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義経 (NHK総合日曜20:00〜20:45)
大河ドラマ
制作・著作/NHK
制作統括/諏訪部章夫
原作/宮尾登美子『宮尾本平家物語』『義経』より
脚本/金子成人
演出/黛りんたろう、木村隆文、柳川強
音楽/岩代太郎
出演/源義経(遮那王)…滝沢秀明、武蔵坊弁慶…松平健、うつぼ…上戸彩、伊勢三郎…南原清隆、駿河次郎…うじきつよし、喜三太…伊藤淳史、佐藤忠信…海東健、佐藤継信…宮内敦士、鷲尾義久(三郎)…長谷川朝晴、朱雀の翁…梅津栄、お徳(語り)…白石加代子、静…石原さとみ、藤原泰衡…渡辺いっけい、藤原国衡…長嶋一茂、萌…尾野真千子、千鳥…中島知子、梶原景季…小栗旬、源範頼…石原良純、那須与一宗高…今井翼、まごめ…高野志穂、富樫泰家…石橋蓮司、土佐坊昌俊…六平直政、亀の前…松嶋尚美、牧の方…田中美奈子、五足…北村有起哉、源仲綱…光石研、以仁王…岡幸二郎、湛増…原田芳雄、平知盛…阿部寛、明子…夏川結衣、平宗盛…鶴見辰吾、経子…森口瑤子、領子…かとうかずこ、平重衡…細川茂樹、建礼門院徳子…中越典子、輔子…戸田菜穂、平時忠…大橋吾郎、平維盛…賀集利樹、平資盛…小泉孝太郎、能子…後藤真希、平頼盛…三浦浩一、源行家(新宮十郎義盛)…大杉漣、磯禅師…床嶋佳子、大江広元…松尾貴史、善信…五代高之、覚日律師…塩見三省、手古奈…上原美佐、木曽義仲…小澤征悦、巴…小池栄子、平盛国…平野忠彦、建春門院滋子…中江有里、池禅尼宗子…南風洋子、静憲法印…壌晴彦、藤原忠衡…ユキリョウイチ、安達盛長…草見潤平、和田義盛…高杉亘、河辺太郎…坂西良太、北条義時…木村昇、烏丸…高橋耕次郎、関戸弥平…秋間登、兵士…遠矢武、佐藤元治…大出俊、金剛別当…天野勝弘、院の使者…長沢政義、雑色…川井つと、舞い手…大坪光路、井家八郎…得丸伸二、藤太…小杉幸彦、深井…藤田むつみ、侍女…麻生あくら、武将…五宝孝一、都人…小林由利・一岡裕人・徳山富夫、産婆…関えつ子、僧兵…梅垣義明、吉野の武士…三上市朗・矢吹蓮、雑色…山崎豆僧、追捕の武士…井殿雅和、土肥実平…谷本一、僧侶…中村修、平清宗…渡邉邦門、禅林坊…赤星昇一郎、老僧…松野健一、僧兵…山本龍二、伊豆頼兼…浦山迅、牛若・遮那王…神木隆之介、平宗盛(幼少)…伊藤隆大、杢助…水島涼太、僧侶…井川鉄也、大姫…野口真緒、つる…石浜加奈恵、安徳天皇…市川男寅、守貞親王…水谷大地、三浦義澄…小倉馨、平知盛(幼少)…森聖矢、平重衡(幼少)…岡田慶太、水軍の長…吉田一平・坂井成紀、侍女…阿部和、武将…新実・村田鉄信・荻野英範、田口教能…新井康弘、安田義定…真実一路、船所五郎正利…坂部文昭、源氏の兵…喜多川務・高橋光、侍女…小松千鶴、僧兵…中沢青六・天乃大介、島蔵…野口寛、東風平…竹下浩史、湛増の近臣…山田百貴、大膳大夫信成…木村彰吾、近藤親家…水野純一、田口の武将…諏訪太朗、武者…関根大学・富永研司・中谷隆信、渡辺学…瀬野和紀、家人…本間康之、船乗り…前原実・田中輝彦、不動…清水宏、赤目…飯泉征貴、白鷲…池田鉄洋、藤原行政…本多隆、義経家人…本間康之、一条長成…蛭子能収、家貞…来須修二、鎌倉の使者…岡橋和彦・斉藤志郎、土御門家の使者…緒方愛香、後鳥羽天皇…三俣凱、武将…阿部勉・梁瀬龍洋、楓…杉山佳穂、木曽義高…富岡涼、村長…谷津勲、源頼朝(幼少)…池松壮亮、樋口次郎兼光…堤大二郎、今井四郎兼平…古本新之輔、根井行親…市川勉、楯六郎…山崎秀樹、余田…蔵本隆史、源氏の武者…金杉太朗・本田清澄・久太朗・長倉正和、院近臣…池田武志、物見…竹田寿郎、町人…針原滋・相川喬、任子…楊原京子、公卿…佐藤二郎・池田武志・鈴木浩之、女…下元あきら、藤原基房…中丸新将、守貞親王…水谷大地、黒漆…大村波彦、平塚良郷…伊東達広、律子…堀有里、真砂…辻葉子、鶴羽…堀越美穂、僧医…松原征二、天野遠景…真夏竜、二宮友平…中垣浩二、平清宗(幼少)…塩顕治、平六時定…西脇礼門、大庭景親…伊藤敏八、堀…徳井優、中原兼遠…森下哲夫、西光法師…向雲太郎、藤原成親…森源次郎、比企尼…二木てるみ、桔梗…鶴田さやか、北条宗時…姫野惠二、仁田…上杉陽一、家継…伊藤聡、阿部正宗…佐藤正浩、公家…茂木和範・谷藤太、法師…鶴忠博、武士…大久保運、遊女…麻生花帆・田尻智子・松本享子、くぐつ男…大坪光路、絵師…田口主将、むじな…川島大、騎馬武者…横山一敏・竹内康博、赤田次郎…小林勝彦、伊賀良目七郎…石田圭祐、照井高道…草野裕、高倉天皇…馬場徹、俊寛僧都…村松卓矢、平康頼…内田龍磨、藤原成経…宮内宏道、家臣…青山義典、佐藤庄司元治…加世幸市、金剛別当忠綱…天野勝弘、家臣…二橋進、家臣…吉野容臣、熊坂長範…河原さぶ、十蔵…中西良太、熊七…江良潤、水夫…村澤寿彦、持覚…齊藤尊史、瑞雲…吉澤宙彦、藤二…花ケ前浩一、萱…西川美也子、能子(幼少)…山口愛、公家…伊藤眞・桑名湧・祖父江進、桂…小林千晴、大日坊春慶…荒川良々、警固の武士…佐藤祐一、商人…浜田道彦、男…田鍋謙一郎、順慶…大島宇三郎、貞光…竹本美知敏、乳母…塚田美津代、うつぼ(幼少)…守山玲愛、むじな…後藤和雄、うつぼの里親…廣澤恵、宋人…魏來、宋人…薄宏、痩せた男…赤崎ひかる、産婆…中村由起子、住職…左右田一平、在の女…森康子、大炊の長者…大木正司、僧…窪田吾朗、家人…須賀友之、乙若…吉川史樹、今若…中村陽介、藤原秀衡…高橋英樹、後白河法皇…平幹二朗、源義朝…加藤雅也、平重盛…勝村政信、北条政子…財前直見、金売り吉次…市川左團次、あかね…萬田久子、平知康…草刈正雄、丹後局…夏木マリ、梶原景時…中尾彬、常盤…稲森いずみ、北条時政…小林稔侍、鬼一法眼…美輪明宏、時子…松坂慶子、源頼政…丹波哲郎、源頼朝…中井貴一、平清盛…渡哲也
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第21回「いざ出陣」(5/29放送)
☆☆★
 この大河が今一歩パッとしない理由の一つは、こいつはどうかしてるんじゃないか、という大河名物ともいうべき(?!)強烈なキャラクターがいない部分も少なからずあるだろう。面白げな義経の郎党たちも完全におちゃらけキャラと化してるし。蟹三郎(南原清隆)はそのネタばかりだし、弁慶(松平健)の怪力自慢までいくと、見世物小屋の趣も。それにしても、今回の弁慶は軽量。
 そんな中では、平塚良郷(伊東達広)の斬首を執行する、今鎌倉には何が肝心かと察しながら、それをひけらかすことなく神妙な梶原景時(中尾彬)の凄みはさすがだった。顔だけですでに怖い域でも、後白河法皇(平幹二朗)に迫る?!
 この第21回の最大の見せ場は、情よりも理を優先する頼朝(中井貴一)とそれに反発する義経(滝沢秀明)の問答ぶりだろう。主従をつなぐ絆は、御家人になったものの所領を安堵し、御家人はその恩に対し頼朝に奉公を尽くすことで、主従の間にはその契りあるのみ、情は必要も第一義ではないとは、頼朝はまさに理の人。慈悲と情愛に満ちた国を作ろうとした清盛(渡哲也)の肩を持つ義経も、その夢もついえたと指摘されれば、やはりそれは何かが足りなかったということに同意するしかない。力とは非情になれる強さとの指摘だけは、清盛、頼朝ともに共通するところ。
 義仲(小澤征悦)が京に迫る中、清盛の後を引き継いだ宗盛(鶴見辰吾)の弱腰ぶりは相変わらず。ちなみに、牛の角に松明をつけて走らせ、維盛(賀集利樹)の軍に義仲が圧勝した有名な倶利伽羅の戦いはイメージ映像ほどで処理。このあたりは大河ドラマであるならば、何かやってくれるかと思うだけにいっそうガッカリ。
 義仲をけん制する目的で、ついに都に出陣の命が下された義経に、主従も歓喜するも、実際には藤原秀衡(高橋英樹)対策の政子(財前直見)の知略だったか。この大河のぬるま湯気分からの脱却を期待したいところだが……。(麻生結一)


