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不機嫌なジーン (フジテレビ系月曜21:00〜21:54)
制作著作/フジテレビ
企画・プロデュース/山口雅俊
プロデューサー/鹿内植
脚本/大森美香
演出/澤田鎌作(1、2、5、8、11)、平井秀樹(3、6)、川村泰祐(4)、初山恭洋(7、10)、白川士(9)
音楽/小西康陽、YUI
主題歌/『feel my soul』YUI
劇中歌/『ラヴァーズ・コンチェルト』サラ・ヴォーン
出演/蒼井仁子(ジーン・ジンコなど)…竹内結子、南原孝史(フガイ・ナシオ)…内野聖陽、白石健一(テントウ・ムシオ)…黄川田将也、若狭宗夫(シカ)…平山広行、阿部啓太(ハゼ)…岡田義徳、柳川美幸(イモリ)…山田優、三井茂人(デンデンムシ)…大鷹明良、四谷雄哉(バイオリン・イルカ)…伊藤正之、佐々木京太…小林俊、桜井祐介…ペ ジョンミョン、真岡早智子…井上訓子、飛田伸夫…赤池洋、直美…山田玲奈、美しい母親…高橋美穂、川上みどり先生…梅宮万紗子、ユキヤ…武田真治、アヤカ…釈由美子、あわてふためく係員たち…朝永沙希・水野智則、干潟の少年たち…金井史更・小林達也、ヨシオちゃん…中曽根康太、リムジンの運転手…PETER BRENMAN、ミセス・バーネット…KATE LAMBDON、金髪の女性…HARUKA ORTH、真岡歯科・やよい…渡瀬広子、真岡歯科・カズコ…沙央理、カナブンの女子高生・マイコ…LISSA(推定少女)、カナブンの女子高生・アヤノ…小泉絵美子、浜口剛…田中要次、ウェイター…田中仁浩、ロペット・ロラン…アユートン・デマルキ・アウベス、仁子の少女時代…飯原成美、仁子の初恋の人…石田大樹、はやしたてる男の子たち…浦岡碧・海老名航一、ベストジーニスト受賞者たち…広瀬真美(siss)・慶野有香(siss)・立澤麗、カラハシ農園の唐橋…村松利史、スズムシを買おうとするママ…筒井真理子、北大路玲子(元ミス慶應)…高岡早紀、薬屋の店員…和泉由希子、スズムシの係員…小沢日出晴、スズムシの子供…今井悠貴、ロンドンの市場のおじさん…FRED ALLUM、櫻田マリ…野沢和香、健一のパパ…中丸新将、文豪・山田虎之進…我修院達也、岡元めぐみ…片瀬那奈、健一のママ…松川三夏、いつもの係員…朝永沙希・水野智則、神宮寺のところの猿丸…小林且弥、手塚純一郎…遠藤憲一、南原の入院仲間・ナナエ…櫻井淳子、態度を変える女子高生…望月みさ・堀有里、蒼井信二(いつも山口弁)…加藤康起、モデルのリツコ…吉瀬美智子、絶叫写真のリツコ…吉瀬美智子、客室乗務員・ゆみ子…米山えりか、トレーナー(ナイス・バディ)…小田倉良子、林進(新入り)…鳥居紀彦、神宮寺の夫…相島一之、食堂のおじさん(マユタテアカネ)…酒井敏也、滝山名誉教授…藤木孝、米田…三井善忠、浅間(できる秘書)…岡森諦、小林光子(気になる秘書)…尾形沙耶香、大臣…勝部演之、推進派・広田…田窪一世、南原が連れていた女…眞野裕子、良い人そうな所長…大杉漣、雑誌記者…大西武志、子供仁子(に似た子供)…飯原成美、突然歌う店員たち…滝直希・布川宏美、早乙女サンダース…伊東四朗、吉田佳…もたいまさこ、勝田隼人…オダギリジョー、蒼井由子…藤村志保、山本光…陣内孝則、神宮寺潤…小林聡美
ほか

