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汚れた舌 (TBS系木曜22:00〜22:54)
製作/テレパック、TBS
プロデューサー/矢口久雄
作/内館牧子
演出/佐々木章光(1、2、5、6、9、11)、藤尾隆(3、4、7、8、10)
音楽/栗山和樹
主題歌/『肌のすきま』dorlis
出演/江田千夏…飯島直子、涼野杏梨…牧瀬里穂、涼野耕平…加藤浩次、涼野弘子…森口瑤子、涼野光哉…田中圭、大川広次…堀部圭亮、吉田桂子…内藤陽子、涼野亜子…森迫永依、木下浩之、藤夏子、片岡富枝、吉村涼、丸山美里、津村鷹志、佐々木研、上良早紀、エド山口、坂東美佳、阿桑有里子、朝比奈ゆか…網浜直子、江田典子…松原智恵子、白川隆一郎…藤竜也
ほか

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第7回(5/26放送)
☆☆☆
 ついに千夏(飯島直子)は白川(藤竜也)との密会現場を母・典子(松原智恵子)に押さえられてしまった!千夏の悔恨はその場の母に「寝る」などという言葉を使わせてしまったこと。お金は一切介在してないと、これは純粋な恋愛関係だと言い張る2人に対して、「あんたたちの舌、ちょん切ってやりたいわ」とののしりの言葉を吐く典子が繰り広げる恋愛論があまりにもダイレクト。

典子「女は20歳年上の男の財布を狙い、男は20歳年下の女の体に目がくらんでるだけ」

結局は花屋の出店に利子なしで千夏が白川から500万円を借りていたことを知って、殺人犯が娘の体に支払った500万で建てた花屋でやっと幸せになれたと喜んでいた自らを一番の大馬鹿者だと自嘲する典子もまた悲しい。自らを呪い、あんな薄汚い花屋はつぶれろと懇願する典子に、あんながんばってる花屋は神様がつぶさないと切り返す白川。ここの究極の恋愛的修羅場を内館ワールドと言わずして何というか。
 イチゴは見たくないから食べちゃう杏梨は、日本中のイチゴを食べつくすつもりか! 千夏をお姫様だっこする耕平(加藤浩次)の残像を一言で言い表すならば、

杏梨「絶対ホテル!」

で決まりでしょう。そんなイチゴの食べつくしを加勢する光哉(田中圭)をもまとめ見して、やっぱりニヤリとする弘子(森口瑤子)の亭主女房論、「亭主がよその女に目がいく原因の半分は女房にある」の半分の根拠は?

弘子「ふてぶてしくて頑固で強情で権利ばっかり主張していけずうずうしくて……。あらっ、一般論よ。でも杏梨論になっちゃってるか。 アハハハ」

との過剰に軽やかな発言を聞き通すと、半分の根拠も杏梨にあったかと妙に納得。
 弘子=内館牧子は歴然も、千夏=内館牧子を印象づけたのが、遠くから見ると華やかな東京タワーは、そばによると巨大で荒々しく、恐怖を覚える東京そのものの怖さとの恨みのこもった東京論。引き続いて弘子の人間論。「世の中で一番情けない人間は、やられっぱなしの人間。自分の人生を大切にするならば、やり返すかとっとと逃げるか」との二者択一で、もちろん弘子がやり返す派とするならば必然的に……。
 金沢名物紙ふうせんに込めて、ふわりふわりと行け、と白川から千夏へのメッセージは託されるも、ネットの中傷の書き込みに加えて、友人のゆか(網浜直子)の結婚、妊娠でフィレンツェへとの幸せ報告を聞かされるならば、さすがの千夏も臨時休業の張り紙に、店でワインでもあけたくもなるか。そんな千夏を唯一叱ってくれる存在にまでに地位を確立した耕平に対して、謝罪するべくカレンダー撮影中のフォトスタジオに足を運んだ千夏は、耕平からこれでもかと頭ナデナデされてるさまを、富士山花店に作品提供することになった白川に目撃されてしまう。毎度毎度、ラストの山の作り方には感服です。このセッティングをやったのも、やっぱり弘子だったりするんだけど。(麻生結一)


