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恋におちたら〜僕の成功の秘密 (フジテレビ系木曜22:00〜22:54)
制作著作/フジテレビ
プロデュース/現王園佳正
アソシエイトプロデュース/石原隆
脚本/佐藤嗣麻子
演出/鈴木雅之(1、2、5、8、11)、成田岳(3、4、7、10)、澤田鎌作(6)、大木綾子(9)
音楽/佐橋俊彦
主題歌/『恋におちたら』Crystal Kay
出演/鈴木島男…草なぎ剛、高柳徹…堤真一、白川香織…松下奈緒、鈴木まり子…木村佳乃、安藤龍太…山本耕史、神谷陸…谷原章介、星野守子…佐藤江梨子、藤井裕美…滝沢沙織、宮沢修…鈴木浩介、山崎雄也、キモサベポン太、岡田薫、品川景子、積圭祐、吉村玉緒、芹澤豊秀、馬場佑樹、豊田久…金田明夫、鈴木藍子…高林由紀子、田山涼成、小市慢太郎、河原さぶ、藤村俊二、田口浩正、阿南健治、入江雅人、小原雅人、剛州、櫻庭博道、神山繁、石丸謙二郎、中根徹、宮田早苗、菊池均也、村井克行、藤田宗久、山崎満、窪園純一、草村礼子、山本圭、鶴見辰吾、桐野七海…和久井映見
ほか

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第11回(6/23放送)
☆☆
 島男(草なぎ剛)と高柳(堤真一)らの会社「鈴木ねじ」は、島男の類い希なるプログラミング能力で、まったく新しいサーチエンジンを開発。なかなかユーザーが広がらず、スポンサーも集まらずの状態を救ったのは、アメリカの大手プロバイダ、ブライトオンラインとの契約だった……。って、よりによって最終話のクライマックスに、これほどまでにヒネリもカタルシスもない解決法を持ってくるとは、前回レビューでの悪い予感が当たってしまった。先だって神谷(谷原章介)が盛んに「ブライトオンラインがある」と冗談半分に繰り返していたのは、そんなイージーな解決にはしませんよという作り手の意思表示かとも思っていたのだが、むしろ伏線のつもりだったってこと?その前に展開された、高柳が初めて現場(=島男)の大変さを理解してかばう気になるってのもずいぶん今更なエピソードだし、高柳が島男たちを裏切って桜庭(鶴見辰吾)の下でフロンティアの社長に返り咲こうとしている(ように見える)というシーンもサスペンス感は全くなし。そうなると、今回のメインの話って一体なんだったんだろ?
 ともあれ、島男・高柳陣営が一気に巻き返してフロンティアが再び高柳の手に戻るという顛末よりも、まり子(木村佳乃)と龍太(山本耕史)の結婚式の方に時間をかけるあたりの生ぬるい語り口だけは、終始一貫していたと言えるか。まり子の投げたブーケが豊田(金田明夫)の手に渡るなんてお茶目なシーンに限って見せ方が冴えるのも、評価するべきなのかどうなのか。主役格はもちろん、「私、××な人って嫌い。はい、サービス」でお馴染みの守子(佐藤江梨子)などに至るまで、各キャラクターの立ち方は十分に楽しめるレベルだっただけに、ディティールをキャラクター任せにして既定の筋をなぞるだけだった物語が尚のこと残念に感じられた。(櫻田もんがい)


第10回(6/16放送)
☆☆
 会社を追われて無為の日々を送るのみだった島男(草なぎ剛)が、高柳(堤真一)とともに起業するまでが描かれた今回。島男と高柳は、いわば弟子と師匠の関係から、ライバルとなり、敵となり、そしてついに今、同志となったということなのだが、二人の関係が変化したことによるドラマティックな感慨を殊更に感じさせるには至っていないのが残念なところ。島男が高柳と組むことを決心するまでの過程も、会話が積み重なるばかりで面白味に欠けた。相変わらず、役者陣の好ましさに救われている感が強い。それでも、その二人に七海(和久井映見)、神谷(谷原章介)、そして香織(松下奈緒)も加わって、島男の実家で会社を興すというラストの構図には、確かに心ときめくものが存在していたとは思う。
 だが、ことビジネスに関連した描写のこれまでの出来映えを思えば、ここから彼らが起死回生をはかることになるであろう最終回の展開については、全く期待できないというのが本音だったりするのだが。(櫻田もんがい)


