功名が辻

第40回「三成暗殺」(2006年10月8日放送)

☆☆★
 果たして豊臣方、徳川方のどちらにつくかの選択を迫られる緊迫した回になるはずも、そこに程よくかわいらしさを散りばめた語り口はなかなかに人を食った面白さがあって、まさに巧妙であった。
 秀吉(柄本明)亡き後の世の中に対して、嫌な予感を連発する千代(仲間由紀恵)によって、なかなか膳を口に運べない一豊(上川隆也)が先陣をきってかわいい。婚姻禁止の遺訓をあっさりと破ってしまう家康(西田敏行)の様を「猿芝居」と評して三成(中村橋之助)ににらまれ、慌てて「狸芝居」と言い直す中村一氏(田村淳一)もちょっとかわいい。2人に遅れをとらじと、家康に詰問するはずが、その居住まいから醸しだされる老獪さに言葉も出ない堀尾吉晴(生瀬勝久)も追い討ちをかけてかわいい。ただ、臨席中に一豊、千代が赴いたために、席をはずそう家康を呼び止める寧々(浅野ゆう子)のかわいげはちと芝居じみていたか?!
 さてさて、山内家はどちらにつくか千代の腕の見せ所と茶化す六平太(香川照之)に対して、

千代「面白そうに言わないで!!!!」

と語気を荒げる千代こそが、当然もっともかわいかった。
 福島正則(嵐広也)、加藤清正(金児憲史)の挙兵されるも、一豊に救われた三成がその知恵の働かせて家康の屋敷に逃げ込むまでの攻守入り乱れた展開はそれはそれで見ごたえがあったが、一豊に下駄を預けられて、結局どちらにつきかの結論を先延ばしにする千代の家康並の狸ぶりに1本とられた格好だ。(麻生結一)

第39回「秀吉死す」(2006年10月1日放送)

☆☆★
 主役が主役然とするのみで評価が上がってしまうのは、かの大河ドラマじゃなくったって奇妙な話だが、歴史の本流からなかなか外れようとしてくれない今作にあって、2話連続で千代(仲間由紀恵)の出番が多いとくれば、ついに軌道修正は果たされたかと残された3ヶ月弱にちょっぴり期待してしまったり。
 副題の通り、「秀吉死す」が第39話の全編を通じての本流であったが、秀頼の元服式からきっちりと山内家の跡目話に還元されるあたり、立派だった第38話の余波を引き継いでの正しい展開だ。お家に騒動をもたらさぬためにも、どうしても嫡男こそが必要と、心ならずも一豊(上川隆也)に侍女・美津(星井七瀬)をあてがう千代(仲間由紀恵)の心情はあまりにも痛々しいも、それを断固として拒み、千代への純愛を真っ当する一豊(上川隆也)は、これまでにも増して好感度がアップしたことだろう。
 寧々(浅野ゆう子)への忠誠が堅い千代を恫喝してみたり、死の床につく秀吉の耳元で、お市の声帯模写よろしく秀吉を呪ってみたりと毒を吐き続ける淀(永作博美)が、いよいよ悪魔的な本領を発揮してきた。唐沢寿明は主演作の『利家とまつ』再びとばかりに前田利家役で特別出演。もう少し見せ場があってもよかった気もするけれど。(麻生結一)

第38回「関白切腹」(2006年9月24日放送)

☆☆★
 これまでの中でもベストの出来ばえの1話。秀次(成宮寛貴)の死がきちっと山内家の話に還元されているあたり、これぞこの大河の有り様と思った。かつて守り役だった大前提ゆえ、一豊(上川隆也)が秀次に対して、伏見の秀吉(柄本明)のもとへ急ぎ申し開きにたつよう言上する一触即発の場面に千代(仲間由紀恵)が唐突に飛び込んでいったとしても、ひっくり返るような違和感はなかった。このあたりは、とりあえずはいたるところに首を突っ込んでいた『利家とまつ』のまつ(松嶋菜々子)ようなデララメさとは違って、好感が持てるところだ。
 秀次の死がフィードバックされた形で、一豊と千代が拾(泉澤祐希)に仏門に入るように命じる場面にはグッとこみ上げてくるものが。拾を送り出す際の、言葉にならない千代の沈黙がいい。仲間由紀恵の千代もいよいよ極まってきた感じである。また、善良な人間味がにじみ出るゆえに、一豊が口にする功名に対する初めてのネガティブスタンスもいっそう説得力あった。(麻生結一)

第37回「太閤対関白」(2006年9月17日放送)

☆☆
 のちの秀頼誕生で関白・秀次(成宮寛貴)の立場が危ぶまれるにつき、秀次の宿老である一豊(上川隆也)の出番は若干回復するが、基本的には思い悩む方が主で台詞は少なめ。秀次の本心を伝えるべく、千代(仲間由紀恵)は寧々(浅野ゆう子)にその旨懇願するも、太閤、関白両陣営の動きをちゃんと把握しきれておらずに、結局スタンドプレイにとどまるあたり、このドラマ同様にちょっと哀しくなる。産着を繕うのが関わりの精一杯とすると、少なくとも歴史の本流を描こうとするならばそれではドラマにならないか。別の方法もあったはずなのだけれど……。
 ここ数週に渡って圧倒的な露出度、かつ怪演を披露している秀吉役の柄本明こそが現時点での実質的な主役であることは誰の目にも明らか。脚本、演出もそれなりに手堅いのだけれど、いつの間にやらまたしても秀吉物を見せられていたかと思うと、ちょっとだまされたような気分になってしまう。(麻生結一)

第36回「豊臣の子」(2006年9月10日放送)

☆☆
 鶴松の死に朝鮮出兵と、このドラマのタイトルが『秀吉』であるならば、何ら不満はない。実に折り目正しく歴史が追いかけられていけばいくほどに、千代(仲間由紀恵)の出番が激減していくのも、そういう方向性を志向するのであれば、もはや致し方ないことかもしれない。このあたりが歴史の本流をはずすことが許されない大河ドラマの限界であろう。(麻生結一)

第35回「北条攻め」(2006年9月3日放送)

☆☆
 死の床にある旭(松本明子)と元夫で今は商人に身をやつしている副田甚兵衛(野口五郎)を引き合わせる段で千代(仲間由紀恵)の奮闘はあるも、主筋が北条攻めの方にあるのはいつもの調子なので、もはや失望もしない。
 秀吉(柄本明)と家康(西田敏行)の掛け合いはさすがとしか言いようもなく、関東の連れ小便もきっちりやってくれるのだが、そういう逸話が千代主演のドラマに必要であるかどうかは、大いに疑問である。(麻生結一)

第34回「聚楽第行幸」(2006年8月27日放送)

☆☆
 鶴松を出産した茶々(永作博美)と三成(中村橋之助)がいっそうに妖気の世界を彩るも、逆に捨てられていた赤子に拾(ひろい)と直球な名前をつけて育てる決意をする千代(仲間由紀恵)にはまたもや見せ場なしで悲しい。
 武闘派・一豊(上川隆也)が世話役に四苦八苦する聚楽第行幸において、秀吉(柄本明)に導かれた後陽成天皇役の柄本時生は、柄本明さんの息子さんだそうです。(麻生結一)

第33回「母の遺言」(2006年8月20日放送)

☆☆
 寝込んだと思ったら、程なく法秀尼(佐久間良子)が逝去。法秀尼の最後の言葉は千代(仲間由紀恵)の回想より(なぜこういう構成だったんだろう?)。

法秀尼「お互いの異なる性分を尊びなされよ」

反目する一豊(上川隆也)、康豊(玉木宏)の兄弟の魂にこの含蓄あるメッセージは大いに響くも、史実を超えた佐久間良子と西田敏行の『おんな太平記』コンビのツーショットはさすがに実現しなかった。残念。
 千代(仲間由紀恵)らがハモるほどにねね(浅野ゆう子)が頼もしいことが強調される井戸端会議風あたりはこのドラマならでは。もっとこういうのこそあればいいのにと思うが、こればっかりだと『大奥』、もしくは再来年の大河『篤姫』になっちゃうか。
 秀吉(柄本明)は九州制定、バテレン追放、そしてついに茶々(永作博美)を落城?! 茶々と三成(中村橋之助)の掛け合いだけが、別テンションに妙な妖気がたちこめてるのがちょっと面白い。(麻生結一)

第32回「家康の花嫁」(2006年8月13日放送)