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第11回(3/28放送)
☆☆☆
 これまでのシーンを時系列に並べた“総集編”的映像の勢いのままに、仁子(竹内結子)が大学を辞めることになって南原(内野聖陽)との結婚を強く意識し始めているというその後の展開までをアバンで軽快に提示してみせるのはいい。しかし退学に至るのが、前回農水大臣の前で言ったことが問題になったからってのは、前々回のラストであれほど食い下がってみせた人が断念する理由としてはちょっと弱いのではないだろうか。軽快さでうまくごまかしちゃっているけれども。
 とはいえ、仁子としては意に添わない退学のはずが、まるで“寿退学”みたいな形になってしまったが故に感情の微妙さが際立つという趣向はなるほど巧み。幸せそうにソファで寄り添う仁子と南原だけれど、実際は“心と体が分離してる”という状況のビジュアルが可笑しい。分離した南原の“心”のほうが神宮寺(小林聡美)に電話をかけてるし。もはやお馴染みのこんな奇妙な見せ方は、挿入アニメや「本日のおさらい」に比べて遙かに成功していたと思う。
 子供の頃の仁子が松ぼっくりを何かの卵だと信じ続けていた話は、信じれば何でも宝物になるっていう教訓に見えて、信じても何も生まれないという喩えとも取れるっていうのは、この作品らしいヒネリを感じる部分。仁子の母親(藤村志保)との会話の中でそれを再び、もっと本質的な意味での“信じることの象徴”に戻す誠実さも好感を持てるところ。
 勝田(オダギリジョー)に殺されそうになって(?)、南原への愛を再び自覚した仁子なれど、オーストラリアに一緒に来て欲しいという南原の頼みを受け入れるのには躊躇する。南原がオーストラリアに行かねばならない理由は、仁子の退学に引き続きいささか説得力に欠ける気もするが、まあいいとして。かくして二人は、別離を選ぶ。夜のメリーゴーランドをバックに交わされる

仁子「人間になんて生まれてこなければよかった。こんな思いするなんて……」
南原「まったくだ。地球なんか滅びてしまえ」
仁子「それは駄目。それは……駄目」

という二人の最後のやり取りが、研究者としての、あるいは人としての基本スタンスの違いを決定的に提示していて切ない。どんなに好きでも歩み寄れないものって、確かにあるものです。単純な「結婚か、仕事か」的ジレンマを超えたリアリティに感じ入る。
 しかしながら、ラストでロンドンロケの初回冒頭シーンに戻す必要があったのかは甚だ疑問。このリピートには、ドラマ的意義が全く見いだせなかった。シチュエーションをこねくり回さない部分に関しては抜群に上手いのに、こねくり回しこそが必要な“ドラマ的大技”は今ひとつのところで決まらないのもこの作品の特徴だったかな。
 むしろ印象的だったのはその前の、野原で子供たちを前に仁子が話しているシーン。

仁子「私たちの人生に、あの鳥はなんの関係もありません。でも、こうして空から声が聞こえてくるだけで、なぜ私たちはなんとなく嬉しくなっちゃうんでしょう。(中略)もしかしたらそんな無駄なところに何か、宝物がある。なーんて思ってるんですけど、どうなんでしょうね」

 まさにその通りで、“そんな無駄なところ”にこそ美点があふれていたドラマだった。このシーンで終わってくれていればどんなに清々しかったことだろう。(櫻田もんがい)


第10回(3/21放送)
☆☆☆
 南原(内野聖陽)の研究室にザラメ付きのカステラ持参で押しかけて、

勝田(オダギリジョー)「あんたから何か奪いたい。彼女は俺の失われた海だ」

とは、のっけからずいぶん威勢のいい勝田なれど、結局は、9週をかけて培われた仁子(竹内結子)と南原の信頼の間に全く入り込めなかったのは少々残念なところ。仁子と勝田の間に一度ぐらいは微妙な感じが生まれてもよかったとは思うのだが、“最終回のひとつ前”ではそんな寄り道している暇もないか。やはり勝田の本格登板はもう少し早いほうがよかったのではないだろうか。いろいろ事情があったんだろうとは思うけれども。
 それでも、ドラマそのものの心地よさが失われるわけではない。山本事務長(陣内孝則)から押しつけられた膨大な調査さえも、空の色や風の音を楽しみながらやり遂げてしまう仁子の姿には、すがすがしい気分になる。そんな仁子が著しく成長していることを感じた南原が“理性”と“エゴ”に分かれて交わすのは、“女より常に上でいたい男”についての議論。ドラマ開始時では、こういった「男女の恋愛観の相違」的なネタこそがクローズアップされそうな感じだったけれど、フタを開けたらずいぶん違うものになりましたね。個人的にはそれで大正解だと思いますが。
 その後、仁子は干拓工事反対派と推進派のもみ合いに巻き込まれて怪我してしまう。止まらない血に動転しながら呟く、

