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anego (日本テレビ系水曜22:00〜22:54)
製作著作/日本テレビ
制作協力/オフィスクレッシェンド
プロデューサー/櫨山裕子、内山雅博
原作/林真理子『anego』
脚本/中園ミホ
演出/吉野洋(1、2、6、7、10)、南雲聖一(3、4)、佐久間紀佳(5、9)、佐藤東弥(8)
音楽/fárrago
主題歌/『KISS or KISS』北出菜奈
オープニングテーマ/『WE WILL ROCK YOU』QUEEN
出演/野田奈央子…篠原涼子、沢木絵里子…ともさかりえ、黒沢明彦…赤西仁、加藤博美…戸田菜穂、長谷川真名美…市川実和子、早乙女加奈…山口紗弥加、立花渡…山口馬木也、中野早希…小西美帆、数子…杉山彩子、岡本光太郎、安次富真樹、牟田浩二、瀬戸寛、河野安郎、鐘築建二、坂野真弥、小谷嘉一、田中仁浩、植松真美、小磯勝弥、飯田基祐、祇園佳つ乃、山口香緒里、宮本浩一…田中実、竹本聡子、溝口敏行…金山一彦、斉藤恭一…神保悟志、水沢加世…板谷由夏、鈴木里子…大川栄子、会社員…河西健司、チカ…水川あさみ、阪口百合子…木村理恵、面接官…矢島健一、野田茂太…ベンガル、河田沙知子…大塚寧々、阪口司…升毅、野田厚子…由紀さおり、沢木翔一…加藤雅也
ほか

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第10回(6/22放送)
☆☆★
 奈央子(篠原涼子)が絵里子(ともさかりえ)の腕を引っ張るだけで自殺から救ってしまうのはあまりにいい加減な収束だし、その後の絵里子が急激にいい人化するのも定石通りという感じ。だいたい、絵里子が奈央子への嫌がらせではなく身を引くために死のうとしたというのなら、どうして自殺の場所にわざわざ東済商事のビルを選ぶかねえ。そんなラフさが目立った前半部には大いに白けた気分になったものの、奈央子が黒沢(赤西仁)のプロポーズを断った上に東済商事を退職するという身辺のリセットをし、さらに結婚を追い求める気持ちのリセットまでを行った後からは面白くなった。派遣社員として入った職場で、奈央子がアネゴならぬ“アネキ”としての存在感を勝ち取っていく様と、黒沢のモンゴルにおける奮闘ぶりが交互に綴られるのだが、互いの存在を心の拠り所にしつつ自分一人の力で頑張る二人の姿がなんとも清々しく映る。若干「ウルルン」入ったモンゴルロケも効果的で、黒沢が奈央子に送るメールの

黒沢「ゆっくりとした時間の中で、今日するべきことをする。それが僕には合ってるみたいで、青い空を見て、幸せだなって思ったりします」

という文章や、それに触発されて奈央子が言う

奈央子「幸せは、がむしゃらに追いかけるものじゃない。ましてや、戦って勝ち取るものでもないって。それはたぶん、自分のすぐそばにある」

という台詞に、悠然としたモンゴルの風景が説得力を加えた。モンゴルの青空の下でメールを送る黒沢と、モンゴル語を学ぶ奈央子の

「モンゴルは今日も、いいお天気です」

という言葉がシンクロして、お後はよろしいようで。細かい部分では首を傾げることも多かったが、好感度の高い主人公の存在感に引っ張られて、結果的には楽しませてもらえたドラマだったように思う。(櫻田もんがい)


第9回(6/15放送)
☆☆☆
 冒頭のカメラ目線トークで奈央子(篠原涼子)曰く、

奈央子「人の不倫見て、我が不倫直せ」

って、ダジャレかよ!面白いけどさ。しかし実際、絵里子(ともさかりえ)が全社に送りつけた中傷メール&ファックスのせいで、奈央子はダジャレなんて言ってる場合じゃない。さてこの危機をどう描いてくれるかと思ったが、結局のところ、男性社員から多少陰口をたたかれるぐらいだったのはちょっと拍子抜け。まあ、これまでの奈央子の功績を思えば、女子社員一同が奈央子を守るために集まるなんてシーンだけでその顛末は必要十分とみなすべきか。奈央子を昼食に誘った阪口部長(升毅)が異動でも口にするかと思えば、いつの間にか自分の不倫悩み相談になったりしてるあたりも可笑しいしね。奈央子というキャラクターの好ましさがきっちり完成しているが故の強みだろう。そして奈央子の不倫が明るみに出て、俄然存在感が際立つのが、不倫では先輩格の加藤(戸田菜穂)。カメラ目線トークの途中で奈央子に話しかけるという掟破り(?)をしてみたり、立ち飲み屋で絵里子に対して

