新・風のロンド

第13週(2006年3月27日〜3月31日放送)

☆★
 ここのところ見せ場の薄かった大介(神保悟志)が最後の最後で大いに目立ってくれたのは救いだった。心筋梗塞で倒れた勢いのままに、ついに浩二(石橋保)を殺したことを告白する大介。己の失敗例を踏まえた上で、悔いなく生きるようにと夏生(小沢真珠)と英明(松尾政寿)の恋愛を奨励するあたりの、達観の境地と投げやりぶりが入り組んでくるあたりの複雑さが、大介ここにありという感じだった。
 ところが、麻美(田中美奈子)が英明を道づれに切腹心中したために、その後の夏生はリストカットを繰り返してとまったく救いのない展開になっていくのだから、大介の助言もとんだことでしたね。夏生の命に輝きが戻るように、そして英明の魂が安らかに眠るようにと、世界的なヴァイオリニスト・智(溝呂木賢)が病院の中庭で演奏するも、野次馬がそれほど集まらないのは奇妙といえば奇妙。夏生を迎えにやってくる英明の霊魂は幻想シーンなどではなく、それを追っ払おうとする関根(桑原和生)の格闘ぶりだけで描いてしまうとするばかりか、このドラマらしくあまりにも繰り返されるのでたまらず苦笑してしまうも、そのがんばってる感じはさすがの夏生にも通じたのだから、それはそれでよかったということで。(麻生結一)

第12週(2006年3月20日〜3月24日放送)

☆★
 「卑怯者、裏切り者、詐欺師」と自らをののしる言葉にも的確さを欠く夏生(小沢真珠)に何を期待出来るだろうか(「か」は反語の「か」)。そんな夏生をめぐって、ようやく正面衝突する英明(松尾政寿)と関根(桑原和生)がわざわざグラウンドにまで出向いて泥だらけになりながら殴りあう様は、ちょっと新しかったというか、かなり古めかしい西部劇風というか、どちらにしてもクスッとくる?!(麻生結一)

第11週(2006年3月13日〜3月17日放送)


 夏生(小沢真珠)に対して別荘で鉈を振りかざし、大爆発する麻美(田中美奈子)ももはや見慣れたか。もう会わないと誓うたびにまた会ってる、悲劇の二乗三乗がどうしてもわからない愚か者ぶりを遺憾なく発揮する夏生と英明(松尾政寿)の、運命という名の意志薄弱がここまで徹底されると、それはそれでおかし味になってくるのかもしれないが。(麻生結一)

第10週(2006年3月6日〜3月10日放送)

☆★
 夏生(小沢真珠)と関根(桑原和生)の挙式の案内状には1975年1月とある。なるほど携帯電話が出てこないはずだ。うらやましい時代でしたよね、なんてのん気に思っていると、半年後に夏生が妊娠。いきなり半年飛ばすのかと驚いていると、間髪入れずに昭和60年11月とテロップが出るや、夏生はすでに二児の母になっちゃってました。ってことは、いきなりに10年後ってことか。劇中の小道具とテロップは関連性がないとはいっても、年号と西暦のごちゃ混ぜはどうしたことだろう。
 どんなに時が経とうとも、大介(神保悟志)と美絵(魏涼子)、そしてよし(山本みどり)の三人は不動だなぁ、なんて思っていると、夏生の妊娠中によしがいち早く逝く。役柄的には当然も、もはや年齢の設定がデタラメに見えてしまうので、この死とて簡単には済まされない。美絵なんて、かつて槙(小沢真珠)の妹だったのに、いまや夏生の叔母ですよ。
 ストラディヴァリウスに似つかわしい100年に一人の天才であることが判明した智(溝呂木賢)は、10年間の留学後、世界的なヴァイオリイストとして日本に帰国。まさかその間、夏生と一回も会ってなかったって設定?! それじゃあんまりでしょ。
 どちらにしても夏生と英明(松尾政寿)は再び禁断の関係へと突き進む。いったい何回これを繰り返すんだろう。(麻生結一)

第9週(2006年2月27日〜3月3日放送)

☆★
 夏生(小沢真珠)に英明(松尾政寿)が付きまとうたび、麻美(田中美奈子)が狂気の塊になるという繰り返される悲劇。あまりに繰り返されすぎて、視聴者的にももはや悲劇か。夏生が英明を追い返すのに、消火器ばら撒くあたりはサービス精神満点だが、それがドラマ的に絡んでこないとさすがに浮いてしか見えない。(麻生結一)

第8週(2006年2月20日〜2月24日放送)

☆★
 麻美(田中美奈子)のエキセントリックも極まって、英明(内山眞人)を引き止めるためについに包丁で切腹?! 夏生(藤澤志帆)は大介(神保悟志)に無理やりに中絶させられ、傷ついた夏生は麻美こそ泥棒猫と言い放って、野代家と決別する。
 10年後の昭和49年、26歳の夏生は夏生(小沢真珠)に!