仁子「人間は何をやっているの……?」

という台詞にはどきりとさせられた。そして病院に担ぎ込まれた仁子に、南原はついにプロポーズ。そのさわやかに甘いムードもいいが、南原から仁子を奪えないことを悟った勝田が神宮寺(小林聡美)に甘えた表情を見せるシーンもまた、ちょっぴり切なくて。
 しかし勝田との絡みも一段落したとなると、最終回に持ち越される案件は、仁子と南原がちゃんと結婚まで漕ぎ着けるかってことぐらい?最終回に向けての引っ張りとしては少々弱いような気もするのだが……。(櫻田もんがい)


第9回(3/14放送)
☆☆☆★
 冒頭、不穏なはずの南原(内野聖陽)と勝田(オダギリジョー)のファースト・コンタクトさえ、これまでのラブコメ的トーンの延長線上できっちりやってくれるあたりに、このドラマの基盤がかなり高い次元で完成したことを今更ながら確信。ここまでできあがったら視聴者的にはもう安心で、後はストーリーの起伏に身を任せればいい。
 勝田は寝起きに突然、南原と干潟の関わりの話を仁子(竹内結子)に明かす。その理由を神宮寺(小林聡美)に聞かれたときの

勝田「今ずーっと見てた。海の夢」

なんて台詞のさりげない上手さは相変わらず。シチュエーションを妙にこねくり回さず、そんなシンプルかつリアルな台詞で物語に説得力を与えるのがこのドラマ最大の美点かもしれない。一方で、決して平易ではない論文の引用をひとしきり続けるという、“ながら見していては理解できない可能性のあるシーン”も恐れずやってみせるのも評価したいところ。翌日の同じ時間にやっている『救命病棟24時』が、ながら見したほうがいいドラマに思えるのとはまさに好対照。
 ディティールに目を向ければ、わずかに挿入されていた阿部(岡田義徳)と若狭(平山広行)のやり取りや、阿部と仁子との動物園のシーンなどもいい味。
 何はともあれ、いかにもお気楽そうに見えたコメディタッチの恋愛話と、決してお気楽なネタではない干潟の話が、予想以上の有機的結合を見せ始めているようにも見える。あと2回、どこまでの高まりを見せてくれるのか楽しみになってきた。(櫻田もんがい)


第8回(3/7放送)
☆☆☆★
 前回のラストから2年を経て、時は2005年2月に。物腰に落ち着きが出て、ぐっと研究者らしく、そして女らしくもなった仁子(竹内結子)の姿が冒頭から頼もしい。恋愛ネタの聞き役だった早智子(井上訓子)が早々に結婚退場することからして、物語がこれまでとは違うフェーズに向かうことを予感させるが、ここはまだ前回までの延長線上にある楽天的ムードを堪能するべきところ。式場で久しぶりに会った健一(黄川田将也)と仁子が屈託無く笑い合うシーンは、微笑ましくもちょっぴり切なくて。2年経てば、お色気担当だった美幸(山田優)さえ「最近の若い子は……」なんて漏らすいっぱしの大学院生に成長してるのも楽しい。エンディングのクレジット順では黄川田将也に続く4番目なのにほとんど目立ってなかった若狭(平山広行)にも、微妙にスポットライトが当たり始めた?
 そしてついに、ついに勝田(オダギリジョー)が本格的に物語への介入を開始。仁子に強引に迫ってみたりする一方で、南原(内野聖陽)への憎悪を神宮寺(小林聡美)にさえ露骨に見せるその姿は、オスとしてというよりは人として危ないような。さらに今回から、このドラマ初の絶対的悪役(?)、山本事務長(陣内孝則)も登場。“ある業界”に都合のいい研究結果を出すことを断った仁子をこらしめることにしたそうで、仁子の周辺もなんだかキナくさくなってきた。
 そんな不穏な伏線がびしばし張られる中で、今回まではやはり、仁子と南原のやり取りに心をなごませておきたい。小雪ちらつく街でのニアミスを経て、動物園の子供向けイベントで二人は再会。衆人環視で痴話げんかを繰り広げた後、5時間後の逢瀬を約束して

