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あいくるしい (TBS系日曜21:00〜21:54)
日曜劇場
製作著作/TBS
制作/TBSテレビ
プロデュース/石丸彰彦
脚本/野島伸司
演出/吉田健(1、2、6、7、10、11)、平川雄一朗(3、4、8、9)、那須田淳(5)
音楽/千住明
主題歌/『ベンのテーマ』マイケル・ジャクソン
出演/真柴豪…市原隼人、真柴みちる…綾瀬はるか、南雲夕子…桜井幸子、中川竜一…萩原聖人、矢口淳一…小栗旬、瀬戸政希…田中幸太朗、大伴一…塚地武雅、真柴幌…神木隆之介、南雲愁…本郷奏多、坂巻奈々…志保、花井耕作…春山幹介、原沢聖子…後藤果萌、真柴唄…松本梨菜、原沢裕太…武井証、原沢篤…浅野和之、木崎ほのか…沢尻エリカ、矢口貴文…中丸新将、保坂博樹…林泰文、真柴由美・榊園子(二役)…原田美枝子、石井次郎…川村陽介、金魚すくい屋の男…鈴木拓、羽生章司…中屋力、天野未来…大後寿々花、黒木志織…上野なつひ、須藤義明…田中健、原沢千秋…南果歩、花井京子…高橋ひとみ、花井芳夫…高橋克実、真柴徹生…竹中直人、真柴明示…杉浦直樹
ほか

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第6回(5/15放送)
☆☆
 由美(原田美枝子)の死に正体を失うほどの悲しみに暮れる徹生(竹中直人)を取り巻く家族模様が描かれていた第6回。中では、

「想像しなさい」

の一言でドラマを深化させる明示(杉浦直樹)の言葉が心に響く。また涙を流せなかった幌(神木隆之介)もいつかきっと涙をこぼすのだろうが、母の死以上に悲しいことがあるだろうかという自問自答には居たたまれなくなる。淳一(小栗旬)に婚約者がいたのは案の定だが、みちる(綾瀬はるか)のことを心から真剣に考えていたとはちょっと意外。(麻生結一)


第5回(5/8放送)
☆☆
 由美(原田美枝子)の死の回だけに、由美が豪(市原隼人)と幌(神木隆之介)を抱きしめるエピソードや祖父・明示(杉浦直樹)のチョコパフェにつきあう場面など、丁寧には描かれているのだけれど、何となく心に残らない。下ネタや奇妙なノスタルジーぶりだけがドラマの醸成効果を邪魔しているわけでもなさそう。遠い彼方のお話とでも言えばいいのだろうか。(麻生結一)


第4回(5/1放送)
☆☆
 生きるために退院して家に戻ってきた母・由美(原田美枝子)は、唯一みちる(綾瀬はるか)の国立大学合格に新聞で気がついた。家族から祝福されたみちるはいったん東京に旅立つも、由美の介護やら何やらに思いあって、結局東京行きを断念して戻ってくる。犠牲としてあり様ではなく、誰かのために役立つことを喜びとする境地は、あまりにもつらいその現実を思えばポジティブに映るが、その境地を促すのが由美本人であってはいかにも具合が悪い。逆に言えば、ここは由美以外であれば誰の言葉であろうと痛切さに打ちのめされたかもしれない。みちるの心境を由美が雄弁に語ってしまっては、由美は何とも感じの悪い預言者のようになってしまうではないか。完全にそのあたりの捌き方を誤っている。これが確信犯的であるならば、いっそうたちが悪いが。(麻生結一)


第3回(4/24放送)
☆☆
 豪(市原隼人)は母・由美(原田美枝子)の病気を治せる名医を東京に探しに行き、幌(神木隆之介)は転校生の愁(本郷奏多)と友達になるための条件である幻の蝶・オオムラサキを探しに、雨の中の山へ行く。探すものは違うとて、その目的は母のためという、誠実が固まりで押し寄せてくるようなタッチをどう考えるかでドラマの印象は真逆になってしまうだろうが、大人の役者の含蓄が随所にドラマの甘さを救っているのは事実。明示(杉浦直樹)と由美の語らいが印象的な、「何という幸せな騒がしさ」がこのドラマを最後まで支配してくれることを祈るのみ。(麻生結一)