☆☆★
 秀吉(柄本明)がなかなか上洛しようとしない家康(西田敏行)を手を変え品を変えで大阪に呼び寄せようとする話は、ドラマ的にも手を変え品を変えで繰り返し見せられてきたものだが、今回はひたすらに家康演じる西田敏行の腹芸には参った。
 当然、千代(仲間由紀恵)と一豊(上川隆也)の活躍にもスポットは当たるのだが、妹・旭(松本明子)の救出作戦に何となく失敗する千代は不完全燃焼気味。旭に引き続いて秀吉の人質になる大政所(菅井きん)の、

「婿殿!」

ってのが今話の裏ツボだったりして。これは確信犯に違いない。(麻生結一)

第31回「この世の悲しみ」(2006年8月6日放送)

☆☆
 天正の大地震によって、千代(仲間由紀恵)と一豊(上川隆也)は愛娘・よね(森迫永依)を失う。避けがたい天災は史実として、すでに死の影が漂っていた康豊(玉木宏)との虫かごのコオロギの話あたりがもっともしみじみとさせるところだったか。
 京の町で、千代に死の有り様に関する切支丹の教えを説くせつ役で、おきれいな石川さゆりが唐突に登場したのにはビックリ。その後、南蛮寺では玉(長谷川京子)に遭遇。千代、玉のツーショットはこれが最後かな。(麻生結一)

第30回「一城の主」(2006年7月30日放送)

☆☆
 天正13年(1585年)7月、一豊(上川隆也)はついに長浜二万石の城主になり、曇りのない幸せの絶頂を迎える。一豊、千代(仲間由紀恵)、新右衛門(前田吟)がこぞって今は亡き吉兵衛(武田鉄矢)に思いをはせるあたりはじわっとくるところ。
 負けじと法秀尼(佐久間良子)が行方不明の康豊(玉木宏)に思いをはせると、タイミングよく康豊が再登場。あっさりと兄弟の和解まで果たしちゃう。その半ば、二度ほど話を遡ったりしてると、いつの間にやら味土野で幽閉中の玉(長谷川京子)メインのお話に。麗しくも妖気が漂う玉に秀吉(柄本明)が鼻の下を伸ばしたというエピソードは寧々(浅野ゆう子)の噂話風に締めくくられて、よくよく振り返ってみると大変複雑な構成になっていた第30回だった。(麻生結一)

第29回「家康恐るべし」(2006年7月23日放送)

☆☆
 「家康恐るべし」の副題通り、小牧長久手の戦いでは秀吉(柄本明)以上に家康がやり手だったというお話と、長久手で家康に惨敗した秀吉の甥・秀次(成宮寛貴)をかばった行為により、一豊(上川隆也)の一国一城の主になるという夢がかなったのは夢ではなかったというお話の二本立てのようなもの。千代(仲間由紀恵)と一豊の喜びのリアクションはいつもの通りにつき、これが特別な出来事であるかどうかを感じることは出来なかったが、喜びに大小なしと考えればこの夫婦らしいとも思えてくる。制作意図とすれば、大小もあったはずだけれど。(麻生結一)

第28回「出世脱落」(2006年7月16日放送)

☆☆★
 賤ヶ岳の戦い後の論功行賞において、出世コースから脱落してしまい大いに落ち込む一豊(上川隆也)を、その嫁姑がタッグを組んで励ますという、今の世の中にも相通じるようなホームドラマ的内容も、その嫁=千代(仲間由紀恵)と姑=法秀尼(佐久間良子)が新旧の大河ドラマ主演女優となれば、揃い踏みでの叱咤もまた絢爛豪華に感じられたり。出家をほのめかして一豊を追い詰めていく千代もさすがだったが、命を絶つことまでも迫る法秀尼の大芝居にはさらに迫力があった。
 感慨深かったのは、佐久間良子と西田敏行(徳川家康役)の『おんな太閤記』(1981年)コンビがトメ前、トメで並んでクレジットされていたこと。いくら山内家中心にすべてが回っているドラマとはいっても、さすがにこの二人の絡みはないでしょうけれど。(麻生結一)

第27回「落城の母娘」(2006年7月9日放送)

☆☆
 中国の大返し、山崎の戦、そして三法師を担いだところから間髪容れず、賤ヶ岳の戦で秀吉(柄本明)が柴田勝家(勝野洋)を攻め滅ぼすところまで一気呵成。今回の勝家は終始存在感が希薄だったが、お市(大地真央)との最期は妙に生々しかった。本能寺の変といい、そのあたりはこの大河の主張なのかもしれない。
 石田三成(中村橋之助)と七本槍出現に嫉妬する一豊(上川隆也)はますますに小物ぶりを発揮してキュートといえばキュート。吉兵衛(武田鉄矢)を失ったたき(細川ふみえ)の結末が自害であるとするならば、やはりこのキャラクターはもう少し前出しの方が悲しみは深まったであろう。
 清洲城では千代(仲間由紀恵)が市の遺言を携えた茶々(永作博美)と激突。

茶々「そちは説教するつもりか?」

それはいつものことですからね。(麻生結一)

第26回「功名の旗」(2006年7月2日放送)

☆☆★
 この半年間、大いにドラマに馴染んでいた吉兵衛(武田鉄矢)が、亀山城攻めの一番乗りを果たして、この上なくカッコよく逝く。亡骸の懐にあったたき(細川ふみえ)にあてた遺書も泣かせるところ。吉兵衛がその前夜に一豊(上川隆也)と語らう中、「功名が辻」という言葉が出てきた。連語としてはおそらくこれが初出では。
 吉兵衛の最期に花を添えるべく、新右衛門(前田吟)も久々に出陣するが、結局はさほど役に立たず。一豊に母的存在と称されたその吉兵衛が竹中半兵衛(筒井道隆)、黒田官兵衛(斎藤洋介)に並ぶ知恵者と絶賛する千代(仲間由紀恵)も、今話ばかりは脇に回ったのは致し方ないところ。(麻生結一)

第25回「吉兵衛の恋」(2006年6月25日放送)

☆☆
 副題「吉兵衛の恋」の通り、吉兵衛(武田鉄矢)が新たに山内家に雇われた侍女・たき(細川ふみえ)といい仲になるお話だが、すべては吉兵衛の最期のためという印象も。こういうエピソードはもう少し前出しして醸成した方がどう考えても効果的に思えるのだが、そういう見せ方はもはや流行らないのかもしれない。
 そんな二人をくっつけるべく奮闘する千代(仲間由紀恵)は、一豊(上川隆也)と一緒に長浜城に住んでいる姿を思い浮かべるならば、きっと願いがかなうような気がするともらすあたり、夫の操縦にイメージトレーニングも取り入れていたか。(麻生結一)

第24回「蝶の夢」(2006年6月18日放送)

☆☆
 山崎の戦に敗れ、敗走する光秀(坂東三津五郎)を捕らえたのはまたも一豊(上川隆也)なら、その亡骸に指1本触れさせなかったもの一豊という、主役の夫主導の歴史的解釈がここにも。さらには、「ポンポコ」踊りによって三法師をてなずけたのは千代(仲間由紀恵)と、夫婦で日本の歴史を動かしております。それにしても、三法師のお馬にしたてて、秀吉を「筑前」とナチュラルに呼び捨てにするとは恐れ入った。呼び捨てにすることが魂胆に思えたりもして。(麻生結一)

第23回「本能寺」(2006年6月11日放送)