第20回「鎌倉の人質」(5/22放送)
☆☆
 頼朝(中井貴一)に見放されて、木曽義仲(小澤征悦)のもとに身を寄せた源行家(大杉漣)のハイテンションぶりが相変わらず怖い!それにしてもこの御仁、訪れた館ごとで食事をがっついてますね。威勢はいいんだけど、お腹はすいてるということか、それとも満腹になって威勢がよくなるということか。どちらにしても、あまりにも胡散臭い。
 その行家と志田義広を抱えてしまったことが後々の厄介となり、大軍を率いて信濃に挙兵した頼朝(中井貴一)に対して義仲は和議を申し入れるも、ならば行家を引き渡せと要求を突きつけられるが、それではあまりにも慈悲を欠く。結局は嫡男の義高(富岡涼)を頼朝の娘・大姫(野口真緒)の婿という名目で鎌倉へ人質にとられてしまう。巴(小池栄子)はいいとしても、義仲のジレンマはインパクトに欠ける。
 まったく出番のなかった義経(滝沢秀明)についに与えられたお役目は、義高と大姫の子守役。嘆く弁慶(松平健)を一切気にすることなく、曲芸師ぶりを披露するあたりは、いかにも義経といった感じ。それとも義経は義高に自らの幼少時代を見たのか。
 ちょっぴり印象に残ったのが、時子(松坂慶子)が手古奈(上原美佐)に政子(財前直見)の人物像を問う場面。清盛(渡哲也)の遺言をいったんは捻じ曲げるも、即恐れおののくあたりの対照は、原作の意図だろうか。(麻生結一)