第2回(4/17放送)
☆☆
 前半は相も変わらず下ネタ&ダジャレのオンパレードも、最後の10分ほどに痛々しいエピソードが連打されて、何とか次回に望みをつなぐ形に。奈々(志保)の嘘を幌(神木隆之介)が見抜いていた月謝のエピソードなどなかなかいいのに、これを最後の最後にしか出してこないあたりが大いなる謎。まぁ、今にはじまった話ではないけれど。
 逆に豪(市原隼人)は奈々にまんまとだまされて、竜一(萩原聖人)に殴りかかるも、返り討ちにあって撃沈。汚名返上とばかりに、電車にひかれそうになる幌を間一髪のところで助けるも、それにしてもあの場面にまったく関与してなかった豪をあそこで登場させられちゃうのはやはりさめる。(麻生結一)


第1回(4/10放送)
☆☆★
 オープニングの幌(神木隆之介)のナレーションで、真柴家の家族構成がやさしく紹介されるも、その実情はかなりシビア。タクシーの運転手の父さん=徹生(竹中直人)は生まれても泣かなかった幌に障害が残らないためにその日からお酒をやめた。幸せすぎてよく笑う母さん=由美(原田美枝子)はその矢先に倒れて入院。母さんの代わりに家事一切を取り仕切るお姉ちゃん=みちる(綾瀬はるか)はかなりドジなのはいいとしても、それを引きずって自分が嫌いになると時が止まるらしい。母さんの入院費は自分で稼ぐとバイトの日々の兄=豪(市原隼人)は何事にも熱い。時々何もない場所を眺めている妹=唄(松本梨菜)はチョー謎。天文台の管理人をしているおじいちゃん=明示(杉浦直樹)は昼間眠っている。でも寂しくない。亡くなったおばあちゃんに毎日会えるから。中の大切なものを守れるようにと名付けられた幌は友達からはポロと呼ばれている。世界を救うことが夢も、まだ泣いたことがないので、いつの日かポロポロと涙を流したい。ここまでの冒頭5分間はまるで小説の書き出しのようなしみじみとしたタッチで、瑞々しくていい。
 そんなせっかくのしみじみも、いきなりに排泄物ねたとそれ絡みのダジャレ満載で汚されてしまうあたりはまさに巨匠の証?! 山田太一、倉本聰、山田洋次あたりしかり。なるほどだからテーマ曲は「ベンのテーマ」なのか?! 歌ってる方もすっかり汚れた存在になってしまいましたし。その後も随所に繰り出されるこのネタに、次回からは食事中にこのドラマは禁だということだけはよくわかった次第。
 女は心の中に魔性を持つと、親らしからぬ不穏な情報を娘の聖子(後藤果萌)に吹き込む千秋 (南果歩)が田舎暮らしにうんざりしてたり、スナックのママの夕子(桜井幸子)がわかりやすくわけあり風だったりするあたりは、まさに野島伸司のその世界。矢口(小栗旬)と瀬戸(田中幸太朗)はインターンの設定だが、正確に言えば日本にはインターン制度はない。それを言うなら研修医。2005年を“twenty O five”と言うのもベターじゃない。
 といろいろと引っかかるところも多かったが、天文台の話には心惹かれた。心の幹が太くて強いと幌を励ます含蓄にとどまらず、家族みんなで合唱する「四季の歌」に手拍子する姿から、明示を演じる杉浦直樹がことごとくいい。「ベンのテーマ」はもはやミソがついてしまったので(?!)、いっそテーマ曲も「四季の歌」にしたらいいのに。(麻生結一)




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