第5回(5/12放送)
☆☆★
 「女は責任感と愛情の区別がつかない」lとは、やはり女性を突き放すことにかけてはこの脚本家の右に出るものはいない。台詞の一言一言に憎しみがこもってるというか。「殺せ」「殺す」と物騒極まりない言葉を吐き続けていた典子(松原智恵子)が、ついに白川(藤竜也)を包丁で刺す。ここの2人の攻防はさすがに見ごたえ満点。ちなみに白川はかつてフランス人の元妻にも刺されており、女性に刺されたのはこれが2回目とのこと。
 母・典子こそが白川を刺したのではと疑って、母の目前でナイフを振り回してみたりと、その不穏さでは千夏(飯島直子)も負けていない。「つい無意識に図らずも」唇を重ねた耕平(加藤浩次)から、ウキウキしてるときに大人の女は風船を買わないとズバリと指摘されて、白川とは違った安らぎを耕平に感じてしまう千夏だったが、風船が割れて我に戻るか。お台場か横浜の港の見えるホテルへの誘いは断られるも、意地になって風船を割り続ける千夏を後ろからそっと抱いて、やる気満々だけではない一面を見せた耕平はいっそう株を上げたみたい。
 デパートのコンペに富士山花店を推薦してもらったお礼を言うために金沢まで足を運んだ耕平は、白川の男っぷりに羨望の思い。

千夏のNR「同姓があこがれる白川の女は私よと、快感が貫きました」

主人公の心根を引き剥がす内館さんの筆致に畏怖の念しかない。
 さて第5回の弘子(森口瑤子)だが、杏梨(牧瀬里穂)に口答えされた借りはすぐさま返すといわんばかりに、杏梨に同行した結婚式の二次会からおびき出して、耕平と千夏をニ人きりに引き合わせることに成功。ところが、そんな2人のツーショットをにらみつける杏梨の眼差しが菜の花畑の中に!というわけで今回の弘子v.s.杏梨は杏梨の方に軍配?!(麻生結一)


第4回(5/5放送)
☆☆★
 面白くなってもらわないと困るこのドラマに、いよいよエンジンがかかってきた模様。暴力と変態とエゴの塊と白川(藤竜也)の悪口を吐き続ける典子(松原智恵子)は、卒業生名簿に黒川先輩の名前がないとこを確認して、千夏(飯島直子)と白川の関係のすべてを確信する。
 熱っぽくて店を早退した弘子(森口瑤子)は女子大時代に杏梨(牧瀬里穂)とピアノ三重奏を演奏していた友達に、ピアノのソナチネ程度のおたまじゃくしの譜めくりを頼まれて、笑顔が固まっちゃった。政財界の面々との食事会と嘘をついてその場をエスケイプした弘子は、川べりで涙を流しながら肉まんを食べる。死んでしまった父親の枕元で歌ったのは「舟歌」だったか。翌日、当然のごとく寝込むことになったベッドの俯瞰画が悲しいやらおかしいやら。
 白川と温泉を訪れていた千夏は、集中豪雨により注文の花の手配することが出来なくなったことを知らされてパニックになるが、結局は助けを求めた耕平(加藤浩次)の機転によって救われることに。これで千夏と耕平のラインが本格的につながった。目先の利益に追われて、同業者に甘える千夏をしかりつける白川の厳しさとの対比が鮮やかだ。(麻生結一)