第9回(6/9放送)
☆☆★
 ロイドブラザーズの桜庭(鶴見辰吾)と対立した島男(草なぎ剛)は、社長就任パーティもしないうちから、社長を解任されるという憂き目に。しかしその原因は、桜庭を信用してロイド側の取締役を多く入れすぎてしまったがため……って、甘いというか、同情の余地無しというか、相変わらず展開がラフというか。島男が大学生の時に友人と起業して裏切られた経験があることを考えると、あまりの進歩のなさ(というか、そんなエピソード、忘れ去られてる?)。六本木の超豪華マンション(夜景は書き割り)で龍太(山本耕史)に対して

島男「お前やっぱり、ビジネスに向いてないよ」

って言ったのは「それはお前だー!」っていうツッコミを入れるところだったってことでしょうか。とにかく、このあたりがちぐはぐな印象を与えるためにどうしてもドラマに勢いが出ない。
 その後、“島男が売り上げ売り上げと言ったせいで”突然死してしまった子会社社長の幼い息子が「お前のせいでお父さんは死んだんだ」と島男を責め立てる。ここもやりたかったことはわかるんだけど、子どもがそこまで世の中の仕組みを理解して、会ったこともない島男のところまでやってくるものだろうかと考えると、その切なさにどうにも乗り切れない。
 いいところを見つけるなら、島男がふらふらと実家へと帰ってきて、久しぶりにまり子(木村佳乃)や龍太と食卓を囲むシーン。涙ぐみながら

まり子「お帰りなさい」

と言うまり子も印象的だが、龍太がカワハギに関するゴタクをまくしたてながら、さりげなく励ましてる風なのもいい。カワハギの肝は醤油に溶いて食べる、なんてあたりは、会社がらみの話とはまったく逆で、ディティールの良さを感じさせるところ。
 一方、療養中の高柳(堤真一)が、初めて七海(和久井映見)と会った美術館へと足を運び、かつては“この青の原料であるラピスラズリは当時高価なもので”なんて視点でしか見られなかった絵の美しさに気づくシークエンスも好感の持てた部分。こういう感覚的なシーンは決して悪くないのだが。って、以前にも似たような締め方しましたけど。(櫻田もんがい)