第19回「兄へ物申す」(5/15放送)
☆☆★
 五足(北村有起哉)の死に悲嘆にくれる義経(滝沢秀明)は、もう一人の兄・範頼(石原良純)と初対面してちょっと元気に。範頼はいかにも人がよさそうなキャラクター。墨俣川の戦いで平家に惨敗を喫したくせに頼朝(中井貴一)に対して大見得を切るあたり、いかにも常にお騒がせな源行家(大杉漣)らしいところ。
 攻撃的な文句と甘い誘いを使い分けて相手を翻弄する頼朝の密書外交に対して、後白河法皇(平幹二朗)が奥州藤原家を陸奥守に任じて切り替えしてみせたことをきっかけに、侍所から佐藤継信(宮内敦士)と忠信(海東健)の兄弟によからぬ疑いがかかることに。ここで見せる義経の家臣を思うがゆえの頼朝へのピシャリに、ドラマは久々にピリッとした。(麻生結一)


第18回「清盛死す」(5/8放送)
☆☆
 清盛(渡哲也)の死の回だけに心して見せていただくも、義経(滝沢秀明)の話との距離感があまりにもついてしまっているために、物語はどことなく散漫な印象。渡哲也の清盛は包容の人であった牛若の父としての有り様がもっとしっくりと見えたし、そのあたりがとりわけ新鮮だった。清盛の耳役となった五足(北村有起哉)は、あまりにもひどい仕打ちにより清盛の死後すぐに平家によって斬られる。あまりにも近づきすぎたということか。(麻生結一)


第17回「弁慶の泣き所」(5/1放送)
☆☆
 弁慶の泣き所とは、身近の義経(滝沢秀明)と静(石原さとみ)の仲にも気がつかない弁慶(松平健)の恋心のことだったか。浜辺で溺れた弁慶とそれを助けた漁師の娘・千鳥(中島知子)の掛け合いは、頼朝(中井貴一)と亀の前(松嶋尚美)のコメディパートをそのままに、オセロ内で引き継いだってことか。
 義経(滝沢秀明)には妻・政子(財前直見)から嫁取りの打診が。いよいよ居づらくなった静は、千鳥に主従の世話を託し、頼朝から寝屋に召される可能性大につき、亀の前への仕打ちを思うと政子(財前直見)が恐ろしくてならないと出奔してきた手古奈(上原美佐)とともに都へと旅立つことに。うつぼ(上戸彩)に京と平泉間を1人で往復させたドラマだけに、今度は2人だし、平泉に比べれば近いだろうし、その道中はまったく問題ないということで?!(麻生結一)


