タイヨウのうた

第10回(2006年9月15日放送)

☆★
 命を削ってでも歌うのか、それとも愛する人のために何としても生きながらえる道を選ぶのかという二者択一を突きつけられる薫の葛藤を、沢尻エリカはこれまで同様に迫力を持って演じきってくれる。また、それを必死で受け止めようとする孝治を演じる山田孝之の演技も申し分ない。主演者二人がこれだけの熱演を見せてくれていたというのに、サイドストーリーのクオリティの低さがすべてを台無しにしてしまったのはあまりにも残念だった。
 結局、幕が開かなかった薫の最後は、XPとしてタイヨウの下で生きられない薫の宿命と重なり合ってドラマティックにまとまっていたも(『純情きらり』のそれとは違って納得がいく)、そこにいたるまでの展開はこれまで同様、プロモーションビデオレベル、もしくはそれ以下であった。(麻生結一)

第9回(2006年9月8日放送)


 孝治(山田孝之)が被疑者にされてしまう展開もいやらしいというか、あざといというか、ついていけないところがあるも、みんなデビューできてハッピー的な結論に導こうとする工藤洋平(要潤)のいい人ぶりには、ただただあきれてしまった。これがプロモーションビデオだったとしても、もはや許されないレヴェルか?!(麻生結一)

第8回(2006年9月1日放送)

☆★
 素人同然だったムーンチャイルドに、あっさりとメジャーデビューの打診って、そんなおざなりな。ところが、みんなを巻き込みたくないという薫(沢尻エリカ)の思いにより、結成した途端にもう解散の危機に?! もはや白か黒か、みないな展開しか繰り広げられないも、これが第7話でも書いたようにプロモーションビデオと考えるならば、こういう展開もありかなと、何とか平常心を保っていられる?! 薫と麻美(松下奈緒)の対決シーンは唯一見ごたえがあったので、★一つプラスに。(麻生結一)

第7回(2006年8月25日放送)

☆★
 誰一人として孝治(山田孝之)が少年院にいた過去を責めるわけでもなく、むしろ温かくさえ迎えられているのに、どうして孝治は姿をくらますまでしなければいけないのか、どうにもさっぱり話の趣旨がわからないのだけれど(過去という嘘にさいなまれて、という程度では説得力なし)、このドラマが雨音薫名義の沢尻エリカによるデビュー曲の長大なるプロモーションビデオだと考えれば、むしろお話もよく出来ているぐらいだと寛容にもなれるし、結局曲は大ヒットしているわけだから、ただただおめでとうございますと申し上げるより他の言葉はない。(麻生結一)

第6回(2006年8月18日放送)


 唐突なバンド結成に、三浦(竹中直人)が伝授する楽器の上達法が今さら『ベストキッド』方式って。天文台の下で少年院時代の知り合い・マサト(桐谷健太)らとの決闘は、『理由なき反抗』?いっさいのオリジナルを拒絶して、ちぐはぐなサイドストーリーで明るい物語を志向するのは、このドラマにとってよりよいことなのだろうか(マサトは桐谷健太が演じるだけに、てっきりシャンプーCMをロケしてる制作会社のADかと思ってしまった(『吾輩は主婦である』より)。
 本当は孝治(山田孝之)を抱きしめたかった薫(沢尻エリカ)の代わりに、麻美(松下奈緒)が孝治を抱きしめるという、エンディングの構図あたりをやりたいことはそれなりに伝わってくるし、興ざめな寄り道などはやめていただいて、それでこそ押してもらえれば、これほど失望されられることもないと思うのだが。(麻生結一)

第5回(2006年8月11日放送)

☆★
 ちょっぴり期待の音楽業界の話も、絡みがゴーストライターねただけでは広がっていかない。事の顛末を告げる孝治(山田孝之)にしても、それを聞き入れる薫(沢尻エリカ)にしても、演出はタメをつく労としているのかもしれないが、物語がそうなっていないからか、淡白極まりない。そして第3話に引き続いて、再びタイムリミットものに。もともと設定が分厚くないだけに、それを頻発させるのも致し方ないところかもしれないが。(麻生結一)

第4回(2006年8月4日放送)