大介「ますます槙(小沢真珠)に似てきたな。一瞬、槙がいるのかと思った」

いや、まったくの槙ですよ。ネタとしてはそれなりに面白いのだが、ドラマとしてはもはや随分と遠くに感じてしまう。(麻生結一)

第7週(2006年2月13日〜2月17日放送)

☆★
 夏生(藤澤志帆)と英明(内山眞人)のいとこ的恋愛が話の中心のはずなのだが、どうしても麻美(田中美奈子)の連打される激高の方が印象に残ってしまう。手に針を突き刺したり、夏生に服をプレゼントするのも、実は火事の際のやけどの痕を意識させるためだったり。唐突に2年の時を経た後も、夏生から英明に送られた手紙を破くは、ばら撒くは、くわえるは、そして気絶するはでもう大変。
 夏生と英明もいったんは別れる決意をするも、槙(小沢真珠)と浩二(石橋保)もかつて愛し合っていたことを知り、再び結びついて夏生は妊娠。これでもかといろいろ起こってるんだけど、全部同じエピソードに見えてしまうのは困りもの。(麻生結一)

第6週(2006年2月6日〜2月10日放送)

☆★
 槙(小沢真珠)を返してくれというデタラメなお願いをする浩二(石橋保)に大介(神保悟志)は酒に薬を混ぜて眠らせ、放火に見せかけて浩二だけを亡きものにしようとするも、助けに戻った槙も逝ってしまったのはまったくの計算違い。それにしても、火の中で抱き合ったまま、そのままで焼け焦げていた二人を何度となく想起させようとするあたり、美絵(魏涼子)ならずともざらっとしたものがのどに引っかかるよ。
 その後は浩二を失った麻美(田中美奈子)が一人大爆発。智(谷野欧太)には

「この寝しょんべんたれが」

と下品に罵倒し、夏生(藤澤志帆)にはパンツをおろさせて折檻。大介まで誘惑して三兄弟制覇をもくろむあたり、主演・槙の死以上のショッキングで、もはやついていけなくなる。(麻生結一)

第5週(2006年1月30日〜2月3日放送)

☆☆
 倒れた槙(小沢真珠)がお守りを後生大事にしていたことを知って、例え不道徳であっても邪悪であっても、真実の愛こそを求めようとドサクサに言い出す浩二(石橋保)の何たる大胆。大体、この男の聖人君子を気取った判然としない態度がすべての歯車を狂わせた発端なのだけれど(これがないと、ドラマも盛り上がらなかったわけだけれど)。客観的に見れば、美絵(魏涼子)こそが大介(神保悟志)の最大の理解者なのだから、 この二人こそがくっつくべきだったのかもしれないが、それでは東海テレビのドラマにはならなかったということで。
 入院中の槙に代わって台所に立つ大介特製満州じこみの大陸カレーは子供たちには大不評だった模様。ここでの朗らかな空気は槙退院後の家族団欒にもちょっぴり持続されるも、依然として浩二の写真を隠し持っていた槙に気がつくと大介が激情して一変。その写真を焼き捨てて、浩二の家に怒鳴り込んでいくも、麻美(田中美奈子)の凄みにあえなく退散することに。その麻美は家捜しして、浩二が隠し持っていた槙の写真を発見し、ハサミを幾度となく突き立てる。こういう壊れキャラが出てくると、思わずニコニコとしてしまう視聴者の特殊心理もまたこの枠のドラマならではかな。
 大介、麻美の妨害工作にむしろ火をつけられた槙と浩二は、かつて引き裂かれる前に結ばれるはずだった別荘で密会し、失われた19年をあっという間に取り戻してしまうのだった。さらには槙の家でまで情事を重ねていると、その模様を娘・夏生(藤沢志帆)が目撃してしまうまでは普通かもしれないが、それが初潮と重なって夏生がダブルショックを受けるまでやってしまうあたりはやはり味が濃い。
 密会を続ける二人に襲い掛かるのは文字通りに嵐で、おかげで槙はずぶ濡れになったりもするが、情事中に浩二の義子・昇(大地泰仁)がバイク事故で死んでしまって悲劇は全開に。ただ、通夜の席で槙が麻美に焼香の灰を投げつけれたりする様を見ていると、悲しみよりも喜ばしさが上回ってしまう。大体、昇もほとんど出てきてなかったし。挙句の果てに、麻美に離婚を切り出す浩二は、パニックになって取り乱す麻美よりも明らかに問題のある人物でしょ。(麻生結一)

