ギャルサー

第9回(2006年6月10日放送)

☆☆
 ギャルサー名・レミ(鈴木えみ)の本名は、日本史かぶれの父親がなずけたせいで小野妹子だったとな。実はその姉だった偽名・晶子(三浦理恵子)は結婚すると秋田小町になってしまう恐怖感からついに妹・妹子の苦悩を知るって、本当にこれらの名前の方がこのドラマをご覧になっていたら、大いにがっかりされたことでしょうね。
 そんなレミ改め小野妹子はコンプレックスからの怒りゆえか、近所の道場ににでも通っていたのか、大変なケンカ武道の達人で、商店街の愉快な面々を殴るは蹴るはの大活躍?! 一ノ瀬(佐藤隆太)が一目ぼれするのも納得も、そのあたりはもう少しわかりやすい見せ方の方がこのドラマらしかったか。(麻生結一)

第8回(2006年6月3日放送)

☆★
 “ヨミガエリ”なるまた変な呪術ねたが出てきて嫌な予感がするが、今その時に選択すべきことを説くシンノスケ(藤木直人)の説教は相変わらずの有難さよ。ズルズルしたドラマのトーンも、毎回ここでピリッと締まって差し引きゼロややマイナス程度になる感じもまたいつもの如く。
 渋谷のギャルサーの裏の顔は優等生の生徒会長だったリカ(岩佐真悠子)って、かつて小銭を借りては返さなかったキャラだったでしょ。一致するようなしないような(ちゃっかり小ズルイという路線が一定しているということか)。
 毒物だと思われていたヨミガエリが実は単に高価なだけだったというオチはジェロニモ(古田新太)の見せ場でこれまたお決まりパターンも、何となく喜ばしい気持ちになれるのは、それがきちっとはまっているからだろう。(麻生結一)

第7回(2006年5月27日放送)

☆★
 ギャルサー本体の話は薄く、一ノ瀬(佐藤隆太)の里帰りがメインストーリーだったために、番外編的な趣になった第7回。寺の住職である父・倫太郎(渡辺哲)との絡みに特別な工夫はなく、定番の里帰り自己発見物からはみ出す部分は皆無も、シンノスケ(藤木直人)が一ノ瀬を境内に縛り付けるシークエンスは、宮本武蔵と沢庵和尚風を狙ったのであろう。
 それにしても、エンゼルハートの代理リーダーに任命され、またパラパラの大会にも代表として抜擢されたサキ(戸田恵梨香)の、またまたの素行の悪さにはもはやあきれるばかり。これほどに成長しないキャラクターでいいのだろうか。(麻生結一)

第6回(2006年5月20日放送)

☆☆
 ヤツボシテントウの呪いとやらで、ドラマはオカルト風にとめどなく汚れていくも(実際に随所に汚かったりする)、最後の最後には驚くべきほどにきれいに締めくくって、そのギャップがすごいといえばすごい。落としどころが常に美しく青春しちゃってたりするあたりが、一貫性があるといえばあるといえるか。
 相変わらず的外れに大真面目なシンノスケ(藤木直人)がエンゼルハートの面々を集会所に閉じ込めたシチュエーションからそれまでのオカルト調を一転させて、『台風クラブ』風の青春群像劇に移行させていくあたりは、その強引さのわりにはいつもながら意外にちゃんとしてる。団結を強めた一夜ののちに、エンゼルハートの面々が床に寄り添って寝ている俯瞰画あたりはちょっと叙情的だったりして、さわやかな気分にさせられるところ。
 この回に限ったことではなく、このドラマは物語のいたらなさを見せ方の工夫が救っていることしばしだ。サキ(戸田恵梨香)だけが腹痛を起こさないゆで卵の伏線はこの回のためだけにあったとすると、大量のゆで卵の消費は豪華といえば豪華かな。(麻生結一)

第5回(2006年5月13日放送)

