マイ★ボス マイ★ヒーロー

第10回(2006年9月16日放送)

☆☆★
 卒業できない卒業式というのもシャレていたけれど、真喜男(長瀬智也)は若頭だけに、学校の卒業式よりも、組の卒業式こそがふさわしかったか。別に特別な仕掛けがあったわけでもなかったけれど、ヤクザの若頭を学園ものと掛け合わせるアイディアのかわいらしさが、その路線としてきちっと守られた最終回だったといえよう。桜ナントカ(手越祐也)がついに桜小路に昇格していたのも、清々しさを助長してたかな。(麻生結一)

第9回(2006年9月9日放送)

☆☆★
 2月14日に重なった跡目選挙、卒業試験、そしてバレンタインチョコをめぐるミスター3年A組の選出の3本立てはいつものドタバタ調のみならず、しみじみとさせるようなところもあって、これまでの中でももっとも充実した出来ばえの回になっていた。
 とりわけ感激したのは、堅気転向に揺れるマッキーとヤクザな真貴男(ともに長瀬智也)との語り合いの場面。なるほど、この2人の心の会話こそが、『マイ☆ボス マイ☆ヒーロー』というわけか。美喜男(黄川田将也)が小二のときに母親に買ってもらったイチゴ消しゴムを真貴男に食べられてしまった恨みつらみを今さらながらに淡々と語る場面なども、いかにも大森美香脚本作らしく、心に染み入る場面になっていた。
 もちろん、従来のドタバタパターンも健在で、関東鋭牙会専門チャンネルであるケーブルTVでの、真貴男と美喜男、互いのアピールビデオ合戦もお茶目だったし、選挙特番もそれっぽかった。そして何よりも真貴男の顔芸!これはもはや、話と関係なく面白くてズルい。(麻生結一)

第8回(2006年9月2日放送)

☆☆
 文化祭の出し物であるバンド演奏で一致団結という展開はあまりにも真っ当で芸がないも、真喜男(長瀬智也)の顔芸の方は随所に炸裂してくれるおかげさまで、飽きさせられることは決してない。長瀬智也はいつからそんな腹芸の人に?大歓迎ですけれども。(麻生結一)

第7回(2006年8月19日放送)

☆☆★
 いつものオフビート路線は控えめに、はじめてせつなさが全面に押し出された回。実は苦労人であることが判明したひかり(新垣結衣)と真喜男(長瀬智也)が、アグネスロードを一緒に帰るだけの初デートからしみじみと初々しくて。絡んできた男たちからひかりを救うために、負傷した真喜男は3日で驚異的にその傷を回復させるも、心の傷まではいやされない。

早紀(村川絵梨)「マッキー、そんな複雑な人じゃないから」

とはもはや失礼千万。クライマックスは鉄仮面こと南百合子(香椎由宇)に手に入れられないものがあることを知ったと心情吐露する場面。ここは聞き手も未熟者につき、水島(もたいまさこ)が聞き役だったらとちょっと思った。(麻生結一)

第6回(2006年8月12日放送)

☆☆★
 青春について。いったん途絶えたアグネスぷりん復活の総取り制度によるかけっこにその命題が収斂するあたり、いかにもらしい感じのおバカさ加減も、ちゃっかり群像青春物のように束ねていく生真面目さは前クールの同枠『ギャルサー』に傾向は等しい。
 ぷりんの話が再度クライマックスを飾ったということは、オフビートな第1回が評判よかったんでしょう。今回も随所に散りばめられた流れと無関係な遊びの部分の、あまりのくだらなさに思わず笑ってしまったり。クラスメイトを救出するべく真喜男(長瀬智也)が扮した戦隊ヒーロー(アニキンダー?)は、大森美香脚本作ならばガイセイバーであってほしかったが、NHKとの絡みでキャラクター使用は難しかったのだろう。(麻生結一)

第5回(2006年8月5日放送)

☆☆★
 学校をサボったり、高校生的悪い遊びを伝授されたりと普通の非行少年と化した真喜男(長瀬智也)のナイーヴは「はつ恋」以降、とどまるところを知らず。ちなみに今回の一連の行動は「反抗期」と命名された模様。
 こうなってくると、やはり大人の役者に水島演じるもたいまさこ級の芸達者があと数人ふくまれていたならばといった欲も出てくるが、これはいまさら言っても仕方がないので、さらに真喜男演じる長瀬智也のナイーヴと暴走の狭間を期待するしかない。
 あまりにもやくざルックな父・喜一(市村正親)は学校には耐えられないと思って、三者面接を阻止すべく、全力疾走で学校に向かった真喜男が自覚する体の軽さは、実はタバコの量が減ったからだった、なんて教育上好ましい因果関係も含みつつ、ドラマのボルテージ(=真喜男のボルテージ)はいっそう高まってきている。(麻生結一)

第4回(2006年7月29日放送)

