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救命病棟24時 (フジテレビ系火曜21:00〜21:54)
制作著作/フジテレビ
企画/和田行
プロデューサー/中島久美子、増本淳
脚本/福田靖
演出/若松節朗(1、3、6、8、11)、水田成英(2、4、7、10)、西谷弘(5)、村谷嘉則(9)
音楽/佐橋俊彦
主題歌/『何度でも』DREAMS COME TRUE
出演/進藤一生…江口洋介、小島楓…松嶋菜々子、黒木春正…香川照之、磯部望…京野ことみ、河野和也…小栗旬、佐倉亮太…大泉洋、河野純介…川岡大次郎、大友葉月…MEGUMI、日比谷学…小市慢太郎、河原崎美江子…深浦加奈子、須藤昌代…鷲尾真知子、田村たがめ、小須田康人、尾野真千子、広田亮平、福田麻由子、徳井優、おかやまはじめ、井上真央、寺泉香織…渡辺典子、河野敬子…山口美也子、奥貫薫、筒井真理子、山田辰夫、円城寺あや、篠崎はるく、芹沢名人、山下徹大、三宅弘城、近江谷太朗、伊崎充則、相島一之、菊池均也、西村雅彦、綿引勝彦、高松英郎、米倉斉加年、渡辺哲、黒田福美、塩見三省、加賀裕樹…石黒賢、河野定雄…平田満、寺泉隼人…仲村トオル
ほか

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第11回(3/22放送)
☆★
 あまりにすさまじいそのパニックぶりに、きっとおにぎり以外の要因があるに違いないとにらんでいた食中毒だが、やっぱりおにぎりのせいだったようで。それにしても“病院のスタッフの3分の2”が倒れるって一体何個のおにぎりをいっぺんに出したんだろとか、賞味期限を1週間過ぎてたらいくらなんでも味が変わってて誰か気づくだろとか、そんなツッコミを入れさせてしまうあたりからして、緊張感を漂わせようという意図とは全く逆方向に行ってしまってかなりツライ。それに、主要登場人物の多くが当然のように食中毒にならない都合の良さには目をつぶるにしても、これまで登場すらしなかった人たちが倒れたことを大きな危機のように言われても、その切実さは全く伝わってこない。
 そんな大怪我をしたようには全く見えなかった全身やけどの少年について楓(松嶋菜々子)が言う、

楓「人間には元々、健康体に戻ろうとする強い力があるんです」

という言葉がこの最終回のテーマ=人間の生命力に通じるのだというのはわかったし、被災直後の神戸と現在の神戸の写真がその象徴だというのは(絵的にインパクトが弱いと言うことを差し引けば)アリだろうと思うけれど、そこに至るまでの積み重ねがない。いや、あるのだが、うまく積み重ならない。官僚の三上(近江谷太朗)が寺泉(仲村トオル)に言う

三上「この国は今、存亡の危機にさらされてるんですよ」

との言葉はショッキングだが、あんな小ぎれいで噴水まで動いている場所で言われても納得できるだろうか。復興作業中に命を落とす作業員が絶望を煽るのはいいが、その死に涙する同僚(相島一之)の説明的な言葉だけで、その復興への困難さを感じ取ることができるだろうか。
 進藤(江口洋介)以上に今シリーズのヒーローだった寺泉のあまりに主人公たち寄りのキレ方も、あそこまで来ると、ちゃんと政治家としての仕事やりなさいよという気分になる。あれじゃ単なる議事妨害にしか見えない。黒木(香川照之)に頼まれた医師や看護師を最終的にどうやって調達したのか描写されないのは以前のヘリコプターの時と全く同じだが、そこを見せてくれなければ「じゃあ最初から人に頼まず自分で動けばよかったのに」と思わざるを得ないのだけど。
 進藤の最後の言葉が

進藤「I'm starting to see some kind of hope」(字幕「希望が見えてきました」)

って英語だったのも首をかしげたくなる。ここぞという見せ場に、「希望」って言葉よりも“英語だった”って印象しか残らないのでは、役者も浮かばれない。最後に“カッコいい進藤コレクション”があったから、進藤ファンはそれで満足しといてくださいって感じ?災害医療のあり方を描くと言いながらそういう終わり方もどうかとは思うけれど。
 そういえば、多くの進藤ファンにとっては、この第3シリーズは“ゴッドハンド”の発動が少なく物足りないものだったという話も聞く。確かに、進藤をいつも通りのスーパードクターとして描きたいというスタンスと、災害を描くためにはその他の人々こそ描かなければならないというスタンスのどちらを取るべきかずっと迷い続けていた印象は受けた。結局、災害医療という現実的過ぎるテーマを描くのに、「救命病棟24時」というドラマは適していなかったのかもしれない。(櫻田もんがい)


