スイーツドリーム

第7週(2006年10月16〜20日放送)

☆☆
 史織(いとうあいこ)と一之瀬(東幹久)はついに付き合うことに。メール復活を一気に通り越してくれたおかげで、まどろっこしいところがなくなったのは本当によかった。それにしても、史織と一之瀬が第7週を通じて繰り返したここまでの真面目ないちゃいちゃぶりは、なかなか見られるものではない域でしょう?!
 スイーツの業界誌「月間マイ・スイーツ」が選ぶパティシエ・オブ・ザ・イヤーに、ライスシャワーを作った史織と、アンジェリークのスイーツメモリーズのパティシエであるあんこ(=史織)がノミネートされる。ライバル店の人気商品が同一人物の作であるという設定が、最大の敵は自分というひねったシチュエーションを生み出した格好だ。ただ、ノミネートを素人同然の史織に独占されちゃうなんて、日本の他のパティシエたちは何をしてるんだとも思えてくるが……(「オブ・ザ・イヤー」にもひっかかったり)。
 これでもかというほどの類型的なエピソードが多いのはどうにも解消されていない。仕事の相談と称して一之瀬は史織の部屋を訪ね、さらにベタベタ。そこにベロベロに酔った涼子(中山忍)が押しかけてきて、一之瀬と涼子が鉢合わせしそうになる一席はそれなりに楽しかったが、マンションが水漏れで必然的に一之瀬の家にお泊りな成り行きになったり、高級ホテルに忘れ物して、一之瀬との関係の足がついたりたり、といったあたりはあまりにも簡単すぎる。
 最たるは、桃(佐藤寛子)がライスシャワーの受注メモをなくしてしまうエピソードで、お話のパターンもさることながら、時間軸が不問化しているのはかなりつらかった。おかげさまで、再びスーツハート3人が力を合わせて難局を乗り切り、その結束が強くなったのだから、それもまた不問とすべきか。
 そんなこんながあったにしても、この第7週がこれまでで一番盛り上がったのも事実。史織と一之瀬の蜜っぷりは継続で微笑ましいとして、限定販売の特別栽培玄米「はなみのり」の謎に涼子が気づいて、ついにスイーツメモリーズが史織作であるところにまで行き着くくだりなどは、捌き方は絶妙ではなかったにしても、十分ハラハラはさせられた(結局は、単に史織が忘れ物をしやすいだけってことなんだけど)。
 せっかく高級ホテル・マーシャルブライトンの新作引き出物菓子のパティシエに史織は選ばれちゃうも、提案1のスイートデスティニーは技術力が欠如、一言で言えば素人のケーキのようと酷評される。ここでは流行作家か何かが原稿を書いては破り捨て、気がつくと部屋中紙くずだらけというスタイルが、スイートデスティニーのスケッチ中に再現される。ただ、これがパティシエの苦悩とすると、かなりの浅瀬かな。せっかくなら、お菓子を作ることが苦しいという史織の心情をもう少し引き出してほしかった。ただ、もともとそういうお話を志向してないので、仕方がないのだけれど。提案2のエターニティは今度はテクニックに気をとられて、創造性がないと不採用に。
 ショーペンハウエルのやまあらしのジレンマまで登場して、史織と一之瀬がビジネスも絡んでの恋人同士でいられないことが解説されて、いよいよドラマは最終週に突入も、いくつか新たなる伏線もあったりしたので、何となく行き着く先は見えた感じか。史織役のいとうあいこはリアクションのパターンが少ないのは気になるが、出ずっぱりが嫌味にならないのがいい。一之瀬役の東幹久の安定感にも助けられて、ヒロイン然としてきている。
 本筋と関わりなくせつなかったのは、史織とかつてい付き合ってた西島(川岡大次郎)との間に、30万円強の積立預金があったという事実。一之瀬と西島の顔が同系列ということは、史織の趣味にブレがないということかもしれないが、スイーツハートの経営が危なかったあのときにこそ、そのお金は提示されてもよかったでしょうに。史織にハンバーグをすっぽかされた誠(鈴木宗太郎)が好きな寿司ねたはいくらって。やはりブルジョアの子供である。(麻生結一)

