西遊記

第3回(2006年1月23日放送)

☆★
 冒頭、屋根の上で居眠りする孫悟空(香取慎吾)とそれに唐辛子でいたずらする凛凛(水川あさみ)というシークエンスが、伏線として効いてくる中盤までは、このドラマと言い難いドラマにも少しはドラマらしいところがあったかと、少々評価を改めたくなった部分。人に夢を見させ、その代わりに現実を食らうという獏念和尚(石井愃一)が提示する、「つらい現実を生きる方がいいか、夢が叶ったかりそめの世界に生きる方がいいか」という命題自体がなかなかに興味深いものだけに、獏念和尚の「誰も悲しむ人などいないのです」という言葉に

悟空「いや、いる。明日だ。明日を生きていたはずの人たちだ」

と答えるあたりの悟空の直球さ加減は、なかなかに気持ちいいものだった。
 しかし調子が良かったのはそこまで。悟空が眠りに入ってしまった後、三蔵法師(深津絵里)が夢から目覚めてようとするあたりは、全くドラマ的仕掛けもなく興ざめ。夢の母(伊藤蘭)との別れのシーンなどはいかにも切なそうだが、そこに行き着くきっかけが何だったのかちっともわからない。
 やがて猪八戒(伊藤淳史)や沙悟浄(内村光良)たちも目覚め、さあ黒幕をやっつけようというときに、「早く逃げろ」と言う獏念の意外さは興味深く、そこに何か切ない裏でもあるのかと思いきや、もしかして単にアクションシーンを省略するためだったの?そこに老子(大倉孝二)がひょこひょこやってきてなんとなくオチつけて終わりじゃ、尻すぼみもいいところ。夢現寺から救われた他の人々のことを無視して幕を閉じてしまうあたりが、どんなにそれらしいメッセージを言ったって結局“明日を生きていたはずの(主人公以外の)人たち”のことなど考えていないって感じでどうにもすっきりしない。(安川正吾)

第2回(2006年1月16日放送)


 のっけから悟空(香取慎吾)と沙悟浄(内村光良)の子供のケンカみたいなやり取りを聞かされてうんざりしたのだが、それでふと思った。これはもしかして、フジテレビが総力を挙げて作っている「子供番組」なのではあるまいか。かつては夜9時といえば完全に大人の時間だったが、昨今は子供も余裕で起きている時間なわけだし。ああ、そういえば子供ってオシッコねたとか大好きですしね。最近は“大人の鑑賞に堪える子供番組”も増えているけれど、これは、古き良き“大人の鑑賞に堪えない子供番組”を予算をかけて作ろうという壮大なプロジェクトなのかもしれない。
 ……なんて戯れ言はこれぐらいにして、本編行きましょう。猪八戒(伊藤淳史)は豚ってだけで笑われたり妖怪ってだけで怖がられていたりするそうですが、そんなの見た覚えがないんですけど。こういう部分の描写を“すでに誰もがわかってること”としてはしょってしまうあたりが、この番組がドラマとは呼べないシロモノだと思ってしまう所以。その後の猪八戒の葛藤は、役者の好演もあって悪くはないのだが、冒頭の時点での感情の出発点がはっきりしないからどうにも乗り切れない。ロケ撮影のシーンなど、“きちんと作ってるなぁ”と思わせるところも全くないわけではないだけに、こういう基本姿勢がなんとももったいないと思う。(安川正吾)

第1回(2006年1月9日放送)


 三蔵法師が孫悟空のことを信じる信じないというエピソードは、三蔵法師と孫悟空の関係性がすでに描かれているという前提のもとで成り立つ話だと思うのだが、それを初回に持ってきた意味が全くわからない。というか、そんなふうにドラマとして真面目に批評するべき番組なのかどうかすら、今のところ確信を持てないのだけれど。色モノ企画が悪いとは全く思わないが、色モノをきちんと見られるクオリティの作品にするためには普通の作品を作る以上に大きな力が必要なわけで、今のところはそこまでのものだとは到底思えない。(安川正吾)

西遊記

フジテレビ系月曜21:00〜21:54
制作著作:フジテレビ
プロデュース:鈴木吉弘、澤田鎌作
脚本:坂元裕二
演出:澤田鎌作(1、2、3、6、11)、成田岳(4、5、8、9)、加藤裕将(7)、高木健太郎(10)
音楽:オリジナルサウンドトラック『西遊記』武部聡志
主題歌:『Around The World』MONKEY MAJIK
語り:永井一郎
出演:孫悟空…香取慎吾、沙悟浄…内村光良、猪八戒…伊藤淳史、三蔵法師…深津絵里、凛凛…水川あさみ、老子…大倉孝ニ、【以下ゲスト:第1回】仁丹…角野卓造、牛魔王…長江英和、杏花…夏帆、幻翼大王…木村拓哉、【第2回】妖泉大王…及川光博、春麗…酒井若菜、冬麗…三浦理恵子、夏麗…金子さやか、【第3回】恵泉…伊藤蘭、獏念…石井愃一、円仙…近江谷太朗、【第4回】金魚…須藤理彩、岩傑…武藤敬司、お水様…半海一晃、【第5回】紅蟻夫人…高橋ひとみ、純純…吉武怜朗、明明…松尾瑠璃、童童…淵上孔貴、雲呑…松岡和暉、【第6回】修周…成宮寛貴、冥蘭…釈由美子、【第7回】蓮歌&偽蓮歌(二役)…手塚理美、大福…酒井敏也、【第8回】紅孩児…石井正則、【第9回】羅刹女…大地真央、混世魔王…松重豊、翆玲…いしだあゆみ、【第10回】犬魔将軍…デビット伊東、鶴林…谷津勲、羅刹女…大地真央、【第11回】赤雲…山下真司、李玉…篠井英介、お釈迦様…堺正章