14才の母

第11回(2006年12月20日放送)

☆☆
 未希(志田未来)の赤ちゃんは、依然新生児集中治療室の保育器の中にいた。自力でミルクも飲めず泣くことすらできない赤ちゃんに未希の不安は募るばかり。後ろ髪を引かれる思いで一足先に未希が退院する日、赤ちゃんの容態が急変、無呼吸発作に陥る。そんな時、卒業式を終えたばかりの桐野(三浦春馬)が病院にやって来る。そして未希に、中学卒業後はお金を子供に届けたいから働くと決意を語る。まさにその時、赤ちゃんは危機を脱した。未希の退院後、桐野の母・静香(室井滋)が一ノ瀬家にやってくる。互いの親たちを前に、未希と桐野は2年後に結婚すると宣言する。親たちは反対するが未希たちの意思は揺るがなかった。静香は「悔しかったら本気でやって、おめでとう、ってあたしに言わせるのね」と言って去っていく。その一カ月後、無事赤ちゃんが退院。桐野は作業員として働き、静香は生命保険の外交員を始めていた。波多野(北村一輝)は、未希と桐野の話を書き続けるから絶対に何があっても終わらせるなよ、と未希に笑顔で言う。未希の新しい生活、そして戦いが始まった。
 前回同様、間延びした最終話だった。最終話であるにも関わらず、スローなテンポ、散漫なエピソードの数々。完璧なハッピーエンドではなく、これからも未希の戦いは続くと思わせる終わり方は悪くはなかったが、あまりのまとまり感の無さにメッセージ性がほとんど欠けてしまった。放送開始前は今クール一番期待していたドラマだったのだが、肩透かしをくらった感が強く、非常に残念。評価を星二つにしたのは、難しい役を演じた主演の志田未来の頑張りに対して、である。(仲村英一郎)

第10回(2006年12月13日放送)

☆☆
 赤ちゃんが一命を取りとめた一方で、未希(志田未来)は出血性ショックで意識不明に。父・忠彦(生瀬勝久)はせめて一目だけでも未希に会ってくれと桐野(三浦春馬)に頭を下げるが、自分たちのことだけで精一杯な桐野に追い返される。しかしその後考え直した桐野は自らの意思で病院に出向き、昏睡状態の未希と再会する。自分があまりにも無力で未希に何もしてやれないことに気づいた桐野は結局その場から逃げ去ってしまうが、家に戻り中学を出たら働くことを決意する。ようやく意識の戻った未希は、初めて赤ちゃんと面会する。そして「この子に会うために生まれてきた」という万感が胸にあふれる。
 高視聴率で急遽1話延長となった10話目は、やはり間延びした感が抜けなかった。延長して話を無理に膨らませるより、一気にラストになだれ込むべきだったのでは。しかもその穴埋めのエピソードに起用されたのが、志田未来と同じ事務所の反町隆史というのはどうも納得しづらい。来週は本当の最終回になるが、色んな意味でリカバーできるのだろうか?ドラマ自体の輪郭も最終回間際でぼやけてきた。非常に残念である。(仲村英一郎)

第9回(2006年12月6日放送)

☆☆★
 買い物帰りのバス停で突然の陣痛に襲われた未希(志田未来)を的場クリニックへ運んだのは、偶然居合わせた波多野(北村一輝)だった。診断の結果、未希は「早期胎盤剥離」の兆候が見られた。クリニックの設備では対応しきれないと判断した的場医師(高畑淳子)は大学病院への緊急搬送を行う。母子ともに危険な状態に陥った未希は、帝王切開をするためすぐさま手術室に運び込まれる。「きりちゃん…」と桐野(三浦春馬)の名をうわ言で呼ぶ未希の一言に桐野への思いを知らされた父・忠彦(生瀬勝久)は、依然雲隠れ中の桐野母子を探しに出かける。波多野から聞きだした桐野母子の居場所は、荒れ果てたドヤ街の小さな部屋だった。その頃、未希は無事出産を果たしたものの、生命の危機に瀕していた。
 終盤にさしかかってようやくドラマらしい展開になった。このドラマの真価はここから問われるのだろう。今回は見所のあるシーンも多数見られた。特に、硬派の戦争記者だった波多野が未希と桐野のツーショットプリクラを戦争被災児たちの写真の間に貼り付けたシーンは、波多野の心情の変化を見事に浮き彫りにしていた。また、的場医師役の高畑淳子の演技は、その実力を遺憾無く発揮しており見事。陣痛に襲われ意識も朦朧としている妊婦があれほど会話できるのか?というツッコミ所は不問に付しておくとして、今回は見違えるほどよく練られた話になっていた。残り数話に期待したい。(仲村英一郎)