仁子「猫を救って事故に遭ったり、落ちてきた資材の下敷きになったりしないで、絶対にちゃんと来て」

って、作家的にはちょっとした自虐ギャグかも?しかし、そんな前振りをした後で二人が“何事もなく会える幸福”こそを甘美に描き出してくれるあたりが、このドラマの真骨頂。この感じさえキープしてくれれば、二人の身に何が起こっても大丈夫だと思えるのだが。(櫻田もんがい)


第7回(2/28放送)
☆☆★
 予告に踊らされるバカな奴と呼んでください。結局今回も干潟ネタの本格展開はなく、そのキーパーソンであるらしい勝田(オダギリジョー)も思わせぶりに数シーンのみ登場するのみで、顔見せ以外の意味を感じられない行動ばかり。このあたりに関してはどう出てくれるのか初回からずっと期待していただけに、こう肩すかしばかり何度も食らわされると、こちらとしてもだんだんテンションが落ちてくる。勝田が仁子(竹内結子)に言った唐突な

勝田「キスでもする?」

なんて台詞、いかにも予告に挿入するために言わせた感じで、扇情的な言葉面ほどは物語をスリリングにする効果もなく。
 さらにそんな思わせぶりを除いた部分が、ほとんど前回の残務処理状態だったのも残念なところ。南原(内野聖陽)がミネソタに発つ直前に、南原の言葉の中に誠実な部分があったと仁子が気づくきっかけが写真1枚ってのも、先週ああいう形で恋の終わりを描いたこのドラマにしては芸がないようにも思える。ラスト、仁子と南原がお互いへの愛を素直に認め合うのは、確かにいつか見たいと思っていたシーンだったけれど、二人のそんな心情はいわばこの物語の心地よさの基盤であり前提だったわけなので、今更1つのエピソードを牽引するほどの力はなかったのではないだろうか。
 ずいぶん辛い見方になってしまったが、前回まで順調に盛り上がっていたせいでこちらの期待値が上がっているというのは確かにある。しかし、だからこその連続ドラマだとも言えるわけだから、ここは踏ん張っていただきたい。(櫻田もんがい)


第6回(2/21放送)
☆☆☆
 デートを終えて仁子(竹内結子)が振り返ると健一(黄川田将也)はもう携帯で誰かと話してるとか、久々に一緒に見るテレビで大好きなCMがバージョン違いになってたりとか、そういう些細なことの積み重ねが、仁子と健一の別れをひたひたと予感させるあたりの上手さはもはや独走状態。ここしばらくの月9のベタさ加減に慣れきった身としては、このあたりでまためぐみ(片瀬那奈)を介入させてくるのではないかと思っていたのだが、そんなわかりやすいイベント無しでひたすら誠実に1つの恋の終わりを描き上げるとは、いやはや恐れ入りました。一方で仁子と南原(内野聖陽)との関係は、紆余曲折を経たカップルならではの安定感が感じられるように。空き巣に入られた南原が“ちょっと情けない気分になって”仁子に電話したシーンでの、二人の抑えた愛情表現が微笑ましい。山で転んで動けなくなった仁子を“老けた王子”南原が助けに来たことと、新たな研究テーマ(タイトルは「テントウムシが来てくれる」)に仁子がこだわる理由が重なるあたりも良く出来ている。“第一部・健一編”(と勝手に命名)の終わりにふさわしい完成度だったように思う。
 こういった心地よいトーンのままに続けて欲しいとも思うのだが、次回からいよいよ干潟ネタが本格化(って、先週も同じ事書きましたけど、あれは早とちりでしたね、スミマセン)。今までの楽天的な雰囲気とは明らかに違う空気を持ち込みそうなオダギリジョーの登板に、期待半分、不安半分といったところ。(櫻田もんがい)


