大好き!五つ子 GoGo!!

第7週(2006年8月28〜9月1日放送)

☆☆★
 もはや老舗ともいうべきこのファミリードラマがダークトーンのまま終わるわけはないのだけれど、ゆかり(広岡由里子)の別荘がある軽井沢に事実上の家出をした桃子(森尾由美)の、家族のみんなと心が通じ合わないつらい気持ちが切々と描かれていった最終週前半を見ていくにつれ、共鳴して大いに心配してしまった。これは桃子の心情の細かい部分までがきちっと描かれていた所以である。ドラマとはこうじゃなきゃいけないはずなのに、こうじゃないドラマが多すぎて困るのだが、それだけにこのドラマの優秀さがいっそうに目立つわけである。
 ドラマ自体は最終回前の第34回で終了して、第35回は後日談的に。恒例の通信簿授与式がドラマのテイストにきちんと折り目をつけた。桃子じゃないけれど、今年の夏もいろいろありましたが、あっという間の全7週でした。親に黙って合コンに行った美穂(笹岡莉紗)は、そのエネルギーを前半戦で使い果たした感も。茶髪を黒髪に戻す決意をする拓也(柳澤貴彦)は、大人度で頭一つ抜けたかな。プチ魔性の女・真央(上野真未)との絡みだけだった慎吾(山内秀一)は他の四人に比べると、ちょっと印象が薄い。バイト挫折、無断外泊、サーファー宣言ともっともいろいろあった剛(鈴木藤丸)は、最後にもまた桃子との絡みでほろっとさせてくれる。ついにメインストーリーを背負って立った紀香(永岡真実)の最後の決断は、清々しいの一言。桜井家の五つ子たちの成長をさらに見続けたいと思わせるしめまで、さすがの一言である。(麻生結一)

第6週(2006年8月21〜25日放送)

☆☆☆
 ロサンジェルスへの交換留学話で、ついに眠れる獅子、紀香(永岡真実)にスポットが。そして桃子(森尾由美)の人生の全否定にいたる。家事も手伝ってくれて、もっとも理解度が高いと思われていた紀香にああいう風に言われちゃうと、桃子もいっそうにつらすぎる。サーフィンを続けるために再びガソリンスタンドでバイトすることに決めた剛(鈴木藤丸)との心の溝も埋めがたく、他の子供たちからも総スカンを食わされ、さらには良介(新井康弘)と同僚教師・紺野(八木小織)との不倫疑惑まで浮上して、桃子に訪れる受難は雨あられの域に。過去7シーズンでもこれほど桃子が追い詰められたことはないのでは。最終週が絶対に見逃せない作りになっているあたり、さすがです。(麻生結一)

第5週(2006年8月14〜18日放送)

☆☆★
 『美しい罠』も妖しげに依然として面白さを維持しているけれど、あまりにも対照的なテイストのこちらもドラマの充実度では決して負けていない。ドラマの半分が鎌倉篇になってくると、このシリーズも佳境に達しつつあることを実感させられる(じゅうたん爆撃的にエピソードが連なっていくその勤勉さによって、ドラマは常に佳境であるとも言えるが)。
 メインストーリーは良枝(岩本多代)と谷川(伏見哲夫)の結婚話で、他人だからこそ言えることがあるとかみ締めるように語る、途中参戦した桃子(森尾由美)の含蓄がまぶしい。「ふやけた顔したわりにはチョー保守的で頑固」(吉田紗也加演じる娘・亜理沙弁)な周平(見栄晴)やその妻・恵(長谷川真弓)の心情もきちっとすくってあるので、物語としての消化不良も皆無である。
 大阪に引っ越してしまう真央(上野真未)の涙に戸惑う慎吾(山内秀一)、金髪によってインスタントヤンキーと化した拓也(柳澤貴彦)、毎度のごとく唐突にサーファー宣言する剛(鈴木藤丸)とそれぞれに問題を抱えている男の子たちについつい干渉してしまって、しつこいと言い放たれてしまう母・桃子の気持ちがまたいたたまれない。(麻生結一)