加藤「やり方が汚すぎますよ。(中略)妻ってものは立場が強いんだから、正々堂々タイマンはったら?」

と啖呵切ったり。この加藤というキャラの立ち位置の絶妙さも、間違いなく心地よさの一端。
 そんな騒ぎの原因となった絵里子は奈央子に、沢木(加藤雅也)には過去にも同じようなことがあったと言ってくる。またしても絵里子の妄想かと思ったら、奈央子と似たタイプらしい河田沙知子(大塚寧々)というその女は実在していて、しかも沢木とのことを認めた!それを知った奈央子は

奈央子「運命と好みのタイプじゃ、全然重みが違うじゃない?」

と加藤に呟くわけで、いやはやごもっとも。
 一方、黒沢(赤西仁)はといえば、“お仕置き部屋”ことウランバートル支社への異動を打診される。この一件に加え、沢木のことで苦しむ奈央子を目の当たりにして心が騒いだり、さらに奈央子の父・茂太(ベンガル)と偶然飲むことになったりが重なって、どうやら奈央子へのプロポーズを心に決めた模様。この黒沢の心の動きについては、開始当初から一貫して今ひとつ説得力を感じられない部分ではあったのだが、もうここまで来ると「若い男ってよくわかんない」ってことでいいかって気分にもなってきた。小難しいことを考えるより、黒沢がプロポーズの方向に話を向けようとすればするほどに「カラダ目当て、じゃなければカネ目当て!?」と結論してしまう奈央子、なんて本音字幕トークの楽しさに身を任せた方が良さそうだ。
 なんだかんだで奈央子は沢木のことを諦め、丸く収まったはずが、株主総会の日に、絵里子が会社の屋上に昇って自殺を……?というところで次週へ。部外者が屋上まで行けるって、どんなセキュリティの甘(以下略)って感じもするけど、まあいいでしょう。それより、来週の最終回は15分延長だそうだが、そんなにネタが残ってるのかってことのほうが気になる。(櫻田もんがい)


第8回(6/8放送)
☆☆★
“3回偶然が続くと、人はそれを運命だと思う”のだとすれば、奈央子(篠原涼子)と沢木(加藤雅也)は最終電車での出会いとゴルフ場での再会でその2回までをクリアしていたとしても良さそうなものだが、「おみくじでそろって凶をひく」「同じワイングラスをお互いのために別々に買う」「二人でいる時に、電車で二人を出会わせるきっかけを作った酔っぱらいサラリーマンに会う」と、今回だけでご丁寧に3回の偶然が。かくして、奈央子にとって沢木が“運命の男”であることは確定。京都に住んでいた頃の初恋の相手を、絵里子とは訪ねたことがないのに奈央子となら訪ねられた時点で沢木の心情はすでに見えていたわけだが、そんな沢木からの率直で熱烈な愛の告白までを受ければ、そりゃ思わずキスぐらいしちゃうわな。とはいえ、これまでずっと「不倫はダメ」と自分に言い聞かせ、加藤(戸田菜穂)にも「先輩みたいな一本気な人は不倫には向かない」と逆太鼓判を押された奈央子なら、ベッドインまではもうちょっと逡巡みたいなものがある気もするのだが、そのあたりはあっさりとスルー。黒沢(赤西仁)の時とは違うのだから、ここはもう少しちゃんと描写すべきだったのでは。黒沢とのエレベーターでの会話なんかより、よっぽど奈央子の本音と決心が聞きたい部分だったのだけど。
 ともあれ、少なくともこれまでは絵里子(ともさかりえ)が思いこんでいるような形の関係ではなかったのに、後追いする形でそうなってしまった奈央子は、絵里子に対して何も言い逃れのできないことになってしまった。そんな人とは思わなかったという黒沢に

奈央子「私、33になって初めて、心から欲しいもの見つけたの。他の人不幸にしたっていい、自分は幸せになる。そう決めたんだから」

と啖呵を切る奈央子がどこかしら痛々しくて、この直後に同僚とのカラオケをしながら思わずぽろりと涙を流してしまう黒沢も切ない。しかしそんな奈央子に、絵里子はにっこりと笑って

