輪舞曲

第11回(2006年3月26日放送)


 ユナ(チェ・ジウ)が作っていたという「日本のすべての金融機関のデータをゼロにするプログラム」、先週はまだネタ気分で笑っていられたが、最終回を引っ張るのがこのプログラムが稼働するか否かという点になるのであれば、この説得力のなさは致命的。出演者やロケなどには並以上のお金をかけているのだろうに、どうしてこういうところだけはかくもイージーに済ませてしまうのか、いや、済ませることができるのか、もはや憤りすら感じてしまう。冒頭で、伊崎(石橋凌)が残していたという封筒1通であっという間に金山(竹野内豊)が警察官としての身分を回復してしまうのも呆気に取られるところで、なぜその封筒が出てくるのがそこまで遅れたのかの説明もないままでは、ここ3回ぐらいの金山の身分を巡る話はいったい何だったのかと思わずにいられない。
 こうなるともう全てがずるずる状態。ユナが龍吾(速水もこみち)にさらわれてプログラムを完成させるように命じられるあたりも、いくら龍吾が「(宋を)見返してやる」とか言ったって宋(橋爪功)をアシストしてるようにしか見えないわ、ネットワークにつながったパソコンを大した見張りもつけずに人質に使わせてるわ、ユナは馬鹿正直にプログラムを進行させてるわ、そこに現れた宋は「そこまで出来ていれば私でも引き継げる」となぜかプログラムの進行具合を把握してるわ、“間違い探し”ゲームかというぐらいおかしなことだらけ。こんなシークエンスの締めで殺されたんじゃ、ヨンジェ(シン・ヒョンジュン)もわざわざ韓国から来た甲斐がないってもんです。
 その後の、宋が風間ホールディングスのビルのどこかに潜んでいるという話にしろ、風間(杉浦直樹)に教えられるより先に捜索してるはずでしょうって話だし、金山が風間ビルのことをよく知ってるからって“単身で”乗り込んでいく理由には全くならないし、風間が脱獄して風間ビルに来るのはいいとしても、ビルの前にいる刑事がその連絡を受けて「(風間が)このビルの中に入っていったらしい」って台詞は、それ誰が見たのよ、そもそもどうして出入り口を固めてないのよって感じだし。もっとも緊張感が高まるはずの、宋が完成したプログラムを稼働させるかさせないかというシーンにしても、宋はノートパソコンを前にさんざん前口上を述べてしかも電話にまで出ちゃうって、これじゃ緊迫しろってほうが無理。「アンフェア」のレビューでも似たようなことを書いたが、「プログラムが稼働するかもしれない」と作り手が本気で思わせようとしていないのが見え見えなこの状況を、どのように楽しめと言うのだろうか。
 そしてクライマックス、宋は風間に撃たれ、風間は龍吾に刺されてドラマから退場。龍吾が風間に「初めて抱いてくれたな」と言うのは一瞬切なくもあるが、見る側としてはそういう台詞に感動する心持ちではすでになくなっているというのが正直なところ。風間に撃たれて瀕死の金山が、ユナに抱きかかえられて倒れるという展開も全く心を動かすものではなく、案の定ラストシーンではフツーに金山は生きてるわけで。ラストでプラスアルファが感じられた部分と言えば、犬が2匹に増えてたことぐらい!?ここまで完膚無きまでに穴だらけの展開をされると、元々そういうのを狙ったドラマだったのかとも思いたくなるが、テイストから見てやはりそういうわけでもないんでしょうしね。
 現場は多くの韓国人俳優を迎えてきっと大変だっただろうし、ロケの多さ、さらにアクションシーンを多く盛り込んだあたりも考えるとその苦労は相当なものだっただろう。しかし、ドラマとして最終的に行き着くところがこれでは、全体としての評価は渋くならざるを得ない。(安川正吾)

第10回(2006年3月19日放送)

☆★
 ユナ(チェ・ジウ)はユニ(イ・ジョンヒョン)の手術同意書にサインするための“特別措置”で、金山(竹野内豊)は“韓国警察お墨付きの偽造パスポート”で、あっさり日本へとんぼ返り。どちらもヨンジェ(シン・ヒョンジュン)の計らいということなのだが、もうツッコミを入れる気にもなれず、こんな状況をもっともらしく演じなければならない役者の苦労を思うのみ。金山の母・恵子(風吹ジュン)が、ユナに子供の頃の写真を見せるあたりなどは、日韓涙の女王対決といった趣きで情感が高まったりもするが、刹那に終わる。これまで切実ならざるドラマを繰り広げてきたツケはもはやいかんともしがたい状態のようで、こうなると何が起ころうと、どんな思わせぶりな台詞が出てこようと、ドラマ的な面白さを感じることができない。
 それにしても、ユナが作っていたプログラムが「日本のすべての金融機関のデータをゼロにするプログラム」とは、ナンセンスマンガ並みのわかりやすさで笑ってしまった。もしかして作り手からして、「もうどうでもいいやこんなドラマ」とか思ってませんか、これ。(安川正吾)