第16回「試練の時」(4/24放送)
☆☆
 鶴岡八幡宮若宮本殿の造営に携わった大工たちに褒美の馬が頼朝より下される際に馬を引く役目として本来家来衆がやる役回りにもかかわらず、義経(滝沢秀明)は頼朝から直々に名前を呼ばれる。ここでの頼朝の気迫は尋常ならざるもの。
 そんな頼朝(中井貴一)と亀の前(松嶋尚美)がいちゃついているところを政子(財前直見)が目撃して激情。火を放たれて家から焼け出された亀の前は真っ黒に。政子の恐ろしさにおののく亀の前は、故郷の伊豆へアウトとなる。
 と、見せ場はそれなりにあるのだけれど、全般的にテンポが上がってこない印象を受ける。(麻生結一)


第15回「兄と弟」(4/17放送)
☆☆★
 義経(滝沢秀明)と頼朝(中井貴一)の初対面の回。ついに義経は頼朝との対面を果たすも、義経が頼朝から命じられたのは平家の陣に対面する形での富士川の見張り役。義経主従からは軽々しい扱いに不満が漏れるも、実は試されていることを知ってか知らずか、義経はその非凡な洞察力をビシバシと発揮する。その様を偵察してたのって、北条義時(木村昇)だったんですね。
 水鳥の羽音に維盛(賀集利樹)の軍が恐れをなして逃げ出す富士川の戦いの有名エピソードが凝った映像で見せてくれていた。
『アタックNo.1』的にアウトしたうつぼ(上戸彩)と入れ替わる形で、『H2』的に静(石原さとみ)がインするスポ根つながり。義経を品定めする政子(財前直見)はその美しさに見とれちゃった? のびのびと生きてきた22歳の義経と流人として生きてきた34歳の頼朝の兄弟が2人だけで向かい合うラストシーンが今話の最大の見せ場だ。(麻生結一)


第14回「さらば奥州」(4/10放送)
☆☆
 源頼政(丹波哲郎)・仲綱(光石研)親子が反旗を翻したことに怒り心頭の清盛(渡哲也)から出陣を命じられた知盛(阿部寛)と重衡(細川茂樹)は、宇治平等院に陣をしいた頼政の軍を追討。令旨を下した以仁王(岡幸二郎)も奈良へ逃亡中に矢に当たって命を落とす。
 清盛は矢継ぎ早に福原への遷都を強行。夢の都だったはずの福原も、移ってみれば神仏のたたりか、清盛自身も物の怪にうなされる始末。飢饉にも見舞われ、平家への怒りと憎しみは高まるばかりだった。
 下された令旨も反故同然と知りつつ、頼朝(中井貴一)は政子(財前直見)のアドバイスのままに時政(小林稔侍)の力を借りて挙兵し、伊豆での初戦で勝利。続く石橋山の戦いでは惨敗するも、敵方の梶原景時(中尾彬)の温情で逃げ延びる。
 清盛、頼朝のパートに比べると、義経(滝沢秀明)が藤原秀衡(高橋英樹)の思いを振り切って奥州を後にする話の方は味が薄い。久々の平家女達が菊見の宴で集うも、その場に義経の妹・能子(後藤真希)が初登場。(麻生結一)


第13回「源氏の決起」(4/3放送)
☆☆★
 清盛(渡哲也)は後白河法皇(平幹二朗)を鳥羽殿に幽閉、以仁王(岡幸二郎)の上皇地領も取り上げて、平家は朝廷を掌握する。そんな中、平宗盛(鶴見辰吾)が源仲綱(光石研)所有の名馬「木下」を所望、蔑みを与えたことをきっかけに、源頼政(丹波哲郎)は挙兵を決意することになる。
 以仁王による平家追討の令旨を託されたのは、新宮十郎義盛改め源行家(大杉漣)。この源氏的トラブルメーカーが伊豆の頼朝(中井貴一)、木曽義仲(小澤征悦)、さらには平泉の義経(滝沢秀明)を次々に訪れる過程が面白く、いよいよドラマも本格的に動き始めた印象だ。
 諸国行脚の前によりによって熊野に舞い戻って遊興三昧となる行家のおどろおどろしい振る舞いあたりを見ていると、大河的な趣もいよいよ深まってきたなと身も引き締まってくる?! 密かなる大河ドラマレビュラーキャスト、光石研はこれで3作連続の出演(『武蔵 MUSASHI』『新撰組!』と『義経』)。清盛の仕打ちにおびえる後白河法皇に御心安んじあそばせと諭す丹後局(夏木マリ)は、『奥様は魔女』から抜け出してきたよう。(麻生結一)


