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雨と夢のあとに (テレビ朝日系金曜23:15〜0:10)
制作/tv asahi、角川映画
チーフプロデューサー/五十嵐文郎
プロデューサー/中込卓也、椿宜和、藤本一彦
原作/柳美里
脚本/成井豊、真柴あずき
演出/麻生学(1、2、6、10)、常廣丈太(3、8)、唐木希浩(4、7、9)、新村良二(5)
音楽/丸山和範
主題歌/『雨と夢のあとに』奥田美和子
出演/桜井雨…黒川智花、小柳暁子…木村多江、早川北斗…速水もこみち、白坂真昼…浅見れいな、藤原拓人…西川浩幸、畑中星子…本田有花、岡田雪菜…葵、青山…野田よし子、坂口…渡辺妙子、ミキ…池端忍、警官…平田満、長井秀和、齋藤たかし、石田早苗…高畑淳子、大島香澄…高橋由美子、スペシャルゲスト…柳ジョージ・佐々木聡作・福田真一郎、桜井波代…沢田亜矢子、桜井洋平…山田明郷、高柴史郎…上川隆也、柏木ななえ…西尾まり、杉山刑事…デビット伊東、久慈正太郎…山下徹大、久慈康彦…中村俊太、真昼の友人…荻野貴匡、野中マリア…杏子、石田百合子…通山愛里、梅津誠一…佐藤二朗、梅津信子…阪上和子、梅津真弓…大森美紀子、梅津志織…斎藤千晃、梅津智也…篠田拓馬、梅津勇太…深澤嵐、ドラム…齋藤たかし、サックス…藤田淳之介、ピアノ…増永宏暁、矢島向陽…中原丈雄、瑠璃子…矢沢心、スペシャルゲスト…奥田美和子、ピアノ…松浦晃久、ギター…梶原健生、熊岡…平尾良樹、絵里…夏秋佳代子、不動産屋…俵木藤汰、不動産屋…俵木藤汰、桂川弁護士…宇納侑玖、海部剛史、野澤藍子、早川霧子…美保純、早川岳男…ブラザー・トム、桜井朝晴…沢村一樹
ほか

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第10回(6/17放送)
☆☆☆
 台湾で見つかった死体の身元が割れるXデイが近いことを認識しつつ、自分が幽霊であることをなかなか切り出せない朝晴(沢村一樹)と、それに薄々気づきながらも向き合うことができない雨(黒川智花)。緊張感が高まる中、朝晴がジャズを捨てたことを許せなかったと告白した霧子(美保純)が、そして死体の身元を知って押しかけてきたレポーターたちを身を挺して遮った真昼(浅見れいな)が、最後の最後で朝晴の姿を見ることができるようになるという仕掛けにまずホロリと来る。その頃雨は、マリア(杏子)の家に軟禁状態となっているのだが、ここで雨を助けてくれるのが実は成仏していなかった暁子(木村多江)。よっ、待ってました、千両役者!って感じで、スーパーパワーでマリアを邪魔する暁子の姿は痛快そのもの。逃げ出した雨は北斗(速水もこみち)のバイクで、朝晴は早川(ブラザー・トム)の車で、子供の頃によく行った“あの遊園地”こと多摩テックへ向かう。遊園地前での、朝晴と早川の別れがまた、なんとも切なくて泣かせてくれた。これまでのエピソードで、脇役達の感情をしっかり積み上げてきた意味が、ここまでに大きく結実している。
 この後、朝晴がマリアの前に姿を現すことになるのは暁子のスーパーパワー頼みで、これはちょっと物足りない気がしなくもないが、マリアに関するこれまでの描写を思えば、朝晴との絆を霧子や真昼と同列に扱うわけにもいかないか。ここはむしろ暁子の

暁子「私の心残りはね、高柴君じゃなかったんです。いつの間にか変わってました、雨ちゃんとあなたに」

という台詞の方に心を奪われた。
 クライマックスは、一緒に観覧車に乗る雨と朝晴。ここでの親子の会話もまたしんみりとして。雨の瞳からこぼれる大粒の涙が美しい。そして暁子がそれに加われば、雨が前回言っていた、三人で遊園地に行くという希望も成就しているわけで。雨の