絵里子「謝っても許してあげませんよ。私は奈央子さんみたいに、いい人じゃありませんから」

と宣言し、その言葉通りに、東済商事全社員に向けて奈央子のことを中傷するメールを送りつけるわけで。今時、社外から全社一斉送信ができるってどんなセキュリティの甘い会社だろ、なんてツッコミはぐっと飲み込んで、ここはひとつ、このドラマが古き良きTBS金曜10時風な盛り上がりをにわかに見せてきたことを喜びながら、奈央子の行く末を心配することにしよう。(櫻田もんがい)


第7回(6/1放送)
☆☆★
 黒沢(赤西仁)との“目にはいいが、心臓には悪い”同棲状態を一度は解消した奈央子(篠原涼子)だが、自分の殻を破ることを決意した33歳の誕生日の夜にやったことは、黒沢への突然のプロポーズ。そこまで奈央子が黒沢のことを想っていたとは、黒沢ならずとも驚きですけど。面白かったのは、考える時間が欲しいと言う黒沢に、どれぐらい待てばいいのかと奈央子が問うて、返ってきた答えで、

黒沢「5年ぐらい……かな」

とは、なんとも残酷で正直なお言葉。こういう本音がぽろりと出てしまう感じは、このドラマの上手いところだ。奈央子は気になる存在だが、だからといってまだ捕まる気にはなれない、そんな黒沢の気持ちが遅ればせながらようやくわかってきた気がする。
 一方、沢木(加藤雅也)との関係にも進展が。奈央子は沢木のことを“友人の夫”としか意識していない(というか、意識的にそれ以上の感情は抱かないようにしている)のに、絵里子(ともさかりえ)との関係が冷え切ってしまった沢木の心は、奈央子にゆっくりと、しかし着実に惹かれつつあるよう。娘を連れて実家に帰っていた絵里子が、3週越しで奈央子から沢木に返却された傘を見つけて、二人が浮気していると思いこむあたりが怖い怖い。しかしこのあたりは、奈央子が黒沢に寄り道してない方が、友人の夫に内心ときめいている奈央子のささやかな罪が浮き彫りになって面白かっただろうと思うのだけどなあ。
 ともあれ、そんな絵里子の被害妄想を後追いする形で、奈央子は沢木に誘われた京都旅行に出かけてしまうわけで。奈央子の無邪気さと絵里子の尋常じゃない感じの温度差は今後の泥沼を期待させるが、黒沢パートとは別のドラマを見ているみたい。まあ、良く言えば「一粒で二度おいしい」ってことになるんだろうけど、どっちつかずという言い方もできるわけで。(櫻田もんがい)


第6回(5/25放送)
☆☆★
 見合い話がつぶれた奈央子(篠原涼子)は、阪口部長(升毅)から総合職への移行試験を勧められる。最初は及び腰だった奈央子だが、ひょんなことから黒沢が家庭教師をしてくれることになって、やる気に。真面目に勉強しつつも、黒沢が家にいる時に真名美(市川実和子)が訪ねて来そうになって冷や汗をかいたり、黒沢がいつの間にか「アネゴ」から「奈央子さん」と呼び始めているあたりの“甘い生活”(今回のサブタイトル)ぶりがなんとも微笑ましい。特訓の甲斐あって、筆記試験は順調にクリアした奈央子だが、役員面接をすっぽかしてしまう。その理由が、子どもがいなくなったと泣きついてきた絵里子(ともさかりえ)の元へ駆けつけるためというのは、悪い意味であまりにドラマ的。いくら奈央子が「アネゴ」だと言っても、そんな彼女の真面目なキャラを思えば尚のこと、上司に迷惑がかかりそうなそんなことをやってのけるだろうか。それに、こんななし崩し的展開では、奈央子が誇りを持って事務職であり続けることにするというその後の選択も生きないと思うのだが。
 とはいえ、そんなシチュエーションなどを通して描かれた沢木(加藤雅也)と絵里子の夫婦関係の危うさは、初回のいかにも幸せな夫婦という雰囲気を思い返せば、これはいい意味でドラマ的な感慨深さがある。沢木がかつて浮気をしていたという話も、最近再び浮気をしたというのも、絵里子が奈央子の同情を買いたいがための嘘だった、とは沢木の弁で、どうもそれが真実らしい。初回から匂わせ続けた割に進展の少なかった沢木との関係がいよいよ温まり始めるか?(櫻田もんがい)