第6週(2006年10月9〜13日放送)

☆☆
 ついにあんこ、こと史織(いとうあいこ)は、シュウが一之瀬(東幹久)であることを知ってしまう。ここから怒涛のごとく二人が仲良しになっていく展開はひたすらにスイートを極めて、最近になくほのぼのとさせてくれた。
 誠(鈴木宗太郎)が熱を出したことを口実に(?)、一之瀬宅に押しかけ女房化した史織は、料理でもスイーツでも一之瀬と薄味で趣味が一致する。ちょうどそのころだったか、アンジェリークによって発売発表されていた青山銘菓・スイーツメモリーズのパティシエが、味に妥協しない一之瀬の厳しい要求に耐えかねて失踪。このドラマで初めて、一之瀬が窮地に陥るも、以前に一之瀬からプレゼントされた写真をヒントにして、史織はマクロビオティックのスイーツ制作に着手、その途端、

史織「ウソ、出来ちゃうかも」

と思いついてしまうとは、やっぱり史織は「ただものじゃない」(by一之瀬)。途中、一之瀬も加勢に入って、お盆はひっくり返すは、顔に粉をつけるはのおおわらわ。軽い色ボケ状態のまま、一気呵成にマクロビスイーツの傑作・スイーツメモリーズを完成させ、史織が一之瀬の窮地を救っちゃうあたりの都合のいい展開は、これがどうしてなかなか気持ちがいい。

一之瀬「本当に申し分のない一品です!」

早乙女太朗(小林すすむ)「これをたった一日で作るとは……、凄腕のパティシエ!」

ここまでの大絶賛の嵐が吹き荒れると、さすがに見ながらに気恥ずかしくなってしまうのだけれど。
 ただ、ここで蒔かれたタネはかつてなく効果的だ。涼子(中山忍)と桃(佐藤寛子)に隠れてスイーツハートの調理場を一之瀬のために使った史織は本当のことを言えるはずもなく、また一之瀬も隠し玉のパティシエが史織だと言えない状況に置かれることによって、史織と一之瀬はついに二人だけの秘密を共有してしまう。西島(川岡大次郎)のことで桃が唐突に怒り出したりといった、相変わらずのバランスの悪さはあるけれども、隠し玉パティシエのエピソードは次週いっそう盛り上がってくれそうで、ちょっと楽しみである。
 惜しむらくは、史織と一之瀬がメール関係を復活させてしまったこと。この設定自体がいまどき苦しいので、いっそ放棄してしまった方がすっきりいったと思うのだが、あんことしての史織、シュウとしての一之瀬を残しておきたかった気持ちもわからないではない。(麻生結一)

第5週(2006年10月2〜6日放送)

☆★
 史織(いとうあいこ)よりも一足先に一之瀬(東幹久)が、メールの相手「あんこ」が史織と同一人物であると知ったことで、一之瀬の心理が一段階深まったのは、深まる要素の少ないドラマ中にあっては当然プラスアルファである。スイーツねたは青山のスイーツショップが名前を連ねる通販カタログの話に摩り替わってしまうが、史織と一之瀬がより多く絡む展開は喜ばしいところだった(ただ、この雑誌の安っぽい装丁はこのドラマらしすぎてガッカリだったが)。
 ただ、物語は毎度のごとくさらに横道にそれ、依然として史織と反目している山形の父・誠一郎(寺泉憲)が倒れる展開に。涼子(中山忍)と桃(佐藤寛子)は2人で何とか出来ると、史織が家業を継ぐために実家に帰ることを軽く承諾するも、つい先週、桃がいなくなったときには何ともならずにやっぱり3人じゃなきゃって言ってたばっかりなのに。大体、家業を継いだら、短期間では帰ってこられないのでは。
 すべてを知ってしまった一之瀬の背中を後押しするのは、3年前に亡くなった妻・衿子の手紙なのだが、これがまた紛らわしい場所に仕込んである(汚れたころに気がつくであろうぬいぐるみの背中!)。うまくやっていただけるものなら、ホロリとくるシーンだったも、逆に苦笑させられては困ってしまう。
 『スイーツドリーム』山形篇では、いきなりに史織の和菓子職人修行がはじまってしまって驚いたが(テレビドラマ的には朝ドラ『あすか』以来か?!)、あっさり実家の問題が解決しちゃって、東京にクイックUターン、山形篇が終焉をむかえてしまったのにはさらに驚く。すると今度は、和菓子作りで取り戻した舌の天才ぶりを引っさげて、史織はパティシエに転向!まったくもって奇想天外な展開も、演出はいたって地味に見せていくのみなので、その奇想天外に気がつかないほどというのはどうしたものだろうか。それでもこのドラマを何となく憎めないのは、屈託のない真っ直ぐさで一之瀬をひきつける史織が憎めないのとイコールということか。ついつい先の話が気になってしまうところなど、昼ドラの必要条件は満たしているといえる。(麻生結一)