第3回(4/28放送)
☆☆★
 知っててやりやがった継母・弘子(森口瑤子)の企みで、千夏(飯島直子)と耕平(加藤浩次)、杏梨(牧瀬里穂)と弘子のフルキャストがカウンターに横並び。酔っぱらったふりにろれつが回らなくなったとしても(これさえも仕組まれた演技かと疑ったが)、千夏にまでピアノを弾けないという一点で共感を抱くあたりの一貫ぶりに、今回の弘子も期待大だと思わせる。大川(堀部圭亮)のあの店は神楽坂の模様。
 次の日、耕平が「フルール・ドゥ・さくら」に赴いて、再度千夏を食事に誘おうとしていたら、今度は亜子(森迫永依)連れで杏梨現る。そんな亜子に典子(松原智恵子)の醜態そのものである100円ショップで購入した袋満杯のおもちゃをプレゼントしちゃう千夏も負けてません。
 二日酔いがなおった弘子も好調を維持。ママ=弘子の血が自分にも流れていることに恐れおののく息子・光哉(田中圭)に対して、それは大丈夫との根拠は、パパのぼんくらな血と半々でちょうどいい具合ってそんな。
 偶然にデパートに立ち寄った典子は、そこで白川(藤竜也)もメンバーの一人である四天王展のポスターを発見。プレス用の顔見世に乗り込むも門前払いされてしまったものだから、手首だけでは死にきれず、頚動脈まで切って、苦しんで苦しんで、血の涙を流して死んでいった夫の恨みとばかりに新聞紙を細かく切り刻む。こちらの恨み節は弘子の悪戯っぽい感じは皆無でひたすらにダーク。
 新作と並んで四天王展に出展しているしている茶碗は、花屋のための物件を借りられずに不幸せそうだった千夏に、白川が振舞ったあの日のうどんの何百万もするどんぶりだった、なんて話のドロっとした話の感じはいかにもっぽくてニヤリとさせられる。
 再開発で建築される赤坂ヒルズのメインビルの花の仕事のすべてを「富士山花店」が受注したことに歓喜する耕平は、家族と誠実に向き合いたいと言い放った舌の根も乾かぬうちに、白川に約束をすっぽかされた千夏のもとに直行。クリーニング屋の見立てで千夏のコートについた土は園芸の土じゃなかったことに気づかされた典子は、その直後に週刊誌に取り上げられていた四天王展の記事の写真に、千夏が写ってることを虫眼鏡で発見!この虫眼鏡分で、この第3回は弘子よりも典子の方が怖かったって、ドラマの見方が間違っててすみません。(麻生結一)


第2回(4/21放送)
☆☆★
 自殺でしか真実を訴えられなかった千夏(飯島直子)の父の真相が白川(藤竜也)によって冒頭触れられて、嘘のない言葉が千夏の父を死に追いやったことが暗にほのめかされる。そんな2人が人目につかないように訪れた料亭は、高校の同級生ゆか(網浜直子)が影笛でもてなす風流店。ここにW−NAOが再結成されるも、ゆかはこの料亭の女将ではないみたい。これから買うというこっちの話を追いかけるならば、『黒革の手帖』になっちゃう?!
 千夏(飯島直子)が金沢造形大学の造園の講座を受講しているとの嘘が母の典子(松原智恵子)にバレてしまって、だからといってヒーローアクション物の悪役の親玉よろしく「殺せ」と命ぜられている白川に会ってるともまさかいうわけにもいかず、千夏が思わずついた不倫相手の名前という新たなる嘘が、

「黒川さん」

って、真実とあまりにも至近距離過ぎやしませんか。当然典子はその嘘を見破って、レンコンを握り潰してしまうわけだが。
 そんな2人の恐ろしげな会話もまだまだ甘党に感じられるほどに、相変わらず弘子(森口瑤子)の悪さが図抜けてる。継母ならぬ継祖母という関係性になるのか、杏梨(牧瀬里穂)が娘の亜子(森迫永依)に吹き込んでいる弘子のカッコの悪さはピアノが弾けないことにとどまらず、高校中退の事実にまでいたって、そんな生意気なことをいう義孫のパーカーの襟首捕まえて強引に白状させるあたり、美しいほどに恐ろしすぎる(煽りのアングルがまた!)。家庭教育のためだったら、途中でやめるとカッコ悪い話の一例が自らの高校中退であっても全然OKと笑っているときの弘子のその目が完全に怒ってる!
 執念深さという一点では共通しているけれど、弘子の怖さと典子の怖さはちょっと異質だ。孫欲しさのあまりにあまりにも庶民的な100円ショップ「びっくり100円箱」で花屋のラックいっぱいのおもちゃを買い込んでいて、幼稚園への花の届けるのを忘れてしまうあたりは、もはや壊れているの域。
 耕平(加藤浩次)に7千円のおつりを返すために、千夏が富士山花店に乱入してきた事実を知るや、自らを高校中退呼ばわりした杏梨を陥れるべく、光哉(田中圭)を使って千夏と耕平のディナーをセッティングさせ、その場に偶然出くわしたように杏梨と一緒に乗り込む手はずは見事に成功。画面が白黒になるほどの戦慄が走るラストをピシャっと決まめてくるあたりはさすが。このドラマは今のところ、弘子と典子のどっちが怖いかって話に終始しております。(麻生結一)