第5回(5/18放送)
☆☆★
 酔った勢いで黒沢(赤西仁)と一夜を過ごした奈央子(篠原涼子)が、昨夜のことは気にしなくていいと黒沢に言えば、黒沢に

黒沢「助かります」

と言われてしまうあたりが可笑しくて切ない。さらにその後、加藤(戸田菜穂)と阪口部長(升毅)の不倫関係が“寝癖のペアルック”で奈央子に感づかれてしまうあたりもなかなか愉快で、いつになく調子のいい出だし。とはいえ、加藤と部長の関係はえらく唐突な印象もあるのだけど。
 黒沢との一件は“記憶から削除”した奈央子だが、脅迫電話のほうは削除できず。その脅迫電話の主と会ってみると、それはお見合い相手の斉藤(神保悟志)と4年付き合ってきたという女・水沢加世(板谷由夏)だった。この加世がどうやって奈央子の自宅の電話番号を知ったのかは結局わからなかったのだが、まあそれはおいといて。脅迫電話をかけてしまったことを恥じながら、バツイチで子持ちである自分は斉藤とは結婚できない、身を引くから彼を幸せにしてくれと言う加世に奈央子は戸惑うのだが、

奈央子「不思議なもんで、あの男を激しく愛した女がいたってことで、逆にあたしン中で、斉藤さんのポイントが上がっちゃったんだよね」

と加藤にもらす。このあたりの微妙な心理は上手いところだ。
 一方、恒例の本音字幕付きトークは黒沢との間で展開するが、奈央子だけでなく、黒沢のほうの本音ものぞけるという趣向。このシーンだけ抜き出してみれば、うっかり一夜を過ごしてしまった男女の駆け引きが見られてそれなりに面白いのだが、これまでの流れを踏まえて見ると、「?」な部分も。

黒沢(字幕)「そりゃ、会社でバレたら恥ずかしいよ、10コも上の女とデキちゃったなんて」

なんて本音があるところをみると、黒沢は奈央子を特別好きってわけじゃなかったってこと?ほとんど表情が変わらない役者の演技もあって、黒沢から奈央子への感情がどういうものなのか、今ひとつわからない。
 ともあれ、斉藤から正式に指輪付きプロポーズを受け、ホテルまで一緒に行ったものの、最後の最後で自分に正直であることを選び、斉藤にも自分に正直であって欲しいと指輪を返す奈央子の姿は小気味よく、そして少し悲しくもある。絵里子(ともさかりえ)やら加藤やらから、さんざん「幸せになって欲しい」と言われる奈央子だが、確かに見ているこちらもそういう気分になってきた。(櫻田もんがい)


第4回(5/11放送)
☆☆
 冒頭トークにおける“頭の悪い女=相手に多くを求めるあきらめの悪い女”から“頭のいい女=相手を愛していると思いこめる女”になるべく、奈央子(篠原涼子)はお見合いに臨む。東大卒の官僚で、見た目はそこそこのレベルだけどちょっとオタクっぽくて、でも笑うと意外とかわいかったり、というお見合い相手・斉藤を演じるのは神保悟志で、これは納得の好キャスティング。篠原涼子の相変わらずのコメディエンヌぶりもあってこのお見合いシーンは面白く見られた。しかしその後、その斉藤とのゴールインを目指すことにした奈央子に

沢木(加藤雅也)「自分の気持ちはどうなんですか。本当はその人とは結婚したくないんじゃないですか」

やら

加藤(戸田菜穂)「幸せって、無理してなるものじゃないですよね」

やらの否定的なコメントがぶつけられるのだけど、そこまで言われるほどネガティブな要素がそれまでに提示されてましたかね?視聴者としてはどっちの立場に立てばいいのかよくわからない。さらに、お見合い後に初めて食事した後で斉藤が“握手だけ”で帰ってしまったことを理由にして、大酒飲んで荒れるまでいくと、奈央子というキャラクターが全く理解できなくなる。お見合い相手との先行きになんとなく不安を感じることはあるとしても、それはもうちょっと微妙なニュアンスがもたらすものではないかと思うのだが。ともあれそんな深酒の果てに、番組のラスト3分で奈央子は黒沢(赤西仁)とベッドイン。翌朝、自己嫌悪に陥る暇もなくその件で脅迫電話を受けることになる、という顛末。黒沢に関連した部分の印象の薄さゆえ、あまり大ごとのようには思えないけど、おそらくは大ごとなのでしょうね。
 それにしても、奈央子の冒頭カメラ目線トークがどうも据わりが悪い。ここで言われていることが、奈央子と同じような立場の女性たちへ贈られる生き方指南的な意味合いなのか、それとも「この結論を前提として生きるとこういうことになりますよ」という反面教師的な意味合いなのかが、見終わっても今ひとつ釈然としないのがその原因だろうか。そのどちらでもなく、単に奈央子の心境を語りたいだけなら、カメラ目線である必要はなさそうだが。(櫻田もんがい)