☆☆
 テーマは言い訳。言い訳はしない潔さが身上のシンノスケ(藤木直人)が言う、謝る心は尊い、気持ちがいいという言葉は、それがことごとく有限実行だけに説得力がある。言い訳の概念はアメリカにもないはずはないので、日本語、英語に関わらず、シンノスケは言い訳をまるごとわかってなかったという大前提での話になるが。
 ただ、そこにいたるまでの過程がこれまでにもまして悪質なのには引っかかった。エンゼルハートがギャルサー合同のイベントの仕切り役を任されているならば、その契約書関連を下々(そういう表現がドラマ中にありました)に任せてしまうこと自体もうかつだと思うけれど、スミレ(奈津子)が契約書を紛失したことを隠蔽するべく、シンノスケを不審火犯に仕立て上げようとするのがサキ(戸田恵梨香)であったのはあまりにもひどい。この二人がドラマ中で培ったこれまでの時間から考えるならば、あまりにも罪深いサキの犯罪行為は「土曜ワイド劇場」行きである。
 サキの他愛ない愚かさは第一話から改善されるどころか、ついに非人間的な域にまでエスカレートしてしまったとすると、人間の愚かさはそう簡単には改善されるものではない、もしくは罪悪感なき若者の無軌道、とまで深められて、NHKの「土曜ドラマ」でこそじっくりと取り上げるべき社会派になるだろうが、これはそういう話でもないだろうから。責任のなすりつけ合いが連鎖する展開はテーマからはずれていなかっただけに、もったいない気がする。
 結局は土座下で片がつちゃう仁義調の世界観だけに、そこまでまじめに考える必要もないのかもしれないけれど、おバカな教訓譚が的を射る痛快さを楽しみにみてる方としてはちょっと残念だった。(麻生結一)

第4回(2006年5月6日放送)

☆☆
 16歳のはずだったユリカ(矢口真里)が実は名門女子大出身の23歳になる落ちぶれたお嬢様・西園寺麗華だったという設定を、奇妙なほどにリアルに感じさせたのはユリカを演じる矢口真里の存在に他ならない。ようやくイモコで遣隋使とベタな反応をする程度の教養はあるキャラクターが登場したか。部屋の書籍や方丈記を引用したりしたところをみると、国文科だったりした?
 人気アナウンサー・須藤雪絵(松本莉緒)がトレンドリポートと銘打ってエンゼルハートを取材したことで、ユリカが聖桜女子大学で雪絵と同級生だったことが判明するところから、サキ(戸田恵梨香)をかくまったキャバクラの手入れや、はたまた西部劇風にサキとユリカが格闘する工事現場でのエピソードを挟んで、ユリカを笑いものにするために雪絵が開いた同窓会にいたる流れまでは違和感なく見通せた。ただ、人間の心の痛みがわかる道具としてジェロニモ(古田新太)が航空便で送ってくれた(?!)、嘘をつく人に針を飛ばすサボテン、通称・オミトオシはいただけない。こういうドラえもん的な小道具をクライマックスに使っては、それまでの積み重ねが水の泡である。★一つ減点も、シンノスケ(藤木直人)が十二分にオミトオシをドラマになじませていたのも事実。
 そんなシンノシケがユリカに問う、今の自分か、昔の自分か、どちらをみっともないと思っているのか、という究極の質問がきちっとした人生訓としてストレートに響くのは、シンノシケがあまりにも無知かつピュアで、そんな教訓を意図していないキャラクターであるからだろう。そのあたりの逃げ方がうまいので、コンスタントに嫌味にならずに楽しく見られていい。(麻生結一)

第3回(2006年4月29日放送)

☆☆
 実は太りやすい体質であることにコンプレックスを持っている黒組リーダーのナギサ(新垣結衣)がエンゼルハートの代表・レミ(鈴木えみ)に対してライバル心むき出しに過度なダイエットを試みてギャルコンを目指すも、何事も額面通りに受け止めるスタンスがむしろ功を奏してきたシンノスケ(藤木直人)の導きが今回も見事にハマって、食べることは命の源であるという教訓に行き着く展開自体はもはや定番とも言えるものなので、終始安心しては見ていられた。ただ、ナギサの立ち位置が判然としないこともあって(ナギサに対するメンバーの評価のふり幅がそれほど大きくなかったりする)、前2話に比べるとらしい抜けのいい感じに欠けていたように思える。
 ナギサが150万円を隠したのが、レミの追い落としのためだけだったという理由にもちょっと拍子抜け。まぁ、その程度の理由でよかったとも言えるが。ごっこにとどまらず、骨の髄からマフィアノリだったら、それこそ怖いので。
 気に入ったのはギャルコンをめぐっての内部分裂が、大食いわんこそば大会でのレミとナギサの清々しい対決に化けるところ。ナギサが抱える若い女の子にとっての普遍的な悩みがさらに深まった末にこのオチになだれ込めば、もっと面白い話になったような気もするのだが、何はともあれ一ノ瀬(佐藤隆太)宅がインターネット常時接続になったのはよかった。(麻生結一)

第2回(2006年4月22日放送)

