トップキャスター

第6回(2006年5月22日放送)

☆★
 のっけから「神田川に現れたアザラシのカンちゃん」なんて手垢の付きすぎたネタでげんなりしそうになるが、そこから伝説のニュースキャスター・椿木春香(天海祐希)vs究極のニュースキャスター・桜井尚樹(東幹久)という対決エピソードになるならば、まあアリか。桜井尚樹の“究極”っぷりにしろ、令子(須藤理彩)の頑張りっぷりにしろ、すべて言葉で説明されてしまうあたりの繊細さの欠如にしても、今更このドラマにそれを求める気にもなれないので、ここはスクープを巡って春香と桜井がなぜかビリヤード対決をすることになるあたりのバカバカしさに身を委ねた方が得策といえよう。「四方田」か「よもだ」かで自称被害者のウソを見破ることになるクライマックスは意外にも楽しめたが、それを望美(矢田亜希子)と令子が春香に伝えに来るのとほぼ同時に角高(矢島健一)にも別方面からの情報が来てるというのなら望美らがやったことはまったくの無駄って話のはずなのに、そのあたりを前面に出さずにいい話風に幕を閉じるその手腕にこそ感心してしまう。(安川正吾)

第5回(2006年5月15日放送)


 いつものドタバタコメディ仕立ては中途半端にして、サスペンス風にしてみようとする試みはあったようだけれど、それもまた中途半端で大いに困った。報道する側が立たされうる逆恨み、誤認報道、冤罪といろいろと選択する道筋はあったはずも、結局何だったのか、さっぱりわからなかった。取り立て屋を殺したダーツマンとして服役していた保阪敏行(福本伸一)の妻で、夫の出所を待って銭湯を切り盛りしている智世(りょう)の存在など、完全な宝の持ち腐れ。
 椿木春香(天海祐希)と飛鳥望美(矢田亜希子)の関係性を描くことが主眼なのだろうから、朝ごはんをどっちが作るという話も入れてもいいのかもしれないが、事件の方にも少しは気を配っていただかないと、どこを手がかりに見進めればいいのかもわからなくなってしまうので。とても魅力的な天海祐希がいるだけでもいいということであれば、ドラマというフォーマットの必要性もないのでは。(麻生結一)

第4回(2006年5月8日放送)

☆★
 エピローグ、より体格のいい野原芽衣(松下奈緒)をおぶって疾走する椿木春香(天海祐希)のアネゴっぷりを見るだけでも、この回を見る価値はあったと言えるが、他のいかなるキャラクターも影が薄くなるほどに光輝く天海祐希をしても、数々のマイナスポイントまでも補うことはさすがに難しい。
 駄洒落が言いたかったがためのオープニングコントは何とか受け流せたが、今は亡き母→東京タワーという当世風にどうしても持っていきたかった展開には鼻白むばかり。マスコミ嫌いで知られる世界的画家・服部圭吾役で葛山信吾。野原芽衣がついた嘘を感動的に受け入れる服部圭吾が生放送にまで出演してしまう流れは意外性ゼロも、のどごしよく見せきる術には驚くべきほどに長けている。(麻生結一)

第3回(2006年5月1日放送)

☆★
 リアルをドラマが追いかけていく作業は時には使命のようなものも、あまりにも周知なトピック(今回は占い師)を後追いであることに何の恥じらいもなく堂々と取り上げるあたりは、この枠のポピュラリティゆえだろうか?最近では稀に脚本がクレジットのトップにくるドラマであることは抑えておきたいところ。ドラマの出来ばえはさておき、クレジットに関してはこれが自然のように思えるけれど。
 17時台の民放のニュースあたりだと、こういう柔らかい内容の話題も取り上げたりするのだろうか?何せこのドラマで表に出てくるニュースはメインストーリーに絡むネタと前後に読まれるものぐらいなので断定は出来ないも、第1回に引き続いて番組内番組は「ザ・ニュース」というよりも「ザ・ワイド」(局は違いますが)の趣に。
 占星術師・宮部天花役を演じた黒田福美はまさにはまり役。こういう呪術畑の役回りはあまりにもお似合いになりますね。そんな天花に改名しなければブラックホールのごとき男運にさいなまれると脅される椿木春香(天海祐希)だが、ここは「オナラカオリ」の響き以上に、夕刊紙の挿絵にあった「狙いはスクープゥ〜」の方をよりやりたかったのではないかと見る?!
 オチは報道番組が仕掛けるやり方に程遠く、ワイドショーを超えてバラエティ番組のようだった。そんなドラマの内容とあまりにも遠い地点から重なり合う形で、朝ドラ『天花』の悪夢が蘇ってくる?! またあのドラマのことを思い出してしまいました。
 取材中にオムライスを食べる男・蟹原健介(玉木宏)がこのニュース番組内においてどういうポジションの人物なのか、いまだによくわからないも(第1回できちんと説明があったのかもしれないが、活躍せずとも取材には同行してた程度にしか仕事する様が見えない)、飛鳥望美(矢田亜希子)との恋愛は今後も進行していく模様。そのあたりの描きこみもほとんどないのだが。(麻生結一)

