PS─羅生門─警視庁東都署

第5回(2006年8月2日放送)

☆☆
 いきなりにネタバレ注意です。妹をコンビニ強盗に殺された草間(名倉潤)によるコンビニ立てこもり事件を通して、「不安と不安のぶつかり合いの時代」を説いた社会派風は、これまでではベストの出来ばえだったかと。とりわけ、完全に目つきがいっちゃってる草間(名倉潤があるがままであったがゆえの勝利?!)の目的が判明しない中盤までは、その閉鎖性ゆえの恐怖感があった。
 いつもの遠まわしな説教調を乗り越えて、犯罪肯定に受け取れるような結末にまで落ち着いてしまったのには首をひねったけれど。これぐらいに捻ってきたとしても、『相棒』であるならば右京(水谷豊)の一喝でバランスが取れるのだが、羅生門のメンバーが並列に扱われているこのドラマにはそれをやるキャラクターがいない。
 人質だったはずのコンビニ店員・細川(近藤芳正)が突入した警察に暴行されてしまうラストは皮肉が利いていたし、起こりうるかもともゾッとさせられたところだが、それがほったらかしにまでなってしまうと途端にリアリティが激減してしまう。こういう匙加減は本当に難しい。(麻生結一)

第4回(2006年7月26日放送)

☆☆
 常習の死姦マニアの大星(佐戸井けん太)がのらりくらりと自供をごまかそうとする話と、いまどき珍しい天使のような心優しき女子高生・ユイ(江澤瑠菜)が行方不明になった話が最後の最後で結びつく、例によって凝りに凝った構成がとられている。ユイの捜索にちゃんと取り組まない警察の有り様は昨今の現実とも重なり合う部分だけれど、とにかくベースラインが気の滅入るような陰惨なお話につき、若干明るめのエンディングが用意されていたとしても、決して気が晴れることはない。プロファイリング日本一・弓坂(森本レオ)が取調べで大星を追い詰めていく場面は、室内劇的な見ごたえ十二分だった。(麻生結一)

第3回(2006年7月19日放送)

☆★
 重要な役柄そうだった羅生門の副署長・富川(笹野高史)とキャバクラ嬢・ともみ(三津谷葉子)が立て続けに死んでしまう、ある意味での豪華版。ひたすらにカッコいい黒田(舘ひろし)や凄みを利かせる吉見(伊東四朗)は存在感抜群も、何となくドラマになじめないのは羅生門のメンバーが多すぎて、まだキャラクターを把握しきれてないからだろうか。捻った面白さを狙っているのはわかるのだが、『相棒』とは比べようもないし、何となく古めかしい印象もつきまとう。留美(木村佳乃)が現状ノーインパクトなのも悲しい。(麻生結一)

第2回(2006年7月12日放送)

☆★
 このドラマが目指しているところか、確かに複雑怪奇なお話ではあった。“おかあちゃん”ことエリ子(石野真子)が年齢不詳者である大前提も胡散臭くこそあれ、受け入れるとしよう。あまり書くとネタバレになってしまうが、それでもエリ子と石塚(尾美としのり)の関係性には違和感が残った。確かにスモールラビリンスには誘われたが、変に浅瀬にたどり着いたというのが見終わった後の印象である。
 吉見課長(伊東四朗)がやっているおでん屋で事件の真相が突き止められていくところが売りではあるのだろうけれど、それが事件の核心部を嘘っぽくしているところはないだろうか。真逆の意見もあるかもしれないが……。(麻生結一)

第1回(2006年7月5日放送)

☆★
 木村佳乃がこの枠で主演してしまったことで、同時間枠『相棒』で右京(水谷豊)と拮抗して出色だったゲスト出演がなくなってしまったとすると、大いに残念な気も。限りなく準レギュラー的な位置づけに見えたのだが。
 第1回は羅生門なる警察署の無数にいる風変わりな刑事たちの紹介に時間を割かなければいけなかったために、本筋までちゃんとフォローできていなかった印象も、コミックのままか、ラビリンス風な羅生門の冒頭からすると、最後にはごくテレ朝的な警察署に成り代わっていたような気がして、早々普通のディティティヴでやり過ごされそうな気がして心配になる。留美(木村佳乃)の苦々しい人物背景、及び刑事としての真摯なスタンスあたりはこの物語のカラーを支配するものなのだろう。(麻生結一)

PS─羅生門─警視庁東都署

テレビ朝日系水曜21:00〜21:54
制作:tv asahi、東映
チーフプロデューサー:松本基弘
プロデューサー:大川武宏、目黒正之、土田真通
原作:矢島正雄、中山昌亮
脚本:矢島正雄
監督:阿部雄一、五木田亮一、藤岡浩二郎
音楽:羽毛田丈史
主題歌:『愛してる』風味堂
出演:紅谷留美…木村佳乃、安全豊…遠藤章造、土橋順一郎…佐野史郎、江守サチ…松本莉緒、野原常久…池田努、紅谷悟…斉藤祥太、田所雅明…飯田基祐、紅谷陽一…東根作寿英、紅谷陽平…小林翼、山下八郎…モロ師岡、本木修造…中原丈雄、本木勇二…北条隆博、石塚友也…尾美としのり、水沢エリ子…石野真子、教頭…田口主将、園田ゆかり…吉高由里子、少女…小松愛、成川署長…小木茂光、富川副署長…笹野高史、海老原ともみ…三津谷葉子、組長…織本順吉、竹村秘書官…池田政典、海老原和也…浅利陽介、加藤刑事…中根徹、大星丸男…佐戸井けん太、町田主任…高田聖子、大野ユイ…江澤璃菜、ナミ…寉岡瑞希、弓坂文雄…森本レオ、吉見武士…伊東四朗、黒田勘太…舘ひろし