第9回(2006年3月12日放送)

☆★
 宋(橋爪功)は「これ以上ここは危険だ」と言ってユナ(チェ・ジウ)を韓国に帰らせるのだが、ユナを逃がすためなら瞬時に偽警察さえ稼働できる宋が一体何を危険だと思い、ユナをたった一人で帰国させるのやら。後追いでヨンジェ(シン・ヒョンジュン)をボディガード役に指名し送り込むも、その直後にヨンジェがモグラであることを知り大あわてって、神狗のかつてのボス・風間(杉浦直樹)さえ欺いたお人にしてはずいぶんと隙が甘いことで。だいたい、ユナが“プログラム”が完成したというのならともかく、「残りの作業は韓国でも出来る」なんて都合のいい言い訳をされると、そもそもどうしてユナを日本に呼んだのかすらわからなくなるんですが。
 ともあれ韓国に帰ったユナを金山(竹野内豊)は当然のように追うのだが、これもその行動の理由を考えるとわかったようなわからないような感じ。もちろん八百屋の鉄平(塩見三省)に「ユナちゃんとユニ(イ・ジョンヒョン)ちゃんを救ってやってくれ」と頼まれたのが理由の一つってことなんだろうだけど、そもそも金山が追ってるのは神狗の犯罪だったんじゃないの?先週あたりから、単なる「ユナの追っかけ」になってるような。しかしまあ、指名手配されてる人に向かって、韓国に行けと暗に言う鉄平も鉄平ですが。
 最終的に、ユナ自身も知らなかったユナの素性が明かされる前段階として、24年前に爆発事件が起こった「オーシャンキャッスルホテル」にユナを行かせる必要があったのはわかるし、テレビ番組としてはこのあたりで韓国ロケが入るのは全く悪くないことなのだが、そこに至るまでの必然性がまったく希薄であるが故に、物語からは求心力がどんどん失われていく。こうなるとユナの素性に関しても、登場人物達がショッキングなことのように語る割には、見ている側は「へー」ぐらいの感慨しか持てない。エピソードの冒頭とラストで必ず、ドラマの主役であるところの美男美女が相対して美しく映し出されるあたりはいつも目を奪われるけれど、それだけではもはや保たない。
 以下蛇足。韓国に帰ったユナに話しかけてくる昔なじみのおばさん役で、「冬のソナタ」ではチェ・ジウの母親役だった女優さんが登場。そのちょっと前にユナが眺めていた学校も、「冬のソナタ」で出てきたあの学校だった。ちょっとした遊び心のつもりかもしれないが、意地悪く言えば「尻馬に乗ってる」とも取れるわけで、日本で韓国がらみの企画をやると、やはりこうならざるを得ないのだろうかという嫌な気分になった。単純に「面白いドラマ」であるのなら、そんな要素はむしろ邪魔になると思うのだが。(安川正吾)

第8回(2006年3月5日放送)

☆☆
 殺人の濡れ衣を着せられて指名手配されることになった西嶋あるいは金山(竹野内豊)は、自分の警察官としての身元を証明する唯一の手がかりである伊崎(石橋凌)のパソコンのデータはあきらに任せ、自分はユナを追う……かね!?なんか優先順位が間違ってる気がするんだけど。まあその甲斐あって(?)データは、あきら(木村佳乃)のまったく見せ場のない奮闘の末に消されてしまうのだが、パソコンのハードディスクの中にデータがあったんだとしたら、ネットワークを介して消す意味ってあるんだろうか。「アンフェア」の安藤(瑛太)がいたら一発で復活してくれそう……というのは冗談としても、“同期のよしみ”で故人のパソコンを使わせてくれるようなセキュリティゆるゆる組織なら、ハッキングなんかするよりも誰かが忍び込んでパソコンごと盗んだ方が早いんじゃないの。
 とまあ、いきなり重箱ツッコミから始めてしまったが、まぁ神狗の犯罪がらみの描写がまったくリアリティに欠けているのは今までもそうだったので、もうこれはあきらめるほかないという心境。その分、金山とユナ(チェ・ジウ)の、ビルの屋上での会話あたりが切なくて良いのも相変わらずだし、母親役の風吹ジュンが短い登場ながらしっかりと場をかっさらっていくのももはやお馴染み。結局のところ、いい部分も悪い部分も、最初からほとんど変わっていないと言うことか。今回評価するべきところが増えたとすれば、かなりの量の台詞を韓国語で演じてしまった宋役の橋爪功の奮闘ぶりってことになるだろうけど、ただそれと引き替えのように、他の人はすべて「韓国人は韓国語を話し、日本人は日本語を話す」形式でそれなりに通じてる風の描写になってしまったのは、以前に挙げた「言葉の壁をきちんと描いている」良さがなくなったとも思えて、残念なところだった。
 それにしても、ユニ(イ・ジョンヒョン)が送った携帯に録音されていたわずかな歓声から、それが横浜みなとみらいだと探り当てる金山はすごいなあ(それが手がかりになると思って送りつけるユニもすごいけど)。舞浜や浅草に行っちゃわなくてホントによかったね。ちなみに最後の、遊園地で金山とユナが銃を向け合うシーンで実際に撮影が行われたのは富士急ハイランドだったようで、ユナがホテルの窓から見た時には輝いていたコスモクロック(みなとみらい名物、観覧車に付いているデジタル時計)が、下から見た時にはなくなっていたのにはそういう理由があったんですね。(安川正吾)