第10回(3/15放送)
☆☆
 ディスカウント店社長・城丸(綿引勝彦)とその息子(伊崎充則)の話は、よく言えば普遍的、悪く言えば陳腐な話だけに、細部をどう見せてくれるかで説得力が全然変わってくると思うのだが、むしろ細部をすっ飛ばして描写されるその展開はまるでダイジェストを見ているかのよう。どう考えたってもうちょっと人がいないところで普通するでしょうよというような話を大部屋でやって、それを周囲のスタッフ全員が聞き耳を立てていることで物語が進むというやり方も、ここまでなんの躊躇もなく使われるとさすがにげんなりする。父親の死に際に息子が間に合うかというときに、寺泉(仲村トオル)が娘たちに読む「走れメロス」の文章がかぶるという趣向もちょっと分からなかった部分で、普通こういう手法を使う時は、父子の関係の象徴としての「走れメロス」ってことになるんだろうが、あの父子の話はそういうものではなかったような。単に「間に合うかどうか」を盛り上げるための引用だとすればあまりに直接的すぎる。
 今回もう1つの軸は、落ち込んで実家の病院に逃げ帰っていた河野(片岡大次郎)。自分はまだ研修医で、“ダメダメで当たり前”だと気づいて復活するのはいいが、そのきっかけが、父親が実は助教授職を投げ打って町医者になったという過去を知ったことだってのも因果関係がよくわからなくて響いてこない。おまけに、

河野「親父が?そんなすごかったんだ?」

って、ここでの「すごい」は文脈から察するに「名誉を捨てたからすごい」ではなく「助教授だったからすごい」ですよね。“助教授職を投げ打った町医者”と“普通の町医者”でそこまで認識を変えるのはこの人の性格だとしても、そんな言葉で立ち直られても、少なくとも爽やかな気分にはなれない。
 ラスト、出されたおにぎりが古かったせいで(?)病院のスタッフが集団食中毒にという話で最終回へ。ここで気になったのはどうやらその時点でドラマの中の日付も3月15日だったらしいということ。冒頭では地震発生後42日目=2月22日だったので、3週間経っていることになる。末期ガンの患者が症状を悪化させて亡くなるまでの時間が流れたことを思えばそれ自体は不思議ではないんだけど、河野もそんなに実家に引きこもってたってこと!?イヤまあ、あり得えないことじゃないんだろうけど、ちょっとびっくりしました。(櫻田もんがい)


第9回(3/8放送)
☆☆
 阪神大震災での教訓を生かして、災害時に消防のポンプ隊は消火活動を優先し、人命救助には当たらないことになっている……。それが事実であれば、これはなかなかに興味深い話。それ故に自分が助けられなかった人々に対し罪悪感を感じている消防士・平野(山下徹大)が病院に運ばれてくるところで、今回のエピソードは幕を開ける。ちなみに地震発生後40日目。
 進藤(江口洋介)が言うように、平野は自分の役割を然るべき形で果たしただけであって、責められるような行動を取ったわけではない。本人にしてもそれは分かっているはずだが、それでも割り切れないから苦しんでいる、ということだろう。そんな理屈ではない苦しみを抱えた人に、寺泉(仲村トオル)が消防士たちをかばう演説をラジオを通して聞かせて万事解決としてしまうのは、良くも悪くも大技の多いこのドラマらしいところ。今回は、仲村トオルの常軌を逸した熱い演技が何とか辻褄を合わせてくれたという印象。しかし、あんなチャチなラジカセで病院中にその演説を中継するところまで行くと、さすがに状況作りが乱暴すぎるような気はしてしまう。確かに物語の流れからすれば些細なことかもしれないが、地震に関する取材は綿密にするけどそういう部分は雑でいいってのもおかしな話だし。佐倉(大泉洋)のコマネチねたがうまくオチればまだ後味が良くなったかもしれないが、どうにも蛇足っぽい感じで終わってしまったし。
 苦しむ平野の姿を見て、自らも救えない人がたくさんいたことを不意に思い出して脱力してしまった研修医・河野(片岡大次郎)も今回の軸の1つ(かと思ったら、解決は次回にお預け)。地震直後に「僕は、患者を簡単に見捨てるような医者にはなりません!」とブチ上げてた後、その発言に何のフォローもないと思ってたら、実は彼にもいろいろあったってことなんでしょうかね。当時のエピソードを思い返してみても、そんな気配は微塵もなかったですけど。ここで「そうか、あの時の描写はそういうことだったのか!」と膝を叩かせてくれるようなことでもあれば、ドラマ全体に対する印象も変わるんですが。
 そうそう、これこそ些細なことですが、黒木(香川照之)がカレーを食べようとするシーンで楓(松嶋菜々子)が言った