第8回(2006年11月29日放送)

☆★
 的場クリニックに搬送された未希(志田未来)は、無事に回復した。しかし体に問題があることが分かり、しばらく入院することに。一方、桐野(三浦春馬)の母・静香(室井滋)の会社は82億円もの負債を抱え瀕死の状態。債権者から逃れるため桐野親子は逃亡生活を続けていた。そんな中、桐野は未希の入院を知り電話で「いつかちゃんとする」と桐野なりの決意を伝える。その後、未希は入退院を繰り返しながらも出産予定日まであと一ヵ月半となった。ある日ベビー服を買いに行った帰りに未希は突然陣痛に襲われその場に倒れる。
 視聴率は相変わらず好調のようだ。前週放送分はドラマ部門の4位(18.4%:ビデオリサーチ社調べ)であった。しかし視聴率とドラマの質がイコールでないのはよくある話だ。第八回も非常に内容の薄いもので、あまりにも安易な展開に驚かざるを得なかった。今週も高視聴率をキープしていることだろうし、予告で「14才の母、出産」と告知された来週話はさらに視聴率が上がるはず。この番組は、ドラマとして内容が薄くてもセンセーショナルな話題性さえあれば高視聴率が取れる、という点での成功モデルになったかもしれない。これがTVドラマ界の定石となり2匹目、3匹目のどじょうを狙う風潮が起きないことを切に願う。(仲村英一郎)

第7回(2006年11月22日放送)

☆☆
 母親学級に参加した未希(志田未来)は、看護師兼助産師の桃田ヒロミ(西野妙子)から今後の生活にはお金が必要なのだと諭され、母親になった自分には何ができるのかを考え始める。一方、桐野(三浦春馬)の母・静香(室井滋)は、慰謝料二千万円を支払う代わりに認知請求をしない誓約書を一ノ瀬家に突きつけた。未希は誓約書の主旨に承諾したが、父・忠彦(生瀬勝久)は慰謝料の受け取りは拒否し、自分が未希の子どもを養う、と決意を未希に語る。そんな中、静香の会社が不渡りを出し、静香は桐野を連れて夜逃げする。折しもその夜、未希は突然の腹痛に襲われ病院に運び込まれていた。
 第7回にして遅まきながら物語が動き出してきた。未希の入院、そして静香の会社の倒産の危機。特に、静香の会社の倒産は予想していなかったので、それが桐野の気持ち・行動にどういう影響を与えるのか、非常に気になるところである。未希の入院は予想の範疇だったので、さほどの驚きはなかったが、予告編での未希のセリフ「私の命と赤ちゃんの命、どっちかだなんて選べないよ」は次回の波乱を予感させた。(仲村英一郎)

第6回(2006年11月15日放送)

☆☆
 週刊誌のスッパ抜きで未希(志田未来)と桐野(三浦春馬)の周辺には大きな波紋が巻き起こった。一ノ瀬家はその騒動をきっかけとして、未希の出産を応援する家族全員の意志が固まる。一方桐野家では、桐野の母・静香(室井滋)が週刊誌との対決の覚悟を決めるとともに未希の出産を阻止しようと画策する。未希の担任・香子(山口紗弥加)は学校の方針に反して退学処分ではなく休学という形で未希を支える気持ちが芽生え始めていた。週刊誌編集長・波多野(北村一輝)と香子の出方次第で今後の未希の運命は大きく左右されそうだ。
 今回の桐野と波多野の会話を聞く限り、この物語はピュアな恋愛物語という展開になりそうだ。桐野は未希を心から大切に思う気持から、周囲の中傷誹謗にもめげず留学という体裁で逃げる事も拒み、自分なりの戦いを続けていくことを決意した。この流れからいくと、二人はお互いを思いやる気持を貫き通すのだろう。そして純愛ストーリーへ昇華すると思われる。
 綺麗事で終わる純愛ストーリーを否定する訳ではない。あくまでこの番組はドラマなのだから、現実から乖離していてもなんら問題はない。夢物語でもドラマはあくまでドラマである。不満なのは、純愛ストーリーにふさわしい魅力が乏しいことだ。今回が6話になるわけだが、食い入るように画面に引きつけられる力がない。それは1話からしっくりこない点だった。毎回物語が淡々と進む。ただストーリーをなぞっていくだけで、ドラマ性が足りない。話題性から高視聴率(11月8日放送17.3%:ビデオリサーチ社)を維持して番組としては成功しているかもしれないが、ドラマとしてはどうだろうか。再び引き合いに出してしまうが、「14才の母」と同様に教育的・社会的反響を呼んだ「女王の教室」程のドラマ性が感じられないのだ。既にクランクアップしたかどうかは分からないが、制作陣には「ドラマ」としての「14才の母」のあり方を再考してほしい。(仲村英一郎)

