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聞かせてよ愛の言葉を (TBS系月〜金曜13:00〜13:30)
製作/大映テレビ株式会社、TBS
企画/安倍純子、渡部宗一
プロデューサー/佐野奈緒子
原作/津雲むつみ『聞かせてよ愛の言葉を』
脚本/吉本昌弘、緒方彩子
監督/松生秀二、江崎実生、合月勇、
主題歌/『帰り来ぬ青春 readymade mix2004』和田アキ子
出演/佐野千尋…伊藤かずえ、佐野万里…濱田万葉、相原美香…山口あゆみ、佐野康宏…石橋保、橋田彰浩…唐渡亮、えり子…山田スミ子、吉岡健二…井之上チャル、相原昭三…森次晃嗣、安倍医師…江藤潤、佐野志保…兎本有紀、山下知行…萬雅之、長谷川尚子…棟里佳、吉岡康明…石塚祐也、後藤麻子…新藤恵美、佐野洋介…寺泉憲、ナレーション…来宮良子、後藤克也…松村雄基
ほか

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第6週(3/28〜4/1放送)
☆★
 破天荒を目的とするドラマの最終週だけに(?)、予想の範囲以内のどんでん返しには納まらないデタラメぶりは意外性という意味ではかえって功を奏していたか。それにしても、克也(松村雄基)の母・麻子(新藤恵美)こそが父親を裏切ってて、千尋(伊藤かずえ)の父・洋介(寺泉憲)と付き合ってたところまではいいとしても、裏帳簿まで渡しちゃってたとはね。さらには洋介との間に子供を授かるも、臨月になっても誰にも妊娠を気づかれなかったってそんなバカな。新藤恵美が何歳から何歳までを演じていたのかも、一切の説明なく勢いだけで乗り切ってしまうあたりはさすがだ。
 民宿の女将・えり子(山田スミ子)の悪気のない指摘によって、万里(濱田万葉)こそが麻子(新藤恵美)の娘、つまりは克也の妹であると判明するあたりはこれしかないといった感じのまさに模範解答でしょう。つまりは、みんながみんな何らかの家族だったというわけか。
 さらには、いきなりに余命半年を言い渡されてしまう克也。そんな克也に付き添う尼僧姿の千尋を見て、

美香(山口あゆみ)「不吉な格好!」

とはあまりにも的を射た指摘ですこと。美香の偽装妊娠もまた万里の悪知恵によるものだったことが判明して、万里の性根の悪さもここに極まった。万里のエキセントリックな言動こそがこのドラマ最大の見ものだっただけに、最後の最後まで悪を貫いてほしかった気もするけれど、結局はみんないい人化するあたりもらしいといえばらしい。千尋は新薬を手に入れるためにアメリカにわたり、そのおかげで克也の寿命は延びて見事結婚する運びとなるも、完全に治ったわけではないというあたりのどんよりとした結びがちょっとユニーク。(麻生結一)


第5週(3/21〜3/25放送)
☆★
 千尋(伊藤かずえ)の父・洋介(寺泉憲)こそが父の仇だったと知った克也(松村雄基)はついに千尋を拒絶。絶望した千尋は会社に辞表を出し、万里(濱田万葉)には本当の姉妹になりたかった旨をまとめた感動的な手紙を残して姿を消す。克也に詰め寄って、

万里「お姉ちゃんに何をしたの?」

って、もともとはあんたが原因でしょ。
 旅に出た千尋がふと立ち寄った民宿の宿帳に、父・洋介と麻子(新藤恵美)の写真を発見。しかもその民宿で麻子は出産!ってことは、千尋の母が麻子?! それ以前の問題として、大体宿帳に写真はるか!そうなると、千尋と克也は実の兄妹?
 駅前で見失ったアンディ(犬)を探しているうちに崖っぷちに導かれた千尋は、私にはもはや何もないとそこからダイブする。同週に他局(『冬の輪舞』)でも崖っぷちが舞台になるも、その緊迫感は雲泥の差。
 それから3年。相原建設の社長に就任した克也は、鬼と呼ばれるまでの存在になったも数分後、立ち退きの交渉に訪れた教会で目にしたシスターは死んだと思っていた千尋だった。ここはもちろん笑うところでしょ。実は千尋は飛び降りる寸前に、「君のために」のメッセージによって橋田(唐渡亮)に救われていたのだった。
 千尋の居所を聞きつけて駆けつけた万里だったが、会えばやっぱり傷つけあう関係性は普遍。万里から電話連絡を受けた美佳(山口あゆみ)は、嫉妬のあまりに張り切って克也のために朝食を作る?! ステーキ、うなぎの蒲焼、とろろ、にんにくバター焼き、キムチ、マムシドリンク、さらにはすっぽんのすり身の胡麻和えまで。このあたりの面白みが今一歩はずし気味なのはご愛嬌。
 牧師と尼僧が人知れず抱き合ってる写真が出たら、美談転じて大したスキャンダルだと、千尋と橋田のハレンチツーショットを携帯カメラで撮影するあたり、まだまだ万里の悪ぶりは健在の模様。ここでアンディが3年ぶりに戻ってきた!どうやって生きてたんだ〜っ。そこに民宿を経営するえり子(山田スミ子)が乱入してきて……。大映ドラマのテイストが忠実に守られるあまりにも予想通りの大波乱で、ちょっとだけ面白くなってきた。(麻生結一)