第12回「驕る平家」(3/27放送)
☆☆★
 これまでの傾向を見ても、清盛(渡哲也)がクローズアップされる回は概ね出来がいい。副題は「驕る平家」だけれど、趣は盛者必衰のことわりが透けて見えて、とりわけそれに抗う清盛には鬼気迫るものがあって見ごたえがあった。
 中宮となった徳子(中越典子)が言仁親王、後の安徳天皇を出産。そんな驕れる時も久しからず、重盛(勝村政信)が死す。病床の枕元で、父・清盛も心に夜叉を抱え込んでいると知ったあの時から、夜叉にも鬼にもなって矢面に立つ覚悟をしたと語る重盛。病に倒れたのは、夜叉になったことへの罰かと問いかけるあたりは痛切だ。
 二度と盗みが出来ないようにと盗賊の手首を落とすとは残忍にもほどがあるも、そんな平家一門の横暴も清盛の耳には届かない。いっそうの乖離を危惧したお徳(白石加代子)は、耳が遠くなったらもう一つの耳を持てと苦言して、耳役として五足(北村有起哉)を派遣する。
 もっとも息を呑んだのが、その五足が清盛の頭に剃刀を入れるシーン。高野山に納めるための曼荼羅に交えられた朱色こそが、清盛の頭から流れたその血だった。
 平泉から越後への遠出の最中、義経(滝沢秀明)が偶然遭遇する形で、女武者の巴(小池栄子)に追いかけられる義経の従兄弟であたる木曾義仲(小澤征悦)が無理やり気味に登場。越後の森も随分と狭いですね。(麻生結一)


第11回「嵐の前夜」(3/20放送)
☆☆
 行方不明になった藤原泰衡(渡辺いっけい)の単独救助に成功した義経(滝沢秀明)。それだけでも大いにあっぱれも、己の運と力を、源氏のもののふとしてこの後生きていけるかどうかを試したかったと言い放つ心意気も高らかに、秀衡(高橋英樹)のハートを鷲掴みに。
 途端に人気者になった義経の元には有力豪族たちからこぞって嫁取りの話が舞い込むも、すべてを断ったいきさつに絡んで、佐藤継信(宮内敦士)の弟・忠信(海東健)が初登場。最初は食ってかかるも、終いには相撲をとる仲良しに。うつぼ(上戸彩)は嫁取り云々に自分がいては義経に迷惑がかかると(本当は『アタックbP』で忙しくなるために?!)都へとアウト。
 建春門院滋子(中江有里)が死して、平家は後白河法皇(平幹二朗)とのパイプを失い、さらには鹿ヶ谷の陰謀に法皇が加担していたことが発覚して、清盛(渡哲也)のスタンスにも変化が。都に渦巻く暗雲の直前の巻。(麻生結一)


第10回「父の面影」(3/13放送)
☆☆★
 大変な道のりだったとのナレーションを無化させてしまうほどに、あっさりと奥州平泉にたどり着いた義経(滝沢秀明)とその一行。その器を見極めようとしている藤原秀衡(高橋英樹)が催した宴席で居眠りする大物ぶりを垣間見せたあたりから、義経のスーパースターぶりは隠そうにも隠しようがなく。その存在を父・義朝(加藤雅也)に重ねて秀衡をメロメロにしてしまうところなどは、さすがに生来のオヤジキラーだ。
 いったん義経のもとを離れた駿河次郎(うじきつよし)が、程なくして戻ってくるIN&OUTの連打はちょっと雑すぎないだろうか。平泉に義経を追って来たうつぼ(上戸彩)は、まさか京から一人旅?! 随分と女らしくなっていたあたりはどう考えればいいのだろうか?(麻生結一)


第9回「義経誕生」(3/6放送)
☆☆
 密かに目指す奥州への道すがら、桃太郎の鬼退治ばりに義経主従が続々と登場してきた顔見世的な回。地面に耳をつけただけで追っ手の数がわかってしまうほどに耳が特殊技能となれば、第一の家来もまんざらではないと思わせた喜三太(伊藤淳史)、コメディロール専任からいきなり人が変わったかのように、昔からいたかのような振る舞いで仕切り役となる弁慶(松平健)、顔を蟹呼ばわりされ続ける伊勢三郎(南原清隆)、『盲導犬クイールの一生』の抑えた名演から180度チェンジしたオーバーアクトぶりが炸裂する駿河次郎(うじきつよし)と、矢継ぎ早にメンバーが充実していくのはいいとしよう。ただ、主眼がそちらにあったせいか、先導役の吉次(市川左團次)が随時説明してくれているにもかかわらず、一体彼らがどこをどう旅しているのかはよくわからなかったのには困った。
 ドラマティックに極まったのは、父・義朝(加藤雅也)が最期を迎えた尾張・宇津木の庄にて遮那王(滝沢秀明)が元服の儀式を執り行い、源九郎義経と名を改める場面。盛り上がってたのは音楽だけだったりもする?!
 時政(小林稔侍)が二人を会わせまいとの画策も空砲に、頼朝(中井貴一)が雨宿りのために立ち寄った小屋で、政子(残前直見)が色っぽく着替えているシーンはあまりにも唐突だったために意図と反して思わず笑ってしまう。それともそれが意図だったり?!(麻生結一)