第5回(2006年11月8日放送)

☆☆
 前回は未希(志田未来)に出産する意志が芽生える展開だったが、今回はさらに未希がその決意を固める回であった。未希は、家族を説得し身ごもった赤ん坊のためだけに生きていく気持をさらに強固にする。そのためには、桐野(三浦春馬)との恋も犠牲にし、別れを告げる未希。すべて一人で背負い込んでこれからの人生を過ごすことを決めたのだった。
 前にも書いたが、全体的にスピード感の欠如が否めない。テーマがテーマだけに未希の内面を中心に、できる限り丁寧に描いていこうとしているのだろうが、第5回までの進展を考えると、中だるみ感がする。
 ここまでは、「14才で子どもを産む」ことについての内面的な描写が中心であったが、次回の妊娠騒動の週刊誌スッパ抜きという出来事が、未希と現実との対峙の始まりとなることを期待したい。やたら観念的で現実感の薄いのがこの作品の気になるところだ。未希の担任・香子(山口紗弥加)の今後の動向も、ストーリーをより一層展開させることに期待したい。(仲村英一郎)

第4回(2006年11月1日放送)

☆☆
 ようやく本題に入って来た感がする回だった。
 未希(志田未来)の母親・加奈子(田中美佐子)は堕胎を拒む未希に、出産を諦めるよういさめる。赤ちゃんを育てることに休みは無い、赤ちゃんは非力で顔にかかった毛布すらはらえない、そんな小さくてもろい命を14才のあなたが育てられると思っているのか、と。
 母親・静香(室井滋)の命令に従いしばらくの間日本を離れることになった桐野(三浦春馬)が空港にいた頃、未希は学校にいた。クラスメートにはすっかり妊娠が知れ渡っていたが、誰もが自分の学校に傷がつく、ひいては自分に傷がつくことを恐れるばかりで、未希は罵倒されるばかりだった。しかし、未希はみんなの前で出産すると宣言する。自分の母親が自分に会いたいが為に自分を産んでくれたように、自分もこのお腹の中の子に会いたいのだ、と。
 この「赤ちゃんに会いたいから産む」という未希の台詞は、視聴者の間でもかなり問題視されているようだ。そしてそのほとんどが未希の甘さを非難するものばかりだった。心身的にも経済的にも出産は14才の中学生には無理だ、これを観ている同年齢の子どもたちに悪影響を及ぼす、ほとんどがそのような論調だった。中には制作側の企画の安易さを責める意見もあったが、このような反響が巻き起こることこそが制作側の意図だったことは容易に想像できるのでは。「女王の教室」放送時の視聴者の反応とよく似ている。
 確かに14才の出産は、現代の日本ではあらゆる意味で障害が大きく現実的ではない。しかし、あえてそれをドラマ化しようとする制作側の真の意図をこの第4話までだけで判断してしまうのは早計ではないだろうか。もう少し、いや最終話まで見届けてから議論すれば良いと思う。スポンサー降板の騒ぎにすらなった「女王の教室」の場合、最終的には、教育の現場に一石を投じる良い機会になったと思うのだが。(仲村英一郎)

第3回(2006年10月25日放送)

☆★
 今回も通過儀礼的なストーリーだった。双方の家庭に妊娠が発覚して、周囲から堕胎を迫られる未希(志田未来)。未希に妊娠をさせた桐野(三浦春馬)には、今の自分たちに子どもを産むことは無理だと言い切られ、未希は激しく動揺するが、子どもを諦めることは桐野への愛を忘れることだと、反駁する。しかし、結局は、桐野の言葉に失望し、14才での出産には母体の危険も伴うと言う産婦人科医(高畑淳子)の忠告もあって、堕胎を選ぶ意志を固める。堕胎手術に産婦人科を訪れた未希であったが、母親・加奈子(田中美佐子)の「自分にとって、何があっても子ども(未希)が一番大事なのだ」、というなにげない一言に、母親としての自覚が芽生え、手術の直前に未希は病院を飛び出す。
 今回までは、通過儀礼として視聴者も黙認して観ていたことだろう。視聴者が今後も見続けるかどうかは、次回のストーリー転換にかかっている。明らかに、前回・今回はスピード感があまりにも欠如していて退屈感を否めない。予告編を見る限り、来週は学校で妊娠が発覚してしまうようだが、視聴者が容易に想像できる展開にならないことを期待したい。
 唯一ドラマに緊張感を持たせてくれたのは、三流週刊誌編集長波田(北村一輝)が、独特の嗅覚から未希の妊娠騒動の糸口にたどり着き始めたというところだけか。いずれにしても、次回以降は視聴者が意表を突かれ、視聴を継続したくなるようなエピソードが欲しいところ。(仲村英一郎)