第5回(2/14放送)
☆☆☆
 やはり、前回のラストから時間を空けずに続く形となった今回。エピソード間は時間を飛ばすという縛りのもとで話を作るなんて、難しいことにチャレンジしてんじゃん!と勝手に感心していた当方としてはいささかがっかりだったのだが、続く本編が面白ければノープロブレム。…なのだが、仁子(竹内結子)と南原(内野聖陽)が再び絡まなくなったせいで、前半は「あんな出張歯医者、いたらマジでもうかりそうだな〜」と思うぐらいで特筆すべきシーンはほとんどナシ。停滞気味の物語のテンションを一気に上げたのは、南原ではなく健一(黄川田将也)だった!
 仁子の誕生日に待ちぼうけを食わされた健一がついに大爆発。仁子とて理学部棟の停電で対処に大わらわだったわけで責められる理由はないのだが、いつも二の次にされている気持ちがぬぐいきれない健一の言い分もごもっとも。こんなシチュエーションは、この脚本家がもっとも得意とするところでしょう。決して人並みはずれてワガママなわけではない二人が、それでもその人並み程度のワガママや甘え故に気持ちがすれ違う様には、思わず身につまされてしまうほどのリアリティがある。

健一「まじめに聞くけどさ。俺とテントウムシ、どっちが大事なの?」

という質問への答えが「選べない」だったことに大いに失望した様子の健一を振り切って、仁子は再び大学へ。停電の中で懸命にエボシカメレオンを助けようとするも、そのやり方がまずいと三井(大鷹明良)には叱られ、一段落したからと健一の元に戻ろうとすれば、健一は女の子と一緒で…と、その後の仁子はまさに泣きっ面にハチ状態。確かに泣きたくもなります。仁子は知らないことだが、その女の子=健一の幼なじみのめぐみ(片瀬那奈)が健一に言った

めぐみ「私…花くれた人をほったらかしにするコなんかより、私の方が白石くんに合ってると思う」

との台詞も、直截的だからこそ破壊力抜群で。そしてラスト、未だ登場しない仁子の母親と仁子の電話での会話をクライマックスに持ってくるなんて脚本的にはかなりのムチャだと思うけど、あのシーンには十分に説得力があったように思う。一人芝居でやり遂げた竹内結子も大いにその女優魂を見せてくれたと言えるのでは。
 それにしても、物語が単なるラブコメディーではない様相を呈するほどに、本編終了後の「今週のおさらい」が浮いちゃってるのがなんともかんとも。一層どうでもいい感じになってしまった挿入アニメの動向とともに、干潟ネタが本格化しそうな来週以降がますます心配です。(櫻田もんがい)


第4回(2/7放送)
☆☆★
 イギリス時代の仁子(竹内結子)と南原(内野聖陽)を知る早乙女サンダース博士(伊東四朗)が来日し、二人は話の行きがかり上、博士の前では恋人同士を演じることになる……という展開のおかげで、またしても二人の丁々発止のやり取りが復活したのは素直に嬉しいところ。特に笑顔を浮かべながらののしり合うシーンなんて、この二人ならではの可笑しさでしょう。親友の早智子(井上訓子)から選んでもらったドレスを、健一(黄川田将也)と過ごすクリスマスではなく南原と行くことになった早乙女主催のニューイヤーズイブパーティに着ていく仁子……なんて描写で仁子の微妙な感情が表現されているのも見逃せない部分。
 そのパーティには父親の縁故で健一も姿を現すも、その頃仁子と南原はバスルームでびしょぬれになりながらフクロモモンガを追いかけていたりするわけで。それが健一に見つかってドタバタに……となるかと思いきや、バスルームでキスをする二人とそれをあずかり知らぬ健一というシーンで今回は終わり。へー、こういうのも意外に切ない余韻があっていいじゃん……と思ってたら、次回予告を見る限りドタバタは来週の冒頭に延期されただけ?これまで、次のエピソードまでの間は3か月ぐらい空くというペースでやってきたこともあって、ちょっと肩すかしを食らわされた感じ。もちろんこのところ絶好調の大森美香女史だけに、予告ではそう思わせて実は……という仕掛けも期待してしまうわけですが。(櫻田もんがい)