第2回(4/27放送)
☆☆
 奈央子(篠原涼子)がカメラ目線で語りかけるスタイルは定番の模様も、その話の中身が第1話よりもこのドラマに適した話題に感じられたのは、聞き役の加藤(戸田菜穂)の引き出し方が効いていたからかな。女子社員からのっぴきならない相談を打ち明けられることを、嫌だと思いつつも受け入れてしまうのは、それが変えることのできない性分(パーソナリティ+宿命)であるゆえとの絶望的な指摘がちょっといい感じ。女性が幸せになるためにはうっかり、ちゃっかりを兼ね備えていなければならないとは、ちょくちょく聞かされる話なれど、うっかり妊娠、ちゃっかり結婚や、うっかり不倫、ちゃっかりリセットの言葉遊び込みには笑っていいものかと迷ってしまう苦々しさで。
 それにしても、奈央子(篠原涼子)と沢木(加藤雅也)の再会のさせ方が遠いなぁ。秘書課の遠藤香苗(竹本聡子)の寿退社を万事うまく進ませるため、奈央子が致し方なく副社長(浅沼晋平)との不倫関係の清算を買って出ると、絵里子(ともさかりえ)経由でその夫・沢木(加藤雅也)に、さらには沢木経由でフリーライターの溝口(金山一彦)にまで到達。
 その溝口が総会屋との癒着という会社の暴露記事を書いたものだから、間接的に会社を裏切ったことを奈央子は悩むことに。ただ、その一連と黒沢(赤西仁)が奈央子に全省略的に惹かれるエピソードとの温度差には首をひねらざるを得ない。このドラマがどういうテイストを目指しているのか、今一歩見えてこない。(麻生結一)


第1回(4/20放送)
☆☆
 これまた負け犬系のドラマだが、ベーシックなラブコメに徹している『曲がり角の彼女』に比べると、こちらの方が身につまされる度合いも気にしている作りのようだ。オープニングは、東済商事経営戦略部所属の32歳にして独身の奈央子(篠原涼子)が、アンドレ・ジードの言葉を引用しながら画面に向かって語りかけてくる趣向で、これに何らかの意味があるのかと思っていたのだが、第1回の限りでは何もなかった。第2回以降も格言じみてはじまるのがパターンになるのか、最終回の最後につながる形なのか、それとも大した理由があるわけではなかったのか、今のところはよくわからない。
 ちょっと引っかかったのは、契約社員である真名美(市川実和子)の存在。世話役を押し付けられた社内合コンで、奈央子が唯一心ひかれたMBAの王子様・宮本(田中実)を真名美にタクシーでお持ち帰りされた翌日、書類のリライトをミスった真名美をしかる役目を部長の阪口(升毅)から仰せ付けられるままに任務を遂行すると、派遣には文句言うのも代理でいいのかと派遣社員の加奈(山口紗弥加)に突っ込まれて、奈央子はタジタジとなる。
 派遣と契約が一緒くたになっている気がしないでもないが、その突っ込み自体はリアルな部分でいいとしても、元後輩にして天然の幸せ妻・絵里子(ともさかりえ)の乱入によって、ゴルフがメンタルなスポーツであることを否が応でも再認識させられた休日に、宮本にもてあそばれてしまったという真名美の電話に対して悠然と相談にのる?! 後輩の黒沢(赤西仁)から「anego」と呼ばれるまでを捌かなきゃいけない段取りはわかるんだけど、奈央子と真名美がどういう関係性なのかという距離感はさっぱりつかめなかった。真名美と加奈のキャラクターが微妙に入れ違っているのか、奈央子が対面する相手がズレているのか、はっきりとはわからないが、奈央子のこれからの顛末を思うと、そのあたりはぶれないように見せてもらいたい。
 いつから女の子からのトラブル処理おばさんになってしまったのだろうとしみじみ語る奈央子を演じる篠原涼子は、ここ最近の絶好調のままに好演。クールビューティの加藤(戸田菜穂)は意外にも、宮本退治の一翼を担うほどのいい人だった(やり逃げの復讐が込められていたとはいえ)。趣味は小唄と三味線って、それは戸田さんご本人でしょうに。いずれ披露したいただけるのでしょうか。それにしても最近、「細木数子が言ってたから」ってよく聞きますね。(麻生結一)




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