第8回(6/2放送)
☆☆★
 あれよあれよで時の人となってしまった鈴木島男(草なぎ剛)の、冷徹なビジネスパーソンへの変貌があまりにもデジタルな感じはするものの、そのあたりで辛うじて説得力を与えてくれていたのが草なぎ剛の存在感か。そんな、飛ぶ鳥を落とす勢いの島男と、それが面白くない高柳(堤真一)との対立の果てに、高柳は島男をクビに。同時にフロンティアの面々は、島男による敵対的買収を警戒する羽目になる。昨日までの「友」が突然「敵」になってしまうその構図は大いに楽しめたけれど、その顛末は相変わらずラフで、島男は意外と簡単にフロンティアを買収してしまったりして。ロイドブラザーズの桜庭(鶴見辰吾)が提供する資金力を武器に、というのはわかるが、物事がここまであっさりと島男ペースに進んでしまうのもちょっとつまらない。自らが買収の鬼だった高柳なら、自分の会社にも当然対抗策を用意していて然るべきだと思うのだけど、ひたすら大株主に電話をかけ続けるだけ?島男のみならず高柳までも別人になってしまったようだ。その後、社長室から追い出された高柳はさらに、かつてその会社を買収して恨みを買っていた元社長・森村(入江雅人)に刺されて、雨の中倒れ……って、ドラマティックではあるけど、森村に刺す覚悟があるならもっと前にやってるんじゃないの?なぜに今よ。
 一方、島男が有名人になった途端に、不倫相手だった谷崎(小原雅人)から、よりを戻すから島男を紹介してくれと言われるまり子(木村佳乃)というシチュエーションは確かにちょっと切ない。まあ、まり子と谷崎のこれまでの描写があまりにも薄い故に、ドラマ的な感慨を産むまでには至ってないのだけど。大体、こういう展開にするなら、不倫じゃない方が断然切なかったよなあ。こういうところが行き当たりばったりに見えてしまう所以。そして、そんな谷崎を龍太(山本耕史)がカツオで殴打してめでたしめでたし、って、気にくわないヤツは殴れば万事解決ですか。ミケーレの時もそうだったけど、こういう無自覚に暴力的なシーンには困ったものだな。「カツオの目線カメラ」はちょっと面白かったけど。
 ラストシーンで、いわば島男を定点観測していたガードマンの豊田(金田明夫)に「自分の顔を見てみろ」と島男が言われるのは、なるほど、このためにこのキャラは存在していたのかと思えたところ。それにしても、このとき島男に「自分は何も変わってないのに」と述懐させるぐらいなら、つくづくその変化に関してはもうちょっとデリカシーのある表現が欲しかったところだ。少なくとも先週のラストでは、自分の中に起きつつある変化を島男は認識していたわけだから、その後のさらなる変貌も自らの変化を受け入れた結果としたほうが、リアリティがあったと思うのだが。自分の魂のほんの一部だけを売ったつもりが、思っていたよりも遙かに多くのものをなくしてしまっていた、みたいな心情は全く見えてこない。全体として、娯楽作品としてはそれなりに見どころがあるのは認めるが、タイムリーかつ切実なテーマを扱っているわりに終始絵空事なのはどうにも評価できない。(櫻田もんがい)


第7回(5/26放送)
☆☆☆
 これまでのエピソードをつぶさに見てきた身からすれば、東條貿易の件やミケーレの件が評価されて鈴木島男(草なぎ剛)が一気に業界の有名人になってしまうという展開はいささか説得力に欠けると言わずにはおれない。とはいえ、1エピソード毎にリセットできるのが連続ドラマのいいところでもあるわけだし、何より高柳(堤真一)の

高柳「ビジネスにはいろんな段階があるけど、あるとき、飛躍的にそのステップを遂げることがある」

との言葉通り、名が知れ渡るときというのは確かにそういうものなのかもしれないとも思う。ともあれ、知名度を上げた島男がヘッドハンティングされることを防ぐ意味で、高柳は島男をフロンティアの取締役に指名。高柳のやり方には嫌気がさしていた島男だが、その話を呑めば借金が返せて、ねじ工場兼自宅も手放さなくてすむとあって大いに迷う。最終的にはまり子(木村佳乃)のことを考えてオファーを受け入れることにするのだが、まり子が銀座のクラブでバイトしてたなんて視聴者も初耳だよ。不倫話にしてもこの話にしても、まり子関連のネタはどうも行き当たりばったりだなあ。
 しかしそんな印象を補って余りあったのが、取締役となった島男のその後の顛末。島男が香織(松下奈緒)と宮沢(鈴木浩介)を従えて真の意味での“重役出勤”をする様は、初回あたりを思えば、ある種のカタルシスが確かにあった。島男は初仕事として映像制作会社ギガワークスとの提携話をまとめようとするが、ギガワークスの社長は、フロンティアに大金を使わせた挙げ句に同業他社と契約。それを島男が知るシチュエーションのラフさ加減は相変わらずながら、島男がその裏切りに対して大胆かつ残酷な報復をするのは、背徳的な爽快感さえ感じられた部分で。かくして、