第3回(1/31放送)
☆☆★
 前回の干潟帰りに仁子(竹内結子)にきっぱり振られたせいなのか、冒頭から南原(内野聖陽)の元気がない。美幸(山田優)からの付箋紙のラブコールや大胆な水着姿攻勢に目を輝かせたのもつかの間、離婚した元妻(高岡早紀)の来襲を受けて、男として女を幸せにする力のみならず研究の価値まで否定されては、弱気にもなるというもの。順番は前後するけれども、薬屋での買い物が栄養ドリンクだったり湿布薬だったりするあたりも、中年にさしかかった男の悲哀を感じさせたりして。しかしドラマ的には自信家の南原とそれに反発する仁子という構図こそが面白さの牽引力だったので、前2回までの勢いは若干トーンダウン。とはいえ、茄子畑にテントウムシを放したり、健一(黄川田将也)と共に虫の声に耳を傾けたりといったシーンが持つマジックのおかげでリリカルさはキープ。
 挿入されるアニメもずいぶんささやかなものになってきた感じなのだけど(およそこの手の試みが、最後まできっちりやられたのを見たことがないんですが……)、代わりに今回の見せ場は「3人の仁子」でしょうかね。3つの時点の衣装を着た仁子が言い合うのは絵的にはかなり楽しめた。その会話(?)は、もう少し紛糾させてくれたほうが楽しかった気もしますが。(櫻田もんがい)


第2回(1/24放送)
☆☆☆
 時は3ヶ月後、2002年の夏休みへ。なるほど、こういう時間の経過をさせていくために2002年からスタートしたワケか、と納得している暇もないくらいに、ドラマは冒頭から絶好調。本当は仁子と書いて「よしこ」と読むその名前が「じんこ」と読める故につけられたあだ名は、南原(内野聖陽)が呼ぶ「ジーン」だけではなかったらしく、仁子(竹内結子)には子供の頃にとんでもないあだ名で呼ばれていたトラウマが……という話で笑わせてくれる(それにしても「その言葉」を子供たちに連呼させるばかりか女優さんにまで言わせてしまう勇気にも拍手)一方で、いつまでも飛び立てないシーソー上のテントウムシなんてネタは、なかなかに味わい深い比喩となっていて感心してしまう。
 やはり主演二人の掛け合いが大きな魅力で、典型的色男気取りを嫌みなくやってみせる内野聖陽もさすがだが、竹内結子の日本版アリー・マクビールな趣のコメディエンヌぶりもなんとも楽しい。二人がかつて恋人同士だったことが研究室の噂になったり、仁子の携帯電話のメールを南原が盗み見たりなんていう、下手したらネガティブな印象を抱きかねないシーンをさらりと見せられるのも、勢いがある証拠でしょう。軽快なシーンの連打の中に、するりと滑り込まされた

仁子「……じゃあ、なんでムツゴロウはここにいたんだろう」

なんて本筋を外れた台詞にこそ叙情性が感じられるのも好印象で。そんなしんみりムードや、再接近を果たした仁子と健一(黄川田将也)のほのぼのムードから一転、南原が若作りしてジーンズなんか履いてみた結果……のオチも可笑しい。確かにあの賞って、「何でこの人が?」って人がたまに選ばれてますよねぇ。(櫻田もんがい)