第1回(4/14放送)
☆☆
 通常ドラマのオープニングは、何かしら格好をつけたがるものだ。仮にそれが長く続かないものだったとしても。そういうごく一般的な発想からすると、この恐ろしく悪趣味で塗り固めたプロローグからスタートするこのドラマはそういったドラマ的な常識からは完全に逸脱している。奇妙なほどに二次元な炎三昧にとどまらず、あらゆる効果のそのすべてが実に安っぽい。初っ端からこのドラマに充満する危機感はある意味ただ事ではない。
 ファーストシーンは羽田空港。キャバクラでバイトしたお金を溜め込んで念願の小さな花屋「フルール・ドゥ・さくら」を持ったらしい千夏(飯島直子)と大手の花屋チェーン店「富士山花店」の跡取りオーナーである耕平(加藤浩次)とが出会うシーンだが、これはつまずいたや転んだの域ではなく、飛行場だけにちょっとした飛行にも等しい飛距離。ここは笑うところなのか、何なのか、まったく見当もつかないが、その視聴者の困惑も織り込み済みなのか?! それにしても、飛行機の離陸シーンで車輪アップでくる見せ方って、かなり懐しい見せ方のテイストでは。
 この二年間、月二回欠かさず造園の勉強のために金沢造形大学に通い、オープンカレッジの夜学を受講して一泊し、さらには翌日の午前中の授業にまで出て、お土産に加賀野菜を買って帰ってきていた娘・千夏は何て勉強熱心なのと思ったら大間違い。実際には大学の名簿にさえも名前がない!そのことを知って逆上する母・典子(松原智恵子)の唯一の生きがいは、七尾で三流の陶芸家だったらしいも、手首を切って自らの命を絶った典子にとっての夫、千夏にとっての父の自殺の原因となったらしい一流の陶芸家・白川(藤竜也)を呪うこと。ところが、千夏はよりによってその白川に胸焦がれて金沢に通い詰めていたのだった。
 ちなみに内館先生は東北大学の大学院で比較宗教学を学んでらっしゃるそうです。社会人になると、学校に行くのが楽しくて仕方がないとはご本人の思いそのものという感じでちょっぴり微笑ましかったのだけれど、白川を見かけただけで殺して!、と何とも物騒な発言を繰り返す典子の不穏さのおかげさまで、プラスマイナスのむしろマイナスの方に針はふれる。

千夏「女を一生生き生きさせるのは結婚じゃない!」

とのモノローグにも妙な怨念じみたものが宿ってる?!
 ただこの第1回の圧巻は、耕平の父の後妻にして耕平と同い年の弘子(森口瑶子)の恨み辛みの塊ぶりにつきるのでは。エマニュエル夫人専用風の籐の椅子でほくそえみながら、たまたま裕福の家に生まれただけで、何の能力も輝きもない何の努力もしないでお金にも苦労しない女=耕平の妻・杏梨(牧瀬里穂)のことが癇に障るとぶちまけたり、息子・光哉(田中圭)の暴言なんて屁でもないと毒づいていたまではまだかわいかった。かつて夫がレストランで友人に自らを紹介するのに、

「若いだけが取り柄のろくに教育も受けてない北海道の貧乏人の娘」

とさげすまれたことと、モーツァルト弾きの杏梨と比較して、

「「むすんでひらいて」ぐらいなら弾けるだろ」

と軽んじられたことの、レストランとピアノにまつわる二つの恨みだけは忘れないと、洪水のような涙を流しながら粘着的に恨み言を吐きつつ、最終的にはそれを一人芝居の域にまで高めていったこの人の怖さは他の全キャラクターを足してみてもかなわない。富士山花店の一大事にこそお店をやめるって、これでもかと捻じ曲がってる感じがかなりの期待度大では。この弘子こそが内館先生の分身と考えると、弘子の好待遇もわからないではない。
 話の入りとしてはちょっとやりすぎのようにも思えたが、ここから内館ワールドがどのように展開するのか、やはり楽しみだ。(麻生結一)




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