雨「なんだか、あたしたち、家族みたいだね」

という言葉が全てを優しく包み込んでいく。いつしか観覧車の中、雨は一人きりで佇む、目に涙を溜めて、しかし静かな微笑みを浮かべながら…。開始当初には予想もしなかった情感が、確かにそこにはあった。
 その後雨は、どうやら朝晴の両親に引き取られた模様。ほとんど最後というところで、実家の朝晴の部屋で雨が寝そべるシーンがあって、まさかラストカットは財前さん!?と思ったら、さすがにそんなことはなく(当たり前か)、すがすがしい自然の中でのカットで終わった。このドラマ、時に陳腐に流れる印象もあったものの、その直球勝負ぶりが最後には功を奏して、きっちりと「情」にあふれた物語に仕上がっていたことを高く評価したい。(櫻田もんがい)


第9回(6/10放送)
☆☆★
 整理すると、暁子(木村多江)はむちゃくちゃ霊力の強い幽霊で、自分と縁もゆかりもない人間に対して姿を見せることも、電話に出ることも、写真に写ることも、自分が触れた幽霊を写真に写るようにすることもできる、ってこと?不動産屋だけが暁子の姿が見えていない様子だったのは、見えてはまずい存在だったから姿を隠していたと理解しよう。そんな暁子と、雨(黒川智花)や朝晴(沢村一樹)の、“川の字になって”の別れは確かに切ないのだが、それはどちらかといえば、これまでの積み重ねがあったからという点において。それを今回の話の縦糸とするなら、横糸であるはずの暁子と、かつての恋人・高柴(上川隆也)の話がどうも盛り上がらない。うまく運べばそれなりに胸を締め付けられるドラマになりそうなのに、ありきたりな話で終わるというこの作品のネガティブな面がまたしても出てしまった格好。高柴が暁子の死に際に帰ってこなかった後悔とか、あるいは暁子との思い出の場所に敢えて帰ってきた理由とか、材料は揃っているのに、そのへんは上っ面だけ撫でて、わざわざライト級の話に仕立てているようでじれったい。高柴を演じた上川隆也はこの枠としては破格にも感じられるゲストで(脚本家との“キャラメルボックスつながり”か)、それなりに意味ありげなニュアンスを感じさせようとしていた素振りは伺えたが、初めて会ったその日に死んだ恋人のことを話題にする少女をいきなり“雨ちゃん”呼ばわりなんてあたりからして、役者の演技とは別の次元でキャラ付けが乱暴すぎる感じ。
 とはいえ、今回成仏してしまった暁子というキャラクターが、“どっかコワイ女”でありながら“癒しも感じさせる”という希有な存在感の女優・木村多江の一番オイシイところを堪能させてくれたことは確かで、そこは大いに評価したい。ちなみにオープニング映像は、先週話題にしたラストシーンをはじめ、数シーンがまたしても変わってましたね。もしかして毎回変わっていたのかな、妙なところに凝ってるなぁ。(櫻田もんがい)