第8回「決別」(2/27放送)
☆☆★
 遮那王(滝沢秀明)が都を去る去らないの話にもそろそろ飽きてきたところだっただけに、清盛(渡哲也)、常盤(稲森いずみ)と矢継ぎ早に再会を果たすドラマティックな展開は待ってましたという感じだ。
 途中、前話で道を譲らずに維盛(賀集利樹)&資盛(小泉孝太郎)兄弟が烏帽子をとられた失態の報復として、公卿の邸内に押し入ってその烏帽子を強引に奪い返した重盛(勝村政信)の行動に関して、平家の面々は喧々諤々。あえて報復に及んだ重盛は、清盛の嫡男としての自覚から力んで鬼になったか。一般的には思慮深かったイメージのある重盛が強い個性で描かれているあたりがなかなか興味深いところ。
 ドラマティックの第一弾は、滝沢遮那王と渡清盛が初対面する場面だが、おそらく2人の共演はこれが最初で最後なのかも。続けざまに遮那王は母・常盤に会いに行くと、一条長成(蛭子能収)があまりにも庶民的に屋敷に迎え入れてくれる。やっぱりこの人は、このドラマ中でもっともいい人だ。微妙に恨み言を絡めつつ、今生の別れを覚悟する遮那王に、これまでのさまざまな常盤の苦悩は風のように飛んで行ったよ。常盤が仕立てた着物の着替えに遮那王の柔肌サービスカットつき。
 コラムに書くような内容かもしれないが、それではどなたの目にも触れぬままになってしまうのではとも思って、音楽についてもちょっぴり触れます。今回の音楽を担当するのは岩代太郎で、オープニングテーマ曲を指揮するのは昨年NHK交響楽団の音楽監督になったばかりのウラディーミル・アシュケナージ。この流れで思い出すのが、平成12年の大河ドラマ『葵徳川三代』(悪夢!)。あの時も音楽は岩代太郎、指揮はその前年にNHK交響楽団の音楽監督になったばかりだったシャルル・デュトワだった。ということは、ウラディーミル・アシュケナージの次の新しい音楽監督が就任した翌年の大河はやはり音楽は岩代太郎になるのか?!(麻生結一)


第7回「夢の都」(2/20放送)
☆☆★
 遮那王(滝沢秀明)は幼年時代に平清盛(渡哲也)から話を聞かされていた夢の都・福原に行きたいといろんな人に頼んで回るも、なかなかかなわないあたりがなかなか意地悪。うつぼ(上戸彩)にいたっては、福原に担ぎをくれた女=静(石原さとみ)がいると勘ぐって嫉妬する始末だし。『毛利元就』の加芽(葉月里緒菜)、『北条時宗』の桐子(木村佳乃)と、大河ドラマの男役(?!)にはもうけ役が多いのは不思議な伝統だが、このうつぼもまさにそんな感じ。
 北条政子(財前直見)は男ではないかという噂!そんな政子を頼朝(中井貴一)はスマイル攻めで陥落させた?! 現状、コメディロールは政子とその父・北条時政(小林稔侍)の専売特許の様相。
 都大路で公家の牛車に道を譲る譲らないともめてる間にあっさりと烏帽子を奪われちゃった維盛(賀集利樹)&資盛(小泉孝太郎)兄弟があまりのダメダメぶりを発揮。対して、盗んだ馬で福原にお連れすると言い出す喜三太(伊藤淳史)や家来志願してきた弁慶(松平健)も絡んできて、遮那王の周辺はだんだん勇ましくなってきた。(麻生結一)