高柳「ビジネスには麻薬のような力がある。自分はそうじゃないと思っていても、知らず知らずのうちに、その力に取り込まれていくんだ」

という高柳の言葉通りに、島男は変貌していく。

島男「僕、気持ちよかったんです。(中略)僕はただ、勝つことだけを考えていました。そしてそのゲームに勝った時、今まで経験したこともないような快感を覚えたんです」

と香織にもらした後、フラッシュを浴びながら見せた冷淡な表情にはゾクゾクさせられた。この作品に本来あるべきだったサクセスストーリーらしいケレン味と、背中合わせの苦々しさが、ここへ来ていい具合に浮かび上がってきたようだ。(櫻田もんがい)


第6回(5/19放送)
☆☆★
 まったく価値がないと誰もが思う斜陽の会社・東條貿易を、高柳(堤真一)は買収すると表明する。この意義のない買収に市場は敏感に反応し、フロンティアの株価は下落を続ける羽目に。だがその買収は、父親の親友だった東條社長(山本圭)を高柳が助けようとしているが故らしい。それを知った島男(草なぎ剛)は、高柳に強く共感するのだが……。高柳が急にいい人になっちゃって、まさかキャラ替え?と思いきや、やはり裏があるあたりの眩惑ぶりは楽しめた。これまでのエピソードの中で、話の骨子という意味では一番しっかりしていたかもしれない。しかしそうなったらそうなったで、今までのような軽快なムードゆえの良さみたいなものが希薄になってしまったのはちょっと惜しい気もするのだが。ないものねだりですかね。
 蛇足。龍太(山本耕史)がまり子(木村佳乃)の会社の受付で名乗る時の「ドラゴンの龍にぶっといです!」は、島男の「アイランドの島に男です」の変化型として面白かったけど、ドラゴンじゃ龍なのか竜なのかわからんじゃないの。それも笑いどころなのかな。(櫻田もんがい)


第5回(5/12放送)
☆☆★
 スノビッシュなお店で食べるスズキのカルパッチョより龍太(山本耕史)の刺身のほうがおいしい、と香織(松下奈緒)が微笑む冒頭シーケンスからして爽やかでいつもより好印象。そして本日のメインエピソードは、大手旅行会社エアドリームとフロンティアが提携を口約束したシーンで幕を開ける。それが漏洩して新聞にスッパ抜かれて提携を取り消されて、の流れは相変わらずラフな作りなのだけど、エアドリーム案件の担当者にして漏洩させた張本人である神谷(谷原章介)が島男(草なぎ剛)のペースに引きずられて普段しそうにないことを重ねるあたりは、役者2人の好演もあってかなり楽しめる出来映えだった。別荘の前で4日間も張り付いた島男たちの行動がエアドリームの社長の気持ちを動かすというラストは既定路線だけれど、神谷が島男に触発され、高柳(堤真一)に

神谷「鈴木島男は、間違っていなかったと思います」

と表明するまでになる変化こそをメインで描いたのは大正解。こういう結論なら、素直にすがすがしいと思える。
 ともあれこの一件で、宮沢(鈴木浩介)までも“アイランド(=島男)のシンパ”になってしまったらしく、高柳は人知れず焦燥することに。しかし、七海(和久井映見)曰く、これでシンパは4人(七海、神谷、宮沢、そして香織)だそうだけど、そこまで来ると他の社員にもシンパがいそうなもので。重箱の隅と言えばそうなのだが、こういった些細な台詞で、物語世界の小ささを露呈してしまっているのは少し残念に思う。細かいところに目をつぶれば、全体的なトーンは決して悪くないのだが。(櫻田もんがい)