第8回(6/3放送)
☆☆☆
 幽霊が生きている人間に触れると、その人間の生命力を奪うという事実を知った朝晴(沢村一樹)は、自分が一緒に居続ければ雨(黒川智花)を衰弱させてしまうと大いに苦悩した末に、15年ぶりの帰郷を決意。雨のことを両親に頼むためだったとは後で明らかになるのだが、ここで問題なのは家出以来会っていなかった父・洋平(山田明郷)で、関係が断絶している以上きっと自分のことが見えないに違いないと朝晴は思いこんでいる。しかし洋平は朝晴を認識、すなわち、洋平と朝晴の心は今でも通じていた……。この父親と息子の関係こそが今回の肝で、大いに涙腺を刺激されたところ。台湾で見つかった身元不明死体(=朝晴)のニュースを聞いて洋平が何かを直感するのもいいし、実は自分は死んでいて幽霊であると告白する朝晴を、洋平と母・波代(沢田亜矢子)が涙を流しながら静かに受け入れるのも、なんとも切ない。よく言えば奇をてらわない、悪く言えば「よくある話」で終わってしまうきらいのあるこのドラマの直球さ加減が、ここではポジティブな方向に働いた印象。のどかな田園風景と、いかにも「おじいちゃん家」ふうな縁側のある平屋でのロケ(蛾らしき虫まで飛んでる!)も効果的で、郷愁をそそられた。
 別方向で気になるのは暁子(木村多江)で、不動産屋が彼女の部屋から出てきてわざわざ鍵をかけたり、暁子がまだ住んでいるのに「新しい人が越してくる」と言ったりして、もしかして暁子も幽霊なんでは?という疑惑が浮上。まあ、たとえ幽霊であったとしても、真昼(浅見れいな)にまで姿が見える人が不動産屋には見えないってのは妙なんだけど。しかし、オープニングのラストカットで、雨、朝晴、暁子のスリーショットから画面が雨に寄って再び引くと、朝晴と暁子の両方が消えてるという絵があったりするのがちょっと気になるんだよね、って、もしかして作り手の術中にはまってるでしょうか。そういえばオープニングがまた最初のバージョンに戻ってるね、一部、後から加わった要素も残ってるようだけど。これも何か意味あるんだろうかね?
 それにしても、高校時代の朝晴が天井にポスターを貼るまでに好きだったアイドルが

雨「あっ、財前(直見)さん!」

とは、一体どういう楽屋オチだろ。そういえば財前さんは「こころ」では黒川智花の実母役だったけど、テレ朝つながりで言えばむしろ「電池が切れるまで」か。(櫻田もんがい)


第7回(5/27放送)
☆☆★
 最終章スタート、って大見得切って始まった割に、女の幽霊・瑠璃子(矢沢心)に雨(黒川智花)が体を乗っ取られるという展開はむしろシリーズ開始当初に戻ったかのよう。しかし、このハスッパな幽霊に憑依された雨の変貌が見物で、真昼(浅見れいな)に向かって「いいセックスしてないんじゃないの」だの「ブス」だの言ってみたり、ロリコン男を逆ナンしてみたりという無軌道ぶりはドラマ的には大いに楽しめた。
 その雨/瑠璃子が北斗(速水もこみち)を誘惑しようとしたところで、北斗はそれが雨ではないと気づくのだけど、呼び名が普段と違うことだけを根拠にするとは、ドラマ的にはずいぶんもったいない。シチュエーション次第では、雨と北斗の心情的つながりを見せるいい機会になったと思うのだけど。さらに、その瑠璃子の“心残り”にしても、結局のところ昔の恋人が死んだ自分を忘れて他の女と結婚したというだけの話で、これまたずいぶんひねりのないところに落とし込んだなぁという感じ。とはいえ、その結末はこれまでの「成仏してめでたしめでたし」というパターンを覆した皮肉なものとなっていて、これはなかなかに面白かった。
 それにしても、朝晴(沢村一樹)が出て行った直後なのにドアにチェーンがかかったままだったことに雨が気づき、何かがおかしいと思うという部分は、比較的ユルめなこの作品にあって、意外なほどの冴えを感じさせるところ。たまにこういうことがあるから、このドラマは侮れないんだよなあ。(櫻田もんがい)


第6回(5/20放送)
☆☆
 実は血がつながっていなかった朝晴(沢村一樹)と雨(黒川智花)、お互いがお互いのためを思って離れることを選択するまでは切ないも、土砂降りの中で会いに来た朝晴を雨が追いかけてきて、結局元の鞘に戻ってめでたしめでたし、というオチには大いに肩すかしを食らった気分。いや、最後がそうあるべきなのは理解できるのだが、今回初めてゲスト幽霊なしで人間ドラマっぽく仕立てたわりには、野中マリア(杏子)や実の父・矢島(中原丈雄)に関する描写があまりにおざなりで、最後に雨が思い切るまでの心理的葛藤みたいなものが全く生まれてないというか。今までのように、ゲスト幽霊との関わりを通して話を展開する方が、この作品らしかったのではないかと思うんだけど。
 朝晴の遺体がついに発見されたというシーンで来週へ。“最終章スタート”って、章立てされてたとは知りませんでした。これまでのトーンを思えば、ちょっと大げさすぎるでしょ。(櫻田もんがい)