☆☆★
 これまでにもいろんな本能寺の変があったと思うが、光秀(坂東三津五郎)の謀反に鉄砲で応戦する信長(舘ひろし)は初か?! ただ、信長の助太刀として立ちはだかり、最後は『俺たちに明日はない』のボニーばりに、鉄砲に蜂の巣にされ壮絶に死んでいく濃(和久井映見)には、信長の壮絶な最期もかすむほどにまったくもってビックリした。これでもう、鼓を打って信長の傍らで逝く濃には戻れないかもしれない。
 この濃があまりにも強烈であったために、その後の展開は薄味にさえ感じられてしまったが、千代(仲間由紀恵)の史実を投げ打っての奮闘ぶりもまた頼もしい限りだった?! 命に従うと言っておきながら、寧々(浅野ゆう子)も対してもビシバシと指示を送る相変わらずの千代は、長浜で陣頭指揮を執って城下の人々を救う大活躍を見せる。これは女子ながら千石にも値する働きも、どこでも腹が減り、どこでも眠れる山田奈緒子調も同時に垣間見せてくれるあたり、やはりこのキャラクターの喜ばしさはこの大河の根幹だと改めて思う。
 父・光秀の謀反により、微妙な立場に立たされるも、髪を下ろした細川藤孝(近藤正臣)と夫・忠興(猪野学)に光秀方につくよう主張する玉(長谷川京子)も頼もしかったうちの一人。悲劇のヒロインにとどまらない玉がこのあとも見られるのだろうか。
 運が強いと皆々から言われる一豊(上川隆也)が毛利への使者を捕まえた後、有名な中国の大返しとなるが、女たちの活躍ぶりに比べるとインパクトは薄い。ちょっと面白かったのは、備中高松城主・清水宗治(木下浩之)に湖上で腹を切らせる様を、秀吉(柄本明)らが実況中継風に高みの見物するシーン。こういう場面もあまり記憶にないのだけれど、いかがでしょうか。
 第7回でタイトルバック変更の希望を出していたところ、何と受け入れられているではないか!まぁ、別意図で変わっただけだろうが、どちらにしても毛の細胞分裂がゴールド仕様になったのはありがたい。このタイトルバックが今後も変貌を遂げていくものとすると、それはそれで面白いのだけれど。(麻生結一)

第22回「光秀転落」(2006年6月4日放送)

☆☆★
 大石静脚本の光秀贔屓というか、坂東三津五郎贔屓がいっそう顕著になった回。もはや朝廷も無用の長物と、自ら王宣言する信長(舘ひろし)にいじめ抜かれる光秀(坂東三津五郎)は、まるで浅野内匠頭のようにも見えてくる。このひたすらに耐える光秀役を坂東三津五郎が寡黙な色気を持って好演。
 千代(仲間由紀恵)が洞察力の面で一豊(上川隆也)をはるかに上回っていることの改めての駄目押しになったのは、信長が秀吉(柄本明)と光秀を競わせようとしているとのその見解が、秀吉のそれと一致していた場面。それに驚く一豊はいっそう間抜けに見えてしまうことで、逆にちょっと気の毒にもなってみたり。嘘かまことか、このドラマ的には一豊も戦国の主役達の集いに常に絡めるんだから、よしとせねばなるまい。
 千代は中国攻めの陣中における一豊、および山内家家臣ばかりか、黒田官兵衛(斎藤洋介)にまでも文を送るあたり、そのあたりの政治的配慮も傑出していたか。六平太(香川照之)という専用の間者も抱えていて、情報収集能力もついには有力大名クラスって。そして、光秀に本能寺攻めをけしかけるのもやはり六平太か。影の主役ですね。(麻生結一)

第21回「開運の馬」(2006年5月28日放送)

☆☆☆
 世にもまれな名馬を千代(仲間由紀恵)に託された黄金十両で一豊(上川隆也)が購入したことにより、信長(舘ひろし)の覚えめでたく、帝の前で繰り広げられた馬揃えでも注目を浴びるに、一豊の名を天下に知らさしめたという、千代の内助の功の代名詞とも言うべきエピソードの全貌。いくら有名なお話とは言っても、一話丸ごとこれに費やされるのは千代と一豊が主人公のドラマ以外では難しいだろうから、この大河ならではと言えるだろう。まるで御伽噺のようなその美談は、軍略に優れた才気の人・千代と凡人中の凡人である一豊の、微笑ましい夫婦仲を総括した前半戦の総決算のような趣もあった。
 人を捨て、神になった狂気の信長に愛想尽かしした濃(和久井映見)が安土城を飛び出したその先で千代と遭遇、というこれまたならではのフィクションが、A面である内助の功の物語のB面として描かれているあたりもミソ。ラストの安土城内で、実は千代が助けた御仁こそが濃その人であったことを知ったときの千代のリアクションは、久々に山田奈緒子風でこれまた楽し。この大河はこういうのんびりムードの回の方がしっくりとくる感じだ。(麻生結一)

第20回「迷うが人」(2006年5月21日放送)

☆☆★
 荒木村重(ベンガル)に幽閉されていた黒田官兵衛(斎藤洋介)が生きながらえていたのは史実につき、どんなに全毛が伸び放題でも別に驚かないも、一豊(上川隆也)のために潜り込んだつもりも、秀吉(柄本明)の兵糧攻めのとばっちりで三木城から抜け出せなくなった小りん(長澤まさみ)が、ついには失明して姿を現したのには本当に驚いた。あれほどまでに汚れ顔メイクの女優を見たのは、『武蔵』のお通(米倉涼子)、もしくは『ハルとナツ』のハル(米倉涼子)以来だろうか。W米倉涼子ほどにはすさまじくないも、これとて大したものではある。
 六平太(香川照之)はドラマ的な便利使いのみならず、戦場と千代(仲間由紀恵)をつなぐ唯一の架け橋だったか。自らが殺せと命じた官兵衛の嫡男・松寿丸(高木優希)が千代の機転によって実は生き伸びていたことを一豊によって知らされた信長(舘ひろし)が瞳を潤ませる場面は、さらに非情、不条理化していく所業を少し薄めさせる働きをしている。
 副題の「迷うが人」は、林通勝(苅谷俊介)と佐久間信盛(俵木藤汰)を唐突追放した信長に対して、足首が細い(信長が自ら確認済み)濃(和久井映見)が「思い迷うことこそ生きること」と諭した言葉から。ここで信長があまりにも率直に光秀(坂東三津五郎)が好きかと問うと、濃は卒倒。信長の終着点をそっち方面で解決するつもりのようですね。(麻生結一)

第19回「天魔信長」(2006年5月14日放送)

☆☆★
 予想通りに千代(仲間由紀恵)の出番が手紙に限定されはじめたのは不満も、取り合わせの妙にみどころもいくつかあった。ついに築城された安土城天守での信長(舘ひろし)、濃(和久井映見)、市(大地真央)の掛け合いはとりわけ迫力満点。コンスタントにエキセントリックになってきた信長に異を唱える濃もひっくるめる形での、恐れと賞賛は似たようなものとの市の指摘が重たい。それにしても、これほどまでに明智光秀(坂東三津五郎)のことを思う濃をかつて知らない。
 信長の命により、光秀の娘・玉(長谷川京子)は細川藤孝(近藤正臣)の嫡男にして幼馴染でもある忠興(猪野学)と祝言をあげ、玉は間もなく子を身ごもる。玉役の長谷川京子は日曜劇場にも主演しているために、日曜のゴールデンタイムはプチジャック状態だ。
 もう一つの見ものは毛利に寝返った荒木村重(ベンガル)と秀吉(柄本明)の直接対決。ベンガルと柄本明の顔合わせであれば脱力対決を期待するも、反吐が出るほどの猿芝居中につき、秀吉は終始力み気味だった。供はまたもや一豊(上川隆也)。他にいないのかと思っていたが、実際には一豊のその強運にすがっていたとの設定により、今後も一豊を供にする大前提を得たか。
 そして、臨終間際に千代への思いを一豊に告白して、竹中半兵衛(筒井道隆)が逝く。音楽演出が過剰に思われるこのドラマにあって(スコアのパターンも少ないのでいっそうつらい)、そのあまりにも静かな死はむしろ心に響いた。空に鳥を見やる千代が、すでにこの世にない半兵衛の声を聞くエピローグの余韻が素晴らしかった。(麻生結一)

第18回「秀吉謀反」(2006年5月7日放送)