第4回(5/5放送)
☆☆
 フロンティアが、買収によって、CDを一切発売しないレコード会社を設立。御披露目イベントとして有名テノール歌手のミケーレを日本に招待し、コンサートを開いて、その勢いで専属契約を結ぶことを画策する……っていう出だしからして、もうどこからツッコんでいいかわからないほどツッコミどころ満載なのだけれど、4回めともなればこちらにも耐性ができているのでそこはぐっと我慢。ずっと不機嫌なミケーレに対して夜の接待をするように、香織(松下奈緒)は高柳(堤真一)から暗に迫られ一度は断ったものの、契約で失敗した島男(草なぎ剛)をフォローするため結局ミケーレの部屋に行くことに。それを知った島男が止めに入って……という流れはいいのだけど、実際には何もしてないミケーレを島男が殴ってしまうのはやり過ぎじゃないの?いくら正義の人でも、すぐ手が出ちゃう人は尊敬できませんよ。さらにその後、その件を責める高柳の

高柳「正義じゃ飯は食えないんだよ」

という挑発的な台詞にどう島男が応えてくれるのかと思いきや、件の暴力行為を通して島男から香織への愛に感じ入ったミケーレが、自分の恋の障害を乗り越えることも決意してめでたしめでたしって。単なる棚からボタモチ、もしくは

高柳「ただの結果オーライだ」

はい、まったくその通り。そしてラストは、六本木ヒルズ近くのビルの屋上庭園で即席の豪華コンサートを開くミケーレ。どこか上の方から聞こえてくるその歌声に、六本木ヒルズを歩いている人たちは皆思わず聞き入り、それが大きな話題となって……って、歌ってるところも見えないのに?ここで説得力のある絵作りをしてくれればまだ後味がよくなっただろうに、ミケーレのすぐそばで見ているのは島男と香織ともう一人だけって絵じゃ、そのインパクトはちっとも伝わってこない。お話がユルめだからこそ、こういう見せ場はもう少し頑張って欲しかった。
 良かった点を述べるとすれば、今回スポットライトが当たった松下奈緒。初回あたりに比べるとずいぶん表情も柔らかくなってきたし、いい雰囲気を漂わせ始めたように感じられる。島男のために“女の武器”を使うことを決心するあたりのシーンはなかなか魅せてくれた。(櫻田もんがい)


第3回(4/28放送)
☆☆★
 今回は、あらゆる営業を断り続けている頑固な和菓子屋を島男(草なぎ剛)がその誠実さで懐柔し、ネットに出店する契約を結ぶまで。ずいぶん見やすくなった印象なのは、ITがらみの描写が少かったせいもあるかな。まあ、島男が数日で和菓子の作り方をそれなりにマスターし、“きき小豆”までできるようになってしまうあたり、和菓子を仕事にしてる人が見れば、前回・前々回同様にツッコミどころ満載だった可能性も否めないのだが。しかし、身を粉にして買いたいモノのことを詳しく知ろうとするという誠意を見せる島男と、マイルドに接してみせても最終的には金にあかしてホテルを買収する高柳(堤真一)とを逐一対比する見せ方ならば、納得のいくレベルだったのでは。
 それにしても草なぎ剛が、楽器を持つ子供と川辺で佇んだあとに、厨房に入ることになると来ればどうしても『僕と彼女と彼女の生きる道』を思い出しますな。川辺のシーンでの味わい深さはもはや草なぎ君の専売特許ってところか。一方のホテルのエピソードでは、藤村俊二が演じたホテルのオーナー・小倉はまるで、NHKの朝ドラ『ファイト』から抜け出てきたかのよう(ちなみに『ファイト』の脚本は『僕と〜』と同じ橋部敦子さんですね)。そしてその小倉が高柳に言う

小倉「(ホテルを)売らない理由、ご存じですかな。あんたが、嫌いだからだよ」

という台詞は、やっぱりフジテレビからあの方へのメッセージ……? なんて、またしても本筋から離れた楽しみ方してますけど。(櫻田もんがい)