第6回「我が兄 頼朝」(2/13放送)
☆☆☆
 ついに成長した源頼朝(中井貴一)が、思いっきりライトに初登場。ドラマの序盤は、うつぼ(上戸彩)の兄・春慶(荒川良々)からだまし討ちに合いそうになる遮那王(滝沢秀明)の危機一髪が描かれるも、あまりの強さに問題にならないのは予想範囲内。遮那王は幼いころを過ごした平家がなぜ自らを除こうとするのか、どうしても平家の皆々様を怨みには思えないだけに苦悩する。
 平家の中でも、遮那王と遊んだ幼年時代にいい思い出を持つ知盛(阿部寛)と重衡(細川茂樹)は擁護派、清盛(渡哲也)にひいきされていた遮那王のことを苦々しく思っていた宗盛(鶴見辰吾)は排除派と真っ二つに分かれての大論争。一方、遮那王に肩入れする金売りの吉次(市川左團次)は奥州藤原氏行きを大推薦。もちろん、吉次が損得抜きで遮那王に肩入れするはずもなく、清盛の異国との公益独占を危惧してのこと。ここでうまいのが、兄・源頼朝の存在を義経に知らせておいて、それをブリッジに頼朝のエピソードへと飛ばすあたり。
 東の彼方、伊豆に居るまだ見ぬ兄・頼朝は恋人・亀の前(松嶋尚美)とニコニコ生活中。男勝りの北条政子(財前直見)とイノシシ狩りで遭遇し、

政子「そのクネクネとした物言いはなんじゃ」

と罵倒されてしまうあたりは、いかにも頼朝と政子の初対面シーンらしい感じ。流人の身の上でありながらにして、都の三好康信とは文のやり取りで密かに通じて、朝廷や清盛の動向をチェックしているあたりでその抜け目のなさもさりげなく触れられていたり。
 頼朝を殺すとさえ言い放つ政子の父・北条時政(小林稔侍)も今回初登場。直接的な絡みのない弁慶(松平健)も五条大橋でこてんぱんにやられてしまった稚児こそが源氏の御曹司であることを知るエピソードを踏まえて来週に持ち越すあたりも含めて、見せ方に忠実な物語の運びが大変勉強になります。(麻生結一)


第5回「五条の大橋」(2/6放送)
☆☆☆
 ゴージャスさと鬼気迫る情景とが程よくマッチングした充実の「五条の大橋」の回。こういう大河らしい大河の趣を存分に味わえたのは、随分と久しぶりではないだろうか。
 弁慶(松平健)が遮那王(滝沢秀明)を迎え撃つその五条大橋の場面は、完全にリアリズムを廃した演出で、まるで絵本や紙芝居が抜け出してきたかのよう。歌舞伎的との前宣伝だったが、なるほどと思ったのは橋の上のシーンだからこそ違和感のない横のカメラがメインとなる画面の平面的な扱い方。花道から真横の桟敷席で見物しているような面白さがあって、その趣向に感心した。風に舞う桜吹雪、通常サイズの20、30倍はありそうな巨大な月、途中鬼一法眼(美輪明宏)から教えを請うた妖術作法で姿を眩ましたと思ったら、とどめは弁慶の泣き所!実はこれがやりたかったとか。
 女性陣も大挙して登場するが、中でも世の中の隙間をかいくぐって生きてきたとしんみりと語るうつぼ(上戸彩)のつらい境遇がけなげ。『あずみ』だって、『エースをねらえ!』だってそうだが、上戸彩はつらい境遇や過酷な逆境に身を置く役柄でこそ輝くのか。洛中のトラブルに巻き込まれ、神社の境内に逃げ込んだ遮那王を己の羽衣で助けたのは、なぜだか白拍子スタイルの静(石原さとみ)。お得意のハスキーボイスはここでも健在だった。
 後半の山は、何といっても怒り心頭に発した清盛入道(渡哲也)。娘・徳子(中越典子)を天皇の中宮にと画策していたところまではご機嫌だったが、源頼政(丹波哲郎)に見せてよとせがまれて引っ張り出してきた源氏の“髭切りの太刀”が偽物だったと判明して一転。命を救ってやった14か15歳の源頼朝に実はたばかれていたと知るや、その怒りは頂点に。ニセ髭切りの太刀で庭木を切り刻んでの大暴れに、おどろしいほどのうなり声が闇夜にこだまする。いっそううまかったのは、実際にその模様は見せず、一夜明けて無残な庭を目にした重盛(勝村政信)がその様を想像する形で見せたあたり。
 冒頭のクレジットを見てビックリしたのが、中越典子、戸田菜穂、中江有里、石原さとみと朝ドラヒロンの名前が数珠繋ぎであったこと(実際には戸田菜穂と中江有里の間にかとうかずこも挟まっていたけれど)。今クールに大挙登場している朝ドラヒロイン列伝に関しては別の機会に。(麻生結一)