第7回(2006年2月26日放送)

☆☆
 ユナ(チェ・ジウ)の父親の行方を探りたい金山(竹野内豊)が、前回かけられたモグラ疑惑はどこ吹く風であっさりと神狗に再潜入できてしまうあたりの大味かげんは相変わらず。結局、金山がモグラであることは程なくバレてしまうのだが、これはつまり、実は宋(橋爪功)と通じていたユナが暴露したという解釈でいいんですよね?その暴露がなぜに(ユナがそれを知ってすぐではなく)このタイミングかは全くの謎なれど、話が進めば納得できる理由が示されるのだろうか。
 ともあれ、それによって金山(というか西嶋)の弟分・ヒデ(佐藤隆太)が金山に銃を向けることになるのだが、これが彼の最初で最後の見せ場と言ったところか。考えてみればこのキャラクターもずいぶんと切ないのだが、存在感があまりにも断片的で、金山へ向けた銃をぎりぎりで龍吾(速水もこみち)に向け変えるその行動が心を打つまでには高まりきれない。切なさということで言えばむしろ今回は、琴美を演じる市川由衣が、父親である風間(杉浦直樹)への想いを語るシーンで、短い台詞にまことに見事な説得力を持たせていたのが印象に残ったか。
 ラストで、自分は宋の娘で金山を愛したことなど一度もない、という言葉と共に冷たい表情を見せるチェ・ジウにも確かにゾクゾクしたけれど、こちらの方は「ああ、やっぱりそういう話にしちゃったのね」という失望も半分。「黒社会モノ」としてはツッコミどころだらけでも、「恋愛モノ」としてある種の雰囲気があったのが前半部の美点だったのだが、その「恋愛モノ」部分が「黒社会モノ」に浸食され始めたようで。(安川正吾)

第6回(2006年2月19日放送)

☆☆
 前回の印象があまりに悪いにしろ、のっけから美男美女が切ない別れを繰り広げれば、見惚れてしまうのが人情というもの。相変わらずユナ(チェ・ジウ)が絡むと画面がしっとりとして、全くもって悪くない。前回はよくわからなかった、二人がお互いの言葉をどう理解しているのかって点も、これぐらい丁寧にやってくれればちゃんと理解できる。第1回のレビューでも書いたが、この作品で他の“日韓モノ”より確実に評価できるのがこの、言葉の壁をきちんとドラマの中に組み込んでいる点。ただそれが、物語そのものを高めるまでになっていないのはいささか残念なことなのだが。
 さて本編。西嶋改め金山(竹野内豊)が部屋のPCに残した証拠の画像が不自然に加工されてる意味不明な趣向には苦笑しつつも、金山とヨンジェ(シン・ヒョンジュン)が互いをモグラだと宋(橋爪功)に告げるあたりはなかなかにスリリングで、ようやく“潜入捜査官もの”ならではの面白さが出たかと思えたところ。ところがその後、伊崎(石橋凌)たちが神狗の偽札工場=貨物船に踏み込むことになる急展開自体はいいとしても、どうして金山があっさり解放されているのかは全く理解できない。さらに、逃亡したとか大騒ぎな割に全然“逃亡”してない風間(杉浦直樹)と金山が1対1で対峙するシーンは、ドラマ的に必要だったことはわかるのだけど、伊崎がわざわざ金山にそこに行くよう指示するというのも、これまた理解不能な話。それにしても、警察に入り込んでいた神狗のモグラがバレる部分はえらくアッサリ風味でしたね。
 ともあれ風間という巨悪が検挙され、金山の任務は一段落。ユナとのキスは大いに結構なれど、警察官としての身分がまだ復活していない金山と伊崎が、人目もあるはずの件の貨物船にわざわざ行くってのが、またしても理解不能。ここで伊崎が見せる父親のような表情や、突然銃撃され倒れた伊崎に思わず「しゃべんないでよ!」と息子のようなタメ口を利く金山なんていうシーンは良かっただけに、もう少し自然な形でこのシチュエーションへ持って行ってはくれなかったものかと思う。
 お話の方は、その貨物船でなぜかユナのペンダントが見つかったことをきっかけに更なる急展開(予定)……といったところだろうが、さらに破天荒な話に成り果てないことをひたすらに願う。(安川正吾)