第2回(4/21放送)
☆☆
 サクセスストーリーである時点で物語的に新味が生まれにくいのは仕方ないにしても、それならば尚のことディティールが大切だと思うのだが、そういったことに気を遣う気は更々ないらしい。ドラマなのだからある程度の嘘は見過ごすべきなのだとは思うけれど、ことITビジネスがらみの部分では、台詞的にも展開的にも見せ方的にも、「こんなもんでいいでしょ」的な処理があまりに多すぎるように感じる。些細な事ながら、高柳(堤真一)のマンションから見える夜景がかなり露骨に書き割りなのも興ざめで、せめて「金持ちの生活」の描写ぐらいは、この作品の根幹に関わる部分としてもうちょっと気合い入れてやってもいいんじゃないかと思うんだけど。
 しかし、そのあたりが微妙な出来の場合に、見るべき作品か見なくてもいい作品かを分けるのはキャストだとするならば、この作品は見るべき作品ということになるだろう。成功しそうな、でもやっぱりダメそうな主人公の微妙なニュアンスをきっちり表現する草なぎ剛もさることながら、会社のシーンでは堤真一vs和久井映見、実家のシーンでは木村佳乃vs山本耕史という芸達者同士の取り合わせがなんとも絶妙で、他のことはどうでもよくなるほどに見応えがある。そういえば、やはり会社での絡みがある和久井映見と谷原章介は、前クールの大傑作「華岡青洲の妻」で夫婦を演じた二人ではないですか。まあ、第2話にしてこういう楽しみ方しかできないとも言えるのですが。(櫻田もんがい)


第1回(4/14放送)
☆☆
“アイランドの島に男”こと鈴木島男(草なぎ剛)は、福引きで当たったハワイ旅行に母親と行き、IT長者の高柳(堤真一)とその秘書・香織(松下奈緒)と運命的な出会いを果たす。香織とぶつかってプールに落っこちるそのきっかけからしてかなりラフな作りなのだが、このあたりはまだ初回の勢いということで許容範囲。ワンカットもどきでシーンが連なっていくなどの映像効果も楽しめた。しかし、ハワイから島男が帰ると実家のねじ工場がいきなり倒産していて、一切合財を差し押さえられているというあたりから、そのラフさ加減が鼻につき始める。
 母親の死去を経て、「困ったことがあったらいつでも訪ねておいで」と言った高柳に会いに行こうとする島男だが、“要注意人物”としてマークされ、高柳の会社「フロンティア」にはなかなか近づけない。それでは、と「フロンティア」が入るビルの警備員として働き始め、まんまと会社侵入に成功。他の社員が不在なのをいいことに、社長室にまでずかずか入っていこうとするが……って、呆れるを通り越して怖いでしょ、それ。警備会社の人が見たら怒るんじゃなかろうか。
 その頃、「フロンティア」は、社運をかけた一大プロジェクト“世界初の、リアルタイムストリーミングによるサッカー中継”を控えていた(ちなみにこの中継、視聴者の意見がそのまま試合に反映されるらしいですよ。一体何がどう反映されるのかはぜひ詳しく聞いてみたいところ)。かくしてクライマックスは、中継直前になって「フロンティア」のサーバーがアタックをかけられたのを、島男が見事なプログラミングの腕前で救うという顛末(実は島男は、学生時代に天才プログラマーと呼ばれるほどの存在だった!)。このあたりの一連の描写は、そのトラブルの見せ方にしろ台詞にしろ、素人目に見てもツッコミどころが多すぎて苦笑するしかない。コンピュータウィルスにやられた結果、ディスプレイにはドクロマークが浮かぶって、やっぱりドラマ的にはそういう表現しかできないってことなのか、それともハナっからその程度でいいと思ってるのか。この企画のキモであるはずの「IT業界」の描き方がこれでは、先が思いやられる。
 それにしても木村佳乃が草なぎ剛の妹役ってのはどことなく違和感があるなあ。実年齢的には何の問題もないようなので、やはり前クールの「相棒」における木村嬢の厚顔ぶり(褒めてます)があまりに印象的だったせいでしょうか。(櫻田もんがい)




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