第4回「鞍馬の遮那王」(1/30放送)
☆☆
 仇でもあるけれど、命の恩人でもある六波羅(=平清盛)の存在を聞かされる遮那王の苦悩を、その遮那王を演じる滝沢秀明のイメージビデオ風にさばいていくやり方も、ドラマの一番手がついにメインに座った回とするならば、それはそれでありなのでは。少なくとも、義経のイメージにはピッタリ。兵法の教えを請う鬼一法眼(美輪明宏)との絡みは、呪術的というよりも紙芝居を見て言いるような風情。
 今話の注目は、これまた本格初登場したマツケン弁慶。叡山と円城寺の抗争の首謀者として叡山から追放される弁慶がストップモーションにて、

弁慶「何で私が追われなければならぬ。理不尽じゃ!」

と怒りを露にするシーンが、結構お茶目に映ってしまうのはなぜ?さらには、事の次第を弁明するべく平重盛(勝村政信)を訪ねるも、応対したその子・平維盛(賀集利樹)によって鼻先で門を閉められ、

弁慶「理不尽なり!」

と再度叫ぶもやっぱりお茶目。たった二つのエピソードで弁慶が平家に敵対するに至ったことを説明しちゃうとは、このドラマ的省エネぶりもやはり理不尽か。
 この時代を描いた大河ドラマ『草燃える』にも松平健は出演していたが、このときの北条義時役は本当に素晴らしかった。あの時の夢よもう一度、って、もう26年も前になりますか。(麻生結一)


第3回「源氏の御曹司」(1/23放送)
☆☆★
 平重盛(勝村政信)の進言によって、清盛(渡哲也)は牛若(神木隆之介)を西国に送るか、仏門に入れるかの二者択一を迫らざるを得なくなる。やむなく牛若を鞍馬寺に連れて行き、そして別れを告げる常盤(稲森いずみ)のはかなげさはここに極まった。
 以降ははかなげさとは対極にある覚日律師(塩見三省)、鬼一法眼(美輪明宏)らが続々と登場。牛若は覚日律師から遮那王という新しい名前を授けられるや、今度はものすごい勢いで鞍馬寺に訪ねてきた新宮十郎義盛(大杉漣)から、牛若は源義朝の子であり、ということは清盛は仇であり、いずれは源氏再興の身柱にならねばらならないことを聞かされて、追い討ちをかけるかのように巻物型の家計図を見せられて完全なる混乱状態に。思い余って滝つぼに飛び込むと、ブクブクとやってる間に月日は過ぎて、水面には滝沢“牛若”秀明が颯爽と登場。鏡に映ってたらいつの間にとか、木に登ってたらいつの間にとか、これまでにも主人公が子役から大人になる場合の変身パターンは数々あったけれど、これもなかなか笑えました。(麻生結一)


第2回「我が父 清盛」(1/16放送)
☆☆★
 物語のうねりやドラマのディテールよりも、大河らしい大河との感覚をもう少し楽しんでもよろしいでしょうか。クレジットでの実際の一番手は牛若役の神木隆之介だが、実質的にはこの第2話も常盤(稲森いずみ)の回という位置づけだ。何せ、清盛(渡哲也)の妻・時子(松坂慶子)から、というか松坂慶子からその美しさを嫉妬される役回りなのだから、日本的にはこれがマックスと考えてもいいところだもん。清盛の子を身ごもっていることを見抜かれた時子の逆鱗に触れて、常盤が嫁がざるを得なくなる一条長成役の蛭子能収があまりにもハマってる!
 クレジットのことばかり触れていて下世話なのだけれど、本格始動前の順列だけになかなか興味深いものがあります。(麻生結一)


第1回「運命の子」(1/9放送)
☆☆★
 冒頭の一ノ谷の合戦シーンの6分間はまさに映画だ。入念な描写にスケール感、重厚さと申し分のないその見せ場に引き続いて、目を奪ったのがクレジットに次々と映し出される豪華キャストの方々。源頼朝役で後々登場する中井貴一がインタヴューでおっしゃっていた、本来大河が持っていた重厚さ、なる発言にすべては凝縮されているので、これ以上付け加える言葉はない。
 ドラマは平治の乱で源義朝(加藤雅也)が命を落とすところからスタートし、その後は乳飲み子の牛若らを抱えて彷徨する愛妾・常盤(稲森いずみ)がメインとなる。実母までもが捕えられたと知り、ついには平清盛(渡哲也)のもとに出頭する常盤は、都一の美女とうたわれたそのままに、あまりにもはかなげで美しい。
 今後期待させるのが、これまでのイメージを覆すような苦悩する清盛像。継母である池禅尼(南風洋子)のよる源氏の嫡男・頼朝(池松壮亮)の助命に苦心するあたりはなかなかに新鮮。古代史ドラマスペシャル『大化改新』の蘇我入鹿も同様だったが、当時の文献などは為政者に都合のいいように書かれていたわけだし、そうなってくるとかつての悪役の復権はドラマレヴェルでは随所に見られてしかるべきだろう。(麻生結一)




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