第2回(2006年4月24日放送)

☆☆
 自局ドラマをパロディの道具にして、同名異人の財前教授(温水洋一)まで登場させての「白い巨塔疑惑」とは、やはりいかなる手段も選ばない方向性の模様。それで面白ければ、別に何をやってもいいとは思うのだが……。
 金銭のために罪をかぶろうとする医師が、もともと医者にして貧乏である理由もわからないが、医療ミスを扱ったあたりは第1回よりはニュース的と言えるか。ただ、アリバイ崩しにベトナムの十二支まで出してきた椿木春香(天海祐希)のやり方はジャーナリスト的というよりも、もはや探偵の趣。ちょっと前に『女子アナ刑事』っていうドラマもありましたけど。
 まさかそんな当たり前な展開はありえないだろうと思っているうちに、全編に引っ張られるニシンの缶詰ネタは果たして面白くなる可能性を含んでいたのだろうか。何をいまさらとの感想は、シャワーが故障した云々にもかかっていくのだけれど。一言で言ってしまうと、フレッシュさに欠ける。ただ、フレッシュさに欠けたとしても、それが面白ければ別に問題ないわけで……。
 スクープのためだったら子供にだって取材するエグイ人が、実際はそんな人じゃなかったという丸いまとめ方は、この枠的にはこれしかないというところだろう。かつての椿木の恋人にして、バカみたいに正直なところが取り柄だった結城雅人(谷原章介)との過去もソフトフォーカスな回想を含めて早々に語られる。ケンカのネタに使われていた『釣りバカ日誌』は釣りしてるだけの映画ではありません。釣りしてることが多い映画ではあるが……。(麻生結一)

第1回(2006年4月17日放送)

☆☆
 いかにも月9らしく、ラクチンに見通せる感じはいいのだけれど、それだけで報道物のドラマをワンクール通して見せきることが出来るかには疑問が残るところ。
 ドラマの原動力は8年ぶりに現場復帰する伝説のニュースキャスター・椿木春香(天海祐希)と、彼女がお天気キャスターから自分のアシスタントに指名する飛鳥望美(矢田亜希子)の二人の掛け合いになるのだが、彼女たちを頻繁に絡ませる手段として、24時間行動をともにするというリアリティのない設定をさらりとありにしてしまったあたりはさすがというか、手段を選ばずというか。
 目玉の報道番組の最初のスクープが「疑惑のセレブ婚」ならば、それは「ザ・ニュース」でも何でもなく、「ザ・ワイド」(局は違いますが)でしょうにとも思ったけれど、望美に「パンツ」を連呼させるシチュエーションをやりたかっただけと考えると、もやもやとした思いも何となしの納得に変わる?!
 メインの二人の脇を固めるキャラクターたちはこれでもかといわんばかりの定番揃いだが、その方が春香と望美を絡ませる自由度も広がってはくるだろう。ただ、第1回を見た限りでは、主人公はキャスターでない方が適当だったかとも思える。主人公をプロデューサーにした『美女か野獣』のようなグズグズなドラマを見せられても困るので、とりあえずは様子見するしかないが、それにしても同じ枠での脚本家の連投とは、いかなる狙いがあるのだろうか?(麻生結一)

トップキャスター

フジテレビ系月曜21:00〜21:54
制作著作:フジテレビ
プロデュース:現王園佳正
脚本:坂元裕二
演出:平野眞(1、2、5、7、10、11)、葉山浩樹(3、4、8)、七高剛(6、9)
音楽:佐藤直紀
主題歌:『Dear friend』Sowelu
出演:椿木春香…天海祐希、飛鳥望美…矢田亜希子、蟹原健介…玉木宏、結城雅人…谷原章介、野原芽衣…松下奈緒、伊賀俊平…松田翔太、蟹原珠子…田丸麻紀、蟹原三郎…ト字たかお、海老原敬介、黒瀬真二、執行利一、巽佳子、関鐘美、石川雄也、庄島康哲、金子久美、豊原愛、紺野令子…須藤理彩、角高孝男…矢島健一、大路恵美、東根作寿英、平山広行、財前誠…温水洋一、塩顕治、佐々木麻緒、黒田福美、中園友乃、服部圭吾…葛山信吾、りょう、福本伸一、田窪一世、深澤嵐、東幹久、弓削智久、大林丈史、姜暢雄、中越典子、長谷川初範、不破万作、渡辺哲、伊藤歩、入江雅人、伊武雅刀、石場小吉…生瀬勝久、柴田勝俊…児玉清