誰よりもママを愛す

第11回(2006年9月10日放送)

☆★
 このクールは予想を大きく下回る、謎の出来ばえのドラマがあまりにも多くて、通常以上にへこたれ続けたのだけど、このドラマはあまりにも予想通りで、それはそれで困ってしまった。予想を覆すために用意されたであろう明(玉山鉄二)とピンコ(阿部サダヲ)の顛末にしても、愛のみで性別の壁を乗り越えられるものでもなかろうて、結局は明がノーマルならざる自らのあり様に気がついただけのこととも思えてくる。もちろん、その自己発見は明にとっては人生の革新であったはずも、それを受け入れる嘉門家の過剰な朗らかぶりは、やりすぎである。もちろん、あえてそういうテイストこそを狙ってきているのだから、そこに異論を唱えても不毛なのだけれど。
 そのとばっちりで、一豊(田村正和)と千代(伊藤蘭)の夫婦愛のエピソードが薄まってしまったのは事実。エピローグの「愛妻弁当コンテスト」では、田村正和が通販会社の社長を演じたドラマを思い出したが、そのタイトルはどうしても思い出せない。このドラマもしばらくすればタイトルが思い出せない、一連の一作ということになるのだろうか。それにしても、津波(小林聡美)は前半と後半でまるで別人だった。
 知(川島海荷)のひねりのきいた転校の挨拶は、『女王の教室』の延長線上を見ているようで、ちょっと面白かった。(麻生結一)

第10回(2006年9月3日放送)

☆★
 ピンコ(阿部サダヲ)、知(川島海荷)のフェイドアウトのエピソードを取り上げるまでもなく、いかにも最終滑走に入った感じである。終始一貫しているのが、新鮮味の乏しさでは困ってしまうのだけれど、もちろんそれはある程度予測できたことでもあった。(麻生結一)

第9回(2006年8月27日放送)

☆★
 千代(伊藤蘭)の誕生パーティーに催される幼稚園のお遊戯会風ミュージカルは、もはやドラマと関わりなく悪ノリし尽くした感じだが、少なくとも雪(内田有紀)のお見合い話などよりも見ごたえがあったかな。それにしても、雪はこれほどまでに共感から遠いキャラクターのままでいいんだろうか。明(玉山鉄二)の過ちの突き抜けっぷりも、下品すぎて笑えない。(麻生結一)

第8回(2006年8月20日放送)

☆★
 ピンコ(阿部サダヲ)が現状オカマであることを母親(梅沢昌代)にカミングアウトするにあたり、嘉門家が総出で尽力するという一席。例のごとく新味に欠けるエピソードが羅列されるのみだが、ピンコのキャラがにぎやかしい分、嘉門家の誰にスポットがあたるよりのも容易に見通せてよかった。(麻生結一)

第7回(2006年8月13日放送)

☆★
 狂言誘拐の次は想像妊娠か。どちらにしても、この肩透かし連打は受け入れがたい。雪(内田有紀)にとってはわがままいっぱいやってても、身の回りのことをやってくれるパパ(田村正和)がいてくれる我が家が結局は最高って話だけに、これでこの家族に共感しろとは、なかなかにハードルが高い。雪のキャラクターは魅力が薄いばかりか、まったく成長もしていない。それがいとおしくなるパターンだってないことはないのだけれど、このドラマの場合にはそれは当てはまらず。これでは演者も気の毒だ。(麻生結一)

第6回(2006年8月6日放送)

☆★
 結局は自作自演誘拐だった薫(長島弘宜)に関してもまったく無関心な千代(伊藤蘭)は鬼嫁を超え、母親不適格者に思えてひたすらに感じが悪いも、いきなりに世話焼き派にキャラ替えした(小林聡美)の伝聞で、そのやさしさが伝わるというのがこの第5回の狙いだった。さすがにこれまでよりは千代がちょっぴりいい人に見えて、後味も悪くなかったけれど、節々の極端さにはついていけないところもある。(麻生結一)

第5回(2006年7月30日放送)