第1回(1/17放送)
☆☆★
 冒頭のシーンから「5年前(2002年)」の冬へ、その数ヶ月後の春(ワールドカップ直前)へ、その2年前へ、さらに1990年にも寄り道……と、行き来する時制に若干の戸惑いも覚えつつ、主演2人の軽妙なやり取りに引っ張られて楽しめた第1回。ラスト近く、屋上で素っ頓狂な声を上げる男女というナンセンス一歩手前のシーンにほのかな感傷が感じられるあたり、いい意味で月9らしい出来映えだったのでは。
 男の性癖を動物行動学的に……ってのは、ちょっと前に『恋は戦い!』でもやっていた気がするんですが(あれは「男女の恋愛行動を」でしたか)、今のところこのあたりはあんまり面白くないというか、クジャクは雄の方がキレイ、とか今更言われてもなぁというのが率直なところ。行動学はともかく動物をいかにたくさん出すかで勝負しようという姿勢も早々に見て取れますが、探せば面白いネタだってあるでしょうから、もう一踏ん張りを期待したい気分ではあります。さりげなく社会派な諫早湾ネタがこの恋愛中心ドラマの中でどう展開するかは、大いに楽しみなところ(枠の性格を考えると不安もないわけじゃないけど)。(櫻田もんがい)

☆☆☆
 才気に任せて展開を連ねていく語り口もやりすぎるほどに快調で、随分お久しぶりに月9からスマッシュヒットが生まれそうな予感がする(視聴率的な話ではなく)。竹内結子は映画ではある種のブランドになっているも、テレビドラマ、とりわけ連ドラとなるとかなり心もとなかったが(『白い影』と『あすか』の中期ぐらい)、これは彼女の代表作になるのではないだろうか。ラブコメへの適性はいまさら言うまでもないのだが、作品とのマッチングではようやくといった感じ。
 それ以上に感心したのが、大森美香脚本のバランス感覚。山口雅俊P、竹内結子と同じくコンビを組んだ『ランチの女王』は敗戦処理的な役回り(?!)ということもあり、最後まで如何ともしがたかった印象を受けたが、今回は満を持してということなのだろうか。おバカと見せかけてリリック、リリックと見せかけておバカ、とのベーシックな切り替えしぶりを躁状態のままに貫いてしまうあたりの勢いはなかなかのもの。このテンションで最後までいけるとは思わないも(このテンションを続けられては、見るほうもくたびれてしまう?!)、掴みはこれぐらいやってくれてもいいでしょう。。
 “The Selfish Gene”(利己的遺伝子論)はその著書というよりもその説があまりにも周知なので、何かにつけそこに戻らなければいけないとなると、むしろその度にドラマからフレッシュさが失われてしまいかねないとの懸念もある。仁子(竹内結子)の性根が異性を見つけて交尾して、子供を産むといった器用な生き方にではなく、脳が発達してるにもかかわらず不器用に走ってしまうところにあるのだから(予想に反して、恋愛にはかなり積極的だったが)、この避けては通れなさそうな“利己的なジーン”をどのようなおかし味で料理してくれるのか(もしくはリリックに流してくれるか)にも、『わかば』の次の『ファイト』の次の朝ドラを担当するこの脚本家にならばと期待したくなる。
 時間軸をこね回すのが才気の延長線上にあるとするならば、視聴率的には随分と損をしたかもしれないが、南原(内野聖陽)の彼女だったロンドン時代のインサートとその連なりに美しく見せてくれた社交界風にダンスの叙情ぶりに、それもまた肯定したくなる。それにしても、マントを翻す内野聖陽は『料理の鉄人』の鹿賀丈史とイコールでしたね。
 その南原が長崎に個人的な用向きで赴いていたのは、「長崎の女」のためではなく、1990年に研究していた諫早湾の干拓事業をその目で見るためだったのか。ムツゴロウやシオマネキと戯れるかのように、子供たちが手を振るのどかな風景にはビックリついでに感激する。このあたりの硬軟取り混ぜてのバランス感覚なども、この場が月9だと考えるとお見事というしかない。
 仁子がいったんは逃がしてしまったハリスホークが、鷹匠よろしく南原の腕に止まる場面も、そのパンチで仁子がダウンしてしまうおまけつきで実に楽しい。ただ、天才とは凡人に理解されないものだと消防隊が保護マットまで敷いてしまうオチまでいくと、ちとやりすぎか。鷹語(?!)で叫び続ける仁子と南原と一緒に、やり過ぎない程度でドラマよ終わってくれ、と叫び続けていたり。

南原「美しくなったなぁ、仁子」

この台詞にはうなずいた方は、男女に限らず多かったのでは。(麻生結一)




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