☆☆★
 軍令破りで信長(舘ひろし)の逆鱗に触れて、弁明も与えられずに蟄居を命じられた秀吉(柄本明)はかつてない窮地に立たされる。しかし、北国より早々引き上げたのも一世一代の芝居ならばと、長浜にて三日三晩の酒宴に興じて、二重の一世一代の芝居に打って出る。
 ここの大芝居のシーンでは、秀吉演じる柄本明の曲者ぶりはさすがに冴えるも、他が誰もついてこないのはちとつらい。ドラマ的には、信長に通じる猿楽師たちを安土から呼んだ竹中半兵衛(筒井道隆)の策略が冴えて、余興を盛り上げるべく、裾を捲り上げて舞ってみせた千代(仲間由紀恵)が場を華やがせてまたまた名をあげる。本当は副題は「秀吉謀反?」としなければいけないところだったが、大河の副題に「?」はまずかったのかな?
 夫・一豊(上川隆也)が、もしも千代が男だったら半兵衛を凌いでいたかもと妻を絶賛中に、六平太が闇夜より登場。松永弾正久秀(品川徹)の謀反を伝えて聞くや、秀吉は即刻安土に。信長の怒りも解け、晴れて松永弾正久秀を攻めることに。
 実際に首を鳴らす人であったかはわからないが、ここで松永弾正が登場したのはちょっと意外だった。その弾正の説得を任されたのはまたしても一豊(他に家臣はいないのか!)。ここに戦国の世マイナー対決が実現。有名な平蜘蛛の釜の話が絡むも、結局は弾正が一枚も二枚も上手で一豊は説得に失敗。弾正は平蜘蛛の釜とともに爆死、一豊は叡山攻めと同じく、女・子供を斬る羽目になる。
 調略よりも鑓働きの方が得意と言われてしまっては、頭が悪いと言われているようなものですからね。迷い苦しむ極ピュアな男・一豊に、戦うは我らが定めと一括する吉兵衛(武田鉄矢)の忠義心が夕闇に輝く。
 謙信にいいようにやられた柴田勝家(勝野洋)が信長にたしなめられた直後、秀吉は中国10ヶ国征伐を5年で成し遂げてみせると信長の前で大見得を切る。興味深かったのは生きていること自体がつらいことと嘆くようなキャラクターゆえに、光秀(坂東三津五郎)は女に人気があるという、もてない秀吉の分析。半兵衛に続く秀吉の懐刀・黒田官兵衛(斉藤洋介)が最後ちらっと初登場する。
 秀吉が蟄居を言い渡されていたおかげで、史実メインだったにもかかわらず千代の出番も減らずに済んだ今回だったが、これから中国攻めとすると、千代の出番もまたもや大幅に減ってしまうのだろうか。当たり前のこととはいえ、主役の千代が出てこないとドラマは大いに盛り下がってしまうので、ここのところはせっかくコンスタントに調子が出ていただけに、来週以降がちょっと心配である。(麻生結一)

第17回「新しきいのち」(2006年4月30日放送)

☆☆
 まずは中村一氏(田村淳)の妻・とし(乙葉)が男子を出産(2人とも出演はなし)。 1年ぶりに六平太(香川照之)が姿を現したちょうど時、タイミングよく産気づいて千代(仲間由紀恵)もそれに続いて女子を出産。しかし、一豊(上川隆也)は転戦につぐ転戦で長浜には帰れず。娘・よねとの顔合わせはその1年後って、やっぱり戦国の世は大変だったんですね。
 秀吉(柄本明)の調略は大小に関わらず天下無双、妹・旭(松本明子)との婚儀も上意と涙を使って副田甚兵衛(野口五郎)を楽々と落としてしまう。旭はその後ふさぎこんでしまうも、戦で父・若宮喜助(宅麻伸)を亡くし(その時に父の命を奪った鉄砲の弾持参)、母・とも(木村多江)を目の前で斬られ、人買いに捕らえられて売られそうになったとのむごたらしい身の上話を千代にされてしまっては、旭も改心せぬわけにもいくまい。
 ちょっと気にしてないうちに、信長(舘ひろし)はすっかり超人化しちゃって。演技はちょっとした歌舞伎風でいっそうある意味様式的に。もはや濃(和久井映見)の忠臣の諫言にも耳を貸さず、上杉謙信を迎え撃つ柴田勝家(勝野洋)の北陸に、気乗りしない秀吉を無理やりに送る。
 他では、光秀(坂東三津五郎)と槇(烏丸せつこ)を千代が訪れた際、光秀の娘・玉(長谷川京子)が成人後初登場した。小りん(長澤まさみ)と入れ替わりということだろうか。(麻生結一)

第16回「長篠の悲劇」(2006年4月23日放送)

☆☆★
 副題は「長篠の悲劇」なれど、長篠に関わらず多くの登場人物が逝ってしまった回になった。武田軍との決戦を前に、信長(舘ひろし)からいつになく長大な馬防ぎの柵作りを任された秀吉(柄本明)が、妹・旭(松本明子)の夫にして作事の名手・源助(小林正寛)を呼び寄せるのに遣わしたのはまたも一豊(上川隆也)。寧々(浅野ゆう子)からお呼びがかかった千代(仲間由紀恵)も同様に登城するも、源助を説得するどころか旭の側に立って源助が戦場に赴くのを反対したものだから、思惑違いの寧々(浅野ゆう子)から大目玉を食らう始末。
 しかし千代の悪い予感は的中して、長篠の戦いの火蓋が切って落とされたその時、自分の作った柵がどのように使われているかを確認するために戦場に戻った源助は、飛び交う矢に胸を貫かれて命を落とす。ここは、男ってつくづく愚かね、と言われている感じ。
 旭との約束を違えたからにはと、一豊は切腹、千代も後を追って詫びようとしたりしているうちに、前話に続いて不破市之丞(津川雅彦)の危篤の知らせが届き、今度こそ逝ってしまう。生涯子に縁のなかった市之丞にとっては、千代が身ごもったことを知らされたのが、せめてのも冥途の土産になったか。
 自らが一豊の子を産んでやろうと本気で思っていた小りん(長澤まさみ)もまた、千代の妊娠に敗北宣言して、山内家をあとにする。千代への思いを直隠しにしる六平太(香川照之)の心根も暴いて、

小りん「あばよ」

と一言、三船敏郎か、はたまたライザ・ミネリぐらいしか使わないような究極の捨て台詞を吐いて小走りに消えていく小りん。これが小りん最後の勇姿だとすると、ちょっと早すぎやしないか。だったら、副題は「あばよ、小りん」にしてほしかったところ。 (麻生結一)

第15回「妻対女」(2006年4月16日放送)

☆☆★
 ついに千代(仲間由紀恵)と小りん(長澤まさみ)の夢の直接対決が実現!その前に、新右衛門(前田吟)は嫡男・新一郎(浜田学)に家督を譲って隠居を申し出るも、吉兵衛(武田鉄矢)はそのことでいっそう一豊(上川隆也)への忠心を誓う。一豊との定めを長々演説する吉兵衛とそれを聞く千代(仲間由紀恵)のコンビは息もピッタリ。この二人のシーンはいつも楽しい。
 次いで、浅井の牢人にして鉄砲の名手という触れ込みで、六平太(香川照之)が山内家に食客としてもぐりこむ。そういえば千代と一豊(上川隆也)はそれぞれがそれぞれに六平太と面識があることを知らなかったんですね。これぞ忍びの流儀か、六平太はだんだんこのドラマの裏主役のようになってきている。
 市之丞(津川雅彦)の病の知らせに千代が不破家に馬を走らせた隙に、ついに小りんが猫まねを駆使して音もなく山内家に忍び込む。

小りん「いとしい男(=一豊)に会いに来たんだよ」

事態がややこしくなることを避けるべく、失せろと突き放す六平太と小りんとの効果音つきの手合わせは、第12話に引き続いての『武蔵』ノリ。こうなったら、あかね屋絃三(江守徹)v.s.亜矢(寺島しのぶ)並に派手にやってほしいところ。
 不破家から戻った一豊が、六平太の妻・“サト”として現れた小りんを見つけての唖然ぶりがよかった。小りんが間者であることを知っているはずの吉兵衛と新右衛門がその夫・六平太のことを怪しまないのもおかしいけれど。
 そしていよいよ千代と小りんが二人きりに。小りんが一豊の子を産むと面と向かって言うのに対して、千代は涙をためて“サト”が小りんであることを察知する。いと(三原じゅん子)に子が出来やすい体になるためには山芋のネバネバが効くと聞きつけて、口の周りがかゆくなるほど山芋汁三杯を飲み干した、そのネバネバな愛はついには小りんの厠までも襲う夜の悩殺大作戦から一豊を拒絶させる。ラストに鳴り響くは長篠の戦いを告げる陣触れが。(麻生結一)

第14回「一番出世」(2006年4月9日放送)