☆☆★
 細かいことを言い始めると奇妙なところもないわけではないが、全体的には門構えはおバカも、最後には教訓的なお話に落とし込む流れは第1話とほぼ同じ作りで安定している。のっけから説教臭くはやらずに、やんわりとまじめな方に持っていくこの調子を維持していただけると、安定したクオリティでそれなりに楽しめるドラマになりそうだ。
 クラブゼロでのパラパライベントのコスチューム代をメンバーから5000円ずつ、しめて150万円(ってことはエンゼルハートのメンバーは300人!)徴収するも、ラン(西田奈津美)が夜道にそのお金が入ったバッグをひったくられてしまう。総代表・レミ(鈴木えみ)に覚えのいいリカ(岩佐真悠子)を面白くなく思っているランは、とっさにリカをその犯人にしたてあげるも、リカは日頃から小銭借りの常習犯だけにそのことを誰も疑わない。みんなの気持ちを細かいものに使ったために、その罪深さは積もりに積もって150万円分の信用失墜、小銭のような小さなことだっておろそかにするなかれ、という教訓が入ったお話に、まだらのカラス製の偽物バッグに天罰がくだると固執するシンノスケ(藤木直人)も絡んできて、ちょっといい話に仕上がっている。
 面白いのは、ギャルサー内部のヒエラルキーがほとんどマフィアチックな仁義の世界みたいになってるところ。ただ、今話ではテレビ電話で登場するジェロニモ(古田新太)とシンノスケの面白トークの方がいかなる教訓譚よりもありがたかったりもする。アキバ系を現実社会とうまく関係を作れない男たちとは、あまりにもストレートな指摘なこと。(麻生結一)

第1回(2006年4月15日放送)

☆☆★
 日本で生まれて7歳まで過ごすも、その後アリゾナでインディアンになじんでともに生活したカウボーイのシンノスケ(藤木直人)とギャルサー(渋谷に集うギャルサークルの意らしい)たちの交流を描くと聞いて、ワンアイディアのドラマかと危ぶんだが、これが意外にも面白い。パラシュートで渋谷に降下するシンノスケが、代々木体育館横で300人の群れになってパラパラを踊る渋谷最大のギャルサー「エンゼルハート」のメンバーたちを見て、インディアンの娘の踊りと勘違いする冒頭からドラマのテイストは決定していて、その後も一貫してカルチャーギャップネタを基本にしたナンセンスの塊のような展開が続く。
 そういったおバカなノリとの対比になっているからこそ、「うざい」と「死ね」のセットの挨拶言葉を、イジメの対象になるシズカ(佐津川愛美)に対して使うサキ(戸田恵梨香)へのシンノスケの一喝が、ピリッとしたとスパイスに感じられたところだろう。あまりに説教臭くなられるのも困るが、若年層向けの枠であることを考えると、門構えのわりにメッセージ色が強かったりもするのもいいことかもしれない。
 シンノスケの友人である賢人・インディアンのジェロニモ(古田新太)があまりにもおいしい。(麻生結一)

ギャルサー

日本テレビ系土曜21:00〜21:54
製作著作:日本テレビ
制作協力:ケイファクトリー
プロデューサー:戸田一也、千葉行利
脚本:藤本有紀(1、2、6、9、10、11)、大野敏哉(3)、武田有起(4、5、7、8)
演出:岩本仁志(1、4、7、11)、佐久間紀佳(2、5、8、10)、南雲聖一(3、6、9)
音楽:池頼広
主題歌:『HEY! FRIENDS』藤木直人
出演:シンノスケ…藤木直人、サキ…戸田恵梨香、レミ…鈴木えみ、ユリカ…矢口真里、ナギサ…新垣結衣、リカ…岩佐真悠子、ヒメ…佐津川愛美、スミレ…奈津子、相川勇作…温水洋一、早川晶子…三浦理恵子、阿南健治、モモ…山内菜々、西田奈津美、松山まみ、森望美、斉藤友以乃、小山美香、成田舞、照井美樹、早美あい、丹野友美、長谷川愛、楯真由子、上脇結友、高瀬友規奈、廣田朋菜、里中裕奈、加藤理恵、岡村麻純、住吉玲奈、大森美希、川瀬南、内田ゆか、早坂美緒、加藤美佳、戸田れい、土谷守…高田純次、柳下恵美子…大島さと子、顔田顔彦、川村陽介、山下裕子、岸博之、村松利史、朱源実、村上靖尚、松田真知子、加藤虎之介、山上賢治、佐々木征史、水沢薫、松本莉緒、伊武雅刀、fumiko、塩山みさこ、猫ひろし、浅見小四郎、渡辺哲、西山繭子、大河内浩、銀粉蝶、前田健、はなわ、小林隆、杉上佐智枝、一ノ瀬誠…佐藤隆太、ジェロニモ3世…古田新太、柳下哲雄…生瀬勝久