☆★
 一豊(田村正和)がハイテンションに号令を発するも、離合集散を繰り返す嘉門家というパターンはもはやお決まりの作用になりつつあるか。家族イベントの企画も千代(伊藤蘭)、明(玉山鉄二)、雪(内田有紀)に相次いでキャンセルされ、結局一豊と薫(長島弘宜)に付き合って水族館に同行したのは津波(小林聡美)だった、という展開はまるで絵に描いたようなファミリードラマ的ドタバタも、その後に津波が語る自らの過去は、夫と子供を火事で亡くしていたという、予想以上にヘビーな内容だった。
 ラストには薫が千代を罵倒するシーンがくるのだが、ここは大いに同意。いっそうどこかの頑固親父のごとく、かわいげがない千代も、この人に魅力がないという自覚が作品中にもあったということに、ちょっとほっとしたりして。(麻生結一)

第4回(2006年7月23日放送)

☆★
 田村正和の腹芸は全編に楽しめるので、退屈せずに見通せるのは本当にありがたいのだが、ドラマのみどころがそこに尽きてしまうのもちょっと悲しい。この第4話の盛り上げ役だったピンコ役の阿部サダヲはコメディにしろシリアスにしろ、田村さんに負けず劣らず己こそを演じるポリシーを貫いてくれるあたりが安心である。
 ちょっと困ってしまうのが、一豊が誰よりも愛しているという千代(伊藤蘭)に、現状共感できる部分が皆無なところ。本家=『功名が辻』の千代(仲間由紀恵)の卓越した愛嬌に近づくのは難しいとしても、その片鱗もないとはどうしたことだろう。(麻生結一)

第3回(2006年7月16日放送)

☆★
 雪(内田有紀)の結婚宣言にしても、結婚相手・山下(劇団ひとり)をもてなすために料理を作ろうとする雪を、津波(小林聡美)も巻き込んでアシストしようとする一豊(田村正和)にしても、はたまた明(玉山鉄二)につきまとって家に押しかけてくるピンコ(阿部サダヲ)にしても、そのいずれもが古風なドタバタと化している。おそらくあえてそうやっているのだろうから、それをどうと言うことも出来ないのだが、このキャストでそこ止まりではちょっともったいない気もする。ある意味、豪華とも言えるのだが。(麻生結一)

第2回(2006年7月9日放送)

☆★
 このドラマの詳細を語るのは野暮なのかもしれない。一見弱腰に見えて、最後の最後にはきれキャラと化す田村さんの『おとうさん』、もしくは『オヤジぃ。』像は専業主夫であろうがなんであろうが、常に普遍の美しさを放っているのである。もうちょっと千代(伊藤蘭)の出番がほしいが、そのあたりはこのドラマの語り口としても受け入れられる。(麻生結一)

第1回(2006年7月2日放送)

☆★
 キャスト、お話ともに大いなるデジャヴ作品であるので新味は望むべくもないが、定番のよさを求められているからこそのエンドレスな焼き直しなのかもしれない。どちらにしても、田村さんの専業主夫ぶりはなかなか見ごたえありだ。(麻生結一)

誰よりもママを愛す

TBS系日曜21:00〜21:54
日曜劇場
製作著作:TBS
制作:TBSテレビ
プロデューサー:八木康夫
脚本:遊川和彦
演出:清弘誠(1、2、4、5、7、9、11)、竹園元(3、6、10)、高橋正尚(8)
主題歌:『惑星タイマー』福耳
出演:嘉門一豊…田村正和、嘉門雪…内田有紀、嘉門明…玉山鉄二、嘉門薫…長島弘宜、佐藤先生…桜田聖子、ピンコ…阿部サダヲ、山下…劇団ひとり、真田知…川島海荷、矢沢心、須賀貴匡、深沢敦、小宮健吾、おかやまはじめ、櫻庭博道、重田千穂子、畠山明子、宮田早苗、半海一晃、小林すすむ、掛田誠、沼田爆、川俣しのぶ、たくませいこ、相島一之、中島ひろ子、山崎邦正、徳井優、梅沢昌代、尾美としのり、大路恵美、真理アンヌ、小須田康人、てらだちなつ、デビット伊東、松金よね子、梶原しげる、香奈…藤井玲奈、有村雅嗣、稲田英幸、佐藤和也、福島一樹、蔵迫泰子、三原伊織奈、若林淳、及川光博、嘉門千代…伊藤蘭、津波こずえ…小林聡美