第4週(2006年9月25〜29日放送)

☆★
 スイーツハートの巻き返しの週のはずが、桃(佐藤寛子)の裏切りの週となった。恐れていた展開である。いかなる理由があろうと、

涼子(中山忍)「やっていいこととわるいことがあるでしょ?」

とは至極納得だったのだが、いつの間にか、

涼子「桃ちゃんの借金はスイーツハートの借金」

と言い放つ前言撤回ぶりに、悲しく途方にくれてしまった。結局、桃はスイーツハート、アンジェリークともに出入り自由という結論では頭を抱えてしまう。
 さらにガッカリさせられたのは、フランス帰りのカリスマパティシエ・美久月聡(久ヶ沢徹)の凱旋の試食会があまりにもチープだったところ。予算の都合にしても、幼稚園のお遊戯会のようなデコレートは、日本人の舌にあわせられない美久月のスイーツ並にマズいのでは。
 救いは史織(いとうあいこ)と一之瀬(東幹久)の恋の行方と言いたいところなのだけれど、メールのみの関係性で盛り上がる以上に燃え上がってる設定はやはり苦し過ぎる。いとうあいこと東幹久のツーショットが好感度大である以外に、いいところを発見できなくなりつつある。(麻生結一)

第3週(2006年9月18〜22日放送)

☆☆
 前半は店に置くお菓子もなくなってしまうほどに、スイーツハートの経営はどん底の状態に陥って、同様にドラマも活気を失ってしまった(お菓子が出てこないお菓子のドラマなんて)。もはや一発逆転しか手段はないと、コンスタントに気持ちが悪いノリの料理評論家・早乙女(小林すすむ)から発破をかけられて、アンジェリークの一之瀬(東幹久)も目をつけている幻のプリンを作る花ケ崎堂の店主(岡田正)に掛け合うと、またまた史織(いとうあいこ)がその心を掴んで(舌は身を助くということで)、逆転契約にこぎつけるという展開は、まだ3週目にも関わらず、すでに毎度おなじみの感あり。
 史織と一之瀬が会えそうで会えない、気づきそうで気づかない展開は定番通りとしても、メールのやり取りが徹底してないもどかしさは相変わらずでいただけない。ただ、史織の父・誠一郎(寺泉憲)の古風な父親像がピタッときたおかげで、何となく気持ちのいい週だったような気がしてくる。まさに終わりよければ、ということで。
 スイーツドリームの巻き返しがはじまる次週以降には一応期待してみたいが、果たしてお菓子についてのエピソードをちゃんと入れてくれるんだろうか。お菓子のドラマはお菓子の話を、音楽のドラマは音楽を取り上げるのが至極当然のことだと思うのだが。(麻生結一)

第2週(2006年9月11〜15日放送)

☆☆
 第1週でお店を出す段取りのお話が慌しかったので、今後はスイーツにまつわるハッピーストーリーが主体になるのかなと期待していたも、第2週はいちじくサンドに引き続いての起死回生のヒットに思われた恋するトルテが実際は偽物で、開店早々にスイーツハートが窮地に陥るという、パターンを脱してない世知辛い話で終始してしまったのには正直ガッカリした。
 もはや犬猿の仲と言ってもいい史織(いとうあいこ)と一之瀬(東幹久)が、実際にはメールのやり取りで心の関係が深まっていって、というお話も一昔前の趣でのれないが(『WITH LOVE』は1998年放送につき、もう8年も前になりますか)、主演のいとうあいこと東幹久のツーショット自体はいい感じなので、何とか興味を持ち続けていられる状態である。一之瀬演じる東幹久のおかげで、ある一定のレベルが保たれている感は強い。(麻生結一)