楓「お皿にラップ敷いてくださいね」

って言葉は、このドラマとしては唐突なまでにリアルな生活感を漂わせてましたね(ほめてます)。(櫻田もんがい)


第8回(3/1放送)
☆☆
 時間は飛んで、地震発生後25日目に。病院のスタッフたちは、地震発生直後とはまた違う、慢性的な疲労感を漂わせている。それでも懸命にやっているんだとスタッフをかばう黒木(香川照之)と、それを甘えだとする進藤(江口洋介)の議論は、一概にどちらも正しいとは言えないという立場で見せてくれれば興味深いものになると思うのだが、進藤を圧倒的に正しい主人公として描いているこのドラマの構図の中ではそのようには機能せず。ましてや、その後の展開でやっぱり進藤が100パーセント正しかったということになるのならば、一体なんのためにこのテーマを提起する必要があったのかとすら問いたくなる。

黒木「自分に、甘くなっていたのかも」

って、そんな言葉で割り切れないから、誰しも苦労するのでしょうに。
 そんな話と、身元不明のおばあちゃんの話、そして故郷の家族を捨てたヤジキタこと矢島(おかやまはじめ)&北村(徳井優)の話が渾然一体となる流れは巧みだとは思うけれど、すべての話においていいところを持って行くなんて、いくらなんでもスーパー過ぎです、進藤先生。
 今回一番不思議だったのは、フツーに看護師を続けている望(京野ことみ)。そりゃ看護師資格も持ってるんだろうし病院側としては採用もアリだろうけど、地震前までやっていた小学校の保健室での仕事はほっぽり出しちゃったってこと?25日経ってもまだ学校が再開されてないという設定かとも思ったが、それでも学校の職員としてやるべきことはありそうなもので。そういえば寺泉(仲村トオル)の娘・千尋(福田麻由子)が未だに病院暮らし(?)ってのも妙だし、つるんでいる少年・省吾(広田亮平)がずっと親と離ればなれってのもいささか違和感。省吾くんネタは最終回までに登場しそうではあるけれど。(櫻田もんがい)


第7回(2/22放送)
☆☆
 店が全壊したそば屋の主人・小木(山田辰夫)とその妻(円城寺あや)がそろって入院することに。夫婦のグダグダをスーパードクター進藤(江口洋介)が解決、みたいな方向に行くのかと思いきや、今作の名ヒール・日比谷(小市慢太郎)もまた、母と共に住んでいたマンションが全壊していたと判明。もしかすると面白い方に転ぶかもと思い直す。加えて普段はおちゃらけ担当の佐倉(大泉洋)までもアパートが火事で焼けていたとなれば、いろいろな感情のぶつかり合いが期待されたのだが……。佐倉と日比谷が立て続けにそば屋夫婦に打ち明け話をするというシーンでしかそれが結実しないのは残念というか、もったいない。

小木「なんなんだここの連中は。入れ替わり立ち替わり来て、不幸自慢しやがって」

と、登場人物につっこみを入れさせるぐらいなら、もっと別のやり方があったのでは。だいたい日比谷って、進藤の言葉にあんなに簡単に感化されて、誰にでも聞かれるようなあんな場所であんな打ち明け話をするようなキャラだったの?演技的につなぎ止めようとしていた役者の頑張りは評価したいが、その不自然さはぬぐえない。
 一方の、ボランティアが危険家屋に近づいて怪我をするという話は、ボランティアのあり方という前回にも通じるテーマに踏み込んでいるのだが、こちらはいかにも描写不足。マスコミが怪我の責任を寺泉(仲村トオル)に問うってのも正直よくわからないが、まあそれはそういうものだとして、問題はその後。寺泉が苦々しい記者会見を開くまでの葛藤をこそ見せてほしいのに、

