治…石田登星、御手洗晃一…佐藤一平、御手洗泰治郎…高杉哲平、里中邦明…横田エイジ、軍曹…山崎画大、御手洗泰彦…神山繁、宗家房一郎…勝野洋、諏訪町子…国分佐智子、飯塚久美子…夏生ゆうな、池之端庄一…高橋長英、堂本達也…斉藤暁、井伏勝…丸岡奨嗣、井伏節子…前沢保美、田宮剛史…田口主将、田宮志津江…山本道子