第5回(5/13放送)
☆☆☆
 オープニング映像の変更は“怨念路線”からの脱却を示してるんだろうか?とにもかくにも、折り返し点を前に、ドラマの雰囲気が若干変わってきたことは確か。そしてそれが、なかなかいい感じなのだ。
 火事で一家6人全員死んでしまった梅津家の人々が、雨(黒川智花)と朝晴(沢村一樹)の家になぜか居候する羽目に。子供もうるさきゃ親の誠一(佐藤二朗)もうるさい、死んでるとは到底思えない彼らの相当な賑やかさは大いに愉快なのだが、幼い子供を含む一家が不慮の死を遂げてしまった悲しさもまた、その賑やかさの向こうに見え隠れするあたりが切なくていい。幽霊がまったく見えない真昼(浅見れいな)が子供たちの幽霊にスカートをめくられて驚く様子をスプリットで見せたり、幽霊は壁を通り抜けられると子供たちに教えられた朝晴が試してみるが失敗したりなんてお遊びシークエンスも面白い。
 一方雨は、野中マリア(杏子)が母親であることをマリア自身から聞かされ、やがて朝晴の口からも、それが事実であることを聞くことになる。父親が嘘を付き続けていたことを許せるのかというテーマはそのまま、梅津一家の話にもスライドしていく。ネタばれになるので詳しくは書かないが、朝晴と雨、そして梅津誠一と家族の関係が合わせ鏡状態になるこの構図は、示唆に富んでいてお見事。こうなると、多くの台詞がその言葉以上の重みを持ってくる。幽霊だった人々が成仏して消えていくラストは今まで通りも、前回以上に胸に残る仕上がりになった印象だった。
 物語的な意味でも出来映え的な意味でも驚きの連続だった今回だが、次週へのつなぎは「朝晴は雨の実の父親ではない」というマリアの告白で、これまた驚かされた。もしかしたらこの作品、スリーパーかも。(櫻田もんがい)


第4回(5/6放送)
☆☆
 「ROOSTER」にやってきた青年・康彦(中村俊太)は、サックスプレイヤー志望だがその腕を早川(ブラザー・トム)らに認められず、ボーイとして雇われることに。店内で康彦が傷つくようなことを誰かが言うたびに、その人物に対して怪現象が起こる……。今回は変則的に「キャリー」のような超能力者モノかと思いきや、その怪現象の正体は康彦の死んだ父親・正太郎(山下徹大)だったという顛末で、この作品らしさを守った形。康彦の登場から、怪現象が起こり始めるまで描写あたりは、もう少し手際よくあしらってほしい印象も受けた。しかし、過保護な父親の幽霊に無意識に甘えていた息子は、だからいい演奏ができなかったのだという説明にはなかなか説得力があったし、元ピアニストだった父親の演奏と息子のサックスがセッションして、お互いにその呪縛から解き放たれるというラストもすがすがしいものだったと言えるのでは。幽霊話とジャズという妙な取り合わせが、第4回にしてうまく機能した感じ。
 一方、雨(黒川智花)と朝晴(沢村一樹)をめぐる物語は、朝晴の姿を見ることができない霧子(美保純)が、早川からその秘密を打ち明けられるといういささか意外な方向に。朝晴の家でパーティを開いた中、霧子だけが朝晴を「見えるフリ」しなければならないというシチュエーションの妙は楽しめたし、そこから滲み出る切なさも良かった。始まった当初は、せいぜい雨と朝晴と暁子(木村多江)を中心とした小さな話の連続になるのかと思っていたが、早川や霧子らが絡み、さらには朝晴の母親・波代(沢田亜矢子)まで登場して、様々な感情が絡む大きな話になってきつつあるのはいい兆候かもしれない。
 ちなみに今回、野中マリア(杏子)が雨の母親であったことが、暁子と視聴者の知るところに。まあそれ自体はほとんど先週から明言していたようなものなのだけど、何故にそこまで朝晴がそれを隠そうとするのかは、気になるところ。(櫻田もんがい)