☆☆★
 秀吉(柄本明)は琵琶湖畔に長浜城を築き、光秀(坂東三津五郎)に続いての城持ち大名となる。一豊(上川隆也)は四百石に加増、千代(仲間由紀恵)の生まれ故郷の近くに新しい家を賜るも、風呂掃除を欠かさぬ千代の働き者ぶりは変わらず。第14話はこの風呂を巡ってのお話。
 百五十石据え置きの堀尾茂助(生瀬勝久)と中村一氏(田村淳)はそんな一豊の出世が面白くない。そんな夫たちの思いを知ってかしらずか、いと(三原じゅん子)ととし(乙葉)は引っ越し祝いを口実に、趣のある湯殿で昼っぱらから湯浴み。そのことに対する堀尾、中村両家の反応は正反対で、一氏はとしを叱りつけるも、茂助はその後いとと一緒に湯殿を借りに行く朗らかぶり。史実はほどほどにして、このあたりのホームドラマ調こそをもう少し深めていく方がこの大河には似つかわしいのではないだろうか。茂助といとが一緒に湯浴みするラストシーンのほのぼのしさは捨てがたいところ。
 お市(大地真央)とのお話し相手のお役目が終わったと思ったら、今度は寧々(浅野ゆう子)のお話相手とために輿で長浜城へと向かう千代は、今で言ったらセレブカウンセラー?! お市に顔も見たくないと言われた反動か、秀吉はいっそうの女狂いになるも、それを戒めるのが母・なか(菅井きん)であった。
 なかの登場シーンは、泥だらけに畑仕事をしている様がまさか秀吉の実母とはわからずに、というこれまでに何回も見たようなお決まりパターンが踏襲されていた。いい加減違うエピソードでもよさそうなものだが。秀吉の妹・旭(松本明子)とその夫・源助(小林正寛)の登場もまた千代の説得が功を奏してのことと、久々に主役の千代が大活躍した回でした。(麻生結一)

第13回「小谷落城」(2006年4月2日放送)

☆☆
 お市(大地真央)贔屓を秀吉(柄本明)と同じと寧々(浅野ゆう子)ににらまれて、 千代(仲間由紀恵)もオープニングにわずかに登場はもはや定番と化している。小谷城攻めでは、お市に目通った一豊(上川隆也)は、「千代の夫」と呼ばれるポジションでした。
 長政の嫡男・万福丸の命を助けることを秀吉に約束させ、小谷城を出ることを承知したお市だったが、結果的に万福丸は信長(舘ひろし)の命により、一豊の手で磔刑に処される。そのことに涙する一豊を励ます千代の健気さよ。あれほどお市には黙っていると言っていたのに、万福丸の死をもらすあたりもらしいと言えばらしい。
 浅井長政(榎木孝明)、久政(山本圭)、朝倉義景のしゃれこうべを杯に宴の酒を強要する信長の異様にも救いの手を差し伸べるあたりが、大石静脚本の主張なのだろう。(麻生結一)

第12回「信玄の影」(2006年3月26日放送)

☆☆★
 副題「信玄の影」の通り、オープニング豆知識は武田信玄がトピックに。本編でも武田軍はチラチラッとインサートされるも、実際の信玄は登場せず。ちゃっかり来年大河の『風林火山』の番宣だったというわけか。信玄の挙兵に乗じて信長に反旗を翻す足利義昭(三谷幸喜)とそれをいさめようとする明智光秀(坂東三津五郎)が対決するシリアスなシーンでも、どうしたことか義昭は随所にかわいらしさを発揮して笑いをとる。足利氏滅亡。
 浅井の豪族・宮部善祥房のもとに一人で乗り込んだ秀吉(柄本明)は甥・治兵衛(柴井伶太)を人質に出す条件で、織田方に寝返らせることに成功。その治兵衛(のちの秀次)の教育係になったおかげで、ドラマ冒頭から千代(仲間由紀恵)は登場してくれるも、その後はまたもさっぱり登場せず。
 神出鬼没な六平太(香川照之)と一豊が三度目の顔合わせで、激しい格闘シーンを演じる。暗闇での殺陣はほとんど『武蔵』を見ているかのよう。小りん(長澤まさみ)のセクシー間者も艶かしく、もはや千代よりも出番さえ多い。その便利使いぶりを生かして、この二人がフィクションのパートでドラマを盛り上げてくれている。史実のパートはさほど期待できない感じがしてきているので、ドラマの方向性としてはこれもありだと思う。(麻生結一)

第11回「仏法の敵」(2006年3月19日放送)

☆☆
 姉川で九死に一生を得た一豊(上川隆也)は、実は溺れたところを小りん(長澤まさみ)に助けられていた。手負いの一豊に家来はみんな死んでしまったと嘘をつく小りんの真意は、

小りん「あんたをいじめてやりたいから」

ここのワンカットだけカメラが不安定になるあたり、なかなか凝ってます。ここ最近でも『毛利元就』の加芽(葉月里緒菜)、『北条時宗』の桐子(木村佳乃)、『新撰組!』のひで(吹石一恵)、『武蔵』の亜矢(寺島しのぶ)、『義経』のうつぼ(上戸彩)と受け継がれている大河ドラマ男装役の伝統は今回はこの役に託された模様。
 側女にしたい女が出来たらお連れくださいと殊勝なことを言う千代(仲間由紀恵)に、千代一筋を宣言する一豊の転びっぷりこそが、今話最大の見どころだったか。かなりの落下距離だったかと。
 この後は表が延暦寺の焼き討ち、裏が秀吉(柄本明)の姉の子・治兵衛(柴井伶太)を立派な人質に仕立て上げるべく、千代が読み書きを教える話になる。しばらくはダブルストーリーが継続される様なので、このやり方なりにも面白く見せてほしいところ。(麻生結一)

第10回「戦場に消えた夫」(2006年3月12日放送)

☆☆
 最近回の千代(仲間由紀恵)の出番の少なさは、ドラマの構成上致し方ないとしても、立て続けに一豊(上川隆也)が死にかける話というのはどうなんだろう。戦国の世なれば、それだってリアリティのない話にはならないだろうけれど、どうせ生きている一豊がやっぱり生きていたという話が繰り返されると、何となく馬鹿らしくなってくる。この後も間髪入れずに畳み掛けて死にかけたりすれば、それはそれでちょっとした定番の味わいになってくるかもしれないが。最終回までに何回死にかけたかを数えてみたりして。
 ご丁寧に浮気したことを告白する一豊は、上川隆也が演じればこその誠実さがにじみ出てくる。このことで寧々(浅野ゆう子)に教えを請う威圧感たっぷりの千代は、視聴者の欲するコミカル千代の期待に十二分に応えてくれている。その喜劇の涙と一豊が姿を消した際の悲劇の涙にさほどの差は感じられないけれど、それはそれでいいような気がしてくるから不思議。この面白夫婦ぶりを確認するだけでも、この大河の価値はあるか?!(麻生結一)

第9回「初めての浮気」(2006年3月5日放送)

☆☆★
 一豊(上川隆也)の顔に刺さった矢の傷が痛そうなままにその続き。浅井の裏切りに兵を引く信長軍のしんがりを勤める秀吉(柄本明)と行動をともにする一豊も、言語不明瞭に加えて戸板に乗せて運ばねばならぬはどう考えても足手まといのはた迷惑。家康(西田敏行)が助けに現れるドラマティックには必要不可欠だったが。
 今話もまた、ドラマ開始9分という遅い時間に千代(仲間由紀恵)初登場。そこからまたしばらく姿は消え、22分に再登場。一豊の無事を聞く感動的なシーンも、御百度の途中で口を利いてしまって、少ない出番にきちっと笑いをとる。
 そんな千代よりもたっぷり出演していたのは、副題「初めての浮気」のまさに一豊の相手、小りん(長澤まさみ)。28分に再々登場した千代のお守りの手ぬぐいが取れる嫌な予感は的中して、小りんの二泊目に一豊の初めての浮気が成就する。その朝の陣触れに織田軍が岐阜へ帰還することをもらしてしまう軽々しさも時すでに遅し、この小りんは朝倉の間者だった。しかも、このドラマの便利使い・六平太(香川照之)の手の者だったとは、何たる戦国の世の狭さ。一豊をウィンクで見送る変わり身ぶりは、さすがに主演者よりも出番が多かっただけのことはある。
 37分に千代、今話4度目の登場。命の持ち帰りこそ、功名の種とはなるほどね。(麻生結一)

第8回「命懸けの功名」(2006年2月26日放送)