☆☆
 前話の最終盤の高まりぶりからして、この第4回は難しい回になるという予感はあったが、ディテールの違和感が最後までつきまとって、どうにもしっくりこなかった。薫(沢尻エリカ)の病気を知り、ほっとけなくなる孝治(山田孝之)が、誕生日プレゼントに操作に不慣ればミシンを駆使して、夜なべ手作りしたのが、精巧に設えられた防護服とは、どうにもリアリティがない。
 さらには防護服ゴレンジャー分はいつの間に制作したというのか?やりたい雰囲気はわかるのだけれど、そのアイディアをそれなりに物語になじませてくれないと空々しくなりかねない。このドラマにその空々しさは、致命的とも思えるので。
 ラスト、薫久々の路上ライブに次第に人だかりが出来ていく、といったシンプルさこそが、結局はもっとも胸を打つはずなのだが。(麻生結一)

第3回(2006年7月28日放送)

☆☆★
 クライマックスの孝治(山田孝之)と薫(沢尻エリカ)が夜の観覧車に閉じ込められてしまう場面は大変見ごたえがあった。孝治と薫の2人の場面はこれまでも随所に迫力があったが、今回は薫が決して紫外線を浴びてはいけないというタイムリミッット型のシチュエーションも加味されて、いっそう緊迫した場面になっていた。
 陰影のこもる山田孝之と沢尻エリカのツーショットと比べてしまうと、1時間前放送の『レガッタ』あたりは随分と薄っぺらに見えてしまう。このあたりはドラマの充実度にも比例しているわけだが、だからといってこのドラマにも奇妙なところがないわけではなく、何となく晴れ晴れとはしないところが残ったりもするのだけれど、それもまたドラマの雰囲気と好意的に解釈できなくもない。(麻生結一)

第2回(2006年7月21日放送)

☆☆
 ヒントは散りばめられるも、薫(沢尻エリカ)が夜にしか生きられないポイントは依然として視聴者に隠してある。こういうときにはドラマの事前情報の氾濫を恨むしかないのだけれど(すでに映画も制作済みにつき、さらに致し方ないわけだが)。
 この第2回は物語的な進展はほとんどなかったが、夜のドラマとしての雰囲気は十二分に発揮されていた。ただ、孝治(山田孝之)がホストに鞍替えしたり、薫(沢尻エリカ)が孝治にひかれることになったきっかけが判明したりといった決して軽くはないはずのエピソードまでもが雰囲気に飲まれてしまったような部分を目にすると、先行きが不安になったりもする(麻生結一)

第1回(2006年7月14日放送)

☆☆★
 『1リットルの涙』、『世界の中心で愛をさけぶ』、『白夜行』他、何やかやを足して割ってしまったようなドラマにも見えたが、孝治(山田孝之)がかつて捨てたギターを今手にしている薫(沢尻エリカ)との運命的な結びつきや、すでに歌手としての成功を手にしている麻美(松下奈緒)との関係性など、今後の展開の幅を感じさてくれる第1回だった。出来損ないのアクションや釈然としないサスペンスドラマの印象が強い渡辺睦月脚本作も、こういうニュアンス系のドラマでどういうことになるのか、期待したい部分もある。
 『1リットルの涙』の迫真の演技が最高だった沢尻エリカは、すでに存在感と迫力を醸し出していた。山田孝之のうまさも折り紙つきゆえ、早々二人の絡みは濃厚そのものに。主題は純愛物語だろうが、ショービズの苦々しいところにも触れてあるようで、そちらもちょっと面白そうだ。(麻生結一)

タイヨウのうた

TBS系金曜22:00〜22:54
製作著作:TBS
制作:TBSテレビ
プロデューサー:津留正明、植田博樹
原案:坂東賢治
脚本:渡邉睦月
演出:山室大輔(1、2、4、7、10)、武藤淳(3、6、9)、今井夏木(5、8)
音楽:澤野弘之
音楽プロデュース:志田博英
主題歌:『invitation』柴咲コウ
劇中歌:『タイヨウのうた』Kaoru Amane
出演:藤代孝治…山田孝之、雨音薫…沢尻エリカ、橘麻美…松下奈緒、大西雄太…田中圭、松前美咲…佐藤めぐみ、加藤晴男…濱田岳、立浪隆介…川村陽介、レイサ…原史奈、三浦結子…小林麻央、エミリー…ベッキー、工藤洋平…要潤、佐藤二朗、半海一晃、若杉宏二、中村豪、兵頭有紀、酒井俊也、恵俊彰、海保知里、雨音由紀…黒田知永子、榎戸真一…山本圭、雨音謙…勝村政信、三浦修…竹中直人