第4週(2006年8月7〜11日放送)

☆☆☆
 矢継ぎ早というか、数珠つなぎというか、ブレスなき五つ子それぞれのエピソード、プラスアルファの束ね方はさらに安定感を増してきているような気がする。ガソリンスタンドのバイトをやめてしまった剛(鈴木藤丸)は今度は大学に行きたいと言い出すも、その半端な決意に拓也(柳沢貴彦)が激怒。2人がもみ合う中で、とめに入った慎吾(山内秀一)がさらにとめに入った紀香(永岡真実)のエルボーを食らって鼻血を出したりといったおまけエピソードがまた笑いのツボだったり。確かにかつての鼻血の専売特許は剛でしたかね。
 そんな悩める剛に対して、とりあえず目の前のことをがんばろうよと励ますマイケル(パトリック・ハーラン)の立ち位置がちょっと離れめなのがまた暑苦しくならなくていい感じ。その場限りキャラクターかと思われた桃子(森尾由美)の高校時代の親友、女子アナの瑛子(富永美樹)とセレブな社長夫人・ゆかり(広岡由里子)は引き続いてドラマに残留。剛に海の家でのバイトを斡旋するいとこの亜理沙(吉田紗也加)に、良介(新井康弘)の母・良枝(岩本多代)の再婚話も絡んで、話の半分が鎌倉に分散されるのも例年通りで、いっそうにドラマがにぎやかしくなってきて楽しみ。(麻生結一)

第3週(2006年7月31〜8月4日放送)

☆☆★
 桃子(森尾由美)のメインエピソードというと、子供たちのことで奮闘の末に倒れる、というのが定番の印象が強いが、このシリーズでは同窓会への出席を扱っていた。何となく昔見たような気もしたが、かつての三人娘の一人で、今や人気キャスターになった高木瑛子(富永美樹)にウン年ぶりに再会したという設定だったので、やはりこれがはじめてなのだろう。
 千絵子(茅島成美)に心配されたり、良介(新井康弘)にむくれられたりしながらようやく同窓会の出席にこぎつけるも、大人気の瑛子や社長夫人としてのセレブ生活にいそしむ由香里(広岡由里子)たちに挟まれて居場所がなかった桃子は、家に帰っても五つ子たちにそっぽを向かれて、疎外感を味わう展開が何とも苦々しい。さらに、紀香(永岡真実)や美穂(笹岡莉紗)が悪ぶれずに人気キャスター、社長夫人、五つ子のママの誰がすごいかと問うところなど、随分な辛口である。もちろん、一番きれないなのは桃子につき、どん底にまでは落ち込まないところが救いといえば救い?! 瑛子のように自分の足で生きていく女になりたい紀香の足はすでに立派って、これは別の意味での辛口……。
 苦手の古文を克服すべく、本当は予備校の夏期講習を受けたかった拓也(柳澤貴彦)が同級生と殴り合いのケンカに及んだのが、父・良介を侮辱されたから、という動機も頼もしいのだが、のちのちに息子に同情を受けていたことを知る良介の複雑な心境も察するに忍び難い。シリーズは五つ子たちが高校生になったことで、必然的により現実的な部分と向き合わなければいけなくなったわけだが、家族愛の精神が臭くならずにきちっと伝わってくるあたり、このシリーズの偉大さを思い知らされるところだ。(麻生結一)

第2週(2006年7月24〜28日放送)