☆☆★
 『秀吉』でエキセントリックな足利義昭像を演じてみせた玉置浩二が今でも心に残る。大河ドラマにおいてこの役は職業俳優じゃない人があてがわれることになっているわけでもないだろうけれど、三谷幸喜の学芸会調は微笑ましくない場面を微笑ましくしてくれる効果は上げていたりはするか。
 放送開始11分にようやく千代(仲間由紀恵)登場。フィクションとノンフィクションの二つの話を同時にやっていると、こういうこともちょくちょく起きてくるだろう。信長のお使いで三河に向かう一豊(上川隆也)は、その足でついでにちょっと千代が待つ岐阜まで。心細い顔をした千代は、何を思ったかせっかく帰ってきた一豊の頬をいきなりにつねりだすあたり、視聴者のリクエストに存分に応えてくれているところだが、ただここでやるにはあまりに唐突過ぎたか。これがその後のもっと痛々しい出来事の伏線だったとすると、それはそれですごいことだが。
 近々信長(舘ひろし)が浅井に黙って朝倉を攻めるという機密情報を、他言はならぬと二回も繰り返してペラペラと千代に明かしてしまう一豊も一豊だが、その直後に六平太(香川照之)に他言している千代も千代。これもまた“功名が辻”だったりする?! 戦場で危うくなった時のお守りにとおそろいの手ぬぐいを手首に巻く夫婦ならば、これもまた致し方なしか。
 わざとらしく元康と自らの名前を間違って登場した徳川家康役の西田敏行は、第1話でも触れたとおり大河歴代秀吉。『おんな太閤記』の西田敏行、『徳川家康』の武田鉄矢、『利家とまつ』の香川照之と近作の柄本明の4人が集う場面は壮観だろうけれど、それぞれの身分があまりにも違うために、それは実現しそうにない。
 それにしても、一豊の顔に刺さった矢は痛そうだった。そのために、後の展開が全部飛んでしまった感あり。(麻生結一)

第7回「妻の覚悟」(2006年2月19日放送)

☆☆
 清洲、小牧、岐阜と引っ越しを強いられてきたこれまでをぼやく信長家中の妻たちの井戸端会議ぶりからホームドラマテイストが全開に。千代(仲間由紀恵)がいじめられていた後の細川ガラシャ、玉(今泉野乃香)に遭遇する一方、出兵中の信長(舘ひろし)は秀吉(柄本明)や一豊(上川隆也)を引き連れて、小谷城の浅井長政(榎木孝明)を訪問。市(大地真央)に直々に呼び出された一豊は千代の近況を聞かれ、内掛けを作ってほしいと言伝られる、やっぱりここでも千代中心主義か。このドラマにおける完全なる便利使い、六平太(香川照之)が一豊に信長暗殺計画を告げるなりにその夜は緊迫するも、結局は何事もなく朝を迎える。
 足利義昭(三谷幸喜)を征夷大将軍に据えて上洛を果たした信長軍の面々は意気揚々と帰還するも、新右衛門(前田吟)の妻・ふね(熊谷真実)はすでに流産の末に死んでしまっていた。母の死を父・新右衛門(前田吟)のせいにする徳次郎(ささの堅太)に対して説教をする吉兵衛(武田鉄矢)はまるで金八先生じゃないの。逃げ出した徳次郎を一人洞山に入って見つけ出すのも、やっぱり千代の大活躍。万事解決したあとに、のこのこと遅れて帰ってきた吉兵衛がちょっと笑いを誘うあたり、そこには笹垣(同じく武田鉄矢『白夜行』)の片鱗は皆無だ。
 再出陣にあたり、新右衛門とその長男・新一郎(浜田学)を快く送り出す千代が戦国の妻としての覚悟を示して、この回のサブタイトル「妻の覚悟」になるほどと思わせるまで、今回は一貫してのシリアストーンの作りだった。真剣な千代も悪くないけれど、やっぱりコミカルで微笑ましい千代を優先的に見たいのが正直なところ。
 それにしてもあの気持ちの悪い、毛の細胞分裂のようなタイトルバックはどうにかならないのだろうか。『武蔵』の時のように前後半で変更を希望!確かに凝りに凝ってはいるんだけれど。(麻生結一)

第6回「山内家旗揚げ」(2006年2月12日放送)

☆☆★
 世の動きを見極めねば一国一国一城の主になれないと朝っぱらからしゃもじをかざして一豊(上川隆也)に発破を掛ける千代(仲間由紀恵)が継続して絶好調。五藤吉兵衛(武田鉄矢)の淀みない解説が聞かせる山内家の旗の話は、千代の覚えが悪いおかげで前話1回、今話2回の計3回聞かされる羽目に。そんな吉兵衛を話し上手と持ち上げる千代はおだて上手で一枚上手。
 朝ご飯を抜いている理由を胸が重いためと言い訳する千代だが、実際は祖父江新右衛門(前田吟)が妻・ふね(熊谷真実)と七人の子供たちを山内家に呼び寄せたことによって山内家の台所が切迫したために、1日おきの断食を決行していたのだった。
 一豊のためと心に決めている小判を使うのは思いとどまり、楽市に露店を構えて手作りの夫婦袋を売ろうとするも、これがまったくの不発で、結局空腹の末に倒れてしまう。このあたりのお金がない、お腹が減った系(?)のコミカル演技ぶりは『トリック』の山田奈緒子役でこれまでにもおなじみではあったが、それを大河でもそれなりに成立させてしまうあたりが仲間由紀恵のまったく偉大なところ。こういうシチュエーションで惨めったらしくならずににおかし味をかもし出せる役者も、仲間由紀恵の他に現状思い当たらない。
 史実パート(?)では、信長(舘ひろし)と明智光秀(坂東三津五郎)が初対面。このあたりのホームドラマパートとの使い分けは『利家とまつ』も同様だったが、フィクションパート(?)の躊躇ない感じの分、こちらの大河の方が面白くなりそうな期待感がある。
 ビックリしたのは、いとこ同士の濃(和久井映見)と光秀が、昔お互いに思いを寄せていたニュアンスだったあたり。そういう話でしたっけ?大河の前々作の脚本家だった三谷幸喜の力演調の足利義昭はご愛嬌ということで。(麻生結一)

第5回「新妻の誓い」(2006年2月5日放送)

☆☆★
 仲間由紀恵が数分毎に連打して見せるコミカルリアクションの上手ぶりだけの力で面白みがジャンプアップ。いつから思いを寄せてくれていたかを一豊(上川隆也)に問い詰めて聞き出そうとしたり、嫁いだその翌朝から寝坊するも、法秀尼(佐久間良子)からおおらかで良いと優しくされたり、はたまた秀吉からの使命(近江の浅井の諜報)を聞き出すべく、一豊のほっぺをつねってみたり、千代(仲間由紀恵)の元気はつらつぶりがあまりにも微笑ましいので、こういう大河も時にはいいかと段々思えてくる。加えて、寧々(浅野ゆう子)から焼けてしまった着物の端切れでこしらえた小袖をほめられるに、縫い物上手ぶりもアピールして、史実も盛り込んで千代のキャラクターを分厚くフォロー。
 後半の見ものは、好いた男に嫁いだ千代と顔もいまだ見ぬ男に嫁ぐ市(大地真央)の対照的な二人の絡み。まな板代わりに枡を裏返して使う節約妻ぶりも、そのゆえをお市に説明する千代はまるで留学生に日本の文化を説くホストファミリーのよう。堀尾茂助(生瀬勝久)、その妻・いと(三原じゅん子)、中村一氏(田村淳)、その妻・とし(乙葉)も顔見世的に登場し、大分にぎやかしくなってきた。
 功名が辻紀行に流れる曲は、密かにエマニュエル・パユ演奏の超豪華版です。(麻生結一)

第4回「炎の中の抱擁」(2006年1月29日放送)

☆★
 戦国の世が千代(仲間由紀恵)中心に展開していくのは当たり前といえば当たり前だが、ここまで露骨にやられてしまうと、さすがにたじろんでしまう。ドラマの冒頭から「話は少しさかのぼるが」と言いいきられて、これまでのドラマを強制的に復習させられるあたりにも出鼻をくじかれる。
 気がつくと、竹中半兵衛(筒井道隆)は唐突に信長方に。稲葉山城落城においては、千代の救出に一豊(上川隆也)と秀吉(柄本明)がダブルで向かう豪華版。千代と一豊の愛の炎のごとく、城は激しく燃えているよ。
 「話を遡れば」とのNRで弟・康豊(玉木宏)のこれまでと後々までが説明される(一瞬、この大河が『氷壁』に見える)。この手が頻発されると、ドラマの構成が不要になるわけで、言ってみれば誰が脚本を書いても大丈夫なことになる?! 絶妙のタイミングで入れ込んで、後々にはうならせてほしいところだけれど。ただ、最近の大河はどうして話のネタ晴らしをしちゃうんでしょうね。
 焼け跡から見つけ出された金子を千代に託す場面、市之丞(津川雅彦)の爆発ヘアを見続けさせられるに、この大河ドラマの先行きがいっそう心配になってくる。真実味のあった場面は、炎上する稲葉山城を涙ながらに見守る濃(和久井映見)ぐらいだったも、とりあえずサクサク見進められる点はよしとすべきなのだろうか。(麻生結一)