第3回(4/29放送)
☆☆
 前回のラストではボックス席に座ってた雨(黒川智花)たちが、今回の冒頭ではカウンター席に移動してることには頭をひねったけれど、夜道で雨がいきなり幽霊に遭遇してしまうタイトルアバンの飛ばしっぷりは悪くない。母親のことを知りたくなった雨が母親の幽霊探しのために行った閉鎖された病院で、少女の思いとは全く関係なく繰り広げられる「病院の怪談」的趣向もなかなか楽しく、もっと見せて欲しいとさえ思ったり。そんな雑魚幽霊たちのおどろおどろしさとは対照的な、母だと名乗り出る幽霊・香澄(高橋由美子)の、のんびりとしつつ仄かに哀しい存在感も好印象だった。雨と朝晴(沢村一樹)を中心としたドラマ部分と、幽霊話のバランスはこれぐらいがちょうどいいようだ。
 相変わらず朝晴と暁子(木村多江)のやり取りは楽しいが、今回はそれ以上に、「ROOSTER」のマスターであるタケさんこと早川(ブラザー・トム)が大活躍。雨を探して病院の廊下を歩きながら股間をにぎりしめていたりするあたり、芸が細かい!さらにラスト、朝晴から幽霊であることを告白されるシーンでの

早川「何のために面倒見てきたんだ……こんな思いするためじゃねえぞ、わかってんのか!」

という切ない台詞も印象に残るところ。ここでこの人がストーリーの中核に関わってくるのなら、今後の展開にちょっと期待が持てるかも。それにしても野中マリアを演じる杏子の、ステージ上で髪をかき上げて体をひねる動きは、バービーボーイズの頃から全く変わってない感じ。そろそろあれから20年ですかぁ。(櫻田もんがい)


第2回(4/22放送)
☆★
 この枠で女子高生が主人公ときたら絶対にあると思われた援交エピソード(って、そういう言葉でまとめちゃいけないんだろうけど)。雨(黒川智花)が、万引き→おじさんとカラオケ→水商売未遂→売春未遂の下向きスパイラルを2日で一気に駆け抜けてしまったのはドラマ的には楽しめたけれど、それをそそのかした少女の幽霊・百合子(通山愛里)は、一体何がしたかったの?母親(高畑淳子)への思いが未練になっていたというオチが唐突に感じられるほどに、その行動には一貫性が感じられなかった。母親との関係性も描写足らずで、感動の再会もまったく盛り上がらず。
 朝晴(沢村一樹)と暁子(木村多江)のカラミなどは楽しいし、こういう話なのに最後には柳ジョージが渋〜く決めるなんてミスマッチ感も悪くはないので、本編部分でもうちょっと頑張っていただきたい感じ。(櫻田もんがい)


第1回(4/15放送)
☆☆
 自分の帰りを待つ娘・雨(黒川智花)のもとに、不慮の事故で死んだ父親・朝晴(沢村一樹)は幽霊となって帰ってくる。そんな始まり方そのものは、たいして目新しくもなければこの枠らしくもないと思っていたのだが、「幽霊の朝晴が近くにいるが故に、雨が様々な霊を呼び寄せてしまう存在になってしまい、トラブルに巻き込まれる」という仕掛けが明らかになれば、なるほど俄然この枠らしい、いい意味でB級テイストな娯楽作の匂いがしてくる。朝晴の正体を知る霊感体質の女・小柳暁子(木村多江)が、お隣さんにして朝晴のブレーン的存在ってのも、展開次第で面白くなりそうで。
 しかしこの第1回に関して言えば、初期設定のプレゼンテーションに軸足を置きすぎたためか、雨につきまとう警官の霊(平田満)に関する挿話はおざなりな出来映えに。この世に未練を残す霊の物悲しさも、その未練ゆえの雨への執着も、今ひとつうまく機能しなかった印象があった。脚本と演出、双方が少しずついい方向に行けば、ドラマとして化けそうな気配を感じなくもない。まあそんな、「もうちょっとだけどうにかなれば傑作になるのに」的ムードも、実はとてもこの枠らしい部分ではあるのだけども。(櫻田もんがい)




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