サプリ

第11回(2006年9月18日放送)

☆☆
 消えたバイト=石田勇也(亀梨和也)を部署をあげて心配するかどうかはリアリティを問い詰めれば微妙だけれど、新しいバイトが現れるや、誰もそのことを気にしなくなるあたりでバランスはとれていたか。しんみりと出て行った勇也も忘れ物であるサーフボートを取りに、ライトに今岡家に出戻りするあたりはテイストと合っていていい。それでも、父・今岡(佐藤浩市)との親子関係に揺れる義務教育中の小学生・なつき(志田未来)に

なつき「浅い男になっちゃダメだよ」

なんて言われたら、さすがにドラマ的に浅い男でい続けることも難しいか。
 一丁前の大人の男になるべく、勇也が地元の広告代理店に就職する展開は清々しいし、勇也と藤井ミナミ(伊東美咲)が抱き合うツーショットのラストシーンの背景が、ミナミが作った時計メーカーTOKIMOTOのキャッチコピー「WATCHing with you」のポスターであったりするあたりの折り目正しさも、いかにもこのドラマらしさを出していた。
 あまりにも残念だったのは、なつきのピアノの発表会に出席すべく、TOKIMOTOのプレゼンを強引に抜け出した今岡(佐藤浩市)のデタラメぶり。これだったら、最初から席についていたない方がまだ大人の対応だった気がするのだが。これまでは本筋を手堅くフォローしていてのがこのパートだったはずも、最後の最後で逆に邪魔してしまった格好になってしまった。(麻生結一)

第10回(2006年9月11日放送)

☆☆★
 このドラマが今クール中で数少ないちゃんとしたドラマであることを証明してくれた回。クリエイティブ採用試験に落ち、藤井ミナミ(伊東美咲)のもとから去ることを決意する石田勇也(亀梨和也)の大人と子供の狭間をいく不安定さを、亀梨和也は相変わらずの安定した演技で好演している。面接官から社会性、そして何よりも時間が必要と勇也が突きつけられる一連のおかげで、ドラマにリアルなシビアさが加わったのもよかった。これで最終回でアマアマになったとしても許せる気がする?!
 ミナミの存在感は、勇也の後を追うダイナミックなフォームでその俊足ぶりをアピールした最終盤に尽きる?! ミナミがCM制作を手がける時計メーカーTOKIMOTOのプレゼンでクライアントを納得させられなかった伏線があるだけに、時計がモチーフの今回のくくりとして、ラストシーンで大型モニターに映し出される時報はドラマをさらにピリッとさせてくれた。
 ベタベタの恋愛ドラマ予想は大きく下回っているだろうが、中国支局へ異動する荻原(瑛太)を今岡(佐藤浩市)や田中ミズホ(りょう)がからかったりする、直接本筋と関係ない話も楽しかったりして、この手のお仕事物としての雰囲気もようやく出てきた。(麻生結一)

第9回(2006年9月4日放送)

☆☆★
 好きのスピード感の違いの話などは、これまでであれば藤井ミナミ(伊東美咲)の心情としてナレーションで語られていたところ、この第9回の冒頭では石田勇也(亀梨和也)の不幸話に食いつた松井(原口あきまさ)と三田(佐藤重幸)の痴話話に入れ込んて、逆サイドの目線で捌いていた。諸事情あるのだろうが、むしろドラマとしてのバランスはこの方がいいのかもしれない。
 あらゆる意味で煮えきらなくなってきている荻原(瑛太)は恋敵・勇也に対してはむしろいい人に。フェロモンがあると自負する田中ミズホ(りょう)もまた、荻原のよきアドバイザーと化していい人街道まっしぐら。その魔性ぶりが今は昔となってしまっては、あれは何だったのだろうかと振り返るしかないか。その荻原とこれまで何の接点もなかった渡辺ユリ(浅見れいな)とのミナミ、勇也関連での唐突な初絡みにはちょっと笑えた。
 いったんはかつての部下にアイディアを盗まれて窮地に立たされるも、今岡(佐藤浩市)はハロー通信社のテレビ電話のプレゼンテーションで、「あわせる顔がない」とのキャッチコピーでクライアントから好感触を得る。ただ、実際にあわせる顔がなかったのは娘・なつき(志田未来)に対しての自分自身だったという切り替えしで、このドラマが折り目正しくあろうとしているスタンスは垣間見せてくれていた。旅行会社のキャンペーンで、将来生きたい場所の宣伝広告というクリエイティブ採用試験の勇也の答えが、「ミナミの隣」であっていいはずはないと思うけれど。(麻生結一)

第8回(2006年8月28日放送)