第2回(2006年10月18日放送)

☆☆
 未希(志田未来)の妊娠が発覚して、一ノ瀬家に嵐が吹き荒れるという、この手のストーリーには通過儀礼である回であった。一番の見所は、未希の父親・忠彦(生瀬勝久)の荒れ狂うシーン。未希の妊娠を知らされて、それが真実ではないと無理矢理に自分に信じ込ませようとする、父親の切なくて哀れな演技には迫力があった。忠彦のセリフに「14,15で人を本気で好きになれるものか、それは勘違いだ、錯覚だ、まやかしだ!」というのがあったが、これは恋愛に関していうならば、世代に関係ないものだろうと、思った。そもそも恋愛とは、年齢に関係なく、共同幻想の上に成り立つ場合がほとんどである。そういう意味で、忠彦のセリフは常に成り立つ真実ではない。井上由美子(脚本)が、どちらの方向へ物語を進めて行こうとするのかはわからないが、選択する方向次第で今後の展開が大きく異なることは明らかだ。
 このドラマでは、生瀬を初めとして脇役陣が好演をしている。未希の叔父役の河本準一(次長課長)、産婦人科医役の高畑淳子、雑誌編集長役の北村一輝。今のところの出番は多くないものの、キラリと光る演技を見せてくれている。今後のストーリーにも深く関わりそうな役柄だけに非常に楽しみである。一方、主演の志田未来は、可もなく不可もなく、といったところか。ただ、荷の重い役柄であることを考えると、かなり頑張っていると言えるのかもしれないが。(仲村英一郎)

第1回(2006年10月11日放送)

☆☆
 未希(志田未来)は名門私立女子校に通う中学2年生。成績はそれほど良くないが、スポーツが得意で明朗快活なごく普通の生徒。そんな彼女には友だち以上彼氏未満という存在である一つ年上の桐野(三浦春馬)というボーイフレンドがいた。ある夜、不良グループに追いかけられた二人は打ち捨てられていた小屋に逃げ込む。そして今まで味わったことのない性の衝動に身をゆだねてしまうのであった。
 その2ヶ月後、未希の体に異変が起き始める。不審に思った未希は妊娠検査薬で自らの妊娠を知り、誰にも相談できない孤独感に一人襲われる。
 今クール最大の衝撃作となりそうなこのドラマ。初回を見るまでは正直、志田未来が主人公というキャスティングに違和感を覚えていた。しかし、「女王の教室」などで定着した志田の優等生キャラが逆に効果的に作用しそうな予感を感じさせた。主人公がはすっぱな中学生であれば、それこそありきたりなドラマで終わってしまう。だからこそ、志田のキャラは逆説的でありながら効果的なのだ。また、この物語が決して他人ごとでは無いこと、現代において身近に起こりうる出来事であることを暗示している。
 全体的に明るめのトーンで展開された初回だが、冒頭の田中美佐子(加奈子:未希の母親)の「過酷な未来」「嵐のような日々」というナレーションがこの先の未希を取り巻く人々に巻き起こるであろう悲劇を予告している。加奈子のパート先であるファミレスの常連、週刊誌記者波田(北村一輝)の存在が非常に不気味である。(仲村英一郎)

14才の母

日本テレビ系水曜22:00〜22:54
製作著作:日本テレビ
プロデュース:村瀬健、浅井千瑞
脚本:井上由美子
演出:佐藤東弥(1、3、4、5、7、9、11)、佐久間紀佳(2、6、10)、山下学美(8)
音楽:沢田完、高見優
主題歌:『しるし』Mr.Children
出演:一ノ瀬未希…志田未来、一ノ瀬加奈子…田中美佐子、一ノ瀬忠彦…生瀬勝久、遠藤香子…山口紗弥加、三井マコト…河本準一、桐野智志…三浦春馬、谷村美月、北乃きい、井坂俊哉、金子さやか、海東健、西野妙子、大沢逸美、長谷川稀世、出口結美子、小池里奈、小清水一揮、宮下雄也、伽代子、加瀬尊朗、皆川明子、橋沢進一、西原信裕、円城寺あや、川津春、辻しのぶ、足立学、高畑淳子、反町隆史、戸田菜穂、小野寺昭、波多野卓…北村一輝、桐野静香…室井滋