第5回(2006年2月12日放送)

☆★
 偽札を運搬していると思しきトラックを西嶋(竹野内豊)自ら車で尾行なんて、どう考えても「潜入」してる人のやることじゃないと思っていたら、それが原因で伊崎(石橋凌)から潜入捜査官を解任されたところを見ると、どうやら作り手にもそれはわかっていたみたい。しかし、9年間我慢してきたと西嶋は言うけれど、視聴者的にはその「我慢してた」印象が全くないわけで、それ故に、全てを捨てて風間龍一郎(杉浦直樹)を殺そうとするその後の展開にケレン味が生まれてないのが勿体ないことこの上ない。しかもその、風間を殺そうとしている現場近辺にピンポイントで駆けつけるあきら(木村佳乃)って一体何者?実は彼女こそが神狗側のモグラだったとか!?母親・恵子(風吹ジュン)との感動の再会も、こんななし崩し的シチュエーションじゃ切なさ半減。
 冒頭とラストにしか絡みがない西嶋とユナ(チェ・ジウ)は、フツーに日本語と韓国語で話してますけど、これって未だに「言葉はほとんど通じてないけど、その表情でなんとなく心情だけをわかりあってる」みたいな解釈でいいんでしょうか。ユナに関しては、日本語を多少わかるようになってきているような描写があったけれど、西嶋は?そのあたりがきちんと提示されないので、二人の関係の深まりをどう捉えるべきなのかよくわからない。こうなると、言葉は通じるのにその想いはいびつな形でしか伝えられないヨンジェ(シン・ヒョンジュン)とユナの関係のほうがずっと切ないものに思えてしまったりして。
 物語の歯車が毎回少しずつズレた結果、その軋みが看過できないところまで来てしまってるような気もするのだが、さて、後半でどう持ち直してくれるのだろう。(安川正吾)

第4回(2006年2月5日放送)

☆☆
 あっさりと携帯に盗聴器つけられちゃうような伊崎(石橋凌)が警察側の窓口なんじゃ、そりゃ西嶋(竹野内豊)だって信じられなくもなりますよねぇ。さらに、偽札工場から逃げ出した崔なる人物と潜入捜査官の命を交換て、交渉の俎上に乗りようもないくらいラフな取引がもっともらしく語られてる部分でも目が点になる。とまあこんな具合に、神狗がらみのシチュエーションは相変わらずツッコミどころ満載で、これだけなら「アンフェア」といい勝負。しかしそれを救っているのも相変わらず、ユナ(チェ・ジウ)が登場するシーンで、特に西嶋との秋葉原デートのあたりでは一気にここちよいモードに持って行かれてしまった。片言の日本語が微笑ましいというのはあるとしても、やはり力のある女優さんなのだろう。
 今回は、いつもより“チェ・ジウ分”が多めだったおかげでかなり見やすかったことは確かなのだが、それでもやっぱりこの企画の半分が失敗している(ように現状では見える)ことには変わりない。ホント、今からでも大幅に路線変更して、黒社会ネタなしで切ないラブストーリーやってくれないだろうか。(安川正吾)

第3回(2006年1月29日放送)