第4週(2006年1月23〜27日放送)

☆☆
 同じ「風の……」でも朝ドラの方はいっこうに展開してくれないが、こちらはその語り急ぐテイストが喜ばしすぎるほど。もう少し出し惜しみしてもいい気もするが、それではこの枠のドラマではなくなってしまうか。兄・健一(宮内敦士)が娼婦と心中したと思ったら、多額の借金を残しており、その返済のために槙(小沢真珠)が大介(神保悟志)のもとで体を売って働こうとするくだりから、槙と大介(神保悟志)の結婚までを一息で描いてしまうのだから、まったく大したものである。
 そこから15年、時間を飛ばしてしまう思いっきりのよさも、もはや定番とも言えるが、わかっていてもやっぱり気持ちいい。ようやく神保悟志も大介役に馴染んでくるも、もちろんまったく馴染んでない神保さんも最高でした。今後も事に触れて、取り乱して嫉妬に狂い、激高して悪態をついてくれるんでしょうね。
 もっとも驚いたいのは、瞬間出演のボブと結婚してアメリカに渡っていた設定だった美絵(魏涼子)が、朝鮮戦争でボブを失い、すでに帰国していたこと。結局、美絵はずっとドラマに出続けているわけ。(麻生結一)

第3週(2006年1月16〜20日放送)

☆☆
 辰吉(西田健)が、婚約を破談にと言い出したことに対しては、お互いを愛する気持ちでまだ対抗できた槙(小沢真珠)と浩二(石橋保)なれど、一郎(五森大輔)の訃報が飛び込んできたことで流れが変わる。跡取りのことを考えて、一郎の妻だった麻美(田中美奈子)と浩二を結婚させようとする辰吉に、浩二は当然反対するわけだが、自らの居場所、そして一郎の忘れ形見である息子の将来を考えた麻美は、浩二との結婚を望むように。このあたりの、母性愛と打算、そして性への乾きがないまぜになった感情ゆえにどんどんコワ〜イ女になっていく麻美の変貌ぶりは、間違いなく今週の見どころの一つだった。
 そして浩二はそんな麻美にからめとられるように(大介(神保悟志)が言うごとく、まさに年上の女の手練手管にやられる形で)麻美との結婚を呑むことになる。それを知った槙は傷ついて……と、ここまでは大いに楽しめたのだが、その後、槙の兄・健一(宮内敦士)が馴染みの娼婦と心中するまでの展開は、どちらかというと時間稼ぎの様相の方が少し強く出たか。そもそも大介が健一を信用して指輪を預けることからして、策士・大介としては少々隙が甘い感じで、しっくり来ない。さらに、ここまで槙、大介、浩二、麻美の四角関係で盛り上げておきながら、週をまたぐネタが健一の残した借金ってのもちょっと肩すかしだった。
 美絵(魏涼子)が言うところの“悪たれの中の繊細”をケレン味たっぷりに見せて、このドラマのノリをほぼ一人で作り出している大介=神保悟志には今後も期待したいところ。(安川正吾)

第1週(2006年1月5、6日放送)&第2週(2006年1月9〜13日放送)