第1週(2006年9月4〜8日放送)

☆☆
 随所に登場するスイーツの数々が最大の売りであろう、おいしそうなドラマである。史織(いとうあいこ)、涼子(中山忍)、桃(佐藤寛子)の三人娘が勤め先の丸輿百貨店から脱サラして、お取り寄せスイーツのセレクトショップをはじめるまでの展開は高速モードだったために、リアリティという点では首をひねりたくなるところも多々あったが、店を起こす話がメインでないのだから、ここから面白くしてくれればそれでいいのかもしれない。
 粘り強い交渉の末に、今後もライバルになりそうな高級レストランのカリスマオーナーにして、ワケありで異業種参入してきた一之瀬修(東幹久)との争奪戦に打ち勝って獲得したいちじくサンドのトラブルのために、オープン時間に改めていちじくサンドを届けられるか否かという切羽詰った時でさえも、横断歩道でつまずいたケーキを持った女の子のためになら時間のロスもいとわない史織は、父親との狩りの途中で、足を怪我した小鹿を見捨てられない少年、はたまたリスを助けて殉職してしまったロッキー刑事並の博愛主義系?!
 器物破損の連打で慌て者ぶりを強調してたりするわりには、実家が老舗和菓子屋につき門前の小僧ぶりを発揮して、有名料理評論家・早乙女太朗(小林すすむ)が出したクイズの材料をことごとく的確に当ててしまったりといった、圧倒的な舌力を発揮したりと(はずれるはずがない雰囲気のいかにもなコミック調)、今後も史織の一人舞台になるのかなと予感させた第1週だった。(麻生結一)

スイーツドリーム

TBS系月〜金曜13:00〜13:30
愛の劇場
製作:ファインエンターテイメント、TBS
企画:山田康裕、三島圭太
プロデューサー:森川真行
脚本:荒井修子、山口あさみ
演出:伊藤寿浩、鶴巻日出雄
主題歌:『RAINBOW DUST』榎本くるみ
出演:佐野史織…いとうあいこ、山下涼子…中山忍、吉原桃…佐藤寛子、西島剛…川岡大次郎、中野順二…萩野崇、小向秀樹…佐野泰臣、高山信勝…津村鷹志、土屋富雄…春田純一、小田忠夫…顔田顔彦、沢井邦子…池田道枝、戸部勝彦…麻生敬太郎、清家時雄…樋渡真司、清家幸恵…マリ・クリスティーヌ、矢口卓也…杉崎真宏、ジョージ・久我山…山田明郷、前田弥生…葉子、戸部孝之…福井晋、藤田悦子…瀬尾智美、三条貴子…平山慶子、佐伯祐介…辻輝猛、サキ…水野花、花ケ崎宗介…岡田正、山本滋…鹿野良太、花ケ崎の娘…増田葵梨沙、一之瀬誠…鈴木宗太郎、姫野健也…岡本光太郎、中森美園…藤田記子、磯部…永田耕一、美久月聡…久ケ沢徹、吉原進…宮嶋剛史、高木舞子…手嶋智子、後藤マリ…亜南、中尾千秋…有田水穂、ミワ…飯野芹菜、一之瀬衿子…田京恵、店主…高橋修、ケーキ屋店員…小暮邦明、鈴木順平…山寺優斗、運送屋…越智俊光、社員…吉田彬、キヨエ…貴紫いち子、客…深沢エミ、客…田端かや乃、子供…上原陸、子供…中家佑樹、子供…神山翔、女性客…南波有沙、警察官…大関真、店主…てるやひろし、店員…志賀聖子、早乙女太朗…小林すすむ、佐野光江…柏木由紀子、佐野誠一郎…寺泉憲、一之瀬修…東幹久