第4週(3/14〜3/18放送)
☆★
 美佳(山口あゆみ)は自殺未遂をステップに、克也(松村雄基)との結婚目前にまでジャンプアップ。ところが器物破損写真で再び脅されたものだから、証拠隠滅のために麻子(新藤恵美)が探偵・山岡(浜近高徳)をボコボコにさせると(だったら最初からこの男たちを使えばよかったのに)、千尋(伊藤かずえ)の父・洋介(寺泉憲)こそが、かつて克也の父親の会社・後藤建設の不正疑惑を新聞ですっぱ抜いて、倒産、挙句に自殺に追い込んだ新聞記者だと判明する。
 一方、千尋イジメに執念を燃やす万里(濱田万葉)は、千尋が隠し持っていた亡き父・洋介の日記を発見。ついに千尋がもらわれた子供であることを知って、狂喜乱舞するばかり。

万里(濱田万葉)「もっと面白くして。面白く」

視聴者の代弁をするあなただけは十二分に面白いですよ。(麻生結一)


第3週(3/7〜3/11放送)

 いろんな仕掛けが絡み合ってはいるんだけれど、ドラマのボルテージはその絡み合っているほどには高まっていかない。それは各キャラクターに幾ばくかなりともの葛藤がないからではないか。あっさりと康宏(石橋保)との子供を出産した万里(濱田万葉)がおいしいところを独占してしまうのは、康宏を奪った女である千尋(伊藤かずえ)に対しての敗北の味を忘れないという怒りの気持ちの反面(花を食べちゃうシーンの回想がリピートされる)、姉としての千尋を慕う気持ちもちょっぴりながらほのめかされており、小さながらも感情の振幅がそこに生まれているからだろう。ちなみに、その子供には愛していた義兄・康宏の名前から一字をとって康明と命名し、さらには千尋には決して触らせない。週頭のこのあたりはいい感じだったのだが。
 ほとんど挙動不審者の集いと化しているその他のキャラクターたちは概ね猪突猛進型なので、葛藤の末のおかし味(?!)がどうしても出づらい。美佳(山口あゆみ)の自殺未遂が一方的なのはいいとしても、克也(松村雄基)にほとんどダメージがないように見えてしまうので、見ている方としても傍観者でしかいられない。その後も畳み掛けてくるのは、千尋の夫(=康宏)の子を産んだものの、満たされない思いだったために、何者か(=母・麻子(新藤恵美)が雇った探偵)に脅迫された美佳を利用して千尋を陥れる算段を瞬時に画策するやっぱり万里だけだったりする。行動パターンの奇抜さだけではドラマのボルテージは高めることは難しいのだと改めて実感させられるあたりが、面白いといえば面白い箇所。(麻生結一)


第2週(2/28〜3/4放送)
☆★
 今は亡き夫・康宏(石橋保)の携帯に電話をかけてきたシオンは、千尋(伊藤かずえ)のたった一人の妹・万里(濱田万葉)であったことが発覚。その上、万里は康宏の子供を身ごもっていた。でも、シオンが万里ならば、この世にいない人間に電話をかけるだろうか?つまりはシオンは万里じゃないってこと?
 どちらにしろ、喜怒哀楽の大特集的なテイストに眼目があるとしても、わかったようでわからないままに進んでいくお話の方は今一歩盛り上がりに欠ける。その面白みが今一歩高まっていかない理由を考えるに、もしかしたらこのドラマがフィルムではなくビデオで撮られているせいかもしれないと思ったりして。往年の大映ドラマのすべては、フィルムの質感によってこそ生き生きとする虚構のトリックだったはず。
 このドラマを見るモティベーションとしては、濱田万葉演じる万里の孤軍奮闘ぶりにつきるか。千尋にたてついたと思ったら、直後夕食に肉を所望したり、警報装置で流産するかと思ってみたりと、そのお騒がせキャラぶりは頭抜けてる。妊婦を悪用しての悩殺ぶりも、不謹慎この上なくて○。清純そうな顔して、自分のほしいものは何でも手に入れる女・千尋を取り巻く男を、炎に引き寄せられる夏の日の蛾に例えるあたり、文学的素養も高い模様です。
 連打される知る由もなかったの中では、万里のつわりを助けなかったことが姉妹の間の亀裂の原因になることぐらい、千尋とて知る由もなかったわけないでしょうに。ちなみに千尋に二人羽織で習字の練習をさせる克也(松村雄基)は、本物の習字の達人です。っていうか、松村さんご自身、字が上手です。(麻生結一)


第1週(2/21〜2/25放送)
☆★
 奇想天外なドロドロ愛憎劇をごくごく日常的に見せてくれていた大映ドラマが、松村雄基と伊藤かずえのゴールデンコンビで復活と聞けば、やはりチェックせずにはいられない。韓流ブームや東海テレビの昼ドラの向こうを張って、どこまで荒唐無稽に(松村さんご自身が番宣で使っていた言葉につき)やってくれるのか期待していたが、第1週に関しては千尋(伊藤かずえ)の妹・万里(濱田万葉)一人の濃厚さがドラマ自体をも圧倒してしまった感じ。まぁ、この手のドラマは調子づくと止められないほどに転がっていくので、今後に期待ということで。
 それにしても、万里の壊れっぷりが楽しい。姉・千尋と康宏(石橋保)の結婚式で、千尋が投げたブーケをつかんだのは千尋の妹・千里。一人木陰に行き、いきなりに敗北の味(=ブーケの薔薇の花)をまるかじりしてしまうオープニング以降、目力が衰えるシーンは一つもなし。千尋の行動の一つ一つに難癖をつけだすあたりからも、彼女こそが隠れ主役であることが臭ってくる。濱田万葉は朝ドラ再放送枠『えぇにょぼ』でも、最初期の危なっかしい感じがすごかった。
 それにしても、タイトルバックはなぜみんな裸か!一人だけ服を着ている新藤恵美が出演していることで、いっそうその破天荒には安心感がある?!(麻生結一)




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