☆☆
 お久しぶりの『風のロンド』は、早々に「愛の確執 悲劇の扉」がどんどんと押し開けられていくテンポ感が軽妙ですらあり、見せ方で凝りすぎてしまって停滞気味の連ドラが多かったりする中では、見るのが苦にならないあたりはラクチンで助かる。何はともあれ、この枠の常連である神保悟志が18歳の大介を演じてるところにまずはのけぞった。大介の兄・浩二(石橋保)と槙(小沢真珠)の仲むつまじい姿に嫉妬の鬼となる様の若々しさたるや!
 ストーリーを手短に説明したいも、そうはさせないところがこの枠のドラマたるところ。時は昭和17年、建設会社社長・辰吉(西田健)の長男・一郎(五森大輔)に召集令状が届くと、身重の妻・麻美(田中美奈子)を残して程なく出征。麻美は長男を出産するも、程なくして槙の父・正己(森下哲夫)が急死。今度は浩二に召集令状が届いたために、出征前に浩二と槙はお互いを「心と体に刻み込けようとする」が、すかさず大介は妨害工作をほどこす。
 ついに浩二と槙は離れ離れになるも、大介も大介で父・辰吉と衝突して満州へ。そして日本の敗戦。真っ先に帰ってきた大介(神保悟志)は相当に羽振りがよくなっていて、生活に困窮する槙を随所に手助けする。母・美佐子(大西多摩恵)は槙と大介の結婚を願うも、浩二を待ちわびる槙はいっそうに大介を嫌悪する。槙の妹・美絵(魏涼子)は家計を助けるためにか、米兵相手に売春している。その事実をバーを隠れ蓑に売春宿を経営している大介がキャッチ。同時期に槙の兄・健一(宮内敦士)が復員してくるが、精神は病み、生活は荒れ放題に。そんな健一を利用して、大介は槙にいいところを見せようと狂言の暴力事件を仕組むが、その裏工作を美絵に暴かれて、槙から大介はいっそう軽蔑されることに。大介はついに槙への思いを告げようとするのが、そのときに浩二(石橋保)が復員してきて……、ととにかくエピソードがてんこ盛りで、細かく考える間もなく変則第1週と第2週が終わってしまった。
 いかにもこの枠らしい激情ぶりはこれからのお楽しみなのだろうけれど、主演の小沢真珠の影がちと薄いのが気にかかった。単に神保悟志が濃すぎただけかもしれないけれど。(麻生結一)

新・風のロンド

フジテレビ系月〜金曜13:30〜14:00
制作:東海テレビ放送、ビデオフォーカス
企画:鶴啓二郎
プロデューサー:西本淳一、大久保直実、大越大士
原作:『風の輪舞(ロンド)』津雲むつみ
脚本:小森名津、福田裕子
演出:西本淳一、皆川智之、大垣一穂、藤木靖之
音楽:寺嶋民哉
主題歌:『胡蝶の夢』大黒摩季
出演:関根(野代)夏生&野代(有沢)槙(二役)…小沢真珠、野代大介…神保悟志、野代英明…松尾政寿、有沢美絵…魏涼子、能代智…溝呂木賢、関根志郎…桑原和生、野代(生田)悠子…高以亜希子、野代夏生…藤澤志帆、野代英明…内山眞人、能代智…谷野欧太、野代昇…大地泰仁、野代美幸…吉田紗也加、関根弘樹…稲田英幸、関根志穂…越井真優、渡辺寛二、永野典勝、村井美樹、永田恵悟、柳下季里、竹本聡子、青木和代、奏谷ひろみ、加藤翼、三谷侑未、真矢野靖人、小林太樹、菅野達也、青沼神対馬、高橋心桜、小熊恭子、藤井章満、松永英晃、江良潤、小田切健、赤星昇一郎、森富士夫、グレゴリー・ベカー、ウェイン・ドスター、トロイ・カスピ、大西耕治、日向勉、滝佳保子、高杉勇次、鈴木美佳、浅見小四郎、浜近高徳、森本臣泰、又野彰夫、日高ひとみ、以倉いずみ、天手千聖、澤山薫、有沢美佐子…大西多摩恵、有沢正己…森下哲夫、矢崎繁…並樹史朗、野代一郎…五森大輔、浜田大介、藤田清二、荒井眞理子、島田桃子、猪又太一、杉内加代子、白井沙樹、田原正治、本多英一、松熊明子、羽田圭子、田島俊弥、林京介、菊地流石、島綾佑、加々美瑠菜、金尾哲夫、和泉宗兵、和田京子、中野寛海、渋谷邦夫、若山慎、遠藤たつお、古賀道枝、中島淳子、宮本武士、高山麻美、牧田明子、高原里佳、蒲田哲、加門良、志野隆夫、ナレーション…宮寺智子、野代浩二…石橋保、有沢健一…宮内敦士、野代よし…山本みどり、野代辰吉…西田健、野代麻美…田中美奈子