第3回「運命の再会」(2006年1月22日放送)

☆☆
 やっぱり仲間由紀恵が出てくると、それだけで場面が締まる。視聴率も復調傾向と聞くと、やはり仲間由紀恵こそがさすがということに落ち着くのだが、ドラマそのものは今一歩乗ってこない。歴史のメインストリーム的なエピソードと千代(仲間由紀恵)と一豊(上川隆也)の再会場面あたりが無理やりに絡められている気がして、両者の関係性を保つことの難しさを感じずにはいられない。“話は少しとぶ”のテロップで足利義輝が殺されたエピソードが付け足されるあたり、『その時歴史が動いた』であればいいかもしれないが、これはドラマだけにつらいものがある。
 千代と幼なじみにして今や甲賀の忍びになった六平太(香川照之)も再会するし(ここの薪を抜き取る千代は大いに山田奈緒子調(『トリック』))は、ちょっとした再会スペシャルじみたのりになるも、全体を見渡すと竹中半兵衛(筒井道隆)がクローズアップされた回だったという印象が残る。何はともあれ、舘信長の台詞が聞き取れるようになってきたのにはホッ。(麻生結一)

第2回「決別の河」(2006年1月15日放送)

☆★
 高齢キャストには高齢キャストを掛け合わせれば、それぞれの年齢の違和感がなくなる法則が忠実に実行されるも、明智光秀役で坂東三津五郎が登場するとまたひとつ年齢層が深まったことにぐったりとしてしまう。もちろん、それぞれの名優陣には何ら責任はないのだが。
 その話ばかりしていても気が滅入るので、仲間由紀恵が本格登場する前にヒロインが一番手だった大河の歴史を紐解いてみましょう。軽い現実逃避ということで。ただその初っ端である1967年の『三姉妹』からいきなり未見につき、こちらもまた話の真実味が深まらないか。その三姉妹は岡田茉莉子、藤村志保、栗原小巻。
 次は1979年の『草燃える』で北条政子を演じた岩下志麻で、これと比べるとやはり『義経』は子供向きだったと言わざるを得ない。一本挟んで1981年には『おんな太閤記』の佐久間良子がねねの役。
 一般的には不評も、個人的にとても好きな『春の波濤』では、松坂慶子がマダム貞奴役。続けさまに三田佳子が主演した『いのち』があるが、これは話題になったにもかかわらず逆に未見。1989年の『春日局』がタイトルロールで大原麗子。そして1994年に再びの三田佳子が日野富子を演じた『花の乱』がくるが、これが出来ばえ、視聴率ともにこけてしまったためにか、その後ヒロインが一番手の大河ドラマはこの『功名が辻』までなかった。これまでに名前が挙がった名女優たちと仲間由紀恵が同格になるかと思うと、感慨も一入である。というわけで、本格始動となる次週からに期待しましょう、と自らに必死に言い聞かせてみる。(麻生結一)

第1回「桶狭間」(2006年1月8日放送)

☆★
 朝ドラにしろ、よるドラにしろ、そして大河ドラマにしろ、ここ最近のNHKのドラマには失望させられっぱなしだが、この新しい大河ドラマもまた同様で、見ながらにだんだん悲しくなってきてしまった。これが大河ドラマのレヴェルだろうか。
 実際に見るまではそれほど気にならなかったが、よくよく考えてみるとかなり平均年齢の高いキャスティングだ。反射的に『葵 徳川三代』の悪夢がよぎる。さらに見進めて、歴代秀吉が揃っていることに気がついた。『おんな太閤記』の西田敏行、『徳川家康』の武田鉄矢、『利家とまつ』の香川照之と早々たる顔ぶれ。そして今度の秀吉=まだ藤吉郎役である柄本明の登場となるのだが、馬で行く信長(舘ひろし)の後を走って追いかけるシーンには大いに気の毒になる。晩年になればそれなりにピタッとくるのだろうけれど、それはまだ随分先のこと。
 舘ひろしの信長は、驚くほどに台詞が聞き取れない。能の謡は吹き替え?どちらにしても作りも荒っぽい。『義経』はそのあたりは終始丁寧な仕上がりだったので、つい比べてしまう。『義経』に関しては、残念ながら丁寧であることが最大の美徳ではあったけれど。
 信長役に舘ひろしと聞いて、すぐさま同じく石原軍団つながりの『秀吉』で信長を演じた渡哲也を思い出したが、実はあの時の渡哲也よりも今の舘ひろしの方が年齢は上のはず。濃の和久井映見は問題ないとしても、市の大地真央、寧々の浅野ゆう子はないでしょ。それでも『葵 徳川三代』には遠く及ばないのだけれど。
 テーマ曲を再びアシュケナージが指揮してくれている。N響の音楽監督が連続で大河のテーマを指揮するのはこれが初めてではないか。音楽監督の称号自体が稀にしか存在していなかったのだから、それ自体どうということもないのだが、やはりアシュケナージはいい人なのだろうとは思った次第。ドラマとはあまり関係のないお話でした。
 ここまで書いてきて、主演者のお二人について触れていなかったことに気がつく。初回がボトムで、千代&一豊が全面に出てくれば、きっと面白くなってくれることを祈らずにはいられない。(麻生結一)