☆☆★
 オープニングは再びバッグ選びの話。探してたものとはちょっと違うバッグは見た目に壊れそうも、今は心の直感を信じたい、たまには冒険してみたいとは、まさに藤井ミナミ(伊東美咲)の心境も、それにあざとく気づく柚木ヨウコ(白石美帆)もなかなか鋭い。見た目にはあまり鋭く見えないのだけれど……。
 藤井ミナミ(伊東美咲)に想いが伝わった大喜びを持続させて、会社でも普通にラブラブしてたい感じの石田勇也(亀梨和也)は、常時危なかっかしい感じで年下男のかわいげを存分に発揮していた。荻原(瑛太)の紛らわしい言い回しに2人の関係を勇也が言いふらしたかと勘違いするミナミに対して、自分とつきあうことが恥ずかしいのかと問い詰めるあたりのピュアな感じもまっすぐすぎるほどにまっすぐでいい。
 ただ、クリエイティブ中途採試験に向けての自己PRは「俺の……」って、あの話し言葉調でいいの?まぁ、あれとてラブレターなのだから、今さらに月9枠のドラマで難しいことを言う必要もないのかもしれないが。性格が悪い=フェロモンがあると開き直る田中ミズホ(りょう)がちょっと微笑ましかったり。(麻生結一)

第7回(2006年8月21日放送)

☆☆
 オフィスでひたすらに仕事してる間はそれなりのテンションが保たれていたも、山梨のワイナリーでワインと温泉三昧という世の会社員にとっての夢の出張がメインストーリーになってしまうと、ドラマ自体の箍がはずれてしまうのも致し方ないところだろうし、もともとはこういう緩るノリを標榜する枠なのだから、こちらも緩まって見ていればいいのかもしれない。
 藤井ミナミ(伊東美咲)と荻原(瑛太)を追いかけて、石田勇也(亀梨和也)をユリ(浅見れいな)付きで向かわせたのは、随分と強引な手を使ってくれたものだが、もはや純情でもなんでもない『純情きらリ』の悪送球を連日に捕球し慣れてくると、この程度はかわいいものに感じらたりもして。まったく慣れとは怖いものである。
 石田勇也がミナミにぶどう畑でやってしまう告白的「好き好きチュー」は、十二分に次回を見たくなる原動力。ロマンティックないい画が撮れてました。(麻生結一)

第6回(2006年8月14日放送)

☆☆★
 バッグ選びと男選びはイコール、なるほど。このドラマの欠点の一つは冒頭の格言がドラマの展開を上回ってしまうところかも?! もちろん、同工の夏限定青春ドラマの一群に比較するならば、展開も淡い捻りっぷりが全然楽しめる域なのだが。藤井ミナミ(伊東美咲)のお嬢様風の買い物ぶりは、仕事できる風とはかけ離れているように思えたけれど(指示出しが立ちっ放しって、完全に浮世離れきしれないところもいかがなものか)。
 そんなミナミ(伊東美咲)が石田勇也(亀梨和也)に、大変な激戦区らしいカレールーCM制作の事前準備としてのカレー作りを丸投げするというアバンタイトルからそれっぽくて快調。試食会を今岡(佐藤浩市)のバブリーなマンションで行うといういかにもな展開を利用して、今岡、柚木ヨウコ(白石美帆)、娘・なつき(志田未来)の距離感をさりげなく捌いた流れもズムーズだった。
 仕事に意欲を燃やす勇也を通して、かつては同様にあっち(=クリエイティブ)の人間を目指していた渡辺ユリ(浅見れいな)をクローズアップした終盤は、これでユリが薄っぺらな人間ではない、ミナミと対峙し得る存在に引き上がって効果的だった。その夫まで絡んできそうな田中(りょう)の荻原(瑛太)に対するあてつけだって、随所に気が利いていていい。
 となってくると、いよいよミナミが基本バリバリ仕事できる風に見えてほしくなるのだが……。勇也へのいかにも上からっぽい助言スタイルがなくなるだけでも、その違和感が緩和されるようにも思えるのだが……。ドラマがちゃんとしてきているだけに、その玄関先でつまづいてしまうのはもったいない気がするも、それも織り込んでの企画なのだろうからやはり致し方なしか。(麻生結一)

第5回(2006年8月7日放送)

☆☆★
 荻原(瑛太)をめぐって、ついに藤井ミナミ(伊東美咲)と田中(りょう)が二人飲み会で直接対決することになるも、『不信のとき』のようにいかにもなわかりやすい劇的な展開にしないあたりがこのドラマの慎ましいところで好ましく思えるのだけれど、その淡い展開はわかりにくいとも映るかもしれない。
 石田勇也(亀梨和也)がいい仕事してると励ますミナミが、今話ではアニメーターの柳瀬シン(小市慢太郎)の要望をトップダウンによって覆してしまった件で、それでも理想形を貫こうして青さを見せるあたりは、逆に見た目にしっくりきて似つかわしかった。もちろん、『タイガー&ドラゴン』で見せた天然おバカさんキャラのようにはピタッとこないけれど。(麻生結一)

第4回(2006年7月31日放送)