☆☆
 チラシで一瞬見ただけの電話番号を、逆さから書かれても一瞬で照会できてしまう西嶋(竹野内豊)、って部分については、「そういう訓練を受けたプロフェッショナルな人」だって思うこともできなくはないけれど、そんなプロフェッショナルな人である割にはあっさり情にほだされて印刷工・小林(平田満)の説得をしてしまったりするあたり、なんだかちぐはぐというか、この主人公の「潜入捜査官として守っているライン」がどうにも見えづらい。モグラ騒ぎなんてどこ吹く風、とっても自由奔放に行動してるようにしか見えないと言うか。だいたいあの状況で「自首」に意味を求めて極秘任務中の自らの身を危険にさらすのも、潜入捜査官としてはセンチメンタルすぎる。どうやらこのドラマ、“黒社会モノ”としての面白さは諦めたほうがいいようだ。前回分でも書いたようにユナ(チェ・ジウ)がらみのシーンは情感があって悪くないのだけど、西嶋の任務の厳しさが描けていないがゆえに、言葉が通じないからこそ西嶋はユナに懺悔をすることができるというラストシーンの切なさも弱まっている印象。小林とその息子に関する描写は心に残るが、だったら最初から黒社会なんて話抜きでこっちの路線で行ってくれればよかったのに。(安川正吾)

第2回(2006年1月22日放送)

☆☆
“凝った”映像はずいぶん大人しめになって、多少は見やすくなったのだけれど、それでも今回のヤマ場であるところの、西嶋(竹野内豊)が殺された女性の遺体を見つけようとするシークエンスは、ウソのメールを送るあたりからしてちょっとわかりづらすぎるような。個人的にはこういう、映像に集中していないとすぐにわからなくなる感じは嫌いではないが、ディティールが伴わなければ、「辻褄が合わない部分をごまかしてる」ように見えてしまう。今回にしても、龍吾(速水もこみち)の過失致死程度の立件を、巨大犯罪組織神狗への長年の潜入捜査の成果としていいのかという点には大いに疑問がある。とにかく龍吾を引っ張ればいいってんなら、潜入捜査なんてしなくてもいくらでも方法はありそうなものだし。こういう展開があると、そもそも西嶋が何を目的として潜入してるのかすらわからなくなるのだけど(とりあえずは偽札が問題なんじゃなかったっけ? 違った?)。ユナ(チェ・ジウ)とのぎこちないやり取りが、言葉が通じないからこそ少しずつ信頼へと変わっていく様子や、風吹ジュン演じる母親をぬか喜びさせてしまうシーンの切なさなどは悪くないだけに、“・u梺jたちの駆け引き”の部分ももう少し頑張っていただきたいところ。
 ちなみに西嶋が“罠メール”を送った龍吾の携帯は、指紋認証でセキュリティ万全が売りのあの機種でしたが、スポンサー的にクレームが出ないんでしょうか。余計な心配だけど。(安川正吾)

第1回(2006年1月15日放送)

☆☆★
 この枠でのサスペンス色の濃いドラマにはあまりいい思い出がないのだが、意外にもというべきか、TBS入魂の作品だけにというべきか、1回目としてはいい出来だったのでは。日韓モノだとどうしても通らなければならない“言葉の壁をどう処理するか”という点においても、簡単に解決させずむしろそれをドラマ的な動きに転化したあたりは好感が持てる。ただ気になるのはやはり、えらく“凝った”ふうの映像がどうにも見づらいこと。こういう話なら、もう少しスタンダードな見せ方をしてもいいように思うのだが。(安川正吾)

輪舞曲

TBS系日曜21:00〜21:54
日曜劇場
製作著作:TBS
制作:TBSテレビ
制作協力:イェダンジャパン
プロデュース:植田博樹、吉野有子
脚本:渡邉睦月
演出:平野俊一(1、2、6、7、10、11)、生野慈朗(3、4、8)、山室大輔(5、9)
音楽:菅野祐悟、KREVA
音楽プロデューサー:志田博英
主題歌:『I believe』絢香 ayaka、『さよなら3』RUI(イ・スンチョル)
出演:西嶋ショウ(金山琢己)…竹野内豊、チェ・ユナ…チェ・ジウ、一ノ瀬あきら…木村佳乃、風間龍吾…速水もこみち、風間琴美…市川由衣、キム・ヨンジェ…シン・ヒョンジュン、チェ・ユニ…イ・ジョンヒョン、金山恵子…風吹ジュン、伊崎吉彦…石橋凌、菅田俊、光石研、二反田雅澄、正名僕蔵、竹財輝之助、工藤俊作、木下政治、立川絵里、リュウ・ヒジュン、松平鉄平…塩見三省、松平富士子…岡本麗、吹越満、宝積有香、吉田さん…ムッシュかまやつ、モユカ…ベッキー、戸田雅人…ウエンツ瑛士、鶴田忍、半海一晃、森下千里、斉藤慶太、白石みき、くわばたりえ、平田満、冨浦智嗣、佐戸井けん太、中丸新将、佐藤寛子、松岡日菜、山田萌々香、田島健吾、ヒデ…佐藤隆太、宋圭煥…橋爪功、風間龍一郎…杉浦直樹