功名が辻

大河ドラマ
NHK総合日曜20:00〜20:45
制作・著作:NHK
制作統括:大加章雅
原作:司馬遼太郎『功名が辻』
脚本:大石静
演出:尾崎充信(1、2、4、5、8、9、13、16、22、23、27、33、43、44、49)、加藤拓(3、6、7、10、11、14、17、20、26、29、35、41、42、47、48)、梛川善郎(12、15、19、21、24、30、39、40、45、46)、久保田充(18、25、37、38)、梶原登城(28、32、36)、大原拓(31、34)
音楽:小六禮次郎
語り:三宅民夫アナウンサー
出演:千代…仲間由紀恵、山内一豊…上川隆也、五藤吉兵衛…武田鉄矢、祖父江新右衛門…前田吟、濃(帰蝶)…和久井映見、淀(茶々)…永作博美、竹中半兵衛…筒井道隆、前野将右衛門…石倉三郎、堀尾吉晴(茂助)…生瀬勝久、いと…三原じゅん子、中村一氏…田村淳、五藤吉蔵…小倉久寛、とし…乙葉、蜂須賀小六…高山善廣、堀尾忠氏…大内厚雄、祖父江新一郎…浜田学、山内康豊…玉木宏、若宮喜助…宅麻伸、とも…木村多江、千代(幼少)…永井杏、市…大地真央、六平太…香川照之、浅井長政…榎木孝明、小りん…長澤まさみ、きぬ…多岐川裕美、足利義昭…三谷幸喜、老商人…北村和夫、ガラシャ(玉)…長谷川京子、豊臣秀次…成宮寛貴、柴田勝家…勝野洋、丹羽長秀…名高達男、林通勝…苅谷俊介、佐久間信盛…俵木藤太、大政所・なか…菅井きん、旭…松本明子、榊原康政…川野太郎、徳川秀忠…中村梅雀、本多正純…天宮良、本多忠勝…高田延彦、たき…細川ふみえ、田中孫作…徳井優、田中吉政…金田賢一、奥宮弥兵衛…渡辺哲、小笠原少斎…嶋田久作、福島正則…嵐広也、源助…小林正寛、黒田如水(官兵衛)…斎藤洋介、副田甚兵衛…野口五郎、井伊直政…篠井英介、ふね…熊谷真実、本多作左衛門…田中健、槇…烏丸せつこ、松永弾正久秀…品川徹、やや…真由子、浅野又右衛門…二瓶鮫一、荒木村重…ベンガル、豊臣秀長…春田純一、加藤清正…金児憲史、細川忠興…猪野学、黒田長政…田宮英晃、小早川秀秋…阪本浩之、増田長盛…不破万作、長束正家…草薙良一、杉原家次…小宮孝泰、滝川一益…古川真司、筒井順慶…西郷丼丼、蒲生氏郷…小杉幸彦、池田恒興…桐山浩一、森長可…山口粧太、加藤嘉明…佐藤拓之、片桐且元…タカ・コンドー、平野長泰…白川裕二郎、脇坂安治…奥田崇、糟屋武則…菅原卓磨、前野景定…瀬川亮、不破万作…浅利陽介、木村常陸介…前田淳、市川山城守…岡田圓、平岡石見守…山田明郷、溝淵五郎衛門…大島宇三郎、服部半蔵…二橋進、よね…皆川陽菜乃、よね…森迫永依、奥宮の娘…木村文乃、浅井久政…山本圭、大蔵卿局…山村美智、島津豊久…田村亮、小侍従・きよ…筒井真理子、関所頭…河西健司、吉川広家…モロ師岡、美津…星井七瀬、豊臣秀頼…石黒秀雄、湘南(拾)…三浦春馬、祖父江徳心斎…古本新乃輔、孝蔵主…神津はづき、与次郎…おかやまはじめ、安国寺恵瓊…赤星昇一郎、小西行長…綱島郷太郎、宇喜多秀家…安田顕、島津義弘…岩崎ひろし、生駒親正…嶋崎伸夫、織田信雄…大柴邦彦、千利休・茶道指導…鈴木宗卓、酒井忠次…森田順平、織田長益…アンドレ、石川数正…大河内浩、毛利輝元…津嘉山正種、今川義元…江守徹、前田利家…唐沢寿明、細川幽斎(藤孝)…近藤正臣、天竺屋・侍女せつ…石川さゆり、明智光秀…坂東三津五郎、不破市之丞…津川雅彦、石田三成…中村橋之助、森蘭丸…渡部大、しの…岩倉沙織、初野…児玉陽子、やす…高松いく、かめ…悠木千帆、ふく…山本梓、はる…春口愛、かえで…飯沼千恵子、こう…池野浩子、はな…高橋あゆみ、又十郎…長澤壮太郎、平蔵…田上晃吉、助平…土平ドンペイ、甚八…中村浩二、安吉…浜上竜也、亀蔵…林洋平、小助…田鍋謙一郎、山内家家臣…今泉稔・大滝裕一、於美…眞野裕子、お宮…田島穂奈美、つる…芹沢侑子、側女…孕石きよ、竹之内五左衛門・殺陣指導…林邦史朗、大野治長…渡洋史、豊臣秀頼(幼少)…広田亮平、千姫…鶴彩未、徳川義直…永友イサム、徳川頼信…安達悠起、徳川頼房…小野健人、山内忠義…十川史也、拾…泉澤祐希、家康家臣…伊藤竜也、ちぐさ…星野園美、英二郎…黒川英二、一領具足の長…小野剛民、一領具足の長…右田隆・植木紀世彦・岡部務、山内家の兵…菊池康弘、行司…花ヶ前浩一、太鼓打ち…望月太和守、山内家の兵…清水良太郎、長宗我部の重臣…針原滋・清家利一、侍女…段丈てつを、組頭…南伸一、僧…井川鉄也、磯野平三郎…園岡新太郎、渡邉甚平…五宝孝一、大谷吉継…渡洋史、石田軍伝令…西條義将、安国寺軍伝令…小椋毅、吉川軍伝令…西本竜樹、長盛の家臣…古秦むつとし、黒田長政夫人…千野裕子、加藤清正夫人…吉田仁美、細川家家臣…山野史人、黒田家侍女…平山はづき、番卒…吉田陽一、山内家家臣…松本隆之、直江山城守…矢島健一、横田内膳…山田百貴、国松…照井宙斗、康豊家臣…高原知秀、踊り手…若柳恵三郎、勅使…宮前利成、町の女…井上裕季子、町の男…ミョンジュ、山内家家臣…村上和成・中松俊哉・本間康之、後陽成天皇…柄本時生、ちぐさ…星野園美、シテ…弘田裕一、ワキ…森常好、ワキツレ…舘田善博・森常太郎、笛…小野寺竜一、小鼓…鳥山直也、大鼓…柿原光博、太鼓…麦谷暁夫、地謡…観世喜正・古川充・佐久間二郎・小島秀明、後見…桑田貴志、下女…水島よう子、侍女…喜屋武ちあき、加乃…佐藤未来、早馬の使者…谷口公一、細川家家臣…木村栄・松下哲、武将…辻本晃良・真鍋誠志、長…河村満里愛、熊千代…高木涼生、初…吉川麻衣子、小督…新穂えりか、山内盛豊…坂口進也、山内一豊(幼少)…途中慎吾、山内康豊(幼少)…古澤龍之、家臣…河田啓悟・鷹山俊樹、物見の者…鈴木修平、伝令…ミック入来・吉野容臣・中谷隆信・河田貴一・伊勢浩二、三法師…藤田悠希、佐久間盛政…宍戸勝、柴田家家臣…観世喜正・弘田裕一、大男…長井満也、伝令…佐藤政之、ほら貝…福原百七、敵将…竹田寿郎、落合源太左衛門宗久…粟根まこと、茶々…野口真緒、初…松本梨菜、小督…原にち佳、織田信孝…飯沼誠司、明智光春…冨家規政、溝尾勝兵衛…吉野正弘、清水宗治…木下浩之、近習…山崎雄介、手下…西海健二郎、侍者…猪狩賢二、伝令…千葉清次郎、侍女…中野公美子・山野亜紀・瑠依、穴山梅雪…山本健翔、快川紹喜…松野健一、織田信忠…今市直之、伝令…大下源一郎・濱田和幸、近習…中尾尚人、シテ…中森貫太、ワキ…森常好、笛…一噌隆之、小鼓…観世新九郎、大鼓…柿原弘和、太鼓…助川治、後見…駒瀬直也・中所宜夫、地謡…観世喜正・遠藤喜久・奥川恒治・鈴木啓吾、扇屋…伊東千啓、踊り手…ふくまつみ・山口みよ子・広田さくら・山口麻衣加・橘要・西川申晶・水木扇升・若柳薫子・若柳華龍・若柳美香康、松寿丸…高木優希、別所長治…平田康之、村重家臣…石丸ひろし、地謡…観世喜正・長沼範夫、シテ…駒瀬直也、ツレ…坂真太郎、ツレ…中所宜夫、産婆…中村由起子、家臣…中川泰幸、徳次郎…ささの堅太、不破家家臣…平山陽祐、南殿…田辺愛美、赤尾清綱…仲野文梧、三田村…吉田敬一、万福丸…小林彩人、つる…寺島咲、うめ…斉藤奈々、かね…野村涼乃、とめ…柳桃子、小三郎…ささの貴斗、伝令…伊藤聡、倫…堀内恵、菊…橋口恵莉奈、玉(幼少)…今泉野乃香、治兵衛…柴井伶太、磯野丹波守員昌…伊吹剛、遠藤喜右衛門…北村晃一、もよ…あじゃ、明智家家臣…杉山聡、義昭家臣…茂木和範・中尾祐之、湛空…大門伍朗、近習…京一郎、若者…中村浩二、杉谷善住坊…松本元、三段崎勘右衛門…岡田正典、宮部肥前守…山崎海童、近習…渡辺成紀、家臣…小森薫、薬師…竹之内啓喜、シテ…観世喜正、ワキ…舘田善博、ワキ…森常太郎、鼓…観世新九郎、大鼓…柿原弘和・観世元伯、地唄…弘田裕一・駒瀬直也・中森寛太・中所宜夫、後見…長沼範夫・遠藤和久、福富平太郎…山上賢治、斉藤竜興…工藤和馬、安藤守就…宇納侑玖、日根野備中守…押切英希、竹中久作…小西大樹、足利義輝…山口祥行、氏家卜全…田中登志哉、稲葉一鉄…蔵本隆史、侍女…村上尚子、伝令…助川嘉隆・大田雅之、竹中家家臣…伊東達広、町人…赤崎ひかる、村長…坂口芳貞、義元の老臣…福本清三、林阿弥…窪田弘和、梁田政綱…岡田和範、織田信行…橋本啓輝、細作…石田晃一、伝令…田中壮太郎、斥候…青木哲也、大森常則…車邦秀、高台院(寧々)…浅野ゆう子、豊臣秀吉…柄本明、徳川家康…西田敏行、法秀尼…佐久間良子、織田信長…舘ひろし