寺泉「俺が一番嫌いなのはどんな政治家か知ってるか。綺麗事ばかり並べる、市民運動家上がりの連中だ。……俺があいつらと、同じようなこと言っちゃうとはなぁ……」

と、今度は言った本人が自らつっこみを入れるような“綺麗事”を演説して幕引きとされてもなあ。しかもその演説自体も論点がずれてるし。まさか、政治家の演説なんてそういうもの、って言いたかったわけじゃないですよね?
 そんな中、楓(松嶋菜々子)が訪れた加賀(石黒賢)の実家での一連のシーンは、開放感ある美しい景色も手伝って今回の清涼剤と言ったところ。規則正しい柱時計の音と遠く石焼き芋の売り声だけが聞こえる静かな和室での夜と、せわしない病院の対比が効果的。浜辺で指輪をなくすシーンでは、楓と共に指輪を探す医師(米倉斉加年)の安定した存在感にホッとさせられた。しかしその後、病院に戻ってきた楓をスタッフたちが仕事を放り出して総出で出迎えるという、いかにもこのドラマらしいそれこそ“綺麗事”なシーンで終わられると、その美点すらかすんでしまうのだけれど。(櫻田もんがい)


第6回(2/15放送)
☆☆☆
 容態が急変した加賀(石黒賢)は、進藤(江口洋介)らの奮闘もむなしく絶命。そのことを望(京野ことみ)が寺泉(仲村トオル)に話す際の

望「…小島先生の、婚約者が」

という台詞に象徴されるごとく、この男が最後の最後まで「小島先生の婚約者」というだけの存在だったことは大いにもったいないと思うが、とにもかくにも“主要キャラが近しい人を失う”といういわばドラマ的必殺技を絶妙のタイミングで決めてきたなという感じはある。加賀の遺体を故郷の岡山まで運びたいのだが方法がないという状況の打開策も、この作品としては珍しく(?)地に足についたものだったあたりも好印象。とはいえ、霊安室がいっぱいなので会議室に置かれたという加賀の遺体が、あまりにドラマチックに部屋の真ん中に置いてあるのには、「霊安室に入りきらなかった遺体は1体だけだったのか?」とつっこみたくはなったけど。それにしても、楓役の松嶋菜々子は、“自立した女性”的キャラを颯爽と演じるよりも、今回のようにいい意味で女性的な部分を表に出す演技のほうが目を奪われる感じがしますな。
 ともかく、メインの話が品良くまとまれば、このドラマの“感動させるためなら多少のムリは押し通す”という良くも悪くも強引な部分が自然と補正され、周辺の話の存在感も増すことに。和也(小栗旬)とボランティア青年とのいさかいや、寺泉が避難所でつるし上げを食らってブチ切れるというケレン味あるシーケンスを通して、「何が真の援助たり得るのか」を考えさせてくれる趣向になっているのは大いに評価したい。もちろん、この後、このドラマとしてどのようにその問いに答えるのかも見極める必要があるけれど。ちなみに、ふてくされた和也に今回言葉をかけるのは日比谷(小市慢太郎)。前回の和也と進藤の組み合わせよりも、“アンチ河野(川岡大次郎)同盟”とでも言うべきこのツーショットの方がやはりしっくり来るようです。
 そういえばこの放送の数時間後、関東で震度4程度の地震がありましたね。寺泉の

寺泉「あんたたちの中で、3日分の水と食料を、自分の家にしっかりと備蓄していたっていう者がいたら手を挙げてみろ!」

という台詞を思い出して、思わず水と保存食を買いに行った人もいるのでは。(櫻田もんがい)


