出雲の阿国

第1回「かぶく女」(2006年1月13日放送)

☆☆
 駆け落ちして命を落とした母親のように決してかぶいてはいけないという言いつけを守っていた阿国は、16歳の秋に百姓の踊りの一座に加わって出雲を旅立つ。歌舞伎の創始者としてよく知られている出雲阿国を描いた今ドラマ第1回の最大の見せ場は、大坂の天満宮で雑踏にもみくちゃにされている中で、何かにとり付かれたように阿国が踊り出す場面だと思うが、肝心要のその踊りに今一歩ピンとこない。言い回しとしてのこの場面ならば大いにそそられたかもしれないが、映像になってしまうとそうもいかないところが難しい。
 その様が関白秀吉のお伽衆・大村由己梅庵(織本順吉)の目に留まってお抱えになり、客人の前で踊ることになる阿国。すると、いきなりに登場した鼓打ちの三九郎(堺雅人)が阿国の踊りに触発されて鼓を打ち鳴らし始めたものだからさぁ大変。運命のコラボレーションがはじまったかと思ったら、程なくして三九郎と愛欲に身を焦がす阿国。
 ふしだら=かぶくとのキーワードが何度となく語られる中に、恋に生きた母が幸せだったと実感することで、ふしだらでもかまわないと開き直ってかぶく宣言するあたりは、このドラマの方向性が全開になっていたように思える。(麻生結一)

出雲の阿国

金曜時代劇
NHK総合金曜21:15〜21:58
制作・著作:NHK大阪
制作統括:谷口卓敬
原作:有吉佐和子
脚本:森脇京子
演出:渡邊良雄(1、4)、中寺圭木(2、5)、櫻井賢(3)
音楽:牟岐礼
語り:益岡徹
出演:阿国…菊川怜、三九郎…堺雅人、傳介…鈴木一真、九蔵…津田寛治、お菊…原田夏希、お加賀…尾上紫、おあん…石橋奈美、近衛前子…星ようこ、松平秀康…中川浩三、鑑貞…福寿淳、三右衛門…蟷螂襲、勘じ…趙a和、お寧…佐藤綾、お加音…福山亜弥、お千代…小林桃子、お松…櫻谷由貴花、守口のお婆…松村康世、お松…酒匂美咲、鹿蔵…藤井樹、お婆…新屋英子、阿国の母…出口結美子、阿国の父…桜木誠、阿国(5歳)…中山心、お菊…田中美悠、お美代…平尾友香、村年寄…木元としひろ、百姓…内藤和也・新藤浩、名護屋山三郎…永澤俊矢、末吉勘兵衛…堀内正美、大村由己梅庵…織本順吉