☆☆★
 夏休みに入り、鉄仮面こと南百合子(香椎由宇)による個人レッスン的補習を受講した勢いのままに、受験対策用の強化講習にもつい参加してしまう真喜男(長瀬智也)の苦悶ぶりがあまりにもいとおしい。その百合子に薦められたツルゲーネフの『はつ恋』を読みながら、ひかり(新垣結衣)への思いにウブく苦しむあたりも、水島(もたいまさこ)が語った木こりの話のドタバタ調と文学的な雰囲気との掛け合わせが悪くない。
 強化講習の最終日にきもだめしをやるという設定はいくらなんでも強引過ぎるも、ついにはつ恋を自覚するシーンに牛のツルゲーネフのロングショットなんて演出の遊びも気が利いていて大いに気に入った。こういうテレビドラマっぽくないことこそ、ドンドンやっていただきたい。(麻生結一)

第3回(2006年7月22日放送)

☆☆
 ベタでおバカな展開はそれ以上でもなければ以下でもないが、緩いスポ根風よりは真喜男(長瀬智也)がテストに取り組む展開の方が、真喜男の完全おバカぶりが強調されるお笑い調と、そこからのわずかながらの成長が記される清々しいタッチとが程よくブレンドされて、らしくまとまっていた感じがする。真喜男を励ますひかりを演じる新垣結衣が勉強の仕方を語ったりすると、昨年夏クールに放送された出来のよかった『ドラゴン桜』のことを思い出したりして。桜小路(手越祐也)がいまだに“桜ナントカ”って呼ばれてるのはしつこくていいなぁ。
 真喜男演じる長瀬智也は十八番的な役柄だけに無敵なのだけれど、それに拮抗する存在は、ラストシーンで大いなる動体視力を見せ付けた養護の先生・水島(もたいまさこ)になるのかもしれない。何気ない台詞に含蓄がこもるあたり、役者の力を感じる。(麻生結一)

第2回(2006年7月15日放送)

☆★
 学級委員を組の長と解釈して、真喜男(長瀬智也)が自ら名乗りを上げる冒頭あたりはこのドラマならではのシチュエーションを存分に生かしたエピソードだったが、球技大会のお話に入ってからはいたって普通のスポ根青春物の、しかもそのパロディのようになってしまう。真喜男の父・喜一(市村正親)や南校長(岩城滉一)あたりがおかし味を発揮してくれるとドラマの幅も違ってこようが、現状その気配なし。やはり、第1回のような突拍子もない展開の方をリクエストしたくなる。(麻生結一)

第1回(2006年7月8日放送)

☆☆
 出来不出来は別としても、主義主張の一貫性が潔い作品が続いている同枠であるが、この新ドラマもまた同様の期待感が漂っていて好感が持てた。あまりのバカゆえに父である組長の喜一(市村正親)から後継者として失格の烙印を押された暴力団の若頭・真喜男(長瀬智也)が、裏口入学によって季節はずれの高校三年生になってしまうという設定からしてバカバカしくていいのだが、それがバカバカしいだけじゃなくなってくると、忘れられないドラマになってくれるかもしれない。
 それにしても長瀬智也には、ケンカだけは強いがバカな真喜男役がしっくりくる。存在だけでおかし味がにじむのはある意味反則だ。
 意図されたベタベタなノリを許容しつつも、アグネスぷりん110円ゲットのための放物線的ムササビ作戦にまでいってしまうとさすがに苦笑してしまったりもするのだが(大森さんは飛び道具がお好きな印象)、養護の先生である水島(もたいまさこ)が熱弁をふるったヘレン・ケラーの話を前ふりに、最後の最後で真喜男が奇跡の人化してしまうあたり、そのまとめ方のうまさにはピリッとしたところがあってなかなかいい。(麻生結一)

マイ★ボス マイ★ヒーロー

日本テレビ系土曜21:00〜21:54
制作:日本テレビ
企画:東宝株式会社
プロデューサー:河野英裕、山本由緒、山内章弘、佐藤毅
協力プロデューサー:小泉守、下山潤
原案:韓国映画『頭師父一艶』より
脚本:大森美香
演出:佐藤東弥、佐久間紀佳
音楽:高見優
主題歌:『宙船(そらふね)』TOKIO
出演:榊真喜男…長瀬智也、桜小路順…手越祐也、真鍋和弥…田中聖、梅村ひかり…新垣結衣、萩原早紀…村川絵梨、篠原孝文、佐藤貴広、広田雅裕、田中泰宏、伊藤公俊、西野成人、武田航平、若葉竜也、足立理、森廉、内田明、本間春男、佐藤千亜紀、垣内彩未、相馬有紀実、入山法子、仲里依紗、渋谷桃子、ホラン千秋、伊藤未希、チェン・チユー、澁谷麻美、野上沙織、松永かなみ、小柳友、阿部亮平、中別府葵、立澤真明、豊岡武士、南百合子…香椎由宇、田中要次、峯村リエ、森下哲夫、中村靖日、尾崎右宗、ロブ・アンダーソン、南孝之…岩城滉一、榊美喜男…黄川田将也、丸山智己、月船さらら、じい…村上冬樹、赤岩大輔…三原康可、リュウ…趙a和、テツ…高嶋宏行、トシ…加賀美剛臣、桜小路瞳…仁科仁美、水島椿…もたいまさこ、黒井照之…大杉漣、榊喜一…市村正親