第5回(2/8放送)
☆☆★
 安否不明の娘・望(京野ことみ)を探しに福岡から車でやって来た父親(渡辺哲)のための話だったと言っても過言ではない今回。医療ミスに起因する望と父との確執については、望の説明を聞く限りではそれが大地震後に安否を知らせないほどの深い亀裂だとはどうしても思えないのだけれど、そこはぐっと飲み込んで「この二人にはそれほどに大きな確執があるんだ」と思いこんで見てみる。そうするとクライマックスの、災害伝言ダイヤルに残された両親の伝言を聞きながら炊き出しをする父をガラス越しに目撃して涙する望、なんてシーンは確かに上手いし感動的。久しぶりに温かい食事にありついた人々の幸福感もその感動に拍車をかける。そんな大筋は本当に良いと思うのだが、きちんと見れば見るほどにその感動を邪魔する要素が多いのもまた事実。先に述べた、望と父の関係の説得力のなさもそうだし、炊き出しの場所にしても、最初に集まった人々は避難所に居た人々だったからそこは避難所なのかと思いきや、いつの間にか都合良く病院の前になっていたりするあたりにも水を差される感じで。望が伝言ダイヤル聞いてる間に移動したんですかね?
 今回のもう1つの軸は河野一家の父(平田満)と息子二人の人間模様。働きづめで倒れた父親の医者としての矜持を理解しようとしない河野(川岡大次郎)に“指導医として”アドバイスを与えるのが楓(松嶋菜々子)なら、兄と比較されるせいで素直になれない弟の和也(小栗旬)にお説教するのは進藤(江口洋介)ってことで、まあ至れり尽くせりというかお節介というか。和也が進藤に「うざい」と言い切ったのは拍手ものだったが、そんなイヤミさえ相手への助言へとすり替える進藤のお説教パワーの方が一枚上手なわけですね。いかにも完璧なお方に「必死だった」なんて口で言われても、ハイハイそうですかとしか思えなさそうですけど。まあそれでも、これまでで最も進藤のスーパードクター感が薄く、故に後味のいいエピソードだったとは言えそうで。(櫻田もんがい)


第4回(2/1放送)
☆☆★
 地震発生後3日を過ぎて、食料や飲料水が不足し始めたのみならず、疲労がたまって苛つき気味になっているスタッフたちの矛先となったのは、実家で売ってる煎餅を持ってきても誰にも食べてもらえない葉月(MEGUMI)。さらに日比谷(小市慢太郎)も悪びれもせず復帰して、人手的には大助かりでも研修医の河野(川岡大次郎)は面白くない。そんなスタッフ間の緊張がオペ室にまで飛び火する展開はスリリングなれど、その状況を打開するのが進藤(江口洋介)の

進藤「冷静になれ!」

との鶴の一声だというのは、あぁやっぱりかと思わずにはいられない。まあこれがこのドラマの流儀なのだと言うことで、そろそろ見る側も慣れるべきなのかも知れませんね。それにしたってそのしばらく後の、

進藤「小島はちゃんとやってるじゃないか!」

とはあまりに“そのまんま”でデリカシーに欠ける台詞では。楓(松嶋菜々子)に対してという意味ではなく、視聴者に対して、という意味ですよ、念のため。
 その、ちゃんとやってる楓の婚約者・加賀(石黒賢)が最初に担ぎ込まれた病院から抜け出して楓の病院に向かうというのも全く説得力に欠けていて、楓を加賀の手術に関わらせるにしてももうちょっと別のやり方はなかったものかと思う。まぁこのあたりは、この容姿端麗カップルが深く愛し合ってるようにさっぱり見えないってことにも起因しているのだけど。
 とはいえ、これまでの中で主人公二人の目立ち度合いがもっとも少なく、群像劇的と言えるレベルに達していた今回のエピソードは、それなりに見応えある出来映えだったことは確か。前回をもってドラマ的には役割を終えたと思われた寺泉(仲村トオル)が、それ故にアンサンブルの一人となり、むしろ今までよりもいい味を出していたのが印象的だった。そうそう、話は飛びますが、ああいう状況下ではカルテはあんなふうに紙の切れ端に殴り書きされることになる、なんてのも、いかにもありそうなディティールでしたね。
 スーパードクター進藤をカッコイイと褒めちぎる河野に、弟の和也(小栗旬)が言う、

和也「あの人だって……(中略)……俺はけっこうカッコイイと思うよ……医局長」

との台詞には大いに共感。もちろんこの医局長とは黒木(香川照之)のこと。やはり黒木こそがこの第3シーズンの“裏主人公”なのだと確信する。(櫻田もんがい)


第3回(1/25放送)
☆☆
 政治基盤を得るためだけに結婚したと妻(渡辺典子)から思われていた寺泉(仲村トオル)が、念願の内閣入りか瀕死の妻のために奔走するかの決断を迫られ……という展開自体はいいのだが、出入りの政治記者に「君のところにだけネタ流してやってもいい」なんてずいぶん大雑把な取引を持ちかけてみたりの末に調達したヘリコプター(最終的には知り合いのゼネコン関係者にでも頼んだと言うところ?)が妻の命を救うというオチならば、それはごく一般的な視点で言えば美談というより「国会議員の身内びいき」以外の何物でもなく、感動しろというほうが無理な話では。
 病院は前回の閑散ぶりから一転、次から次へと担ぎ込まれる患者の処置に医師たちは忙殺されることに。いくらなんでも目の前に患者が列をなしていれば、研修医の河野(川岡大次郎)としても