☆☆
 ミナミ(伊東美咲)の恋愛モード突入後の話になっても、きっちり仕事と連動型というのがこのドラマらしい好ましいところ。仕事と恋愛のバランスが最高の田中ミズホ(りょう)こそがミナミの理想形も、その田中と荻原智(瑛太)をめぐってのライバルになっちゃってたというところまでがこの第4回。ミズホ役のりょうが繰り広げたドロドロというと、『ラブコンプレックス』を思い出すが(あれはドロドロというよりもいっちゃってる人たちの集いだったわけだが)、あのころに比べると灰汁が抜けちゃったというか、迫力が薄れてる感じを受けるのがこの役的にはちょっと心配なところ。高校時代、地元じゃ負け知らず、ってセルフパロディで楽しませてくれる石田勇也(亀梨和也)はいっそうアシスト役の様相に。
 どちらにしても、仕事の後に完全プライベートで友達と飲みに行ったりする暇がないあたりのリアリティは高い水準で維持されているも(もともとミナミの友達も出てきてないか)、ここまで仕事づくしのドラマは望ましくないと思われるのか、視聴率は低迷気味の模様。やっぱり、アフターファイブは連日のように友達と楽しく飲みに行っちゃうようなドラマじゃなきゃ、人気はとれないということか?(麻生結一)

第3回(2006年7月24日放送)

☆☆
 可愛げテクのないミナミ(伊東美咲)の悪戦苦闘ぶりは大いに可愛げがあるのだけれど、ここに仕事出来る臭とのギャップが加わればいっそうよかったかな。ディテールをいちいち言いはじめるときりがないが、仕事をしてる雰囲気は上々で、CXがお仕事物のドラマを得意としていた伝統を思い出させてくれるに十分である。
 仕事的には絵コンテが好評な(ゆえに便利使いされそうになるも、ミナミが10年後まで見越して陰ながらにヘルプした)勇也(亀梨和也)は、社内恋愛図ではミナミと荻原(瑛太)の仲を取り持つアシスト役に専念するも、視聴者的可愛げの表出ではすでにミナミを上回っているってことか。(麻生結一)

第2回(2006年7月17日放送)

☆☆
 相変わらず月9とは思えないほどにきちっと作ってあるのがちょっと新鮮だったりする?! ミナミ(伊東美咲)が勇也(亀梨和也)と付き合うことを未来予想図として四分割画面で夢想するあたりは、いかにもコミック的な見せ方でおまけ的に楽しいのだが、現状もっとも魅力的なのは働く女性の台詞が妙にリアルなところ。原作の特性が今のところはうまく移行できているのだろう。勇也を観賞するように見つめるユリ(浅見れいな)がクールに、1日8時間もいる会社にだってちょっとした娯楽があってもいいと吐き捨てるあたりも、妙に生々しかったり。浅見れいながその台詞をはきそうなクールキャラに合致しているかは置いておくとして。
 前回の繰り返しになるが、男優陣は過不足ないだけに、ミナミ演じる伊東美咲を筆頭に女優陣にはもう少しそれらしさを期待したところだ。ただ、仕事と恋愛のドラマ的バランスは悪くない。タイトルバックに登場した「仕事70%」はまさにという感じ。見せ方はかわいいも、仕事をしている人にとっては苦々しい現実なのでは。ラブ7%、睡眠10%のミナミも回が進むにつれてドラマ中で変化していくのだろうけれど、実生活はそう簡単には変化しませんからね。そうなってくると、やはりテレビドラマを見るしかないか。(麻生結一)

第1回(2006年7月10日放送)

☆☆
 お仕事ものに共同生活と並んでくる相変わらずの月9にしても、前クールの『トップキャスター』に比べればこちらの方が数段に手堅いオープニングだったといえる。CMプランナーのミナミ(伊東美咲)と雑用アルバイト・勇也(亀梨和也)の縦関係の恋愛模様は、リアルに感情移入できる方も多いのでは。せっかく普通に滑り出せたのだから(最近は普通さえもなかなかないので)、ここはいっそこれぞ月9というところを見せていただきたいところ。
 いかにもそれっぽい亀梨和也からこれまたそれっぽい佐藤浩市まで、男優陣は幅広く揃っているが、女優陣は薄手の印象。この手のライトタッチのドラマには欠かせない、場をピリッとさせる役回りの人が含まれていない点に不安もある。(麻生結一)

サプリ

フジテレビ系月曜21:00〜21:54
制作著作:フジテレビ
プロデュース:関谷正征
原作:おかざき真里
脚本:金子ありさ
演出:成田岳、川村泰祐
音楽:菅野祐悟
主題歌:『Real voice』絢香
オープニングテーマ:KAT-TUN
出演:藤井ミナミ…伊東美咲、石田勇也…亀梨和也、荻原智…瑛太、柚木ヨウコ…白石美帆、桜木邦夫…相島一之、渡辺ユリ…浅見れいな、松井良英…原口あきまさ、三田圭介…佐藤重幸、紺野なつき…志田未来、香月ミカ…相沢紗世、斉藤ノゾミ…秋本奈緒美、柳瀬シン…小市慢太郎、平野ユミコ…横山めぐみ、三浦礼子…あめくみちこ、三浦裕文…樋渡真司、KONISHIKI、田中ミズホ…りょう、今岡響太郎…佐藤浩市