☆☆★
 エピソードの粒立ちは第1週ほどではなかったが、五つ子たちの善良なる結託はことごとく清々しい印象を残す。連ドラに出てくる高校生のような定番尽くしではなく(ギャグはベタ尽くしも)、五者五様に悩み抜いているところにも共感が持てるところ。個々に密に迫れる帯ドラゆえのアドバンテージといえばそれまでだが、それをやり続けているこのシリーズはやはりえらいと思わせる。
 ベースは友達の結衣(宇野あゆみ)を救出する美穂(笹岡莉紗)の友情の話と、下級生の真央(上野真未)に一方的に思いを寄せられる慎吾(山内秀一)の話だったが、拓也(柳澤貴彦)、剛(鈴木藤丸)の心情もきちっと同時フォローされているあたりも正統的だ。急激に美人になった(?)紀香(永岡真実)なれど、その存在感は子役時代から変わらず、相談役的で個人的には無風が続く。
 桃子(森尾由美)と良介(新井康弘)が夜中に2人っきりで5人の通信簿を見る場面は、これまでの儀式としての通信簿見せを思い返せるだけに、泣けてきた。桃子が男の子の部屋にファブリーズしていたのは、仕様がないですね。(麻生結一)

第1週(2006年7月17〜21日放送)

☆☆★
 あの五つ子たちがいきなり高校1年生になるにしたがって、キャストも総入れ替えになっていた前作は最初は違和感があったも(実際には両設定には4歳ほどしか年の差はなかったのだけれど)、ドラマが終わるころにはすっかり新キャストに慣れ親しむことに。ところが、高校生バージョンの第2弾である今回も、またもや最初はその違和感に苦しむ。いかに最初の6シーズンの小学校篇がいとおしくも印象深かったかだが、それも第2回あたりで早々慣れてきたのは、ドラマの勢いゆえかな。
 それにしても、相変わらずのエピソードの宝庫だ。中では、桃子(森尾由美)の母・千絵子(茅島成美)がひっかかってしまう振り込め詐欺のお話が泣かせた。美穂(笹岡莉紗)のハイパーテンションが普遍なのもうれしいところ。
 紀香(永岡真実)が使用していたレッツノートの直販天板赤は『吾輩は主婦である』からの使いまわしだろうか?! 何せ吾輩は二台も購入してる設定だったから。強力だった『吾輩は主婦である』の次のドラマはきついのではと思ったが、はずれのないこのシリーズならば何ら心配いらないだろう。意味深なタイトルバックがちょっと気になる。(麻生結一)

大好き!五つ子 GoGo!!

TBS系月〜金曜13:00〜13:30
愛の劇場
製作:ドリマックス、TBS
企画:山田康裕
プロデューサー:荒井光明、吉川厚志
脚本:浪江裕史
演出:荒井光明、山口祐司、森嶋正也、吉川厚志
主題歌:『One Love』sprout
出演:桜井桃子…森尾由美、桜井良介…新井康弘、拓也…柳澤貴彦、美穂…笹岡莉紗、慎吾…山内秀一、紀香…永岡真実、剛…鈴木藤丸、桜井周平…見栄晴、桜井恵…長谷川真弓、マイケル・ロビンソン…パトリック・ハーラン、紺野彩夏…八木小織、高木瑛子…富永美樹、飯島ゆかり…広岡由里子、真山店長…片岡富枝、工藤晴江…菊地幸代、谷川正太郎…伏見哲夫、阿部龍太郎…高木将大、高木玲奈…麗美、亜理紗…吉田紗也加、杉浦貞夫…若松俊秀、男性教師…大堀こういち、海の家オーナー…森山米次、周平の同僚…井上智之、サーファー仲間たち…阿部朋弘・石井伸忠、清水幹男…大矢三四郎、西田真央…上野真未、正広…熊谷知博、翼…鎗田千裕、清水の女友達…重廣礼香、スタンド店員…崎山凛、斎藤結衣…宇野あゆみ、高橋愛美…井料彩美、青島亮太…結城洋平、金子瞬…足利翔一、同級生たち…木川淳一・樋口靖・岡本裕輝、宮本光司…三浦圭祐、中年男性…徳永成倫、倉田大輔…伊藤瞭、山崎康平…大澤佑介、三年生たち…飯島杏菜・松丸実希子・鈴木貴子、若い男…田代大悟、桜井良枝…岩本多代、楠千絵子…茅島成美