河野「僕は、患者を簡単に見捨てるような医者にはなりません!」

なんて大見得を切っている余裕もなくなるのではないかとも思うのだが、ドラマ的にはここまで言わせなければ盛り上がらないってことか。地震発生後3日目、楓(松嶋菜々子)や進藤(江口洋介)が疲れさえ感じさせないスーパー主人公ぶりを発揮する傍らで、医師の抱える矛盾や葛藤をその佇まいの端々に垣間見せる黒木(香川照之)のみが、冒頭のテロップが告げる「都市における大規模災害時の緊急医療」というテーマを表現する最後の砦と言ったところ。(櫻田もんがい)


第2回(1/18放送)
☆☆★
 初回と同じ点数ですが、☆2つに限りなく近かった前回に対し、今回は☆3つ寄りのこの点数です、と言ってしまおう。行きがかり上、河野医院で院長(平田満)に代わって治療にあたることになった進藤(江口洋介)は、重篤な患者を優先して軽傷の者は帰らせようとするも、付近住民はそれに不満を感じ、さらにそこに“衆議院議員の”寺泉(仲村トオル)が加わったことで一触即発状態に……という大筋は、緊張感があってかなりいい出来だったと思う。病院の外に出た楓(松嶋菜々子)が、周囲に明かり一つ見えないことに一瞬たじろぐ、なんてシーンにはどきっとさせられるし、血管縫合ができない状況で患者を開腹した進藤がどうしたか、の顛末も上手い。先週不満として述べた“医師としてまず個人的恐怖を克服する姿”も、医局長の黒木(香川照之)だけは演技的に体現してくれていて、まずまず満足。ついでに言うと災害伝言ダイアル「171」の使い方も勉強になりました、ハイ。
 しかし、家族の方が大事だと病院を去る日比谷(小市慢太郎)の行動自体は全く納得できるにしても、その際に言い捨てる

日比谷「小島先生は、心配する人いないの」

という台詞に大いに引っかかる。主人公を名指しで狙い打ちするような台詞をあそこまではっきりと言わせなくても、日比谷の感情も楓の葛藤も見てる側はちゃんと理解できるでしょう。もう少し、視聴者の想像力を信じてみてはもらえないだろうか。いちいち列挙するのはやめるけれど、他にもこんな調子で“引っかかる台詞”が散見され、せっかくのいい流れが途切れているように思えるのが本当に残念。
 それにしても、予告終了直前に「新潟県中越震度4」の速報がかぶるとは……。新潟県中越地方に、一日も早く安らかな夜が来ますように。(櫻田もんがい)


第1回(1/11放送)
☆☆★
 自殺未遂の少女への対応で、わかりやすく青臭さを見せる研修医・河野(片岡大次郎)とわかりやすく非情さを見せる日比谷(小市慢太郎)の構図は医療ドラマにおいてはもはや様式美?ぜんそくの男の子が、家族に迷惑をかけていると感じる姿はいじらしいなれど、「一生懸命英語の勉強してたのに……」って年端もいかない子供から言われちゃうお父さんってちょっとどうなの?
 なんてツッコミを入れている間に、ついに東京大地震がやってくる。このドラマを今回見てみようと思わせたのはその題材ゆえだったので、そういう意味では企画上手なのだけど、期待させてくれただけにその「地震」の描き方については厳しめに採点せざるを得ず。特撮はともかく問題は人の描き方の方で、あんなすさまじい揺れを経験した後に、ああも簡単に職務に復帰できる人ばかりだとは思えないのだけれど。そんな、個人的恐怖を医師として乗り越える姿からまず見せて欲しかったというのは、的はずれな注文だろうか。
 ドラマでは難しいテーマに挑戦する姿勢は評価に値するし、今のところ主人公たちとまったく接点を持たない代議士・寺泉(仲村トオル)らがいかに本筋に絡んでくるかというドラマ的楽しみも感じさせるので、★はその分ってことで。(櫻田もんがい)




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